「ハレ」と「ケ」の建築 – 2

前回の続きです。
イギリスには都市計画法の一環で景観保護のために厳しい法規制があります。 このうち一般住宅に関連するのは①登録建造物(Listed Building)制度と②保全地区(Conservation Area)です。

①登録建造物の選択基準は、1. オリジナルな状態を保っている1700年以前の全ての建造物、2. 1700年から1840年の間に建てられた大半の建造物、3. 1840年以降に建てられた建造物は個別の歴史的な価値、社会的な利益、都市景観などを鑑み個別に判断、となっています(参照:Historic England)。
ただ、登録建造物制度はリストに登録されなければ保存対象にならないため、登録建造物と非登録建造物が混在している場合に、たとえ登録建造物が保存されても地区としての景観が損なわれるという不都合が生じるようになりました。 都市の景観保存には個別の建築物(点)だけではなく地区(面)の保存が求められるようになって生まれたのが②保全地区(Conservation Area)制度です。
②保全地区は地方自治体によって定められ、歴史的な市街地や漁村・鉱業村、18・19世紀に建設された郊外などです。

また、例え登録建造物や保存地区制度の対象でなくても建築物の外観の変更には自治体の許可が必要です。
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「ハレ」と「ケ」の建築 – 1

前回に続いて建築の話。
ヨーロッパに住んでいて日本に帰国した時にまず初めにショックを受けるのは、街並みの汚さです。 成田から東京都心に向かう途中や関空から大阪市内に向かう途中の車窓から見える住宅街の街並み ー 建物に全く統一感がなく隙間なく電線が張り巡らされ、ケバケバしい巨大看板やネオンで溢れる街並み ー を見ながら「これが本当に世界中のデザイナーが憧れる日本かー」(注1)とギャップに愕然とします。
注1・・・以前、IDEOロンドン事務所のデザイナーと話した時に「デザイナーはみんな日本に行きたがるよね」と言われたことがあります。

京都の伏見稲荷の鳥居や嵯峨野の竹林の道、桂離宮や龍安寺の石庭など日本のイメージを代表する美しいシンプリシティ(注2)と、雑然とした街並みのギャップが、日本はヨーロッパに比べて大きすぎるように思います。 人間の脳は「見たいものしか見ない」ようにできているらしいですが、日本に長年住むと眼孔を開いていても目の前の煩雑さには何も感じずに素通りできる特殊能力(一種の麻痺状態)が身に付くのでしょうか。 日本を離れてしばらくするとこの特殊能力が鈍ってくるところが不思議です。
注2・・・外国人から見るとこういうイメージ→“Our Japan from Marc Ambuehl”“In Japan from Vincent Urban”

日本の景観があまりにも配慮なく醜悪化している件はアレックス・カー氏の『ニッポン景観論』に詳しいです。 本のエッセンスは日経ビジネスオンラインのコラム『これでいいの?日本の景観』でも読めます。
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世界に広がるオープン・ハウス

今年もOpen House Londonを皮切りにロンドン・デザイン・フェスティバル(LDF)が始まりました(→LDFのオフィシャルサイト)。 デザイン・フェスティバルについては以前『ロンドンのデザイン・エコシステム』というエントリーで紹介していますが、9月に市内各所で行われるデザインの祭典です。 著名デザイナーによる実験的なアートの巨大インスタレーション、各種展示会(*1)は恒例ですが、近年ではデザインディストリクト(*2)と呼ばれるデザインオフィスや工房が数多く集まる地区がオフィスやショップを一般に開放しストリートパーティーを催したりしています。
*1・・・コンテンポラリーであればDesign Junction100% design、ラグジュアリー・インテリアのDecorex、若手デザイナーのお披露目場であるTentなど。
*2・・・今年はBanksideBromptonClerkenwellChelseaIslingtonShoreditchQueens Parkの7地区が参加。
近年、国外からの訪問者が増えているようで、観光客の利便性を重視してか密な日程で行うようになったので、毎年消化不良を起こしてしまいます。

そのデザインの祭典の幕開けは我が家はいつもOpen House Londonです。 正確にはLDFのイベントではないのですが、いつもフェスティバル初日の週末2日間に開催されるOpen House、あまりにも素晴らしいコンセプトなので、以前も紹介しています(→『現代建築の都ロンドン』『廃墟に2万人が並んだ日』)。

建築を理解する最良の方法は体験すること

というコンセプトのもと、普段は一般公開されていないロンドン中の800近くの建築物が一般に無料公開されるのです。 その中身の幅広いことと言ったら・・・
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誰もあなたを見ていなかった

長い不妊治療を経て先月男の子を産み、新生児と毎日格闘しているアメリカに住む友人に送ったら「泣いた」という返事が返ってきたのをこちらに紹介します。
イギリスのママ向け掲示板Mumsnetのブロガー・オブ・ザ・イヤー候補になっている記事“Like Real Life: Nobody saw you”。 日本語に訳するに当たって絵本やテレビ番組の名前など日本風に脚色しているので、原文で読みたい方はこちら
Let’s get pissed together, shall we?

誰もあなたを見ていなかった
誰もね

朝の3時に
子どもたちがまた起きたとき。

誰も見ていなかった
床に落ちた豆を拾って
机についた汚れを拭いて
洗濯かごを片付けて
ゴミ出ししたところを

何度も
そして何度も。

誰もトーストの屑を見ていなかった
夜着替えようとあなたがブラを外した時に落ちてきた屑を
何て素敵な生活

ママになって

鼻を拭いて
顔を洗って
自分を落ち着かせる。

(くそったれ)

誰も見ていなかった
もうプリンセス・忍者・海賊・キャラクターになるのに飽き飽きしているのに
あなたが「わかった、
あと5分だけ
もう1回だけ
もう1つだけ
もう1ゲームだけ」

それからまた同じことを10分後に言ったところを。

誰もあなたを見ていなかった
抱っこから降りたがらず
かといってベビーカーにも入りたがらず
歩きたがるけど逆の方向に歩きたがる幼児を抱えているあなたを
「わあ、見て!
あの棒 / 落ちてる飴 / 犬のうんこ / 小石 / タバコの吸い殻 / 空!」

誰も夜中に汚物用バケツを抱えているあなたを見ていなかった
小学校からの帰り道
誰もあなたが上着と、
ランドセル、体操着の袋、帽子、
キックボード、赤ちゃん、半分かじったりんごと
朝食シリアル箱3つをセロテープでつけて
光る糊で塗りたくった工作を抱えているところを

おやすみの前に小さくて柔らかい手を握っているところを
蹴りとばして叫び続ける小さな体を抱えているところを

全部抱えて
しがみついて

お腹を空かせた小さな頭を
コンクリートのように固くなったおっぱいに当てた
あの日々を
あのカオスを

誰もあなたを見ていなかった、あなたが糸を巻いて
巻いて、また巻いて
引いて、また引いて
とんとん、して
大きな靴や
小さな靴や
中くらいの靴をつくったところを。

誰もあなたを見ていなかった、雨が降り続いた日に
子ども達の具合が悪くて
3日連続で家から出なかったあなたを

誰も見ていなかった。

誰もあなたを見ていなかった、あなたが「アンパンマン」のDVDを何度見たか
外出しなかった3日で
何度、「みにくいあひるの子」がどうなったか読んだか
ぐりとぐらが何をつくったのか
あの森で

誰も車の中のあなたを見ていなかった
保育園の初日、赤ちゃんを車で送った後
自分に約束したのに
家までの帰り道ずっと
ずっと泣いていたこと。

誰もあなたを見ていなかった、お腹が空いていても
何かを与えて
何かをつくって
ゲームを考えて
小さな顔に向かって「ごめんね、
ママ怒って」って言ったこと。

私、あなたに最近会ってないね
あまり長い間しゃべってもいないよね
でも、あなたが時々SNSにあげる
あなたの子どもの可愛い写真見てるよ

だからあなたに会ってるみたいな気分になる

子どもの写真の向こう側に見えるママ
赤ちゃんの向こう側
膨らんだお腹
カメラに向かって微笑む子どもたち

私には見えるよ、お尻拭きもオムツもゲームも歌も
私には見えるよ、鼻水もウンコも癇癪もキスも
私には見えるよ、あなたが小さな腕を
小さなカーディガンに通しているところが
小さな小さな歯を磨いているところが
(顔を蹴られながらね)

誰もあなたがやるすべてのことを見ていない
あなたのやり方を見ていない
そして、こんな質問をするの
「で、いつ仕事復帰するの?」
そして、あなたはこの世で一番大変な仕事のひとつが
ただ家でぶらぶらしていることに矮小化されたような気分になる

誰もあなたのことを見ていなくても
でもあなたは確かに何かを築いているの
決して壊されることのない
引き裂かれることのない愛を

つまらない時もあるし
最悪な時もあるし
でもこれ以上ないくらいに幸せな時もある

誰もあなたがどれくらい与えたか見ていなかった
毎日
毎晩
毎朝5時
毎夕5時
すべての瞬間に。

私あなたに言ったことあったっけ?
私、あなたのこと
素晴らしいママだと思うよ。

近いうちに一緒に飲み明かさない?

類似エントリー:
『Before I was a Mum』
『讃えられないママたちへの賛歌』
『三遊間守ります、スコアもつけます。- 1』
『三遊間守ります、スコアもつけます。- 2』


安倍マリオが拓いた新境地

もうたくさん記事も出ていますが、素晴らしかったですね、リオ五輪の閉会式でのTOKYO2020プロモーション。
安倍マリオにすっかり持っていかれた感はありますが、映像・音楽・ダンス・グラフィックスの融合で「未来都市 TOKYO」感が溢れ出ていて素晴らしかったです、Teaser(予告編)としては最高レベル、海外メディアでも総じて「2020年東京オリンピックに期待が持てる」とポジティブな評価だったようです。
ドラえもん・キティちゃんを初め、うちの2歳でも知ってる世界的知名度のキャラクターのオンパレードで「そうそう、これが見たかったんだよ」と、もげるくらい首を振ってしまいました。 あの後、「ポケモンがいない」、「ゴジラは?」などネット上が大いに賑わいましたが、本番に何が出てくるか興味を掻き立てるのがTeaserですからね、大成功だったと思います。

さて、話題をさらった安倍マリオですが、真面目を国是とする一国の現役首相にこの役をやらせるシナリオを書いたプロデューサー陣、稟議(?)を通した事務方、振り付けの指示に首を縦に振った安倍首相も皆素晴らしいと思います。 BBCの中継ではアナウンサーが一瞬絶句した後、「派手なパフォーマンスで知られている訳ではない首相がマリオになって登場しました」というようなコメントをしていました(←記憶あやふやですが)。 

国のトップが自らを笑いのネタにするというのは高度なテクですが、コミュニケーション効果はバツグンです。 人間味を感じさせるし、話題性があってPR効果は大。

今年に入ってからアメリカのオバマ大統領もイギリスのキャメロン首相もやっているので紹介します。
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田舎にヨーロッパ旅行客を呼び込もう

一時帰国した関西では連日36℃の猛暑にもかかわらず、大阪も奈良も京都も外国人観光客で溢れていました。 東大寺や大阪城など9割くらい外国人(中華系)だったのではないでしょうか? 私はインバウンドツーリズムが本格的に飛躍する前にシンガポールに移ったので「おお、これが噂の”爆買い”ツーリストかー」と興味深く眺めていました。

そして、前回書いた祖谷にも大勢の個人旅行の外国人ツーリストがいました。 ワンマン一両列車の土讃線にも乗客は私たち以外にひと組欧米人カップルがいたし、宿泊したゲストハウス モモンガビレッジでは私たち以外は外国人ゲストという日が多かったです。 以前からこのブログで「日本の田舎のコンテンツの魅力は世界的にもすごい」と熱く語っていた私ですが(*1)、「ついに四国の山奥にも来るようになったかー」と感慨を覚えました。 もちろんこのブログとは何の関係もないと思いますが。
*1・・・参照:『日本の田舎の魅力を世界に – 1』『- 2』『住むように旅する京都』

ところで、私たちは訪日観光の市場セグメント的には「海外で子どもを育てる在外日本人」という非常にニッチなセグメントですが、同時に「ヨーロッパに住む家族旅行客」でもあります。 東洋経済に『新・観光立国論』著者のデービット・アトキンソン氏が『なぜ欧州の観光客は日本よりタイを選ぶのか』という記事を寄稿しており、以下のように書いていました。
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ザ・日本の夏休み

夏休みはいかがお過ごしでしょうか?

我が家は3週間、日本に一時帰国していました。
夏以外は長期休暇が取りにくいのと、下の2人が続けて夏に産まれたため、子連れで帰るのは何と5年ぶりでした。 下の2人は初日本です。

テーマは『ザ・日本の夏休み』。
家では私は日本語で、夫が英語で子どもたちに話しかけているのですが、長男が日本式には小学校1年生なので今年から土曜の日本語教室に通い始め、家で日本語プリント教材もやらせ始めました(今はまだひらがな・カタカナだけですが)。
ところがロンドン生まれのロンドン育ちに、下記のようなプリント教材渡してひらがなの練習させても、やらされる本人としては辛いものがあります・・・

お祭り・ちょうちん・太鼓・うちわ・花火・はっぴ
浴衣・下駄・帯・巾着
金魚すくい・わたあめ・りんごあめ・たこやき・屋台
蚊取り線香・風鈴・すいか・かき氷
夏休み・川遊び・魚釣り・水切り
かぶとむし・くわがた・せみ・とんぼ・虫獲り網
土用の丑の日・うなぎ・栄養・夏バテ
(いずれも「ちびむすドリル ひらがな練習プリント」より、大人が読みやすいように漢字にしています)

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昨夜トルコで起きたこと

昨日の晩、子どもたちを寝かしつけた後、前日に起きたニース・テロのニュースをBBCサイトで読んでいた。 近頃、世界中で不穏な事件が続いていて心がいつもざわざわしている。 多くの子どもが犠牲になったという痛ましいニュースを読んでいた最中に飛び込んできたのが「イスタンブールのボスフォラス海峡を渡る橋が2つとも軍部によって通行止めになっている。 首都アンカラで通常の指揮命令系統に従っていない軍部が異常な低空飛行を行っている」というBBC速報。

私はビジネススクール(MBA)時代に特に親しくなった友人の中にトルコ人が多い。 みなトルコ外での国際経験豊かだがトルコに戻った友人もいる。 MBA卒業旅行にトルコに行き、お互いの結婚式にも出席し、彼らがロンドンに来るたびに会って、去年は夏はボドルム、冬はイスタンブールに遊びに行き家族ぐるみで付き合っている。
ところが夏のボドルム旅行から帰ってきた直後、ボドルム海岸に溺死したシリア難民の3歳の男の子が打ち上げられ世界に衝撃を与えた。 そして冬のイスタンブール旅行から帰ってきた直後にイスタンブールの観光名所で自爆テロ、その後も2回の自爆テロが起きており、首都アンカラでも自爆テロが起きている。 その度に、「なぜこんなことが・・・」と悲しむ友人たちに「無事でよかった」という言葉しかかけられなかった。
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Brexitが示すのは民主主義の限界か?

前回のエントリーには沢山のアクセスがあり、コメントくださった方、ありがとうございました。 先週のイギリス時間24日(金)の朝に国民投票の結果が出て、その後の混乱の中、ささっと読める記事を拾って25日(土)の朝に書いたものなので、当日のロンドンに住む残留派が受けた衝撃がよく現れている、と考えて頂いてけっこうです。

いろいろ補足はあるのですが、他に書きたいこともあるので一点、前回のエントリーのガーディアンのグラフからanti intellectualism(反知性主義)のくだり。 EU離脱の結果が出た直後にFT(Financial Times)サイトに寄せられた読者からのコメントが「簡潔に完璧に言い表している」と絶賛されて拡散されていました。
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Brexitというパンドラの箱

昨日の朝、「なーんだ、結局杞憂だったんじゃん」って夫と笑い合ってからいつもの騒がしくも平和な日常に戻るつもりで起きた。 ところが、Twitterフィードがおかしい、FBフィードもおかしい。

最初は何が起こっているのかわからない、現実が理解できない、呆然とひたすらニュースを読みあさる、そして24時間以上経った今はショック、そして怒り、悲しみ、まだ信じられない、そしてまた怒り・・・
これは、ほぼ全額ポンド建ての我が家の家計資産が一夜にして毀損されたとか、不況になったら自分の仕事はどうなる?、とかそういう個人的な経済上の問題ではない。 私たちの子どもたち世代の将来に、何十年にも渡って根深く悪影響を与える取り返しのつかないことをしてくれた、という怒り・悲しみである。

最初に前提を確認しておくと、私はビザ上は夫(オーストラリア人)の”UK Ancestry Visa”という「祖父母の誰かがイギリス人でコモンウェルス市民なら来ていいですよ」というビザの配偶者という形でイギリスにいるので(*1)、イギリスがEUの一員かどうかは直接的には私のビザステイタスには関係がない。 イギリスが自国内のEU住民を全員国外追放したとしても(そういうことは人道上起こりえないが)、私のビザには関係がない。 そういうテクニカルな問題とは別に、私たちがロンドンにやってきた理由(*2)は他のaspirationalなEU出身の若者とほとんど変わらない。
*1・・・参照:『大英帝国の末裔ビザ』
*2・・・私はいつも「イギリス」と「ロンドン」を使い分けている、東京が日本の全てではないのと同じ。 私たちがロンドンに来た理由はこちら
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