It’s all about OB…

私がINSEADにMBA留学をして得たもののNo.1は一生ものの友人と卒業生ネットワークだということは以前のブログで書きましたが(→コチラコチラ)、「学校で学んだことはどうなんだ?」と聞かれると「OB(= Organisational behaviour、組織行動学)が重要だということ」でしょうか。 学校で「OBを学んだ」のではありません、「OBが重要だという事実に気づいた」のです。
組織行動学と訳されるOBの授業が私はINSEADに入った頃、大がつくほど嫌いでした。 「組織の中の処世術」としか思えず、「あえてMBAで習うことかー?」と思っていました。
INSEADはハーバードと同じくケース・スタディが多いので、30ページもあるケース(とあるイタリアの会社で、Fabrizio、Maurizio、Antonio・・・と同じような名前の重役10人くらいが出てきて、マーケティング部長Marioはセールス部長のStefanoと仲が悪く、でもStefanoは社長のFabrizioの高校時代の後輩で、会社の業績が悪化しているのに組織が紛糾寸前でどうしましょう?みたいなの)を読んだ後、クラスでああだ、こうだ、と議論するのです。
「そんなの時と場合によるんじゃないのー?」としらけきっていた私。
また、ある日のOBの授業では、事前に渡された指示書に従ってチーム内で、企業A 3名と企業B 3名に分かれて代理店販売契約だか何かの契約交渉をするロールプレイングを実施。
企業A担当の指示書には「自信に満ち溢れた態度をとり、すべての質問に対し独断で回答し、言葉は断定口調、質問は詰問口調・・・」みたいなことが書いてあり、企業B担当の指示書には「声は小さく、質問されたら質問にはすぐ答えずまず自分たちでひそひそ集まって相談し、その上で”社に持ち帰って検討する”と回答・・・」などと書いてありました。
そのロールプレイングをチーム内で実施した後、クラス内でAだった人はどう感じたか、Bだった人はどう感じたか、を議論。 授業の最後で教授が「Aはアメリカ人がよく取る行動、Bは日本人がよく取る行動」と種明かし。
この授業は「文化によって行動パターンも組織論理も異なるので、文化背景を理解しよう」というのがポイントだったらしいのですが、授業の最中、種明かしの前にだんだん筋書きが読めた私は激怒。 授業の後で教授に対して「教えようとしている意図はわかるが、文化的ステレオタイプ(しかもかなりネガティブな)をあえて助長するような教材を選ぶのはどうかと思う」と抗議しました。 「まあ、ちょっとステレオタイプだけどねー」とさらっとかわされたけど。
そんなわけで、数十あるMBAのクラスの中でOBの成績は最低でした(抗議は関係ないと思う、クラスの議論に参加しなかったのが理由)。


ところが、OBが嫌いだった私も、だんだん自分が過去に会社で犯した失敗が、「ああ、あの時、上司がああ言ったのも、この時こうなったのも全部私が原因」とフラッシュバックしてきました。 「上司がわかっていない」のではなく、「上司にわかってもらうように導けない私がわかってなかった」のだと。
同じようなことは、INSEAD同級生の友人も何人も言っていました。
INSEAD卒業後、意気揚々とマッキンゼーに入社した友人も1年経つと「クライアントにどんな提案しても、結局OBなんだよねー It’s all about OB…」。 つまり、どんなに素晴らしいマーケティング案を提案したとしても、It’s all about OB. クライアント社内の組織内の力関係、しがらみ、さまざまな人的要因で実行されなければ、絵に描いた餅、だということを言いたかったのだ、と思います。
鼻っ柱だけは強かった昔の私も思い出すと穴があったら入りたいような失敗をいっぱいしていますが、組織の中では組織の論理で動かない自分が悪い。
・・・という昔のことを『会社でチャンスをつかむ人が実行している本当のルール』を読んで思い出しました。 女性向けに書かれていますが、副題が「若者と女性が教えてもらえないキャリアアップの法則」となっている通り、男性にも十分通用します。 読んでいると、昔の自分を思い出してイタい・・・イタすぎる・・・
こういう本、必要な人ほど「ふんっ、自分は実力で勝負するから処世術なんて興味ない」と思ってるから手に取らないんですよね、残念だ・・・(←昔の自分)


3 responses to “It’s all about OB…

  • orange

    初めまして。
    最近このブログに辿り着き、参考になる項目がとても多く、過去のものも拝見しております。
    私もこの本を読みました。
    大阪に住む、入社6年目の会社員です。
    >「上司がわかっていない」のではなく、「上司にわかってもらうように導けない私がわかってなかった」のだと。
    とてもとても共感します。
    自分中心だった新入社員時代の自分に、この本を渡してあげたい!って思うほどです。
    今ならわかる、ってことが凝縮されてて目からうろこでした。
    色々経験して学ぶのも大事ですが
    ある程度知った上で社会に出ることのほうが、近道だった気がします。
    組織行動学という学問があるのですね!初めて知りました。
    それに関するおすすめの本などあれば、またご紹介くださいネ。
    私も拙いながらにブログを書いております。
    またお立ち寄りください。
    『会社でチャンスをつかむ人が実行している本当のルール』
    http://ameblo.jp/titianyukki/entry-10158316937.html

  • la dolce vita

    >orangeさん
    初めまして、過去のエントリーも読んで頂きありがとうございます。
    >自分中心だった新入社員時代の自分に、この本を渡してあげたい!って思うほどです。
    >今ならわかる、ってことが凝縮されてて目からうろこでした。
    >色々経験して学ぶのも大事ですがある程度知った上で社会に出ることのほうが、近道だった気がします。
    そうですねー、6年目で気づいたなら全然遅くないですよ!
    社内にモデルになる女性の先輩がいれば自然と教わるのかもしれませんが、なかなかそういう恵まれた環境ばかりでもないですしね。
    最近書いた「異端児こそサバイブしなければならない」も異端児 = 女性、と読み替えると参考になるかもしれません。
    ブログも拝見しました、がんばってください!

  • la dolce vita

    (過去のコメントは以下)
    beaver October 28, 2008 3:35 AM
    この記事は私にとってちょうどよいタイミングでした。先日、日本での就職先について日本人の先輩に相談していたところ、優秀な雰囲気をあまりださないほうが日本ではうまくいくと忠告されました。上司が脅威に感じるとのことです。それよりも一所懸命やってますという雰囲気を前面に出した方が、上司がいろいろ教えてあげよう、かわいがろうという気になるとのことです。海外でassertiveな態度が必要とされた場面が多く、それに適応しようと努力してきましたが、そろそろ日本の組織でうまくいくように振る舞い方を修正する時期かもしれません。福沢さんと勝間さんの本のご紹介、ありがとうございます。次回の帰国時に読んでみることにします。
    la dolce vita October 28, 2008 9:13 AM
    beaverさん
    >それよりも一所懸命やってますという雰囲気を前面に出した方が、上司がいろいろ教えてあげよう、かわいがろうという気になるとのことです。
    beaverさんの年齢にもよると思うのですが、こういう可愛がられ方をされるのは新入社員ですかねー。 即戦力として期待される中途採用だとまた違うと思います。
    紹介した本にいろいろ書いてありますが、新人でも中途でも初めのうちは「上司のタイプ」を見抜くことが大事だと思います(これは日本に限ったことではないけど)。
    >そろそろ日本の組織でうまくいくように振る舞い方を修正する時期かもしれません。
    帰国されたらいろいろあると思いますが、ちょうどいいバランスが見つかるといいですね。
    デレク October 28, 2008 9:44 AM
    私は典型的な日本企業、国内営業というサラリーマンですが、私の若かりし頃の失敗は全てこのOBだった気がします。
    日本企業だけの問題かと思っていたのですが、意外と海外企業もそうなのかと思い、ちょっと驚きです。
    私も入社したての頃は、la dolce vitaさんではありませんが、社内営業が下手でイタイ失敗だらけです。
    その度に、「私は協力してもらえない」と憤っていましたが…
    早くにこんな本読んでおくべきでした(笑)
    しかし、その失敗が今の自分を作っているわけでもありますので、これから気をつけようかなと強く思っております。
    ところで、「外資系キャリアの出世術」シンシア・シャピロ (著), 野津 智子 (翻訳) という本も凄く参考になりました。
    こちらのブログで絶賛されてましたので、拝読しました。
    処世術といった向きが強い本でしたが、社内での立ち回り方、今更ながら凄く参考になりました。
    http://ameblo.jp/993c4s/entry-10085940621.html
    そして、こちらのブログもお勧めです。
    la dolce vita October 28, 2008 6:28 PM
    >デレクさん
    >日本企業だけの問題かと思っていたのですが、意外と海外企業もそうなのかと思い、ちょっと驚きです。
    人間で成り立っているのが企業なので、どこでも一緒ですよ。 逆に、日本企業のように同質な人たちばかりの集まりではないので、もっと個性のバリエーションが豊かです(笑)。
    >「外資系キャリアの出世術」シンシア・シャピロ (著), 野津 智子 (翻訳) という本も凄く参考になりました。
    ご紹介ありがとうございます。 パラパラと立ち読みしたことはあるのですが、まじめに読んだことはありませんでした。 見つけたら読んでみます!
    オレンジ October 29, 2008 6:32 AM
    おはようございます。オレンジです。
    MBAで処世術も学ぶのですね。
    面白いとおもいました。そして、
    僕もla dolce vitaさんと似たような
    性格をしていると思います。本を
    購入して参考させていただきます。
    la dolce vita October 29, 2008 2:24 PM
    >オレンジさん
    >MBAで処世術も学ぶのですね。
    おそらくですねー、ビジネススクールは「世の中で分析できないものはない」と考えているらしく、倫理(ethics)も学びますよ。 「OBやethicsは教えられるものなのか?」というのはポピュラーな議論ですが、何でも分析してみる、ところが面白いと思います。

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