Category Archives: 建築・インテリア

あなただけの家 – 1

『そこにしかないもの』はヨーロッパでは築数百年の建造物が昔と変わらぬ概観を保ち「都市の顔」である街並みにアイデンティティーを与えているという話でした。 今日は建物の「外」の話ではなく「中」の話。
『古いほど人気のマイホーム』に書いたようにロンドンの住居の半数以上は第二次世界大戦以前に建てられており、古ければ古いほど”Period Property”(時代もの不動産)と呼ばれ人気です。 全住宅流通量(既存流通+新規着工)に対する既存住宅(中古物件)のシェアは日本が13.5%に対し、イギリスは88.8%だそう(アメリカ77.6%、フランス66.4%。 国土交通省『中古住宅流通、リフォーム市場の現状』より)。 
建物の外側は街並みという「公共」に属しているものなので個人で勝手に変えることはできません。 ところが、築100年以上の建築物でも中は現代人の生活に合うようにモダンに変えてある、ばかりではなく、イギリス人は自分に合うように内装を変え、時には増築・改築をしながら「自分だけの個性ある家」に何年もかけて仕上げます。 インテリアにおいて重要なことは「住む人の個性を反映していること」であり、特定のスタイルであることではなく、もちろん広さや最新ファシリティーではありません。
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「そこにしかないもの」

早いものでロンドンに引っ越してきてから丸3年以上経ちました。 来るときは「5年はいるかなー?」と言っていたのに、ロンドン生活が楽しいのでもうちょっといることになりそうです(ロンドンに来た理由→『ロンドンに引っ越します。』)。
2年ほど前、当時ケンブリッジMBA留学中の人に「ようこさんがキャリアを決めるポイントは何ですか?」と聞かれたとき、「場所」と答えたら彼は絶句してました(もっとかっこいい理由を期待してたのかしらん?)。 でも私にとって「場所」(都市空間だったり建築だったり文化だったり総合的な意味で)は本当に重要で、空間が自分の心理に与える重要性に気づいたことがキャリアチェンジのきっかけです(→『空間が持つパワー』)。

昔からヨーロッパが好きだったのですが、『人が自然に生きられる社会』だからという理由以外にそれぞれの国が個性を、さらに言うとアイデンティティーを意識的に強く持っているところが魅力的な理由。 「そこにしかない」ものがあるから、世界の旅行者数ランキングも上位の多くをヨーロッパ諸国が占めているのでしょう(2012年ランキングでは1位のフランスを筆頭に上位10ヵ国のうち4ヵ国がヨーロッパ→Wikipedia: World Tourism rankings)。 なぜ「そこにしかない」ものを保っているのか、という点では、ハイライフ研究所の『ヨーロッパに学ぶ「豊かな都市」のつくり方』という連載第3回の以下の箇所に同意。
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ファイナル・プロジェクト – 3


客室はメゾネットタイプ。 すべての部屋の窓から絶景を楽しめるように窓枠にそのままベンチとして腰掛けて外を眺められるようになっています。 このアイデアは『親切で優しい成功哲学』で紹介した哲学者Alain de Bottonが行っているLiving Architectureというプロジェクトの家(→例えばThe Dune House)にインスピレーションを受けました。 窓の外の景色をアート、窓を額縁と見立て、景色が最も美しく見えるように窓枠を切り取るというコンセプト。

屋根にもちょうどロフトのベッドに寝転びながら星空が眺められる位置に天窓が。 ベッドのヘッドボードとマットレス台もチェックのファブリックでUpholstery。 ロフトの下の部屋はバスルーム、銅製のバスタブと洗面ボウルはWilliam Holland。 壁の木材は薄い色と濃い色を交互に組み合わせ、部屋が重くトラディショナルになりすぎないようにします。 もちろん壁にはローカルのアーティストの作品が。
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ファイナル・プロジェクト – 2


1階のエントランス(玄関)を入り右に曲がるとダイニングルームとオープンキッチン。 夜はアンティークストーブの前の大きなダイニングテーブルでゲスト全員がシェフお手製の料理を堪能しますが、朝は天気がよければテラスで朝食が楽しめます。
ホテルにある家具はスコットランドまたは英国内で求めたアンティーク品とモダンブリティッシュデザインの組み合わせ(上記ダイニングテーブルはアンティーク、椅子はBenchmarkのもの)。 すべてのUpholstery(*1)の椅子はスコットランド ハイランド地方に起源を持つ伝統柄にインスピレーションを得たファブリックを張っています。
*1・・・詰め物をして生地を張ること
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ファイナル・プロジェクト – 1


記憶が怪しくなる前にThe Interior Design Schoolの最終プロジェクトをアップしておきます(今までブログに載せた『ロフトアパート・プロジェクト』『クリエイティブ・プロジェクト』とこの最終プロジェクト以外にもあるのですが、ブログに載せるのはこれが最後)。
卒業展で展示する最終プロジェクトはテーマは何でもよし。 学校の向い側にある建物を使ってどんなスペースをデザインしてもよく、イギリス国内であればどこにロケーションを設定しても構いません。

私は今回インテリアデザインを勉強しましたが、『空間が持つパワー』に書いたように、場所が人に与える空気・パワーが好き。 その空気をつくり出すものが結果的に建築(外の箱)なのか、インテリア(中に入ってるもの)なのか、ランドスケープ(景観)なのか、は分類上の違いでしかなく、素晴らしい場所というのは都市計画も含めこれらが一体となっているものだと思っています(そういう意味で将来インテリア以外の領域も学ぶと思うし一生かけても全部はカバーできないほど広くて深いトピック)。
常々アマンリゾートのような外の自然と建物と中のインテリアが三位一体となった空間が好きだったので、最終プロジェクトには隠れ家リゾートをデザインすることにしました。

「イギリス国内」という制限がついていたので選んだ場所はスコットランド北部に位置するスカイ島。 上がそのリゾートのイメージボードです(クリックすると拡大します)。
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クリエイティブ・プロジェクト – 2

昨日の続き。
フランスのスパークリング・ウォーターブランド ペリエがロンドンデザインフェスティバル中に出すポップアップ・バーのコンセプトは「ペリエを五感で体験する」、歩行者だけでなくサイクリストも自転車から下りずに入れます。 自分がミニチュアになってペリエのボトルの中に入ってしまうような感覚を再現するものですが、当日まで来場者に内容は秘密(クリックすると大きな画像になります)。

期間中の2週間だけ使われる建物は、ペリエのボトルを再現するためにドーム型のテント構造を採用。 クリエイティブオフィスが多数集まるClerkenwell中の路上にミステリアスな足跡と自転車マークが散りばめられ、その足跡に誘われるように追っていくと内から照らされた緑のドームが突如広場に姿を現します。
歩行者とサイクリストがぶつからないようにそれぞれ専用の入口から中に入ると初めてペリエのボトルの中に入ったんだとわかる仕組み。
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クリエイティブ・プロジェクト – 1

最近、育児の合間にちょっとずつ建築インテリアデザイナーとしての仕事を始めています。
去年の9月から今年の6月までプロフェッショナル・ディプロマを取りにロンドン北部のThe Interior Design Schoolに通い無事に卒業できたのですが、忙し過ぎてブログをお休みしていました。

学校が始まる前、『クリエイターになりたい。』と書いた私が果たしてクリエイターに近づけたのか、今の心境をまとめておこうと思います。
まず、私のワークブックは最後まで整然としていてフランク・ゲーリーのようなスケッチは描けませんでした(→『他人になろうとするには人生短すぎる』)。 大量のビジュアル・イメージから取捨選択してコンセプトを固めていくのがスタイルとなり、最後まで「何十枚もスケッチしながら考える」というデザイナーっぽいと私が思っていたスタイルは全く身につきませんでした。

その代わり、面白いことがありました。 学校のプログラムはプロジェクト形式でプロジェクト終了ごとに外部の現役デザイナーを呼んで発表会を行いましたが、私が学校の先生(チューターと呼ばれる現役デザイナー)からも外部デザイナーからも最も高い評価を受けたプロジェクトがその名もクリエイティブ・プロジェクト(3週間)と呼ばれるものでした。
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現代建築の都ロンドン

ロンドンオリンピックがあっという間に幕を閉じました。
皮肉屋のイギリス人魂を鷲掴みにした開会式で一気に盛り上がり2週間駆け抜けたオリンピック、私の友達が”£9 billion well spent!”(2週間でよく1.2兆円使った!)とこれまたブラックなことを言ってましたが、ロンドン市民としては宴の後、£9 billion(約1.2兆円)の費用の効果は気になります。

それはともかく閉会式のトップにこのショーを持ってきたときに、すっかりお馴染みとなったこの景色はすっかりロンドンの顔になったんだなー、と思いました。

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ロフトアパート・プロジェクト – 3

今日がシリーズ最終回、家具と素材について(『ロフトアパート・プロジェクト – 1』『 – 2』)。
Material_Board_Loft_Apartment.jpgこちらがマテリアル(素材)ボードです。 インテリアの印象を決めるのに重要な床材や壁紙・ファブリックなどをクライアントに見せるもの。
デザインプロセスと並行してマテリアルのサンプルを集める必要があり、いざ手元に取り寄せるとプランが変わったりイメージと異なったり、なかなか難しいプロセスです。

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ロフトアパート・プロジェクト – 2

昨日は、AlexとCorrineのロフトアパートを形容する言葉が、

AIRY(広々とした、新鮮な空気に満ちた)、CLEAN(すっきりした)、NATURAL(自然な)、ROMANTIC(ロマンチックな)、CHILLED-OUT(ゆったり・まったりとした)

決まったところまででした。
今日は私がプレゼンした内容を載せますが、ポートフォリオ(作品集)用に編集したりしていないので、まだ粗いままです。 転載不可、質問などあればこちらからメールでお願いします。
こちらがイメージボード。
Image_Board_Loft_Apartment.jpg

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