Category Archives: IT・テクノロジー

これからのモノづくりに必要な思考法を学ぶ授業

なにこれ? 私がこの授業受けたい。

というのが、まず頭に浮かんできた偽らざる感想でした。
次に、浮かんできたのが、

私が授業受けられないなら、子どもに受けさせたい。

こんな授業の選択肢がある東工大の学生が羨ましかったし、こんな教育を受けた若い世代が社会に出て何をつくるのかが本当に楽しみになりました。

『エンジニアのためのデザイン思考入門』で知った東京工業大学の「エンジニアリングデザインプロジェクト(以下、EDP)」という名のプロジェクト型学習の話です(Kindle版はこちら)。 共著者の坂本啓氏(東工大准教授)は高校時代の同級生(献本御礼)。 「エンジニアのための〜」という題が付いているのでエンジニアではない私はすぐ食指が動かなかったのですが、読むのにエンジニアである必要は全くありません。 むしろ営業でも企画でも生産管理でもデザイナーでも職種を問わず「モノが売れなくなったと言われている時代のモノづくり」に少しでも思いを馳せたことがある人は楽しく読めて、仕事に使えるヒントが得られるのではないかと思います。
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Google翻訳イヤホンが示す二極化する未来

前回の続き。

翻訳イヤホンが出てくる数日前の話です。 きっかけは長男と次男が通う小学校の放課後に行われているクラブの中でスペイン語のクラブが最小催行人数である8人が集まらずキャンセルになったという話。
補足説明をすると、公立小学校ですが放課後のクラブは有料、希望者のみ、定員あり(日本と異なり先生のボランティアではない)。 日本の部活のようにひとつの部に所属するのではなく、それぞれのクラブが決まった曜日・時間に週1回で開催され、毎日さまざまなクラブの選択肢があります。 学校の先生が率いるクラブもあれば外部の習い事業者が学校の敷地内で開催するクラブもあり、部活より習い事に近いイメージ。 学校の敷地内でやってくれるので便利とは言え、決して安くはないので、いくつクラブをやらせるかは家庭によってまちまち。 最小催行人数が集まらなければキャンセルになることもよくあります。

子どものためにスペイン語のクラブを申し込んでいたのに未催行になったギリシャ人のママ友が「イギリス人は他の言語を学ぶのに興味がない」とぷりぷり怒っていた話を夫にしたところでした。 すると夫が「小学校で第二言語が必修じゃないなんておかしい」と熱弁をふるい始めたのです。
夫:「何でオランダ人やスウェーデン人が英語ができると思う? 彼らが特別に賢いからじゃない、小学校で英語が必修だからだ。」
私:「いやー、だってこれからの世界で英語はできなきゃだめでしょ。 でもこの国では英語は母語じゃん。」
夫:「それは外国語を学ぼうとしないイギリス人と同じ言い訳だ。 Brexitが何で起こったと思う? 英語を話せない=自分とは異なるよそ者だ、と思うような人たちが離脱に投票したんだ。」
私:「・・・・・」
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Google翻訳イヤホンが投げかける答えのない問い

先日、Googleが自動翻訳機として使えるイヤホンの販売を発表しました(→‘言語40種、一瞬翻訳イヤホン登場!グーグルから’)。
Googleの機械翻訳がブラウザChromeに実装されたり、日常生活に(Appleの)Siriやら(Amazonの)Alexaが入って御用聞きをしてくれるようなってから数年、こういう方向に世界は進むんだろうな、と思ってはいましたが、想定していたより製品化が速くてビックリ。 来るとわかっていた未来が近づくスピードが速くなっている気がします、自分が年を取っただけかもしませんが・・・

ここ数年の間ずっと悩んできた、でも答えのない問いがまた大きく膨らみ始めました。
それは「我が子にどこまで日本語をやらせるべきか」という問い。

このブログの中でシリーズ化するつもりだったのに、シリーズ化できなかったトピックに「バイリンガルの頭の中」シリーズというのがあります。 長男が2歳8ヵ月の時に書いたこの記事が最初で最後です。 その理由は家庭では二言語(母と日本語、父と英語)、家庭外では一言語(英語)という我が家の子どもたちの環境では完全なバイリンガルは無理だと早々に悟ったからです。 英語と言語的に近いヨーロッパ言語ならいざ知らず、日本語と英語のバイリンガル(会話及び読み書きともに母語並みに操れるレベル)は『日英バイリンガルへの道』で書いたように、私は家庭で日本語(両親ともに日本人で家庭内言語は日本語)、家庭外で英語(初等教育後半から中等教育を英語の現地学校で受けた)と完全に分かれていたケースしか知りません。 そのケースでも日本語のレベルを保ち伸ばすために土曜に日本語補習校に通うなど親子とも並々ならぬ努力をされています。 我が家の子どもたちのように英語のボリュームが圧倒的に多い環境において漢字の使いこなし(新聞が読め、仕事で使える文章が書けるレベル)まで求めるのは、親の努力だけではほぼ無理でしょうし、子どもにとっても親にとっても、それが望ましい時間とエネルギーの使い方なのかは疑問です。

そこで『日英バイリンガルへの道』に書いたように、日本語学習において、「なぜ(WHY)」と「どのレベルまで(WHAT)」が重要になってくるのです。
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ロンドンにギグ・エコノミー到来

アメリカで「ギグ・エコノミー」という言葉が現れてしばらく経ちます。 以前、『カリフォルニアを見よ。』というエントリーで

世界を変えるような大きな時流(メタ・トレンド)ってまずアメリカのカリフォルニアで発生して、それがすごいスピードで打たれて叩かれてテストされて、こなれたり改善したりローカライズされて、世界の中でも時流が回ってくるのが早い場所から順にぐるーっと回ってきて、気がついたらいつの間にやら世界の様相が変わってる

と書きましたが、英語圏の大都市で人口が若く、アーリーアダプターも多いロンドンにはトレンドはすぐ回ってきます。 シリコンバレーから本家が上陸することもあれば、ロンドンで生まれたコピーキャットが先攻することも。

ギグ・エコノミーというのはミュージシャンが「一夜限りのライブ」をするように労働者が「単発の仕事(タスク)」を請け負うことで成り立つ経済のこと。 新しい現象ではありません。 ダニエル・ピンクが『フリーエージェント社会の到来』を書いたのはもう13年も前ですが(私がブログに書いたのは7年前→『MBA同級生に見る「フリーエージェント社会の到来」』)、労働者のフリーランス化の更なる進行、仕事のタクス化、先進国におけるミドル・スキルジョブの後進国(及び機械・コンピューター)への流出、テクノロジーの進展(特にモバイルのアプリ)により人々が課題の即時解決を求めるようになったこと、など全てつながった結果です。
参照:『未来に備える本』というエントリーで過去の「新しい働き方」関係のエントリーを集めています。
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ほとんど問題にされない富の話

少し前のThe Economistのテクノロジーと世界経済の特集がバツグンによかったです。
ニュースは昔はいろいろ読んでいましたが、子どもが産まれてからは時間がないのでThe Economist以外は読まないようにしています。 重要なことをわかりやすくまとめる編集力と事象に対する分析力が数ある競合他誌の追従を許さない気がします(6年前のエントリーですが→『The Economistを読もう!』)。 週1回というところもよい、それでも追いつけず常に2、3週前のを読んでいる現状です。 とてもよかったので下記()内に特集記事のリンクを貼っておきます(購読が必要)。
この特集では、
– アルビン・トフラーが『第三の波』と呼んだデジタル革命が世界的に労働市場に与えている影響(→『The third great wave』
– 情報テクノロジーがもたらした生産性の向上が実質賃金の上昇につながっていない現実(→『Productivity – Technology isn’t working』
– 先進国ではミドルスキルの仕事がなくなり高スキルの一部に恩恵が集中していること(→『The privileged few – To those that have shall be given』
– 最も魅力的なグローバル都市では住宅価格の高騰がその成長を阻害していること(→『Home economics』
– 日本・韓国をはじめ最近では中国が果たした、工業化による発展途上国からの脱皮・成長モデルが崩れてきたこと(→『Emerging economies – Arrested development』
– 世界のどこにいてもグローバル市場や世界最高峰の教育にアクセスできるようになったこと(→『New opportunities – Silver lining』
– 変化する世界に対応できず労働市場とミスマッチを起こしている人材をマッチさせる政策(→『Means and ends』
まで包括的にカバーしていて必読。
『Home economics』の記事なんか前回書いた『都市は人類最高の発明である』の主張そのままで、最近気になっていた金融危機後の世界経済をビシーっとまとめている力作でした。

日本の経済系オンライン記事を眺めていると、「グローバル人材にならなければ、急速に変化する世界に対応できない」というような「自己研鑽を積んで一生懸命働いたら見返りがくる」という夢を売る(逆に「できなければ仕事がなくなる」という脅しをかける)論調が多いような気がします。 ところが最近起きていることは「働けど働けどラクにならず」という現象です。
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完全ローテク育児 – 2

昨日の続き。
長男を観察してる限り、テレビ・iPhone・iPadのアプリなどは益より害の方が大きいように思えた、という話。
このあたりは本当にさまざまな諸説が出ていて、新しいテクノロジーなど経年観察を基にした学術論文が出ていないので今子育て真っ最中の親は試行錯誤です。 早くきちんとした研究結果が出てほしいものです。

テレビはよく言われることですが、受動的なメディアなので本人の能動的な働きかけが必要ない、派手な色や効果音を使い小さな子には刺激が強すぎる(味覚と一緒で小さな頃から刺激の強いものを与えていると、普通の味では我慢できなくなる)、商業メディアなのでキャラクター商品やらお菓子やら、物を欲しがるようになる、ジェンダーなどステレオタイプの刷り込みが激しい(6歳の女の子が「やせたい」という言うようになる、など)、あたりでしょうか。
正直、ほとんどメリットが見当たりません。 良質なドキュメンタリーなどもあるので、年齢に応じたDVDでいいと思います(DVDについては後で)。
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完全ローテク育児 – 1

今週、長男が4歳になります。
たいして立派な育児方針などなくやってきましたが、ひとつだけ何度も易きに流れそうになりながら貫き通してきたことがあります。 それは我が家では、子どもが一緒にいる時間は液晶画面を搭載したテクノロジー(テレビ・DVD・パソコン・iPhone・iPadなどすべて)を一切禁止しているということ(例外がひとつだけあるので、後ほど)。 テレビはもともとないし、iPadは子どものおもちゃになるのが目に見えているので買わず、パソコンとiPhoneは私と夫は子どもと一緒にいる間は使用禁止。

きっかけは長男が1歳半のときに起こった『iPhone中毒症』の事件でしたが、長男の行動を観察しながら見直した結果、すべて禁止にしました。
特に、雨の週末や兄弟喧嘩がひどいときなど「どれだけテレビやiPhone見せれればラクか」と何度も思いましたが、今ではないのが当たり前の生活になっているので、頑張った甲斐があったのかなーと思っています。 次の山場は長男が小学校に入り、友達が見ているテレビ番組が見られないことを文句言うときでしょうか(笑)。

完全禁止の理由は2つ。
① 子どもと一緒にいられる時間は限られているので、テレビなど中毒性が高いメディアを見せている時間がもったいないこと
② 子どもを観察した限り益より害の方が遥かに大きそうであること
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Interrupting Interruption

遅ればせながら、あけましておめでとうございます。
年末年始は10日間、家族で南ポルトガルに休暇で行ってきました。

子どもがまだ5ヵ月と2歳9ヵ月なので「普段の週末でも疲れるのに10日間もどうするんだ?」と行く前は不安でしたが、10日間行ってよかったです。 次男が産まれて以来初めてリラックスすることができました。

以前、英テレグラフ紙の記事で「イギリス人はホリデーに出かけて4日目にようやく仕事からスイッチオフして日々のストレスを癒すことができる。 1週間の休暇だと2, 3日しかリラックスすることができない」とありました(→The Telegraph : Week long break gives just three days rest because it takes four days to switch off)。 まさにその通り、10日間同じ場所で過ごして(子どもと一緒だと移動がとにかく疲れるので)、ようやく心からリラックスすることができました。

我が家では、休暇中に仕事をすることはもちろんのこと、メール・インターネット・携帯・テレビ一切禁止です。 携帯電話は基本的にオフ(休暇中の目的以外では使用しない)。 ニュースも見ないので、世界で何が起きているかも知らない。 一緒に休暇を過ごしている目の前にいる相手と、その場・その瞬間の時間を楽しむことから気を逸らすことは必要ないという考え。
私が20代でバックパッカーだった頃(→『バックパッカー時代も悪くない』)は、旅に出た瞬間から日常からスイッチオフすることは簡単だったのですが、最近の敵はスマホ。 休暇だけではなく趣味でも仕事でも、何かをしながら数十分おきにスマホをいじる生活では、目の前の仕事・人に100%向き合っておらず、クオリティの高い仕事やクオリティの高い時間にはならないとつくづく思います(関連エントリー:『Zappingする世代』)。
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i-modeはなぜ海外展開に失敗したのか

以前『ルール作り上手なフランス – 2』

私は野村総研が「日本のガラパゴス化現象の例」としてあげた4つの分野(携帯電話・非接触ICカード・建設業・デジタル放送)、2つも海外進出を現場でやったことがある(4つのうち2つ経験した人はなかなかいないと思う)

と書いてそのひとつが非接触ICカード(FeliCa)であったことはこちらに書きましたが、もうひとつがi-modeです、2004 – 2005年頃の話。
孫さんが日経ビジネスオンラインのインタビュー

いわゆるiモードというのはインターネットじゃないんですよ。 一般のインターネットがさくさくとブラウジングできるようなものでなく、囲い込まれた特殊な画面サイズの特殊なアプリの世界です。

と答えたのに対し、夏野さんがTwitter上で悲しむ

インターネット業界からドコモに行き、さんざん苦労して世界でも例のないインターネット型携帯サービスを立ち上げたのに、尊敬する方から否定発言されると言うのは本当に悲しい。 少なくとも2000年代前半にiPhoneは作れなかった。 GoogleもAppleもさんざん日本を研究して作った。

という事件がありました。

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Google幹部の子どもが通う学校

シリコンバレーにeBayのCTOやGoogle、Apple、Yahoo、HP etc. テクノロジー企業の社員の子どもが通う私立小学校があります。
さぞかし最新鋭のコンピューターが揃っているのでは?と思いきや、この小学校では授業中にコンピューターを使うことは皆無、家での使用も控えるように指導されています。 使う道具は先生は黒板にチョーク、生徒は鉛筆とペン。 毛糸を使って編み物をすることもあれば、割り算の授業ではりんごやケーキをナイフで1/2・1/4・1/8・・・と切り分ける。
全米の学校が授業にコンピューターを導入する中で時代に逆らうかのような、Waldorf School of the Peninsulaという私立学校(全米に160校ある)の話がThe New York Timesに載っていました。
NY Times : A Silicon Valley School That Doesn’t Compute
テクノロジーの可能性や利点を知リ尽くしてるトップ0.1%に属するであろう人たちが、あえて自分の子どもには使用を禁止するには次の理由があります(私が『iPhone中毒症』で書いたように息子にiPhoneを一切見せないようにした理由でもある。  また我が家にはテレビはありません)。

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