Tag Archives: The Economist

トヨタ危機に思う。

日を経るごとに「まずいなー、まずいなー」とハラハラしていたトヨタ問題、結局米下院での公聴会までBBCで生中継で観てしまいました、全部は観なかったけど。
豊田章男社長が自ら(猛獣のごとし、海千山千の)下院議員の前に出て真摯な対応を見せたことでバッシングの嵐はひとまず過ぎた感がありますが(これからは損害賠償訴訟の嵐か?)、今回の件はすべての(日本国外でビジネスをする/しようとしている)日本企業は魂の底から震え上がり、即刻、自社の研修システム・人事制度などもろもろを改革するきっかけになるほどのインパクトを持っていたのと思うのですが、日本ではそういう機運や報道になっているんでしょうか?
1. 日本企業全体が不審の目で見られた
最もまずかったのは欠陥車の製造により事故を起こしたことではなく、それが判明した後の初動の遅さと対応の悪さだったのだが、トヨタに限ったことではなく日本企業全体のコーポレート・ガバナンスの欠陥と認識されてしまったのが、まずかった。
この点に関してはThe Economistが簡潔・明快にまとめているので以下に要約(The Economist : Accelerating into trouble)。

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早すぎた自由民主主義の勝利宣言(?)

シンガポールに住んで一番価値観が変わったこと、それは「アメリカが掲げる自由・民主主義が本当に全人類に取ってベストな政治形態なのか?」ということ。
私自身は自由な世界がよくてイギリスに引っ越してきたのですが、個人の好みはさておき、ベルリンの壁崩壊と共に共産主義イデオロギーが敗北したと欧米型自由民主主義が高らかに勝利宣言をしたのが20年前、「独裁制のイラクを民主国家にする」というよくわからない大義名分のもと(誰か頼んだっけ?)ブッシュがイラク侵攻し勝利宣言をしたのが7年前、当たり前だと思っていた民主主義ですが、シンガポールで「民主主義というイデオロギーの勝利宣言ってちょっと早すぎたのでは?」という疑問が芽生えました。
The Economistでちょうどその内容に合った記事が出ていたので紹介します。
The Economist : Crying for freedom
この記事自体は米国の人権組織「フリーダムハウス」が毎年行っている各国・地域の自由度を評価した報告書で世界で自由と人権が4年連続後退しているとした現状を分析したもので秀逸の記事、お勧め。
Freedom House : Freedom in the World 2010 Survey Release
記事ではもっぱら中国の経済的躍進をきっかけに「民主主義なくして経済発展は可能なのでは?」という希望をイラン、キューバ、アフリカなどの独裁者が抱いているとして民主主義の衰退が懸念されていますが、シンガポールも民主主義のない経済発展(世界の例外)としてさらっと何度か出てきます。

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MBA女性の10年後 – 王道対策編

先週の『MBA女性の10年後』は紛れもない現実ですが、

このままキャリアを求めてがんばって行くことの不安とある意味先が見えてしまったような(がんばっても仕方ないのではないか)そんな思いにかられてしまいました。

というMaikoさんのコメントにあるように、20代女性の希望を打ち砕いてしまったかもしれないので、巷ではこの現状にソリューションっぽいものも議論されていることを紹介。
明るい話の前に、前エントリーに補足して現実の例を。
先週ランチしたINSEAD友達Y(→こちらに登場)。 米系名門投資銀行(ロンドンオフィス)のヘッドハントを受けNYからロンドンに引っ越してきたばかり、2歳半と1歳の2児をフルタイム・ナニーを駆使して育てながらウォールストリートのエクイティセールスという激務ポジションで生き残ってきた、私の友達の中では最もバリバリと音がするほどのキャリアウーマン。
彼女が言っていたひと言。

前職のファーム(同業同職種)では、パートナー(共同経営者)まで残った女性はたったの3人。 うち1人はレズビアン、1人は未婚、1人は旦那さんが専業主夫。 そのどれも私には当てはまらない。 先行き暗いわよね・・・

暗い現実はこのくらいにして、The Economistの同じ号からWomenomicsという記事(長いので、以下私の意訳)。

第一世代のキャリア女性は男性と同じ基準で評価されることを主張した。 ”The sisters”として特別な扱いを受けるのではなく、誰よりも働き、頭が良くなることで人の先を行くことにこだわった(例:マーガレット・サッチャー元英首相、ヒラリー・クリントン米国務長官)。
ところが、最近のフェミニストの間では、男性のルールに従ってゲームをプレイしている限り女性は決して自らのポテンシャルを花咲かせることはできないと主張している。 「ガラスの天井」を破るだけでは十分ではなく、ビル自体に埋め込まれている「性差のアスベスト」を調査すること、つまり企業社会の構造やプロセスそのものに内在している性差別を根絶することが必要であると。

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MBA女性の10年後

ロンドンでの大きな楽しみがINSEAD友達とのキャッチアップ。 特に女友達はほとんどロンドンに集中しているので、積もり積もった話に花を咲かせるのが本当に楽しみ(昨日はそのうち1人目とランチしてきました)。
INSEADを卒業して5年半、20代後半だった私たちも30代前半~中盤に差し掛かり、結婚・出産と経る中でさまざまな選択をしなければならない難しい年代に差し掛かってきました。
新年号のThe Economistは”Women in the workforce”と題してとってもタイムリーな記事だったのでご紹介(The Economist : Female power)。
シカゴ大学ビジネススクールでは、MBAの10年後、子供がいる女性の卒業生のうち今も働いているのは半分だそう。 INSEADも状況は似ていて、11年前に卒業した友達に聞くと女性卒業生の半分は専業主婦だそうです(私は5年前卒業なので、まだ専業主婦は数えるほどしかいませんが、そろそろ出てきそうな雰囲気)。
記事では、思いっきりうなづける理由が説明されていました(拙訳)。

ひとつ明らかな問題は女性の大きくなる野心が満たされていないことだ。 彼女たちは出世の階段を昇るよう奨励されているにも関わらず、ミドル層は男性に占領され、トップ層は手が届かないものであることを思い知らされる。 フォーチュン500企業のトップのうち女性は2%だけ、FTSE100指数の企業のうち女性トップなのは5社だけ、アメリカで取締役に占める女性の割合は13%である。 戦略コンサルや銀行のトップ層は男性で占められており、アメリカとイギリスではフルタイム女性の平均年収はフルタイム男性の80%である。

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誰でもアメリカ人になれるアメリカ

年末のThe Economistのクリスマス特集(2週合併号)は面白い記事がたくさんありました。 今日はその中からひとつ(→こちら)。
“A Ponzi scheme that works”というタイトルがまず洒落ている。 ”Ponzi scheme”とは「ねずみ講」という日本語訳が当てられることが多いですが、小額の資金を元手に次々と投資家を集め、運用したリターンではなく次に集める投資家からの資金から支払う(従っていつかは破綻が約束されている)金融詐欺の手法。 去年のナスダック元会長マドフの巨額詐欺事件でまたホットな用語となりました。
この記事は金融詐欺の話ではなく、「アメリカとは外からの資金・労働者・頭脳の絶え間ない輸入に頼っている、本当に機能する”Ponze scheme”だ」という意味を込めたアメリカへの移民に関する記事。
私も去年は2つの調査結果に驚きました。
ひとつめは『他国へ移住したい人は全世界で7億人』に書いた米ギャロップ社による調査。 アメリカへ移住したい人が約1億6,500万人と2位以下を大幅に引き離し断トツの1位。
ふたつめはFuture Brand社によるCountry Brand Index。 こちらは旅行・観光分野における国のブランド力を評価したもので、こちらもアメリカが1位。
そんなに好かれている国だったとは・・・ 最近極めてイメージが好転したのはオバマの力も大きいと思いますが。

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「老後」がなくなる日

数ヶ月前のThe Economist(6月25日号)は”Ageing populations”と題し、高齢化特集でした。
その中の記事のひとつ、”The end of retirement”は以下のような内容。

1900年代初頭に定年が65歳に設定された当時は、平均寿命と定年が非常に近く、政府支給の年金がもらえるのは短い期間であった。 ところが、今や退職後の「老後」はみんなのものになり、その期間が四半世紀を超える国も出てきた。 OECD各国政府の公的年金にかかる支出はGDPの7%にのぼり(1935年のアメリカではその比率は0.2%だった)、2050年には現在より倍増すると予測されている。
平均寿命の増加という本来なら喜ばしいことに起因することに加え、先進国で急速に少子化が進んでいること、ベビーブーマーという最も人口の多い世代が引退し始めたこと、がこの傾向に拍車をかけている。 1950年にはOECD各国の20 – 64歳人口7人に対し、65歳以上人口は1人であった。 この比率が現代は4 : 1になり、2050年までには2 : 1になると予測されている(以下略)。
(The Economist : The end of retirement

日本はOECD諸国の先陣を切って少子高齢化まっしぐらなのですが、この「親世代が満喫しているような老後がないかもしれない」という危機感は、とりわけ私の周りのヨーロッパ人は共有している気がします。

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フランスの自殺率はなぜ高いのか?

France_suicide.gif先月のThe Economistの記事で私の周りで話題になった記事がありました。 フランスの自殺率がヨーロッパの中で飛び抜けて高い、というこの記事(下記にリンクを貼っていますが、the economistはこちらで書いたようにサイトは一部有料化の流れなので、後で読みたい人はコピペするなどしてください)。
The Economist : Bonjour tristesse
右のグラフでもわかるように、国民100,000人あたりの自殺数がイタリアやイギリスの2倍以上、ドイツより40%高い(もちろん日本の自殺率はフランスより高いのですが・・・)。
私の周り(非フランス人)の反応は「おいおい、フランスといえば週35時間労働制で(*1)私たちの半分の時間しか働かず、夏は2ヵ月のバカンス。 失業しても2年間は前給料の70%の失業手当で暮らせて、出生率は2.0を回復する少子化先進国のお手本。 アムールでjoie de vivreな国の人が自殺してたら、いったいボクたちはどうなるんだ?」というツッコミ。 私も似たようなことを思いました。
*1・・・サルコジ大統領は35時間労働規制見直しの方針。
当のフランス人に聞かずに判断するのはフェアではないので、親友のフランス人J(こちらに登場)に聞いてみました(「マッキンゼーでワーカホリック」以外に彼のバックグラウンドを付け加えると、フランスのエリート養成コースであるグランゼコールではなく、3ヵ国の大学との交換留学ができる大学を選び卒業後はロンドンへ。 INSEAD MBA後はパリに戻ったものの、閉鎖的なフランス人社会と合わず、アジアに来たかったのでシンガポールへ。 フランスを冷静に外から見られるフランス人です)。

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読む価値のあるメディア

ついにキタ。
The Economistからウェブサイトの有料化方針についてメールがきました。
最近忙しいので、じっくり読む活字メディアはThe Economistだけになってしまっているのですが、今はウェブサイトで過去1年分の記事が最新号も含め無料で読めます。
The Economistの素晴らしさはこちら→『The Economistを読もう!』
私が普段読むメディアはこちら→『私の情報ソース』
記事全文がオンラインで公開されているため、私もブログで引用しやすく助かっていたのですが、「最新号が無料で読めるって随分太っ腹だなー」と思っていたところ、やはり最新号は購読者のみアクセスできるようにするなど制限の流れ。
私は購読者なので影響はないのですが、今までオンラインで読んでいた人には影響ありますねー
英米の新聞メディアは、目玉の解説記事や寄稿も含めオンラインで全面的に無料のところが多いです。 ところが、昨年以来の不景気と広告収入減少の影響がメディア業界を直撃しており、ルパート・マードックのニューズ・コープが傘下の新聞(Wall Street Journalなど)を年内に有料化すると発表するなど、英米新聞業界は無料と有料の間を揺れ動いているようです(参考:小林恭子の英国メディア・ウォッチ)。

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日本の選挙 – 世界の反応

民主党の圧勝から1週間。 同僚、クライアント、友達、etc. 会う人、会う人から感想と解説を求められます。
なんだ・・・ジャパン・パッシングとか言われてるけど、みんなめちゃくちゃ関心持ってるじゃん・・・日本に・・・
japan_election.jpgthe economistの表紙が富士山が噴火する絵になっていたように、世界中のメディアも大注目していた今回の選挙。 私がやらなくてもどっかにまとめられている気もしますが、普段よく読む活字メディアの反応をまとめておきます。
まずはお馴染みThe Economist(JB Pressに訳が載ってました)。 
The Economist : Japan’s election – The vote that changed Japan
JB Press : 日本の総選挙 – 日本を変えた票決
10年以上前に”Japan’s amazing ability to disappoint.”(私たちをがっかりさせる日本という国の驚くべき能力)と日本を皮肉たっぷりに形容して以来、去年もJAPAiNという特集で日本の停滞の元凶は政治家だと痛烈に批判(この記事はThe Economistのサイトではログインしないと見られなくなってしまったので、日本語サマリーはこちら)。

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教育における重要な変化

少し前にブログネタ切れと書いたら、CREAさんが非常に興味深いインタビューを送ってくださいました。 今年出版された『国をつくるという仕事』で知った人も多いのでは? 元世界銀行南アジア担当副総裁の西水美恵子さんのインタビュー。
ソフィアバンク:Audio Archives 西水美恵子
西水さんは都立高校時代に奨学金でアメリカへ留学して以来、ずっと日本を外から見てきた、ということでインタビューの内容は本当に深く考えさせられるものでした。
経済学者としてプリンストン大学で教えていたのに畑違いの世界銀行へ転身した過程を語った「(1)貧困と戦う世界銀行との出会い」もお薦めですが、「これは聞いておくべき」と思ったのが「(2)今、日本は、何を改革すべきか」の教育に関する箇所(以下、インタビュー該当箇所のサマリー)。

私は教育格差のない時代に義務教育を受けた。 貧しい家庭の子どもでも勉強すればいい学校に行って良い教育が受けられた。 私の行った都立西高はその時代のトップレベルの先生がいた。
その根本が崩れ始め教育格差がつき始めたのが20年ほど前。
世界銀行で取りたい人が見つからなくなった。 海外で仕事や大学に行っている日本人であれば世界銀行で取りたい人材がいるが、日本から直接では欲しい人が見つからないようになった。

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