「老後」がなくなる日

数ヶ月前のThe Economist(6月25日号)は”Ageing populations”と題し、高齢化特集でした。
その中の記事のひとつ、”The end of retirement”は以下のような内容。

1900年代初頭に定年が65歳に設定された当時は、平均寿命と定年が非常に近く、政府支給の年金がもらえるのは短い期間であった。 ところが、今や退職後の「老後」はみんなのものになり、その期間が四半世紀を超える国も出てきた。 OECD各国政府の公的年金にかかる支出はGDPの7%にのぼり(1935年のアメリカではその比率は0.2%だった)、2050年には現在より倍増すると予測されている。
平均寿命の増加という本来なら喜ばしいことに起因することに加え、先進国で急速に少子化が進んでいること、ベビーブーマーという最も人口の多い世代が引退し始めたこと、がこの傾向に拍車をかけている。 1950年にはOECD各国の20 – 64歳人口7人に対し、65歳以上人口は1人であった。 この比率が現代は4 : 1になり、2050年までには2 : 1になると予測されている(以下略)。
(The Economist : The end of retirement

日本はOECD諸国の先陣を切って少子高齢化まっしぐらなのですが、この「親世代が満喫しているような老後がないかもしれない」という危機感は、とりわけ私の周りのヨーロッパ人は共有している気がします。


去年、金融バブルが崩壊するまでは「金融業界(投資銀行、プライベート・エクイティ、ヘッジファンド)で30代までにひと財産築き、若くして引退する」というヒット&ラン型(?)のキャリア戦略が存在したのですが、大規模レイオフ、ボーナス大幅カットで、そういう威勢のいい声はほとんど聞かなくなりました(歴史が繰り返し、またバブってくると出てくると思いますが)。
それに代って、最近よく聞くキャリア戦略はふたつ。
1. 成長市場に行く
『フランスの自殺率はなぜ高いのか?』に出てきたフランス人Jの戦略。

ヨーロッパは国家が成人してしまい後は老人になるだけ。 ”親が子供の食い扶持を食っている”状況なので(若年世代は高失業率と重税で苦しむ)、若い頃はアジアに出て稼ぎ、引退してからヨーロッパに帰る(→『成熟国出身者のキャリア戦略』も参照)。

正確には成長市場で起業でもしない限り、欧米企業でいてもらえる給料以外に稼げるわけでもないのですが、
– 生活コストが安い
– (シンガポールのような国では)税金・社会保障負担が少ない
ため、貯金は貯まるでしょうねー・・・(→『(Expatとして)貯金が一番貯まる国』)。 また、「成長市場の仕事の方が内容が面白い」という気持ちもわかります、撤退戦略やコスト削減戦略ではなく、成長戦略ばかり考えてればいいんだもの。
2. 好きなことをして細く長く働く
『好きなことを仕事にした人たち』に出てきたオーストリア人Peterの戦略。

どうせ70, 80まで働くなら毎日好きなことをしたい。 給料のため好きでもない仕事をして、この職の保証のない世界で、いきなり放り出されるくらいなら、日々暮らせるだけ稼げるのであれば、ずっと好きなことをし続けたい。 ボクはドライブと中国が好きなので、好きな2つを組み合わせた会社をつくった。

もちろん「起業して一発当ててアーリー・リタイヤしたい」というベンチャー志向の人もいると思うのですが、最近増えているのがこのSmall Business志向。 フリーエージェント化と同じ流れですが(→1, 2, 3)、より「好きなことを仕事に」という”趣味性”が強いのが特徴(Lifestyle Businessとも呼ぶ)。
最近のMONOCLEでもSmall Businessが特集されていました(→MONOCLE : Small Business Guide)。 MONOCLEについての過去エントリーは右バー下のTag Cloudの中からどうぞ。
「老後」がなくなる日に備えて、みんな準備しているのです。 私も準備しなきゃ。


2 responses to “「老後」がなくなる日

  • misae

    はじめまして!どこからどう辿り着いたのか定かではありませんが、最近このブログに巡り逢い、いつも楽しく拝見させていただいております。私は現在北京に住んでいます。いろいろ参考になることや興味あるお話が満載でこの3日くらい、かなり熟読してしまいました。Small Business志向、まさに私もそのような考え方から起業しました。自由になった分、すこしづつやりたい方向へシフトしていけるよう模索中です。これからもちょくちょく拝見させていただきます、がんばってください。

  • la dolce vita

    >misaeさん
    >Small Business志向、まさに私もそのような考え方から起業しました。
    北京でsmall businessとは素敵ですね。
    やりたい方向へ進むことから自分を妨げているのは、他人からの評価を気にしてしまう自分の心な気がします。
    日本国外に出た方が、そういう他人との比較の人生から自由になれそうな気がしますよね。 あとは自分次第というか。

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