サンクコスト

昨日に引き続きMBAで学んだことの話。
私がINSEADで学んだ最も重要な概念のひとつが’sunk cost’。
大事な考え方なのに、いまいちうまい日本語が見つからないなー、と思っていたら、そのままカタカナにした本が出ました、『サンクコスト時間術』
本田さんのレバレッジシリーズが出たときも思ったのですが、やっぱりうまく日本語にならない概念はカタカナになってしまうんですね。
企業経営では以下のような場面で使います。
ある企業が新規にチップを開発・設計する期間を2年間、費用を5億円と見積もり、開発をスタートしたとします。 
開発期間半年、費用を1.5億円かけた時点で、営業サイドから「市場は当初想定していたよりも早いスピードで動いており、競合他社が半年以内に同様の機能を持ち価格競争力のあるチップを出してくるので、我が社が市場に出す頃にはすでに勝負は決まってしまっている」という声があがったとします。
この時点ではA.チップ開発を中止する、B.チップ開発を継続する、という選択肢が考えられます。
本来であれば将来の価値を最大化する(もしくは将来の損失を最小化する)ことを決断の基準とすべきであるのに「今開発中止するとすでに投資した1.5億円をドブを捨てることになる。それよりも開発を継続して商品が売れるような戦略を考えるべきだ」と考えてしまうのを’sunk cost’にとらわれた考え方と言います。


会社の中だけでなく、人生のさまざまな局面でサンクコストにとらわれてしまうことがあります。
1. せっかく高いゴルフクラブを買ったのだからコースに出なくては高い代金を捨てることになる。
2. せっかく親の強い希望で厳しい受験戦争を勝ち抜き東大法学部に入ったのだから官僚にならなくては。
1.のケースでは、ゴルフを行うことが健康に役立つと信じており、高いゴルフクラブは自分を動機付けるための投資であるのであれば(もしくは、コースを回るのは人脈作りのためでありキャリアの一段の飛躍であるのであれば)問題ありません。 が、同僚への見栄のため思わずクラブを買ってしまったものの、週末自費でコースに出るような家計の余裕はなく、週末くらい家族サービスをしないと家族関係に深刻な影響を及ぼす、のであれば、ゴルフクラブ代はsunk(= すでに取り返しのつかないもの)であり、今後ゴルフを続ける・続けないに関わらず「買った」という事実は変えられないもの(このケースの場合は「売る」という選択肢がありますが)。
2. のケースでは東大法学部入学のための予備校費用などはすべて取り返しのつかないもの。 進路選択は「将来の自分の幸福を最大化する道」を選ぶべきであり、「すでに払ってしまった過去の費用を取り返すため」のものではありません。
安易に「人生をリセットしよう」と言っているわけではなく、「今の会社でのポジションに特に満足しているわけではないけど、せっかく10年もいたし、今さら他に移るのもしんどいし、給料も下がりそうだし・・・」という友人の話を聞くたびに、「将来の自分の幸福、家族の幸福、周りの幸福を最大化すると思う道が他にあれば、過去に支払ったコストなんてサンクコストなのに」と思います。


3 responses to “サンクコスト

  • 間宮 めぐみ

    葉子さん、始めまして。間宮めぐみと申します。
    数年務めた会社を退職し、渡豪、英語を勉強中の者です。

    “sunk cost”の記事に、とても心動かされました。

    最近、永住権取得を考え初めて、お金や時間をムダにしないことばかりとらわれ、行き詰まっていたからです。

    一度立ち止まって、今やりたいと思えることからやっていこうと思います。

    • la dolce vita

      >間宮めぐみさん
      初コメントありがとうございます。
      “sunk cost”、とても大事な概念ですよねー 私もいつも見失わないように、と思ってます。

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