誰でもアメリカ人になれるアメリカ

年末のThe Economistのクリスマス特集(2週合併号)は面白い記事がたくさんありました。 今日はその中からひとつ(→こちら)。
“A Ponzi scheme that works”というタイトルがまず洒落ている。 ”Ponzi scheme”とは「ねずみ講」という日本語訳が当てられることが多いですが、小額の資金を元手に次々と投資家を集め、運用したリターンではなく次に集める投資家からの資金から支払う(従っていつかは破綻が約束されている)金融詐欺の手法。 去年のナスダック元会長マドフの巨額詐欺事件でまたホットな用語となりました。
この記事は金融詐欺の話ではなく、「アメリカとは外からの資金・労働者・頭脳の絶え間ない輸入に頼っている、本当に機能する”Ponze scheme”だ」という意味を込めたアメリカへの移民に関する記事。
私も去年は2つの調査結果に驚きました。
ひとつめは『他国へ移住したい人は全世界で7億人』に書いた米ギャロップ社による調査。 アメリカへ移住したい人が約1億6,500万人と2位以下を大幅に引き離し断トツの1位。
ふたつめはFuture Brand社によるCountry Brand Index。 こちらは旅行・観光分野における国のブランド力を評価したもので、こちらもアメリカが1位。
そんなに好かれている国だったとは・・・ 最近極めてイメージが好転したのはオバマの力も大きいと思いますが。


記事中では全く異なった人生を送る2人のアメリカ人(韓国の貧しい家庭に生まれ20代でアメリカに移住、バージニア州の郊外の韓国人コミュニティで毎日韓国飯を食べながら平和に暮らすMr.Lee、ソマリアに生まれ内戦を逃れて難民としてオランダに渡った後DV(ドメスティック・バイオレンス)根絶のキャンペーンを始めたところ脅迫を受けるようになりアメリカに移住、周りに勧められてムスリム女性に対する暴力を調査する基金を設立したMs Hirsi Ali)を取り上げ、アメリカの大きさと多様さによりどんなニッチな人でも必ず自分の居場所が見つかる、そして誰もがそれを許容する、と解説していました。
going_to_america.jpg私も基本的には

The greatest strength of America is that people want to live there
アメリカの最大の強みは人々がそこに住みたいと思っていること

には極めて同意。 中国やインドがどれだけ経済発展しようと(もちろん相対的なパワーバランスは変わってくるのだろうけど)、永住したい人、中国人・インド人になりたい人がどれだけいるかどうか・・・(日本人だけのデータになってしまいますが、『海外日本人をデータで見る』で紹介した海外在留邦人数調査統計によると、在留者のうち永住者が占める割合がアメリカでは34%に対し中国は1%)。
そして意欲のある人を惹き付けられる国は生産性が上がり経済発展できるのだという点にも同意。
記事の中ではちょろっと日本も出てきます。

Americans may have an annoyingly high opinion of their country, but theirs is an inclusive nationalism. Most believe that anyone can become American. Almost nobody in Japan thinks that anyone can become Japanese…
アメリカ人はうっとおしいほどに自国の評価が高いかもしれない、でも彼らのはどんな人でも受け入れようとするナショナリズムである。 ほとんどの人は誰でもアメリカ人になれると思っている。 でも日本で誰でも日本人になれると思っている人はほとんどいない。

誰でもアメリカ人になれるアメリカと、日本人両親のもと日本に生まれ育ち日本語を話さないと日本人になれない日本。
私は常々「外国人がアメリカ人になっていく過程」にも興味があるのですが、それはまた後日。


5 responses to “誰でもアメリカ人になれるアメリカ

  • lat37n

    「だれでもアメリカ人になれる」これ最高のアメリカの強みだと私思ってます~
    まあ、精神的なところとか含め、本当の意味でアメリカ人になれるか、というと、大人になるまで外国人だった人には厳しいけどテクニカルには可能。
    アメリカで生まれたアメリカ人も外国人に対し「ぜひアメリカ人になるべきだ」って積極的に思ってるのは、みんなが数代たどれば移民で、船着き場で移民手続きを経てアメリカ人になる手続きをしたDNAが残ってるからかなあ、なんて、前NYのエリス島の移民博物館?みたいなのに行った時思いましたです。
    そして明けましておめでとうございます。今年も面白いエントリーをじゃかじゃか上げてください♪

  • la dolce vita

    >lat37nさん
    >アメリカで生まれたアメリカ人も外国人に対し「ぜひアメリカ人になるべきだ」って積極的に思ってる
    これがすごいです、すごい自信・・・
    数代たどればみんな移民はオーストラリアも同じですが、イギリス系が多く、イギリスの影響がまだまだ強いところが全然違うところでしょうか。 アメリカのように独立戦争を経たわけじゃないので、独立国家としてのアイデンティティーがまだ若いというか・・・。
    >明けましておめでとうございます。
    おめでとうございます〜 今年もよろしくお願いします♪

  • tsubaki

    やや遅れてのコメントですが、”外国人がアメリカ人になっていく過程”、私もかなり興味があります。
    もっというと、中国人など比較的ナショナルアイデンティティが強い(といわれる)国出身の外国人のその過程と、日本人のそれとの比較など。しかし上記のCountry Brand Indexの1位という結果には驚きました。。
    ついでですが、最近は文学でも移民作家の活躍目覚しく、私はこないだJhumpa Lahiriというインド系移民作家の作品をいくつか読みましたが、まさにla dolce vitaさんが書かれていることとかなりリンクしていますので、おすすめです。機会があればぜひ目を通されてみてください^^

  • la dolce vita

    >tsubakiさん
    >中国人など比較的ナショナルアイデンティティが強い(といわれる)国出身の外国人のその過程と、日本人のそれとの比較など。
    日本人はわかりませんが、中国系アメリカ人、中国系オーストラリア人、中国系カナダ人の友人がいるのですが、その違いが興味深いという話を書こうと思ってました。 まとまったら書きます。
    >Jhumpa Lahiriというインド系移民作家の作品
    ご紹介ありがとうございます。 できれば書名も教えてください。 Amazonのある国に復帰できてハッピーです(シンガポールは全部輸入書ですべて高い。 オンライン本屋はない)

  • tsubaki

    >la dolce vitaさん
    遅レスですが、まずはアマゾンユーザーへの復帰、おめでとうございます(笑)
    Jhumpa Lahiri作品で私が一番好き・且つ違う文化圏で長く暮らした経験がある方ならおそらく共感されることも多いだろうと思うのが”その名にちなんで/The Namesake”や最新の短編集”見知らぬ場所/Unaccustomed Earth”などかと。その他、映画化されて現在日本でも上映されている米国在住北京出身中国人作家Yiyung Liの”千年の祈り/A Thousand Years Of Good Prayers”もまた面白い作品ですのでぜひ。ラヒリもそうですが、作者の体験やバックグラウンド、歴史が垣間見える移民作家の作品は自分の持ってる知識や興味が刺激されるので、どんどん読めてしまいますね。

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