昨日の続き。
「こんな体調で出張に行ったら本当に体を壊すから行かないで」と朝3時に過労なのに海外出張に行こうとする夫を止めようとした私。
1. 大事なのは一に自分の健康、二に家族の健康。 仕事は三の次、四の次、五の次である。
あなたが家族のために一生懸命働いているのは知っている。 それならなおさら一家の大黒柱は自分の健康が一番大事。 機内アナウンスで「自分の救命具をつけてから周囲の人が着用するのを手伝ってください」とあるのと一緒。 次に家族の健康が大事。 それ以外のことは何とでもなる。 仕事は辞めたらまた見つければいい、家も今買わずにまた後で買えばいい。
2. 精神の病は、身体の病より、かかっていることに気がつきにくく、回復に時間がかかる。
精神的に参っているなら、休息を取らなくてはいけない。 申し入れても休息を取らせてもらえないなら逃げればいい。 あなたがこの出張に行かなくても、おそらく会社はつぶれない。 でもあなたがつぶれたら回復にはずっとずっと時間がかかる。
3. もし今、この会社から職をオファーされたら受けるか? 答えがNOなら時間と健康を無駄にせず、辞めるべき。
すでに転職が間違った決断だと気づいているなら、この会社に少しでも長くいることで、その決断が正しい決断に変わる可能性はない。 間違った決断をすることは時にはある。 重要なのは、今後同じような間違いを起こさないことであり、行動した自分を責めることではない。
初めは「出張をすっぽかすなんてあり得ない」と言っていた夫ですが、よほど疲れていたのでしょう。 私が止めたのを聞き入れ、ベッドに戻りました。 その日は12時間ほど、昼まで寝ていました。 金曜の出張をすっぽかした夫は、たまたま次の月曜が祝日だったので4連休となり、転職後初めてゆっくり時間が取れたので2人でこれからのことを話し合いました。
1. 家計を整理
私は息子が生まれて以来、ちょこちょことフリーで仕事をしていましたが、いざ本格的に就職活動をしようとした矢先に起きた東日本大震災後に『クリエイターになりたい。』と大きなキャリアチェンジを決意した直後だったので仕事をしていませんでした。 ただ昨日書いたように、マイホームを買おうとしていたため、頭金にしようとしていた貯金(正確にはまだ株や債券で持っていた)はたくさんありました。
世の中、老後になっても「もしものときのために」貯金しようとする人がいますが、「もしものときのお金」は「もしものとき」(contingency)に使うためにある、今使わずしていつ使う?ということで、マイホーム購入はキャンセル(イギリスではCompletionと呼ばれる契約完結までいつでも心変わり可能)。 夫が仕事をしながら職探しをすることが無理な状況だったため、いつでも辞められるように準備をしました。
2. 滞在ビザを確認
私たちは夫の”UK Ancestry Visa”という日本人の99.9%には関係ない滞在ビザでイギリスに来ています(→『大英帝国の末裔ビザ』)。 Work permit(労働許可証)と異なり雇用主にスポンサーになってもらう必要がないので転職が自由に可能ですし、無職=即国外退去ではありません。 ビザの心配がなかったのは本当にラッキー。
3. 転職市場環境を確認
労働市場は需給関係なので、椅子取りゲームと一緒、次の職を見つけるのにかかる期間は椅子の数と空いている椅子を探している人の数、音楽が止まる間隔で決まります。 リーマンショックが起こった2008年から09年にかけては金縛りにでもあったかのように、企業の採用活動が止まってしまいました(椅子の数が減ると同時に音楽が止まらず、椅子が空かなくなった)。 それに比べ、2年前の2011年当時はユーロ圏の財政危機、景気の二番底が懸念されていましたが、音楽は止まり椅子は空くようになっていました。 夫の経験・ポジションであれば半年くらいで職は見つかるだろう、と私は至って楽観的でしたが(人ごとだし他人のことは客観的に見られるし)、夫はギリシャ債のデフォルトを契機としたリーマンショック並の恐慌の再来を心配していました。
まあ、どちらにしても5年は働かなくていいくらいの貯金はある、国外追放されることもない、イギリスは医療は無料だから病気になっても治療を受けられる、失うものはたいしてありません。 冷静に考えると、最悪のケースでロンドンで全く職が見つからなかった時にはオーストラリアでも日本でも帰って実家に居候させてもらえばいい、最も現実的にありうるシナリオは家族3人の半年分(夫の就職活動中)の生活費が貯金から減るくらい。 「ビザなし、健康保険なし、家もなし」で金融恐慌真っ最中にアメリカで職を失った古賀さん(→愛の日記:アメリカでの就職の話)に比べると、天国のように恵まれた状況でした(比べてすみません、古賀さん)。
こうして企業の採用活動が止まる夏を前に、我が家の大黒柱の夫は辞表を出し、夫婦晴れて無職になりました。
次回が最終回。
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