‘la dolce vita’の終わり?

地中海沿岸の南ヨーロッパが好きでロンドンに住んでいる私(なぜロンドンかというと仕事あるからです)、ブログで実名を明かす前は’la dolce vita’というニックネームでした(→『’la dolce vita’の由来』)。 英語で”live La Dolce Vita”と言うと「あくせく働いたりせずに、太陽がさんさんと降り注ぐ土地で美味しいもの食べて家族とゆっくり過ごして、のんびり人生を謳歌する」というニュアンス、日本語では「スローライフ」が近いかな?(日本語じゃないけど)

南ヨーロッパは大好きで休暇のたびに南へ飛んでいます。
2007年夏はフランスとスペインのバスク地方、2008年夏は南イタリア、2009年夏は南フランス(123)、2010年夏は南スペイン(12)、冬はアマルフィ(1)、2011年夏はクロアチア(12)。 そして今年は1ヵ月前に南スペインに行って(乳児と幼児を連れた旅は疲労困憊したのでブログに書けず・・・)、年末には南ポルトガルに行ってきます。

そんな愛すべき土地の羨ましい’la dolce vita’なライフスタイル(『人が自然に生きられる社会』とも言う)が危機に陥っています。

政府財政は真っ赤っ赤(左の表は債務残高GDP比)、景気は後退する一方、失業率はうなぎ上り。 とりわけ解雇規制など構造的に硬直的な労働市場では若者が煽りを受けて15 – 24歳の失業率はギリシャ56%、スペイン54%と驚異的な高さ(左下の表。 いずれもThe Economist : European economy guideより)。

結局、降り注ぐ太陽の下で、仕事はそこそこで人生を楽しむことを最上とする志向に隠れ、過去10年以上も高付加価値な産業は育たず、生産性は伸びず、国際競争力は落ちる一方。
またこれらの国は少子化でヨーロッパの中でも出生率が低く、将来を担う世代が先代が残した巨額債務のツケに苦しむ、というどこかの国と似た構図になっています。 諸々の問題を隠してきた放漫財政がリーマンショックを機にした経済後退の中で一気に明るみになり、’la dolce vita’なんてグローバル化の津波の前では脆く儚い夢だったのねー、と暗〜い雰囲気。 原因が構造的で今も全く出口が見えません。

グローバライゼーションで先進国では国内の格差が拡大し中間層がいなくなり、少子化で老後も働かなければならない未来がくること、私もブログを始めた頃から書いてきたし(こちらにリストアップしてあります)、来るべき未来として受け止めてきたつもりなのに、南ヨーロッパがこんなに早くここまで痛むとは思ってなかった、この残念感は何なんでしょう? 

先月、南スペインの旅でここを再訪してきました。 私はスペインのデザート”Flan”(卵の黄身だけを使った濃厚なプリン)が大好きなのですが、今回の旅ではあまりデザートメニューに”Flan”があるレストランが見つからず、宿のMakiさんに聞いたところ「本当のflanは卵を使うけど最近はインスタントの粉を使うところばかり。 不況の影響でコストのかかる材料や手間をかける料理を提供するところが減って残念。」というお答え。

世界中がとてつもないスピードで変化を迫られている中、彼らだけに「変わってほしくない」と願うのは外部者の身勝手なのでしょう。 今までだって「ここには極上の暮らしがある☆」などという旅の謳い文句に釣られていただけかもしれないし。

これからの時代、一生幸せにメキシコの漁師(→『アメリカ人ビジネスマンとメキシコ人漁師の話』)できる人っていなくなっちゃうのかなー?といろいろ考えてしまいます。


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