一家の大黒柱が無職になった – 3

今日が最終回。

こうして2011年夏に夫婦ともども無職になった私たち、生活は特に変えませんでした。 私が秋から通う予定だった『The Interior Design School』の学費をまだ払っていなかったので「入学を1年延ばそうか?」と夫に聞いてみたのですが、私のキャリアチェンジを心から応援してくれているので1年先にすることは大反対。 「夫婦で無職、子ども1人」から「無職+学生、子ども1人」になりました。

夏休みに予約していたクロアチア旅行もすでにフライト代と宿のデポジットを払い込み済みだから既にサンクコスト(→『サンクコスト』)。 「無職でロンドン」と「無職でクロアチア」だと出て行くお金は変わらなそうだし、後者の方が「明るい無職」って感じなので予定通りに旅行へ(→『アドリア海の休日』)。

夫は息子と過ごす時間が一気に増え、ママっ子だった息子がパパ大好きに戻りました。

秋からフルタイム学生になった私は「1歳の子どもがいるのに、フルタイムで学校通うなんて大変でしょう?」と聞かれるたびに、「都合がいいことに、夫が無職だから家事全般やってくれるの」と冗談めかして答えていました。
家族で過ごす時間が増え、私は2人目妊娠(!)。 我が家は「無職+学生、子ども2人(1歳+お腹に1人)」になりました(笑)。 この時ばかりは無職でも無料で医療が受けられるイギリスの医療制度(NHS)に感謝。

「音楽がときどき止まって椅子に座っている人との交代がある限り、そのうち見つかるよ」と終始楽観的だった私の言う通り、夫は就職活動を始めて4ヵ月半で次の仕事を見つけました。 そして新しい職場で働き始めて1年以上経ちますが、相変わらず戦略コンサル特有のdemandingな職務内容ではあるものの、職場環境はよく、息子2人のベッドタイムに間に合う時間に帰ってこれます。

私は去年夏に無事に学校を終え、家族は4人に増え、結果的には失ったものは「最も現実的にありうるシナリオ」で想定した通り、少々の貯金だけでした(おまけの話ですが、貯金は株・債券で保有していたので、過去2年の市場回復で無職の間かかった生活費もほぼ取り戻せました)。

もし大事な家族がブラックな環境にいたら、過度なストレスを感じていたら、逃げ道を用意してあげてください。 マイホームの頭金ほど余裕がなくても、「最悪なケース」というのは冷静に想定してみると実は全然最悪じゃないことが多い。 その上、実際に起こる確率は「最悪なケース」ではなく「最もありうるシナリオ」であることがほとんど(定義上、当たり前だけど)。 ほとんどの当事者は変化を起こすことによるリスクを過大評価し、明るい未来の見えないトンネルに留まることを選びます。 そんな本人に逃げ道を用意してあげられるのは、一番側にいる人だからです。

もはや有名ですが、鬱病に関する古賀さんの名文→愛の日記:鬱病による自殺が減りますように。


7 responses to “一家の大黒柱が無職になった – 3

  • ままき

    度を超えた大きな荷物を抱えて(しかも本人それを知らなかったりして)きつきつになっている人の背中から、ぽいっぽいっと荷物を降ろして、放っちゃって、あげく固くなった肩甲骨あたりの筋肉をとんとんっと緩めてあげて、ああ~軽くなったね、リフレッシュして次に進もう、と語っているカップルがヴィジュアルで描けちゃいました。1~3まで単純に読み物としても楽しかった。背水の陣はやっぱりだめね。なんて思ったりして。ミネラルたっぷりなよい話のシェアThank youです。

  • Wakawaka

    ずっと楽しくブログ拝見していましたが、初めて(思わず)コメントします。まるで我が家とそっくりでびっくりしてしまいました。マイクロ・マネジメントしかできないボスを持つと部下は本当に苦労しまね。
    我が家は金融界ではなく、いわゆる『アカデミック・ハラスメント』に苛まされていたケースです。医学界の一部はあの山崎豊子「白い巨塔」未だ健在なのです。
    旦那が自分で就職活動して見つけてきた新しい研究室へボスがわざわざ電話をかけ「彼の就職の件はなかったことにしてくれ」と話を潰されたこともあり、しかもその理由は「オレの研究室より研究資金の潤沢なラボに移ることは絶対に許せないから」だったときには、思わず怒りを通り越して笑ってしまいました。
    オーバーワークで疲労困憊している当の本人はだんだん思考停止に陥って、まさにYokoさん曰く「変化を起こすことによるリスクを過大評価し、明るい未来の見えないトンネルに留まることを選ぶ」という、おっしゃるとおりの状態に陥いるんですよね。
    配偶者の私はフリーライター業をやっているので、取材の延長のような感じで旦那の勤怠表をエクセルで管理、スーツのポケットにヴォイスリコーダーを入れて恫喝音声を録音、労使関係に詳しい弁護士に資料作ってもらい、情況証拠が揃ったところで一式を上長もしくはコンプライアンス室に持ちかけるよう事を整えておきました。
    結果、ボスの悪事が上長にばれてボスは大目玉をくらうことになり、旦那は無事にボスのところから逃げ出し希望していた研究室へ移動できることになりました(ちなみに新しい研究室の共同研究者が数ヶ月後にノーベル賞をもらうことになり、職場に巨額の助成金が転がり込むというおまけまでつきました)。
    「転職先がブラック企業」というのはある意味不可抗力のもたらす運命というか、まるで散歩の途中にとつぜん野井戸に落っこちてしまうようなものかなと思います。本人がいくら叫ぼうが飛ぼうが壁をむしろうが絶対這い上がれない、でもそのままではいつかゆっくり死にゆく運命が待っている。だとしたら、助けてあげられるのは井戸の外から中をのぞきこんでいる人=配偶者・家族しかいないんですよね。単に手を差し伸べるだけじゃなく、たとえ砂漠の真ん中だろうが行商人と交渉して脱出用ロープの手配ができる、落っこちた本人が這い上がれるようロープに細工できる、「地上まであと10m、あと8m、あと15分もすれば大丈夫」と脱出までの正しい算段を教えてあげられる賢い配偶者がいれば、“ブラック企業という名のブラックホール”から逃げ出すことができるんじゃないかなと思います。いやあ、誰も褒めてくれないんでここで言っちゃいますが、私たちの夫は賢いヨメがいて良かったんです!ね(笑)Yokoさんとは同郷(しかも同じ高校かも)です、これからもブログ楽しみに拝見させていただきます!

    • la dolce vita

      ありがとうございます!(初コメントもありがとうございます) 野井戸の比喩が絶妙、さすがライターさんです。

      >旦那の勤怠表をエクセルで管理、スーツのポケットにヴォイスリコーダーを入れて恫喝音声を録音、労使関係に詳しい弁護士に資料作ってもらい・・・
      すごいですねー、うちもイギリス労働法は調べましたが、ヴォイスリコーダーは思いつかなかったな。
      うちは上司=会社のトップでありオーナーなので駆け込めるところもなく辞めさせましたが、アカデミックという狭い世界では大変なんでしょうねー

      >Yokoさんとは同郷(しかも同じ高校かも)
      ほんとですか?! うちは3つあるうち、寺田町にある高校です。 もし一緒だったら教えてください、このブログに高校の同級生のこともちょろちょろ書いてます。

  • Wakawaka

    ありがとうございます!
    >うちは3つあるうち、寺田町にある高校です。 もし一緒だったら教えてください、このブログに高校の同級生のこともちょろちょろ書いてます。
    ああ!残念です!うちは池田でした…。Twitterなどでもありがとうございます。どうしても“文系脳”の持ち主が多い物書き業のご同輩とは違い、このブログからは自分にない冷静な視点、新鮮な価値観を教えてもらっている感じでいつも大いに刺激をいただいています。これからも楽しみにしています。次回以降は、お子さんの話題もぜひぜひ。

  • ままき

    おお、うれしいお尋ねごとが。ウェブサイトもStudioも凍結中でカチカチなんですが、今年の夏にショウがあります。ミルトンキーンズなので遠いんですが、ショウの時に期間限定ミニウェブサイトもできるはずなので、Invitationと一緒にメールしまーす。

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