海外就職における「日本の力」

最近めっきり更新が減って寂しい梅田望夫さんのブログですが、『「自分の力と時代の力」講演録』というエントリーにあった「時代の力」と「自分の力」の捉え方が私が今までひしひしと感じてきたことと非常に近いので経験を重ね合わせながらご紹介します。
とてもいい講演録なので、ぜひ全文読んでください、なのですが、以下関係部分だけ要約です。

梅田さんがシリコンバレーに移住した1994年は3つの「時代の力」が渦巻いていて、「時代の力」に押されるようにやってきた。
1つめは世界経済の状況。
2つめは「日本の力」(80年代後半はジャパン・マネーが席巻し、日本という国や日本企業の力をバックに、大きな仕事をして人脈を作ったりすることができた)。
3つめは「技術や産業の力」(ITは昔に比べ成熟し、時代の力は弱まっている)。
昔に比べ、これからシリコンバレーに移住しようとしている日本人を取り巻く「時代の力」は総じて弱まっている。

3つの「時代の力」が弱まっているという話は納得ですが、1.は全世界的に当てはまるし、3.はIT産業に特化した話なので、日本人が海外で就職したいときに、2.「日本の力」がどう変化してきているかについて私が実際感じてきたことを。
日本で生まれ育った日本人の海外就職(アシスタント職ではなく、メインストリームを対象)にはいろいろなパターン・タイミングがあります。
1. 大学から海外でそのまま現地就職(続いてMaster, PhDなど取得した場合もここに含む)
2. 日本で就職し数年経った後に大学院留学し、現地(または他の国で)就職
3. 日本企業から海外駐在し現地で転職
4. 日本で働いた後、自力で海外に渡り就職
その他にもありますが、私が一番詳しいのは2.のケースでMBA取得直後にそのまま海外で職を見つけるケース(私自身は2.ではなく4.)。


まず、ほとんどの私費MBA留学生は「できればMBA後、現地で就職したい」という淡い希望を抱いて留学しますが、大半は留学後、日本に帰ります。 理由は次のコンビネーション。
1. 同じ職種・職務内容であれば日本の方が待遇が良いので、待遇を下げて大変な思いをしてまでどうしても現地就職したいというモチベーションが続きにくい
2. 採用する企業がビザ(労働許可証)をスポンサーしてまで雇おうと思わせる経験・スキルがない (→これは裏を返すとスポンサーしてまで雇おうと思わせる経験・スキルがあれば就職できる、ということ)
3. グローバル企業であれば日本人は日本支社で雇われる、本社または他支社で必要な理由がない
またほとんどの日本人MBAは日本企業の海外現地採用は候補としていません、それは生え抜き主義の日本企業が海外現地採用を幹部候補者として見ておらず、駐在員と現地採用者に大きな待遇格差があるため(→『最近、本気で憂えること』)。 仮に現地採用を幹部に登用していても欲しいのは「現地人材」であり「海外に住む日本人」ではないのです。
10 – 15年くらい前は日本の市場に進出したいが日本にオフィスがない(または、整っていない)欧米企業が日本人MBAを(欧米の)本社採用するケースが結構あったように思います。 ところが、それら企業が日本に事務所を開設するや否や彼らは日本オフィス責任者として東京に赴任を命じられます。
こうして、日本という市場サイズが大きく(= 事務所を置く意味がある)、特殊な商習慣を持つ( = 日本的商習慣がわかる日本人が必要)市場に対しては、外国企業は東京オフィスを設立するので、どんなに頑張って海外就職しても「日本人は日本に送り返そう、日本に送り返そう」、という波が働きます。
MBAのケースでこの例外は金融。 金融はスキルと結果がわかりやすい世界なので、結果が出せれば「なぜ日本人をわざわざ雇うのか?」はあまり問われません。 非MBAであれば、スーパーエンジニアや弁護士など専門職もそうでしょうか?
そして今、グローバル企業は日本より中国とインドを重視しているので、日本市場の相対的重要性が低下し、ますます「日本の力」に頼ることは難しくなっています。
梅田さんの話は私の周りを見渡しても納得がいくのですが、では「時代の力」に対する「個人の力」はどうなのか?については明日。
時代の変化のスピードが早すぎて10年前のモデルが全く当てはまらなくなってきた、という話は『業界の旬とキャリア相談』に書きましたので、そちらもどうぞ。


2 responses to “海外就職における「日本の力」

  • CREA

    今回のエントリーは特に興味ある内容なので久しぶりにコメントします。
     国際都市(特にニューヨーク、ロンドン、シンガポール)への移住を夢見る僕にとって、
    現時点での戦略は、
    1. 大学から海外でそのまま現地就職(続いてMaster, PhDなど取得した場合もここに含む)
    の()内に当たります。
     この4月から学部時代に引き続き、同じ大学院の修士課程に進んだものの、そこを中退して
    でもアメリカでOperations ResearchのMasterの学位をとり、そこでの就職を考えています。
    >MBAのケースでこの例外は金融。 金融はスキルと結果がわかりやすい世界なので、結果が出せれば「なぜ日本人をわざわざ雇うのか?」はあまり問われません。 非MBAであれば、スーパーエンジニアや弁護士など専門職もそうでしょうか?
    この最後の質問に関して、以下のやり取りが示すように、そのとおりではないかと思います。
    これは、昨年の10月、僕が学内で受講した金融商品の評価(おもにデリバティブ商品)の講義のあと、
    その教授に海外の金融機関での就職を目指した、院留学に際してのアドバイスを仰いだ時のことです。
    (ちなみに彼は僕の大学の先輩ですが、M.I.T.でComputer ScienceのPh.D.を取得後、
    日本のとある銀行のロンドン支店などを含み約20年間、金融商品のリスク管理に従事され、
    現在は、学内のファイナンス研究科の教授をやっています。)
    僕: 「先生、僕、これからアメリカへの院留学を考えてるんです。
        卒業後に証券業界のトレーダやアナリストになるためには、
        やはりファイナンスを専攻にするのが妥当かと思うんですが。」
    教授:「金融業界で頭角をあらわすためには、徹底的にそこで必要
         なスキルをMasterの2年間で磨いたほうが賢いんだよ。
    僕: 「なるほど。たとえば・・」
    教授:「分析スキルだね。コーディングとかね。」
    僕: 「プログラミングの・・」
    教授:「そうそう。 だってファイナンスの知識なんて実務やってたらいくらでも入ってくるんだから、
        2年間はスキルを高めなよ。」
    僕: 「わかりました。」
    教授:「あとは人間性だね。まあ、日本人だと、明らかに東洋人ってだけでハンディキャップ
        背負ってるんだよ、わかる?」
    僕: 「はぁ」
    教授:「知識だけもってても白人ネイティブは相手にしてくれないよ。
        黒人なんかひどいんだから。彼ら(=白人ネイティブ)、人間とすらみなしてないよ。
        あとはユダヤ人のチョーできる頭の切れるやつなんかは、
        言葉巧みにやり取りうまくって、ヘッジファンドなんかにも20台前半で入ってる。」
    僕: 「へ~」
    教授:「とにかく、ウォールストリートやシティで第一線で働きたいんなら、スキルを高めてから
         入ったほうがいい。実力と人間性があれば海外でもやっていけるんだよ。」
    僕: 「わかりました。ありがとうございます。」
    とまあ、ぴか一のスキルを持っていれば、海外就職の道の可能性も広がってくることを指摘されていました。
    彼の指摘は、la dolce vitaさんや本田直之氏の指摘されている、
    ・「ふだんから足腰を鍛えておく」
    ・「ポータブルスキルをもつ」
    にも通じたことことなのではないかな、と感じます。(早く、スキルを磨かねば・・・)
    CREA

  • la dolce vita

    >CREAさん
    また、エピソード紹介して頂きありがとうございます。
    『業界の旬とキャリア相談』に書きましたが(ってこのエントリーは元々CREAさんにネタ提供してもらったんですが)、言えることは「どこの大学のどの学位取るとどこの業界行きやすい」というようなミクロなキャリアアドバイスはあまり意味ないってことですね。 だって、CREAさんがその業界に入る頃にはもう全然違った世界になっているかもしれないので。
    だから「ポータブルスキル(どう使うかは自分の頭で考えてください)」という汎用的な言葉でしか現すことができないのかも。
    目の前のことに追われると、周りで起っていることを見たり長期視野を持ったりできなくなるので、視野を横に縦に広くしておくことは大事だと思います。

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