一家の大黒柱が無職になった – 1

・・・というタイトルをつけたけど、私の夫の話です。

2年前のこの時期、夫は転職しました。 同じ業界内ですが(夫の職業は戦略コンサル)、夫の上にはパートナー(ファームの共同経営者)2人だけという小さいファームにシニアなポジションで入社。 新しく入ったこの会社が、、、ブラック企業でした。

期間の短いプロジェクトを次々こなすため、常に締め切り前で帰宅は私と息子が寝た後、終電やタクシー帰りが多くなりました。 ただ長時間勤務なだけであれば、この業界はよくあることなのですが、パートナーである上司が、、、ブラック上司でした。 マイクロ・マネジメントの典型で部下の行動を監督し、侮辱的な言葉で部下を威嚇し長時間労働を強要、週末も電話やメールでの指示が止みませんでした。 夫はこの上司の右腕として同じように部下をマイクロ・マネジメントするように言われることが本当に心理的に苦痛のようでした。 スケジュールはすべてこの上司が決めアシスタントがアレンジするため、夫にはスケジュールのコントロールの自由がありませんでした。

転職当初は「2年がんばる」と言っていたのが、「1年半は」になり、「1年もつかなー?」になりました。 私が「この会社にいるのはもう長くないな」と思ったのは、夫が珍しく会社を早く出ることができ「今日こそベッドに入る前に息子の顔が見れる!」と喜び勇んで帰ってきた晩のこと。 1歳になるかならないかの息子はパパの帰りを待つことができず、夫の帰宅5分前に寝入ってしまいました。 走って帰ってきてベッドタイムに間に合わなかったと知ったとき、夫はあまりの悔しさに涙を流してしまいました。 

この頃には、普段パパをあまり見ないので息子の「ママ、ママ〜」がひどくなり、パパが抱こうとすると嫌がるようになっていました。 ベッドタイムに間に合わず涙を流す夫の姿を見て、精神的に参る前に会社を辞めさせようと決心しました。

この頃、ちょうど私たちは初のマイホームを買おうとしていました(→『マイホームへの道 – 1』『 – 2』)。 持ち家信仰が強いオーストラリア人である夫がずっと家を買いたがっていたためですが、気に入った家が見つかりオファーを入れ、住宅ローンを組み、と着々と購入プロセスは進行していて、住宅ローンという大きな経済的コミットメントを前に、夫は家族のために働いていました。 そのため「次の仕事が見つかる前に簡単に辞めることなんてできない」と信じこんでいました。 でも自分でスケジュールをコントロールできず早朝から深夜まで拘束されている状況で、次の仕事を見つける時間など全くないのは明らかでした。

この事件からさらに数週間後、たしか木曜日でした。 その週は毎日深夜まで仕事をしていて、夫の顔が白っぽく(灰色っぽく)なっていたのが気になっていました。 木曜の夕方、私の携帯に夫からSMSが入りました、「今知ったんだけど、明日の朝6時のフライトで某東欧の国に出張になった。 今日も遅くなる」。 朝6時のフライトということは3時起き、今日も帰りが遅いということは真夜中を過ぎる。 あの顔色でこんな出張は無理!
次から次へと勝手に入れられるスケジュールに過労と寝不足で言われたとおり動くのがやっとの夫にSMSで諭したり議論しても仕方ないと判断し、私は力技に出ることにしました。

深夜に帰宅した夫が寝たのを確認してから起き、夫の目覚まし時計代わりの携帯を止めようとしましたが、アラームの消し方がわからず奥の部屋に夫の携帯を隠しました。 朝3時、奥の部屋で鳴り始めたアラームにわずか2時間ばかりの睡眠を取った夫が起き、私も起きて出張に行かないよう説得を始めました。

次回に続く。


3 responses to “一家の大黒柱が無職になった – 1

  • あも

    ああ、何だか元コンサルティングファーム出身者としては、よくある話だな〜と思いつつも続編が気になる…

  • 鈴木英介

    初めまして。Gunosyの推薦記事に出ていて、初めてブログを訪れました。
    私も元戦略コンサルだったので、思わず入り込んで読んでしまいました(笑)

    コンサルで直属の上司(パートナー)がブラックな場合は逃げようが無いので、厳しいですよね。

    若くて独身のうちであれば、まあそれでも成長の肥やしと割り切ることもできなくはないですが、
    人生それなりの段階にある場合は、話もちょっと違うと思います。

    私自身はその後事業会社での経験を挟んで、今また自分自身で独りでコンサルティングを
    生業にして生きていますが、自分で全部決められるのですごくやり易いですよ。

    特に、小さい子供と自分自身納得できる時間を共にできるようにするという意味では、
    独立してやるというのも(それなりの専門性を身に付けた後であれば)良い選択肢だと思います。

    また続編を楽しみにしております。

    最後にコメントついでで恐縮ですが、この類のフィードバックをするのに、私が手掛けています
    MessageLeafというツールがかなり便利です。

    もしよろしければ、下記サイトをご参照の上、導入ご検討いただけるようでしたら嬉しく存じます。
    http://ja.messageleaf.jp/

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