伊藤詩織さんと全ての声をあげた人たちへ

私には、3人子どもがいて上から男、男、女である。

それを知った人からは100%、「3人目が女の子でよかったねー」、「男の子2人産んだ後にまだ3人目って勇気あるねー(「この2人でしょ?」と上の2人を見ながらあからさまなニュアンス) もう1人男の子が産まれたらどうしよう?って思わなかった?」と言われる。 
「全員男の子だったらよかったのに、残念!」と言われたことは1回もない。
1回もないのだけれど、実は男でも女でもどっちでもよかった。 男の子3人でも全然よかった、むしろ「3兄弟の母なんて男前っ!」とさえ思っていた。

実際、女の子が産まれてみて、もちろん末っ子である娘は本当に可愛い。 けれど上2人だけだった時には抱いたこともなかった、封印していた記憶が甦ってきた。 メディアでセクハラや性暴力のニュースに接するたびに、ひとつ、またひとつと記憶が甦ってくるのだ。 何年も十数年も忘れていた、と思っていた、当時は誰にも言わなかった、言えなかった、その後封印したので結局誰にも言わなかった記憶が。
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Google翻訳イヤホンが示す二極化する未来

前回の続き。

翻訳イヤホンが出てくる数日前の話です。 きっかけは長男と次男が通う小学校の放課後に行われているクラブの中でスペイン語のクラブが最小催行人数である8人が集まらずキャンセルになったという話。
補足説明をすると、公立小学校ですが放課後のクラブは有料、希望者のみ、定員あり(日本と異なり先生のボランティアではない)。 日本の部活のようにひとつの部に所属するのではなく、それぞれのクラブが決まった曜日・時間に週1回で開催され、毎日さまざまなクラブの選択肢があります。 学校の先生が率いるクラブもあれば外部の習い事業者が学校の敷地内で開催するクラブもあり、部活より習い事に近いイメージ。 学校の敷地内でやってくれるので便利とは言え、決して安くはないので、いくつクラブをやらせるかは家庭によってまちまち。 最小催行人数が集まらなければキャンセルになることもよくあります。

子どものためにスペイン語のクラブを申し込んでいたのに未催行になったギリシャ人のママ友が「イギリス人は他の言語を学ぶのに興味がない」とぷりぷり怒っていた話を夫にしたところでした。 すると夫が「小学校で第二言語が必修じゃないなんておかしい」と熱弁をふるい始めたのです。
夫:「何でオランダ人やスウェーデン人が英語ができると思う? 彼らが特別に賢いからじゃない、小学校で英語が必修だからだ。」
私:「いやー、だってこれからの世界で英語はできなきゃだめでしょ。 でもこの国では英語は母語じゃん。」
夫:「それは外国語を学ぼうとしないイギリス人と同じ言い訳だ。 Brexitが何で起こったと思う? 英語を話せない=自分とは異なるよそ者だ、と思うような人たちが離脱に投票したんだ。」
私:「・・・・・」
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Google翻訳イヤホンが投げかける答えのない問い

先日、Googleが自動翻訳機として使えるイヤホンの販売を発表しました(→‘言語40種、一瞬翻訳イヤホン登場!グーグルから’)。
Googleの機械翻訳がブラウザChromeに実装されたり、日常生活に(Appleの)Siriやら(Amazonの)Alexaが入って御用聞きをしてくれるようなってから数年、こういう方向に世界は進むんだろうな、と思ってはいましたが、想定していたより製品化が速くてビックリ。 来るとわかっていた未来が近づくスピードが速くなっている気がします、自分が年を取っただけかもしませんが・・・

ここ数年の間ずっと悩んできた、でも答えのない問いがまた大きく膨らみ始めました。
それは「我が子にどこまで日本語をやらせるべきか」という問い。

このブログの中でシリーズ化するつもりだったのに、シリーズ化できなかったトピックに「バイリンガルの頭の中」シリーズというのがあります。 長男が2歳8ヵ月の時に書いたこの記事が最初で最後です。 その理由は家庭では二言語(母と日本語、父と英語)、家庭外では一言語(英語)という我が家の子どもたちの環境では完全なバイリンガルは無理だと早々に悟ったからです。 英語と言語的に近いヨーロッパ言語ならいざ知らず、日本語と英語のバイリンガル(会話及び読み書きともに母語並みに操れるレベル)は『日英バイリンガルへの道』で書いたように、私は家庭で日本語(両親ともに日本人で家庭内言語は日本語)、家庭外で英語(初等教育後半から中等教育を英語の現地学校で受けた)と完全に分かれていたケースしか知りません。 そのケースでも日本語のレベルを保ち伸ばすために土曜に日本語補習校に通うなど親子とも並々ならぬ努力をされています。 我が家の子どもたちのように英語のボリュームが圧倒的に多い環境において漢字の使いこなし(新聞が読め、仕事で使える文章が書けるレベル)まで求めるのは、親の努力だけではほぼ無理でしょうし、子どもにとっても親にとっても、それが望ましい時間とエネルギーの使い方なのかは疑問です。

そこで『日英バイリンガルへの道』に書いたように、日本語学習において、「なぜ(WHY)」と「どのレベルまで(WHAT)」が重要になってくるのです。
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伝説のホテルオークラのデザイナーのお宅訪問記 – 2

Stephen Ryanという現代最高峰のインテリアデザイナー、1980年代にはあのホテルオークラの全客室をデザインしたトップデザイナーの西ロンドンにあるお宅の訪問記第2回です。 あまりテレビに出たり、自分の名前を冠したブランド品をつくったりするようなタイプのデザイナーではないので、日本では名前が知られていないと思います。 が、アンティークとアートの鑑識眼、異なる時代・地域のものを自由に組み合わせるセンス、考えに考え、練り抜かれた空間設計、何を取ってもレベルが高すぎて、私にはため息しか出ない、というよりため息すら出ないような空間です。
前回の続きなので、前回をご覧になってからどうぞ。


アンティークの木製彫刻のインパクトもすごいキッチンですが、ディテールに全く気を抜かないStephen。 これは廊下からキッチンへの観音開きのドア。 面材はおそらく合皮のヘビ皮。 ハンドルはアートとハンドルの中間のようなプロダクトで金属製。 住宅設計が基本的に全てオーダーメイドのイギリス(*1)にはドアノブ・ハンドル・ラッチ・ヒンジなどのパーツもひとつひとつ選びます。 例えばアートな部品の代表格Philip Watts、アートなドアノブがいっぱい。
*1・・・参照:『日英リノベーション業界比較』
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伝説のホテルオークラのデザイナーのお宅訪問記 – 1

今年もあっという間に幕を閉じたロンドン・デザイン・フェスティバル、ブログを通してご連絡頂いた方、日本から毎年この季節に渡英するデザイン系の方と懐かしい再会あり、新しい出会いありの楽しい期間でした。

今年のハイライトは、フェスティバルとは直接関係ありませんが、期間中に伝説のデザイナーのお宅を訪問する機会を得たことでしょう。 私も所属する英国インテリアデザイン協会(BIID = British Institute of Interior Design)の日本から来たメンバーのために、澤山乃莉子さんがアレンジしてくださいました。 こんな世界にも稀にみるレベルの私邸を訪れ、デザインしたご本人に案内してもらうなど、一生に何度もない機会です。 乃莉子さん、ありがとうございました!

その伝説のデザイナーとは・・・ Stephen Ryanという人でデザイナー歴30年以上、世界最高のプロ集団BIIDの中でもそのアートとアンティーク・建築・クラフトに関する知識と美的センスが群を抜いており、数々の賞の受賞歴・メディア掲載歴があります。 現在は西ロンドンでStephen Ryan Design & Decorationという自分のスタジオを経営しています(プロフィール写真はウェブサイトから拝借しました)。
Stephenは、イギリスやデザイン界では知らない人はいないDavid Hicksという稀代のインテリアデザイナーがまだ存命だった時代にDavid Hicksのスタジオでチーフデザイナーを務めており、1980年代にホテルオークラ東京、神戸、アムステルダムの一連のオークラ系列ホテルの客室をデザインしています。 オークラ東京の数百室ある客室は全客室、異なったデザインですべて彼がデザインしたそうです。

日本が大好きで「日本でまたたくさんプロジェクトをやりたい。 日本の皆さんになら見せていいよ」と写真撮影とブログ掲載の許可を頂いたので、ご紹介します。 写真は全て私かご一緒したBIID日本人メンバーが撮影したものですが、プロのフォトグラファーが撮影したものはこちらから見られます。
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ユニットバス・クッションフロア・蛍光灯からの脱却

昨日の続きです。

『「ハレ」と「ケ」の建築』と同じく、日本では建物の中でも「ハレ」の空間の美しさに比べ、「ケ」の空間がおざなりにされすぎではないか、というお話。

考えられる理由としては・・・

日本の家はプライベートな場所であり、よっぽど親しい人でないと家に招くことはない。 ホテルやレストランなどの内装が美しいのは空間を含めた体験を売っているので当たり前だが、家の中はプライベートな場所なので見栄えを気にする必要はない。 一方、イギリスでは家は社交の場で、気軽に人を招くので、他人の見た目を気にする必要がある。

もっともらしく聞こえるのですが、判断の軸は「他人」で良いのか?と思います。

Garbage In Garbage Out(ゴミばかり入れているとゴミばかり出てくる)

という言葉がある通り、醜悪なものしか見ないと美しいと感じる感性すら鈍ってしまいますし、そもそも自分の目に入るすべての景色、起きている時間の何割かを過ごす家の中の景色を景色(View)としては見ておらず、空間がそこに住む人に与える感覚を五感を使って感じられなくなっているのではないかと思います。

アレックス・カー氏の『ニッポン景観論』にこういう画像が載ってますが(*1)、まさにこれのインテリア版。


バチカンのサン・ピエトロ広場(現状)©Alex Kerr

バチカンのサン・ピエトロ広場(改善)
大型駐車場ができたことによって、実に便利になりました。アスファルトは危険ですから、ご注意ください。 ©Alex Kerr
*1・・・写真とキャプションは”日経ビジネスオンライン:『この景色は「嫌だ」と思うことが大切です』より引用。

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憧れのインテリアには泊まる時代!のおうち比較

先日ある日本の雑誌の取材を受けたのですが、その中でこんな質問がありました。

日本とイギリスの「インテリア」についての意識の差はどのように感じますか?

紙面の制限もあり、言いたいことが伝えきれなかったので今回は掘り下げてみたいと思います。

ここで話題となっているのは一般の人の家の中ですが、最近、頻繁に利用しているAirbnb、世界中の普通の人の家からインスピレーションを得るのにも使えるのです。 そこで、東京とロンドンで一般の人(ゲストハウスやシェアハウスではなく)が掲載しているAirbnb物件でおうちの中を見てみましょう。

まず、期待に胸をふくらませて東京。 素敵なインテリアを見るのが目的なので検索条件で価格を1泊3万円以上にして探してみましたが・・・

インテリア的に「はっ!」と心が踊るような家が全く見つかりません・・・(Airbnbに載せてらっしゃる方、すみません) 内装の業者は一社独占?と疑いたくなるほど全部同じに見えます。 「あっ、素敵!」と思ったらWIRED HOTELだったり・・・ まあ一般の人は自分の家に他人(よりによって外人!)を泊めたくない、という事情はあるのかと思いますが。 ひとつ他と違って際立っていたのは表参道のコンクリート打ちっぱなしのこのお宅(Tokyo Artist Loft in Omotesando)。

ホストは映画製作が本業で東京とブルックリンの二拠点生活、建築家のご友人とつくった家だそう。
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MBAを出た後デザイナーになった理由

Facebookで目にしたフォーブスの記事『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか』と東洋経済の記事『世界のエリートが「美意識」を鍛える根本理由』を読んで、「ああ、私がMBAまで取ったのに、6年前クリエイティブ業界に舵を切ったのと同じだだ」と思ったので、今日はそのことを。 上記2つの記事は『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?』という本の書評です。

この本は、

いわゆる伝統的なビジネススクールへの出願数が減少傾向にある一方で、アートスクールや美術系大学によるエグゼクティブトレーニングに、多くのグローバル企業が幹部を送り込み始めている実態(*1)

を捉え、

(「論理的・理性的な情報処理スキルの限界」が顕在化している世界において)質の高い意思決定を継続的にするためには、明文化されたルールや法律だけを拠り所にするのではなく、自分なりの「真・善・美」の感覚、つまり「美意識」に照らして判断する態度が必要になってくる

(『イノベーションのジレンマ』で有名なハーバード・ビジネス・スクールのクレイトン・クリステンセン教授が同校卒業生へのアドバイスとして)「人生を評価する自分なりのモノサシを持ちなさい」と述べている(*2)

今、エリートに求められるものは「真・善・美」の感覚、つまり「美意識」であり、「人生を評価する自分なりのモノサシ」だという本。
*1・・・参照 Financial Times: “The art school MBA that promotes creative innovation”, “MBA-toting evangelist for ‘art thinking’ at work”
*2・・・この授業について以前『人生をどうやって測るのか?』で書いており、私の人生の指針にもなっています。

私は2004年にフランスのINSEADというMBAを卒業しています。 INSEADは私がいた頃は世界MBAランキングの10位圏内だった記憶がありますが、2016年、2017年と連続でFTのMBAランキングでトップになったので、日本でも俄かに注目されているそうです(*3)。
*3・・・基本的に私はランキングや統計でキャリアを決めてはいけないと思っています。 判断基準は自分に合っているかどうか、あくまで軸は自分です。参照:『統計を参考に個人のキャリアを決めてはいけない』
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ロンドン・デザイン・フェスティバル2017

今年もロンドンで行われるデザインのお祭りに世界中から人が訪れるロンドン・デザイン・フェスティバルの季節になりました(オフィシャルサイト:London Design Festival)。 今年は9月16日(土)から24日(日)にわたってロンドン市内の各地で、クリエイティブ事務所・メーカー・ショップがオフィス・工房を一般にオープンし、屋外では大規模なデザイン・インスタレーションが行われ、クリエイティブたちによる各種セミナー・パネルディスカッションが行われ、さまざまな展示会にバイヤーが集います。 
2012年、ニューヨーク・タイムズにこう言わせたロンドン、

悪いな、ミラノ・東京。 残念だったね、ストックホルム・パリ。 アインドホーベン・ベルリン・バルセロナ・・・そして特にニューヨークよ、許しておくれ。
だけどロンドンこそが世界のデザインの首都だ。

デザインの首都の最大のお祭りであるデザイン・フェスティバル、少し古いですが、その意義について4年前にも書いているのでご覧ください(→『ロンドンのデザイン・エコシステム』)。
街中が右のロゴで溢れ、観光客でも気軽に立ち入ることができるのですが、見どころが多いので、ざっくりと全体の概要をご説明します。
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旅における「本物体験」とは何か?

ルーマニアのマラムレシュシリーズ(→1, 2, 3)の最後に、今日は旅において「本物体験」とは何か、「本物体験」を多くの人が体験しようとするとどうなるか、ということを考えたいと思います。
「物より思い出」ということで近年「本物体験」が盛んです。 Airbnb(*1)でも宿のホストの他に「地元でしかできないユニークな体験をホストしよう」というサービスが新しく始まりました(→体験ホスト)。
*1・・・Airbnbについて初めて書いたのは6年前(→『おうち交換で格安旅行!』)。 その後、ゲストとしてもホストとしても利用しています。 まだアカウントを持っていない人はこちらから初回割引クーポンがもらえます。

私がマラムレシュ旅行で泊まったのもAirbnbでしたが、世界遺産の木造聖堂以外は観光地化されていないので、伝統工芸を見るのも乳搾りなど酪農体験をするのも日々の生活の営みとしてやっている人を見つけて、見せてもらうよう頼まなければなりません。 当然すべてルーマニア語・・・ 私たちが泊まった2軒目はホストの親戚がロンドンに住んでいてコミュニケーションは全部ロンドン経由。 Airbnbレビューに以前泊まったゲストが「山に羊飼いの小屋を見に行ったのが楽しかった」(*2)とあったので、私も山に羊と羊飼いを見に行きたいと頼んでみました。 そこには1週間滞在したのですが、頼んだのが滞在初日の月曜日。
*2・・・この地方ではほとんど家庭が零細農家であり零細酪農家。 牛・馬・豚・羊・鶏などの数種類の家畜をそれぞれ少数持っています。 家の近くの牧草地では牛や馬を放牧し、羊はプロ羊飼いが村の羊をみなまとめて山の上の方の牧草地に連れて行きます。 カルパチア山脈は今でも全ヨーロッパの6割の熊、8割の狼が生息していると言われ、熊や狼から羊の群れを守りつつ羊を放牧させるのは、さまざまな仕事をこなす農家の人と違い、プロ羊飼いの仕事です。

翌々日の水曜日に、「近所の農家の人で山に連れていってくれる人探してるんだけど、今は繁忙期で忙しいから誰も見つからない。 もしかして滞在中には無理かも・・・」という返事。 ああ、そうでした、ここの人たちは4月から10月のうちに1年分の食料と肥料をつくらなければいけないから(こちら参照)8月はもっとも繁忙期だよね。 暇な旅行者の相手してる人なんかいないんだわ・・・
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