『世界級〜のつくり方』の終わり方 – 1

2008年6月1日の初回記事(こちら)から11年目の今年、これが843件目の記事になります。 長く続けてきたこのブログを終わりにしようと思っています。 ここ数年の間、どうやって終わりにしようか考えてきました。 2008年6月というのは、私が日本を出てシンガポールに移住した時です。 当時は結婚したばかり、それまで留学や海外出張は数え切れないほどありましたが、日本に戻るという将来計画がないまま、海を渡ったのはその時が初めてでした。

初回の記事を読むと、

「世界級ライフスタイル」を志向する人々が情報共有し切瑳琢磨するコミュニティとする
まだまだ“世界級”発展途上な私が、理想のライフスタイルを実現するための知識、スキル向上を計ることを目的とする

とあります。 今、読み返すと小っ恥ずかしいことこの上ありませんが、このブログを通して沢山の出会いがありました。 今でも日本に一時帰国した時に会う友人たち、他の国にいるのでなかなか会えないけどFacebookで「元気でやってるな」と確認し合える友人たちの多くに恵まれました。 特に最初の3年ほど、キャリアで悩みキャリアチェンジを決める頃まではブログを書くことによって精神的にも支えられていたセラピーのような存在だったと思います。

近年、更新頻度が圧倒的に落ちていたので「もうなくなるんだろうな」と思っていた方も多いと思いますが、私にとってとても大事な場所だったブログをやめることにした理由には1) 外部環境の変化、2) 私自身の内的な変化、があるので興味のある方はお付き合いください。 最後に、今後の活動(?)についてもご報告します。

1) 外部環境の変化
私はブログを始める時に自分といろいろな約束事をしたのですが、そのうちのひとつが広告やアフィリエイトは入れないこと、でした。 ブログを通してあくまで私は少数の志向を同じくする人を見つける、長く友人として付き合える人を見つけることを目的としていたので、極力、読者を対象にマネタイズするようなことをしたくなかったためです。 そのため、プラットフォームも広告が入らないMovable Typeを選びました(後にWordpressに移行)。

私のブログ歴は2003年のMBA留学ブログに遡るのですが、初期のブログは、好きなブログを見つけ、 コメントをし、自分のブログにも「遊びにきて」もらうというコミュニケーションの仕方でした。 好きなブログに引用されている他ブログやサイドバーのお気に入りブログリストからいろいろなブログを訪問して、好きなブロガーを増やしていくのが一般的でした(ブログランキングというのもありましたね)。

私の初期の記事を見てもたくさんのコメントがついていて、そのコメントから真面目な議論が生まれたりしていました。 記事を書くたびにダイレクトな手応えがあってコメントが付くのが楽しみでした。 このブログは一応「海外ブログ」的な位置付けだったと思うのですが、発信しなければ出会うことのなかった人たちと沢山の出会いがありました。 日本にいた頃、自分と似たような考え方をする人は周りにいなかったので、沢山の同志との出会いをもたらしてくれたブログと読者の方々にとても感謝しています。

ここ10年の間にインターネットは劇的に変わりました。 流通するコンテンツの量が爆発的に増え、ソーシャルメディアでのシェア、もしくはキュレーションメディア上で読む方法が主流となりました。 記事上でのダイレクトなコメントは減り、読者がクローズドな自分のネットワークだけにシェアするようになりました。 積極的にエゴサーチしている人はそれでも記事の反応を探る方法を知って日々、努力されていたのだと思いますが、ブログから何の収入も得ておらず、子供が生まれて以降、ブログにかける時間もエネルギーもない私にとって、読者とのダイレクトなコミュニケーションが一気に減りました。
それでもブログの存在を知っていて更新のたびにわざわざ読みにきてくださる読者はありがたかったのですが、ハフポストやスマートメディアなどでひとつの記事だけが他の多くの記事に混じって切り売りされるようになると(一銭ももらっていませんが)、前後のコンテクストも私のバックグラウンドも全く知らない人から心ない言葉を投げつけられることも増えました。

また「スマホ対応できていない」と数年前に指摘されながらも、ちっとも改善できていなかったのですが、もともとブログでマネタイズする選択をしなかった私は、テクノロジーの進歩に合わせてプラットフォームを替えていけるような資金源もないのです。 次に書くように私自身の変化もあり、その意欲もなかったのですが。

どんどんテクノロジーが移り変わる現在、人とつながるプラットフォームとしては、Twitter、InstagramはもとよりYouTube、noteなどそれはそれは沢山あります。 でもコンテンツクリエイションはかなりマネタイズを考えないと昔のように好きなことを書いてシェアすれば志向の合う人が自然と寄ってきてつながる、という時代ではなくなりました。

ここまで書くと誤解が生まれるような気がしますが、「時代についていけなくなったから止めた」のではなく(それだけなら時代に合う形でプラトフォームを変えて続けていたはず)、私がブログに求めていた目的が目的でなくなったことが一番の理由です。
次回は、外部環境の変化よりもっと大きな私自身の変化についてです。それから今後についても、報告があります!


8 responses to “『世界級〜のつくり方』の終わり方 – 1

  • tbelle

    初めてコメントさせて頂きます。数ヶ月前にこのblogに偶然にも出会い、共感できるところが幾つもあり、心を揺さぶられる記事が多く、隙間時間を見つけては拝読させて頂きました。現在20代後半(女)でYokoさんのキャリアと同様総合商社に勤務しており海外駐在中です。丁度自分の進むべき道に迷っていた時期にこのblogに出会い、もっと早く、出来るなら就活前に出会いたかったと思ったくらいです。このblogもきっかけとなりこれまで頭、心にはあったけれど封印していた迷い、やりたいこと、生き方等を深く考える機会となり、大変感謝しております。”どうせ痛い思いをするなら早めにしよう”というのは全くその通りです。会社にいると多種多様な生き方、考え方があるなと思いますし、海外に出て一歩引いてみて、自分は自分の進みたいように進むべきだと再認識するようになりました。自分の話ばかりになってしまい恐縮ですが、Blogを辞めてしまうこと、残念ですが今後の更なるご活躍、心からお祈りしております。

    • la dolce vita

      ありがとうございます。

      >”どうせ痛い思いをするなら早めにしよう”というのは全くその通りです。

      10秒で消費されていくコンテンツが氾濫する中、そんな古い記事が今でも読まれているなんて光栄です。
      いったん外に出てみるのはいいことですよね。

      ブログの更新はいったん終わりにしますが、私は生きてますので、どこかにまた書くと思います。ありがとうございます。

  • kitori2525

    初めてのコメントになります。数年前にこのブログを知り更新を楽しみにしていました。イギリスのEU離脱や伊藤しおりさんの記事など胸に深く突き刺さる内容が多く勉強させていただいていました。ブログが終わってしまうのは本当に残念です。と同時に今までたくさんの素敵な考えや物の見方を共有して下さりありがとうございました。

  • しん

    ご無沙汰しております。いつも新しい気づきや思いの再確認、また私の好奇心を満たしてくれるブログで楽しみに読ませて頂き、時には何かする時の「後押し」をしてもらっていました。中でも「コスパで人生を測るな。」はグサっときました。初めてこのブログに出会ってから10年くらい、オフ会も東京で一度参加させて頂き、Yokoさんだけでなく、読者の方々ともお会いすることが出来、とても楽しい時間を過ごさせて頂きました。ブログを辞められるのは残念ですが、外部環境や内部環境が変わるこのご時世にブログを10年も継続されたのは本当にすごいことだと思います。今まで本当にありがとうございました。次のステージを楽しんでくださいませ(^^)またどこかでお会いできる時、楽しみにしています。

    • la dolce vita

      しんさん、本当にお久しぶりです。
      こんなに長い期間、読んで頂いて本当に光栄です。 私の書いたひとつの記事が誰かの背中を押せたなら、(人生ならぬ)このブログ生の本望です。

      こちらこそ、またお会いできる日を楽しみにしています!

  • Hitori

    初めまして、コメントさせて頂きます。
    定期的に読ませて頂いて大変参考にさせて頂きました。
    私もMBAに留学をしておりMBA後のキャリアをどうするか、また人生の各ステージでの人生の選択で大変参考にさせて頂きました。
    ブログのINSEADの同級生がコーヒーショップを起業された話を参考にして、日本に帰って典型的なMBAのキャリアを選ぶより、自分の働きたい場所と仕事を優先することにし、海外に残って働く道を選び、現在、ロンドンで働いております。
    子供が生まれて、今後の働き方を変えようかと思った時も、INSEADの同窓会での同級生の方々がステージによりキャリアを変えていった話も参考になり、私もそういう風に丁度キャリアや働き方を変え始めておりました。

    ブログでシェアして頂いたことが、丁度、私の人生の一歩手前を歩かれており、悩むことや考えることが近く、大変参考になっていたので、誠に残念ですが今までありがとうございました。

    昔はミートアップをされていたのを拝見しており、機会があったら参加したいと考えておりましたが残念です。
    またロンドン在住なので機会があれば、お目に掛かれればと思います。

    • la dolce vita

      ありがとうございます。
      Nickの話ですね。 あの後、Harris+HooleはマジョリティーオーナーのTESCOが抜けてしまい、NickはTaylor St Baristasに戻っています。間近で見ていて、とてもインスピレーショナルだったので、そのストーリーが伝わってとても嬉しいです。

      >昔はミートアップをされていたのを拝見しており、機会があったら参加したいと考えておりましたが残念です。
      子どもがほんのちょっとラクになったこともあり、また何かするかもしれないのでメールください。 何かする時はお声がけします。

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