Category Archives: 4. 教養・知識

豚インフルと群衆の叡智

豚インフルエンザ(*1)が猛威を奮っています。 私の周囲でも弟がメキシコ旅行をキャンセルしたり、Mさんの来週に迫った結婚式にアメリカから来るはずのゲストが出席をキャンセルしたり、余波が広がっています。
*1・・・インフルエンザA型に名前が改められたらしい。
REUTERS :豚インフルを「インフルエンザA型」に変更、食肉産業に配慮=WHO
そして思い出したのが、以前読んだ『The Wisdom of Crowds』(日本語訳:『「みんなの意見」は案外正しい』)。
この本は、一握りの天才や、専門家たちが下す判断よりも、普通の人の普通の集団の判断の方が正しい、という爽やかな内容なのですが、一番面白かったのが、情報技術の発達により情報が即座にシェアできるようになり、SARS撲滅のために世界中の科学者が協力して以前の伝染病発生時には考えられなかったようなスピードでウイルス発見できた、という話。
SARSウイルスの発見は、WHOの主導でフランス、ドイツ、オランダ、日本、アメリカ、香港、シンガポール、カナダ、イギリス、中国の各国にある研究所に、ウイルスの発見、分析に協力するよう求めたことがきっかけとなり、国際プロジェクトが発足。 文字通りround the clock(24時間体制で)で研究した結果(1日が終わると研究者はその日の結果をシェアし、起きているタイムゾーンにいる研究者がその結果を利用しながら続ける)、その1ヵ月後には、コロナウイルスがSARSの原因であることが解明されたそう。
今も全く同じことが世界の伝染病研究者の間で行われているのだと推測します。 ウイルスの撲滅は彼らの手にかかっている。
もちろん被害にあった人は大変お気の毒なのですが、私は伝染病研究には何の知識もネットワークもないけど、「もうすぐ発見されるからね!」と勝手に思っている。 どうなんだろう?

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どうせ痛い思いをするなら早めにしよう

昨日の渡辺千賀さんのブログで、「あああ、ついに本当のことを言ってしまったのねー」という内容の千賀さんの信念がカミングアウトされました。

これまでずっとなるべく言わないようにしていたのだが、もう平たく/明快に言うことにしました。
1)日本はもう立ち直れないと思う。
だから、
2)海外で勉強してそのまま海外で働く道を真剣に考えてみて欲しい。

私も今まで言わないようにしてきたのですが、便乗してカミングアウトします。 本当にそう思う。
これを言っているのが海外在住日本人だけならば、「偏った意見だ」とか難クセもつけようがあるのでしょうが、15年以上日本に住み、日本人と結婚し、日本企業に勤め、日本文化も習慣もこよなく愛していた外国人(アメリカ人2人、イタリア人1人)が相次いで日本を発つ姿を目にしたときに確信(1人はアメリカに帰国、あと2人はシンガポールに移住)。
彼らがあげた理由は
1. 仕事の環境は悪くなる一方(市場は縮小するのみ、一方社内では年功序列で中高年が居座り変革が進まない)
2. 子どもの教育環境として良くない
でした。
そこで今日は「なんとなくそう思ってたけど、そうはっきり言われちゃうとねー でも○○だしねー」と思った人のためのエントリー(○○の部分は「英語できない」「もう年」「子どももいる」「家のローン組んだ」などそれぞれの言い訳を入れてください)。

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カルトのような文化

先週のThe Economistにアメリカの靴とアパレルのe-コマース会社Zappos.comの記事が載っていました。
The Economist : Keeper of the flame
CEOいわく「たまたま靴を売っているサービス会社」ということで類いまれなカスタマーサービスが評判なんだそう。 このサービスを支えるスタッフの指針となっているのが、Zapposの企業文化。 ”Culture Book”という本を従業員全員が読みこなしていて、”deliver WOW through service(サービスを通じてWOWを伝えよう)”とか”create fun and a little weirdness(楽しさとちょっと変を作り出そう)”とか書いてあるんだそう。
採用面接も「一番好きなスーパーヒーローは誰? そしてなぜ?」とか「1から10の間で自分のラッキーさは何点?」とか、まあユニーク。
ちょっとMBAの授業で読んだ”cult-like culture(カルトのような文化)”というケースを思い出しました。 ある意味カルトと言えるほど強い企業文化で企業と従業員とを束ねている会社を扱ったもので、ディズニーが例として挙げられていました(日本だとユニクロやリクルートが強い企業文化を持つとして知られていますかね?)。
そして、強い文化を持つのは企業だけではありません、学校もしかり。
世界中いろいろあるのでしょうが、私の行ったINSEAD(MBAプログラム)は在校生・卒業生の愛校精神が(他の人から見るとおそらく)気味悪いくらいに強く、うちは夫婦ともに卒業生なので、相当ウザイと思われていると思います。
(ここから少々、宣伝入ります)

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ドバイ・バッシングと英語での情報発信

久しぶりにJOIこと伊藤譲一さんのブログを見たら、二重の意味でタイムリーなエントリーを発見。
Joi Ito’s Web :ドバイに対するバッシングと「すり替えたがり傾向」について
何といつの間にかドバイに拠点を移していたJOIさんが最近のドバイバッシングとも言える記事(下にリンク)に対し、「今の風潮に合わせてドバイを叩いておこう」というジャーナリズムはいかがなものか?と疑問を呈したエントリー。
New York Times : Laid-Off Foreigners Flee as Dubai Spirals Down
Guardian : We need slaves to build monuments
The Independent : The dark side of Dubai
このNY Timesの記事というのが、ドバイで借金を抱えた外国人が空港に車を乗り捨てて国を逃げ出している(UAEでは借金を踏み倒したら実刑)、というもので、まさに夫や友人たちの間で「いやー、恐ろしいねー」と話題になっていた記事でした。
話は少し逸れますが、こちらのエントリーで紹介した『Ahead of the Curve: Two Years at Harvard Business School』という本にHBS(ハーバードビジネススクール)の卒業生のうち金融業界に進む人の割合とアメリカの株式市場には相関性があるという分析結果が紹介されています。

金融に進む人の割合が10%以下だと長期の買いシグナル、30%以上だと長期の売りシグナル。 HBSの2006年卒業生は42%が金融に進んだ。

かなり正確なシグナルだと思います、バブっているところに人もお金も集まるのである。
この箇所を読んで思い出したのが、INSEAD卒業生で卒業後ドバイに職を得た人が急上昇していたこと。 私は2004年卒でこのときはそうでもなかったのですが、2005年、2006年とまだ日本でドバイの「ド」の字も騒がれていなかった頃、ドバイに移る知人がどんどん増えていました。 「こりゃー、なんかあるなー」と思っていた2006年、出張でドバイに行く機会があったのですが、明らかにバブってました、すでに。
昨日はGoogle検索数が実態経済の予測指標になる話を書きましたが、ビジネススクールの卒業生就職先も先行指標になりそうです。

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Susan Boyle現象に見る新旧メディアの逆転

先週書いたばかりのSusan Boyleですが、日に日に英米マスメディア(新聞、テレビ)でのSusan Boyleセンセーションがすさまじくなっている(らしい)のにすっかり興ざめしつつある私。
Susanに興ざめしているのではありません、マスメディアに、です。
彼女のプライベートを洗い出したり、外見をmakeover(変身)させるか真剣にテレビで討論したり、彼女の生い立ちや外見にフォーカスしたものが多く、「そこがポイントじゃないだろー」みたいな。
リンクを貼るまでもないので、興味のある方はYouTubeで検索するといろいろ出てきます(CBSとか)。
フィーバー(死語?)の初期の頃(といっても先週の話)、マスメディアの雑音なしに純粋にYouTubeのリンクからSusanの歌う姿を見て(もちろんこれも“Britan’s Got Talent”が編集しているわけだけど)、”I dreamed a dream”の歌詞を地でいく姿に涙した情報感度の高い人たちは、もうすでに別の話題に移ってます。
さて、今回の件で圧倒的な存在感を見せつけたのは、YouTube。
ただ、YouTubeだけではここまで広がらなかったわけで、友達のお勧め文と共に貼られたYouTubeのリンクをFacebookのstatus updateやTwitterで見た人たちが次々に「私も感動した~」と各自の言語で書き込んでいったことから、世界中でYouTubeのSusanビデオクリップを観た視聴者が雪だるま式に増えていったのです。
私はすでにテレビは全く見ないのですが(→『私の情報ソース』)、今回の一件でますますテレビ放送業界がガラガラと音を立てて崩れていくのが聞こえた気がしました。
TV_rating.jpg最近のthe economistにアメリカのプライムタイムの地上波tv視聴率の推移が載っていました。 目を覆いたくなるような状況(ただし、ケーブルtvや衛星放送でtvを観る人は増えている)。
The Economist : Changing channels
日本の数字では、各メディアに集まる広告費の数字が面白い。
電通:日本の広告費

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イギリスで新たなスター誕生

友達のmixi日記で知った。
すでにネット上ではすごいことになってますね。
“Britain’s Got Talent”という“American Idol”のイギリス版TV番組オーディションに出たSusan Boyleというおばさんのお話。 47歳、スコットランド出身。 曲は私の一番好きなミュージカル『レ・ミゼラブル』の”I dreamed a dream”。
YouTubeの画像埋め込みができないので、リンクから見てください、損はさせません(笑)。 歌う前の審査員と聴衆の反応に注目。
YouTube : Susan Boyle – Singer – Britains Got Talent 2009 (With Lyrics)
『日豪ユーモア考』というエントリーでイギリス系の国のユーモアセンス(= sarcastic、ブラック)について書いたのですが、もうひとつの特徴としては、underdog(負け犬)が事前予想に反して勝っていく姿を応援するのが大好き、ってことでしょうか。
私の好きなイギリス映画もすべてこのunderdogが勝ち上がっていく物語かも。
– スラム街で育った少年がクイズ番組で勝ち上がる『スラムドッグ$ミリオネア』
– イギリス北部の鉄工所を解雇された中年男6人組がストリップショーを始める『フル・モンティ』
– 女子のものとされていたバレエでプロを目指す少年の物語、『リトル・ダンサー』
– 父の急死で靴工場をつぐことになった主人公が孤軍奮闘する『キンキー・ブーツ』
susan_boyle.jpg彼女のプロフィールは、もーまさにピッタリ。 
– 見ての通りの容姿(眉毛、何とかしようよー)
– 無職、教会のボランティアワーカー
– 独身(猫と住んでいる)、結婚経験なし、キスの経験もなし

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私の宿題 – アイヌ

日本を離れて改めて、自分の母国に対する無知ぶりを認識し、勉強しようと誓う人は多いと思います(日本文化の良さを再認識し、着物を着てみたりお茶・お華を習いたくなったりするのも同じクチ。 私はちっとも取りかかれていませんが・・・)。
夫とその他にも数人から「アイヌ」について聞かれたことがあります。
昨日書いたように、アボリジニーという先住民族がいるオーストラリアだから、同じように先住民族がいる(北海道だけだけど)日本がどのような経緯をたどったのか興味があったのかもしれません。
聞かれたときの私の知識はほぼ皆無。
– 小学生のときの家族北海道旅行でアイヌ村に行ったことがあるが、広場のオリの中にいた子熊に気を取られ、アイヌ村自体についてあまり覚えていない
– アイヌ語を日常会話で使用する人はほとんどいなくなった、とどこかで読んだ気がする
オーストラリアにおけるアボリジーの存在とはもちろん単純比較ができないとはいえ、この無知さはお粗末すぎる。 せめて今度聞かれたときに言語・民族・歴史を含めた包括的な説明ができるようになりたい、と私の個人的な宿題になっています。
宿題の取りかかりとして少し調べてみました。

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本、大人読み

『本1冊で13,000年を俯瞰する』でご紹介した『Guns, Germs, and Steel: The Fates of Human Societies 』(日本語訳:『銃・病原菌・鉄』)があまりに面白かったので、続けて同じジャレド・ダイアモンド『Collapse: How Societies Choose to Fail or Succeed』(日本語訳:『文明崩壊 滅亡と存続の命運を分けるもの 』)を読みました。
いやー、『銃・病原菌・鉄』に負けずとも劣らず面白かったです。
『銃・病原菌・鉄』が西洋文明が繁栄した理由を解明した本でスリリングだったのに対し、『文明崩壊』は過去の偉大な文明がなぜ滅亡していったかを解明するもので、前半の章(日本語版では上巻)はイースター島、マヤ文明などの文明が崩壊していく経緯が克明に描かれていてどーーん、と暗く読んでいました。 ところがそこから彼の圧倒的な専門知識(植物相、動物相、気象、地理etc.)と広い視野を駆使して現代社会が直面する環境問題につないでいく手法が圧巻。 ジャレド・ダイヤモンド(現在はUCLAの教授)は71歳なのですが、本の最後でなぜ自分の半生を地球環境問題に捧げることにしたかという理由にも触れ、感動ー。
こういう読んでいるだけで自分の血流が速くなるのがわかるような素晴らしい本は、やはり原著が英語のものに多いです。
感銘を受けたときはその本の著者の本を片っ端から読む「大人読み」をすることにしています。 次に私が最近大人読みすることにした著者を紹介、全員、超有名人ですが。 このブログですでに紹介した本はかっこ内にエントリーへのリンクを貼りました。

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海外就職における「日本の力」

最近めっきり更新が減って寂しい梅田望夫さんのブログですが、『「自分の力と時代の力」講演録』というエントリーにあった「時代の力」と「自分の力」の捉え方が私が今までひしひしと感じてきたことと非常に近いので経験を重ね合わせながらご紹介します。
とてもいい講演録なので、ぜひ全文読んでください、なのですが、以下関係部分だけ要約です。

梅田さんがシリコンバレーに移住した1994年は3つの「時代の力」が渦巻いていて、「時代の力」に押されるようにやってきた。
1つめは世界経済の状況。
2つめは「日本の力」(80年代後半はジャパン・マネーが席巻し、日本という国や日本企業の力をバックに、大きな仕事をして人脈を作ったりすることができた)。
3つめは「技術や産業の力」(ITは昔に比べ成熟し、時代の力は弱まっている)。
昔に比べ、これからシリコンバレーに移住しようとしている日本人を取り巻く「時代の力」は総じて弱まっている。

3つの「時代の力」が弱まっているという話は納得ですが、1.は全世界的に当てはまるし、3.はIT産業に特化した話なので、日本人が海外で就職したいときに、2.「日本の力」がどう変化してきているかについて私が実際感じてきたことを。
日本で生まれ育った日本人の海外就職(アシスタント職ではなく、メインストリームを対象)にはいろいろなパターン・タイミングがあります。
1. 大学から海外でそのまま現地就職(続いてMaster, PhDなど取得した場合もここに含む)
2. 日本で就職し数年経った後に大学院留学し、現地(または他の国で)就職
3. 日本企業から海外駐在し現地で転職
4. 日本で働いた後、自力で海外に渡り就職
その他にもありますが、私が一番詳しいのは2.のケースでMBA取得直後にそのまま海外で職を見つけるケース(私自身は2.ではなく4.)。

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新日本論の必要性

「今まで○○と○○という会社(日本国外でも誰でも知ってる日本企業)でこんなことしていました」と非日本人(教養あるビジネスマンです)に自己紹介をすると、「ステレオタイプな質問でごめん。 日本企業は男性社会なんでしょ? 若い女性が同じような仕事をすることに障害がなかったの?」とよく聞かれます。 特に年輩の人からはこういう質問が多い。
たしかにステレオタイプな質問なんですが、ほとんどの場合、日本企業で海外で一線に立って仕事をしている女性を見たこともないし聞いたこともない、ことから生まれるピュアな疑問だと思うので、私も「また同じ質問か・・・」などと思わずに丁寧に答えることにしています。
「私たち世代は女性も増えてきてると思うし、私は海外事業しか経験がないので、海外の顧客・パートナーにフェアに扱われなかったということはあまりない。 日本企業の問題はそれよりも年功序列だと思う」と。
人によって感じ方は違うと思いますが、新入社員の頃こそ(部で初めての女性総合職だったので)部署内の女性が順番にやっていたお茶当番やFAX当番から外してもらうのに一悶着あったりしましたが、その後はあまり差別を感じずにやってきた、というのが実感。 単に鈍感だったのか、すでに忘れてしまったのかもしれない。
今日の本題はそこではなく、外国人がなぜ上記のようなステレオタイプの疑問を持つようになるのか?という点。
出会ったばかりの頃、夫にも同じような質問をされたことがあるので、聞いてみました。
夫は大学で「現代日本」という授業を趣味で受講していたので、彼の現代日本の知識は大部分そこからきています。 カバーする範囲は広範に渡り、

サラリーマン、財閥/系列、女性の社会進出、学校教育、受験戦争、ヤクザ、暴走族、部落民、在日韓国・朝鮮人、アイヌ・・・

タブーな内容も多いのは、日本特有の事象に焦点を当てたらこうなったんだと思います。

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