Tag Archives: 家族

「絶え間ない幸せの泉」と「自分の周り」

橘玲さんが『言ってはいけない 残酷すぎる真実』で取り上げていた本『子育ての大誤解〔新版〕上』『子育ての大誤解〔新版〕下』が気になったので原著『The Nurture Assumption: Why Children Turn Out the Way They Do』を読みました。 初めに書いておきますが、邦題の副題「重要なのは親じゃない」はミスリーディングです。 原著の副題「Why Children Turn Out the Way They Do」(どうして子どもはこういう人間になるのか)の方が良いニュアンスです。
1998年という、もう20年も前に書かれた原著の原題は、人間がどういう人間になるのかを決定すると考えられる2つの論派のうちのひとつ、Nature Assumption(遺伝がほぼ全てを決定するという考え方)に対するNurture Assumption(環境がほぼ全てを決定するという考え方)です。 ところが、当時のNurture Assumption派は「環境=親の育て方」の一辺倒だったのですが、これに対し、環境は親だけが与えるものではない、むしろ子どもが育つ同姓・同年代グループの影響が多大、というのがおおざっぱな骨子。 長いですが、興味深い箇所がたくさんありました。

その中で’Relationship’と’Groupness’という言葉が盛んに出てきました。 人間関係を考える上で非常にわかりやすいフレームワークなので今日は’Relationship’と’Groupness’の話です。 邦訳でどう訳されているのかわからないのですが、「関係性」と「集団性」と訳しておきます。
Continue reading


家族は一緒がいい

4月にやったオフ会(→『11時間マラソンオフ会』)の後、密かに「遠距離婚妻の会」という分科会が立ち上がっていました。 その名の通り、ダンナさんと長い間国境を越えた遠距離婚をしていた人たちの会です。 最近そのメンバーから全員がダンナさんのいる国で合流を果たしたという報告を聞いてとても嬉しいです。

よくキャリア相談を受けるのですが、「○○とxxとどちらがいいか」と聞かれても「知らん」です。 なぜ「知らん」かは後でまとめます。 でもどちらか、または両方の転勤や留学などで別居婚が続いていることを相談されると、(お節介を承知で)一緒に住むことを勧めます。 私のMBA同級生はみんな複数国を転々とした経験があるので非常によくある悩みなのですが、遠距離婚を選ぶ人は圧倒的に日本人より少ないです。 日本人は親の単身赴任を経験しているからか、会社の転勤命令にNOと言えないからか、留学や長期出張には家族帯同不可という意味不明な社内制度のせいか、特に子どもが産まれる前は遠距離婚を選ぶ人が多いですが、欧米人では1年以上の別居はほとんど聞いたことがありません。
Continue reading


新しい家族のカタチ

nuclear_family少し前にThe Economistで面白い記事があったので紹介。
ひと昔前のアメリカ映画に出てくるような核家族、会社員のパパと専業主婦のママに子どもが2人という家族のモデルが崩壊し、このような家族は全世帯の中で少数派になった、と言われて久しいですが、イギリスでもだいぶ前から崩れています。
離婚率は上昇し、婚外子の割合は5割にまで上昇、そして出生率は低下し続けていました、ごく最近までは。

ところが、数十年続いてきたこの傾向に歯止めがかかり、新しい家族のカタチ、それも以前の均質的な核家族の形とは違った3種類のモデルが見えてきた、という記事です(The Economist: The post-nuclear age)。
以前、『カリフォルニアを見よ』というエントリーで

世界を変えるような大きな時流(メタ・トレンド)ってまずアメリカのカリフォルニアで発生して、それがすごいスピードで打たれて叩かれてテストされて、こなれたり改善したりローカライズされて、世界の中でも時流が回ってくるのが早い場所から順にぐるーっと回ってくる

と書きましたが、技術のトレンドではなくDemographics(人口動態)であれば、世界の先進都市では同時的に同じような傾向が出てきます。 このThe Economistの記事はイギリスの家族の形の変化として書かれていますが、先進国はどこもこういう傾向が出てきているのでは、という点でとても面白かったです。
Continue reading


一家の大黒柱が無職になった – 3

今日が最終回。

こうして2011年夏に夫婦ともども無職になった私たち、生活は特に変えませんでした。 私が秋から通う予定だった『The Interior Design School』の学費をまだ払っていなかったので「入学を1年延ばそうか?」と夫に聞いてみたのですが、私のキャリアチェンジを心から応援してくれているので1年先にすることは大反対。 「夫婦で無職、子ども1人」から「無職+学生、子ども1人」になりました。

夏休みに予約していたクロアチア旅行もすでにフライト代と宿のデポジットを払い込み済みだから既にサンクコスト(→『サンクコスト』)。 「無職でロンドン」と「無職でクロアチア」だと出て行くお金は変わらなそうだし、後者の方が「明るい無職」って感じなので予定通りに旅行へ(→『アドリア海の休日』)。

夫は息子と過ごす時間が一気に増え、ママっ子だった息子がパパ大好きに戻りました。
Continue reading


グローバル上京物語

今年は次男が産まれてバタバタしている間にあっという間に師走になってしまいました。
みなさん、年末年始の帰省の計画はもう立てましたかー?

お盆と年末年始の恒例行事となった帰省ラッシュはいわずもがな、1960、70年代の高度成長期に地方から若年労働力が都会に流入、盆暮れに親元に帰省したことに端を発しています。 とはいえ、『ALWAYS三丁目の夕日』の世界も遠い昔、すでに代替わりして地方に帰省先がなくなり「帰省先は町田です」「所沢です」なんて人も増えていることでしょう。
今日のBGMはこれ(古い? 笑)

Continue reading


人生の駒がどんどん決まる幸せ

いつも鋭いことを書いてらっしゃる酒井穣さんのブログNED-WLTに、年末『縮小していく人生の恐怖から「自由」になるための、唯一の方法に関して。』という恐ろしい(笑)記事がありました(酒井さんには以前東京でお会いしたことがあります→『心地よい刺激のシャワー』)。

多くの人は、程度の差はあれ、入れる中学校に行き、入れる高校・大学に行き、入れる企業に行き、与えられた仕事をこなしていくという人生を送ることになります。 子供のころは可能性の大きさに圧倒された人生も、この流れにいるかぎり、いつしか、前にある仕事のなかに埋没していくのです。
自分が好きなことの世界でも、一度は夢見たプロをあきらめ、世界大会や全国大会をあきらめ、県大会ですらあきらめたりして、趣味としてのそれも、やはりこの流れにいるかぎり、いつしか自分がそれを好きだったことさえ忘れてしまったりもするでしょう。
「今の自分にできること」を、ただ現実的に選び取っていく限り、僕たちの人生は確実に縮小していきます。
(中略)
ただ「今の自分にできること」を積み重ねていても、可能性は時間の経過とともに減っていきます。 それはまるで、うずまきの中に浮かぶ木の葉のような人生です。30代も中ごろを過ぎたあたりから、大切に守ってきたはずの可能性も、明らかに目減りしてくるのが普通ではないでしょうか。

Continue reading


今までにもらった一番悲しいメール

親友から届いたメール、うちの次男と同時期に予定日だったけど3週間早く産まれた彼の赤ちゃんが、生後1ヵ月で病気で亡くなってしまいました(名前や病名は伏せています)。

A few weeks ago we were writing you about the birth of our little (名前). This is to share the sad news that after suffering from a (病名) about 3 weeks ago, she passed away (亡くなった日), peacefully and painlessly. While she had been very healthy until then, the extent of (病状) meant that she was never able to wake up. Before her passing, we were able to baptize her and say our good-byes, surrounded by close family.

Since the last weeks of (名前)’s life, when it was clear she was not going to make it, we have been able to reflect on all the love she brought to the world when she was with us. She will live on in our hearts, strengthen our bond, and inspire us to better things in the future.

We know of your support and are incredibly grateful for it.

Continue reading


クリエイターになりたい。

『今日は私の キス記念日』に書いたとおり、私の幸せ構成比はたぶんこんな感じ。

1. 家族 70%
2. 環境・プライベート 20%
3. 仕事 10%

夫がいるシンガポールに引っ越し子どもが生まれたことで1.を押さえ、ロンドンに引っ越したことで2.を押さえたので、3.の大幅てこ入れが必要でした。
キャリアチェンジは、「場所(Location)・業界(Industry)・職種(Function)の3つ全部を変えることは難しいが、1つか2つなら可能」という言い方をよくするのですが、いろいろなケースを見ていると、場所(Location)を変えるのが一番大変(特にアジア→ヨーロッパなど地域を超える場合、もちろん社内異動などは除く)、次に業界(Industry)、いったん業界または会社に入ってしまえばその中で職種(Function)チェンジすることは意外と簡単(『求職者の心構え』で書いたフェラーリにアルバイトで入って最後は戦略部門に移ったケースなど)。
なので、住みたい場所がある人はまずそっちを押さえるのはけっこう重要だと思います(住む場所よりやりたいことの方が重要って人はこの限りではない)。 日本人の海外就職に一番大きく立ちはだかるのはVISAだし。
話を戻して、去年の夏頃からちょこちょこと友人から依頼があった仕事をしていた私ですが、今年の初めからまじめに就職活動を開始しました。 就職活動は自分ができることと相手(雇用主)が求めることをマッチさせる作業なので、自分の経験(業界・地域・プロダクトetc.)やスキルをブロック化していきます。 ヨーロッパでの仕事経験がないので圧倒的に不利な上に、自分ができること(イメージは大きなブロックがけっこうたくさん、笑)から今いるマーケットで求められていないことを除いていくと、どんどんブロックが小さくなっちゃうんですよね、やったことある人はわかると思いますが。

Continue reading


今日は私の キス記念日

「マミー、バイ!」 手をふりながら 息子がチュー
今日は私の キス記念日

言うまでもなく、俵万智の「サラダ記念日」のパクリです、しかもかなり出来の悪い(字たらず)。
今日でちょうど1歳5ヵ月になる息子に、私は長いこと「ほっぺにチュー」を仕込もうとしていました。
顔を近づけても何度デモをしてもずっと顔をビシッバシッと叩くだけだったのに、今朝ついにこの日がやってきた。 ナーサリーに行こうと喜び勇んでベビーカーに乗った息子に「チューして」と言ったら、チュー!(ほっぺじゃなくて口だったが)
こんな日、私は天にも昇るような気分です(英語では”all over the moon”と言う、英語だと「天」じゃなくて「月」なんだね)。 夫とは(キスはおろか)結婚記念日すら忘れる私だけど(→『地図が読める女の絶対年感』)、8月15日、息子との初キス記念日は覚えられるかもしれない。
何でこんなことを書くかというと、イギリスが自分を見失っているらしいから。 国が自分を見失っているということは住む人が見失ってるんだよね。
The Economist : Anarchy in the UK
日本語訳→JB Press – 英国の暴動:自己像を見失った国
・・・ということで、今日は私が思う「自分を見失わない」方法について。
私は昔から、たぶん20代前半から、
1. 家族
2. 環境(住む場所 etc.)やプライベート(友人・趣味 etc.)
3. 仕事
の順で大事だと思っていたし、今でもそう思っています。

Continue reading


家族のQuantity time

だいぶ前に読んだ、グロービス堀さんのブログ「家族と過ごす時間の質と量(Quality time vs. Quantity time)」というエントリーで紹介されていた堀さんのオーストラリア人の友人(会社経営者であり3人の娘の父親)の言葉が最近身にしみます。

親子関係は、質の高い時間(クオリティータイム)が重要だと米国では良く言われているようだが、僕にはそうは思えない。 親が都合が良い時間に子供に向かって、『さあ、質の高い時間を短時間で過ごそう』、なんて言っても、 子供はついてこないものさ。
子供は両親と一緒に長く過ごしたいと思っているんだよ。 その長い時間を過ごすなかで、ふとした瞬間に心が通い合う会話があったり、悩みを打ち明けたりする、質の高い時間が来るのである。

私の息子(現在15カ月)はフルタイムでナーサリーに行っています。
朝6:00からナーサリーに出発する8:00までの2時間は家族3人で朝ご飯を食べ、バタバタと出かける支度をする時間。 夕方5:45のナーサリーのお迎え時間から7:45のベッドタイムまでの2時間は、私と息子2人だけの時間です。
夕方の2時間の間に息子に晩ご飯を食べさせお風呂にも入れるのですが、彼は早食い&からすの行水なので、うち1時間半は絵本を読んだり歌を歌ったり100%息子と向き合います。 家事はすべて後回し、「〜しながら」はNG、「ママはボクだけを見ている」唯一の時間。
息子にとっては長い1日の終わり、疲れている時間帯なので機嫌がいいときばかりではありませんが、ものすごい速さで成長する様子を脳裏に焼き付けようとする私にとって宝石のような瞬間はだいたいこの2人の時間中に訪れます。

Continue reading