『クリエイターたちのロンドンの家』シリーズ4人目は②サルベージ系のアーティストカップルJames RussellとHannah Plumbの南ロンドンのお家。
JamesPlumbという名で創作活動をしており、使われなくなった古いオブジェクトを新しい目的を持ったものにクリエイトする”repurpose”(再度目的を持たせる)、”upcycle”(リサイクルではなくアップサイクル、もっと付加価値の高いものに作り替える)と呼ばれるデザイントレンドの先駆者です。 作品はDezeenの記事(→こちら)でも見ることができます。
彼らのマイホームは1840年代ヴィクトリア時代に建てられた小さなコテージ、買った当時はあまりにもひどい状態だったものを少しずつお金がたまるたびに壁や床をはがして改装してきたそう。 イギリス人は、家が古ければ古いほど、状態が悪ければ悪いほど燃える人が多いのですが(→『古いほど人気なマイホーム』)、まさにそういうタイプ。 部屋の中は小説ディケンズの時代にタイムスリップしたような錯覚が起きるほどムードたっぷり。
同じサルベージ系でも廃材の加工などにお金がたっぷりかかってそうな前回のRetrouviusのインテリアに対し、本当にお金がかかってなさそうなところがいいです(笑)。
(写真のソース:Simon Kennedy、Liza Corbett、The Independent)
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クリエイターたちのロンドンの家 – 4
クリエイターたちのロンドンの家 – 3
好評『クリエイターたちのロンドンの家』シリーズ、①色の祭典系(1, 2)に続いて、②サルベージ系の登場です。
“salvage”とは「救出する」「復古させる」という意味ですが、取り壊され捨てられる寸前の建築材・廃材をその名の通り救って再利用すること。 ここ10年くらいイギリスのみならず欧米で大トレンドになっています。 普段インテリアデザインのトレンドなど触れることがないThe Economistでも2012年に記事になっていました(→The Economist: Back to future)。
古い建物から救出した床材やタイル・石材などを使用したデザインでこの分野の先駆者となり熱狂的なファンがいるショップ・デザインスタジオRetrouvius、MariaとAdamという夫婦が創業者です。 建築廃材や古いトイレ・バスタブなどが二束三文で売られるreclamation yard(再生場)をお洒落な若者が闊歩する場所に変えたのは彼らの功績が大きいでしょう。
サルベージ系の人気の理由は、新品を買うのと異なり、使い込まれすでに年輪が刻まれ味が出た建築材を使ってオリジナルな自分のインテリアをつくりあげるプロセスそのものを楽しめること、「この壁材は北イングランドの学校の体育館で使われていたんだよ」などとストーリーを語れること。 格好いいけど自分でやるのがすごく難しい彼らのスタイルは著書『Reclaiming Style』で余すところなく堪能できるので、気になった方はそちらもどうぞ。
(写真のソース:House and Garden UK、Remodelista)
今日はそのRetroviusが手がけたプロジェクト、建築用語でBrutalist architectureと呼ばれる1970年代築のコンクリート打ちっぱなしのビルBarbican Centreの上階アパート。 Barbican Centreは劇・ダンス・コンサートなどがパフォーミングアーツが開かれる会場も擁しています。
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クリエイターたちのロンドンの家 – 2
『クリエイターたちのロンドンの家』シリーズ2人目はファッションデザイナーZandra Rhodes(Zandra Rhodes)。 ファッション業界で40年に渡るキャリアを持ち、南ロンドンBermondseyにファッション&テキスタイル博物館を創設した彼女は博物館のあるビルの屋上に住居兼スタジオを構えています。
私が勝手にカテゴライズした「①色の祭典系」と呼ぶのにふさわしいぶっ飛んだインテリア。 ご本人もピンクの髪でビジュアル的にぶっ飛んでいて、ちょっと草間彌生さんを思い出しました。
元倉庫だったビルを5年かけてミュージアム&住居に改装したという大プロジェクト。 産業革命発祥の地で世界の工場と呼ばれたイギリス、「モノ」の生産地が中国など人件費が安い国に流れる中で工業用途だった建物を住居にコンバージョン(用途変更)することが非常に盛んです(参考:『The Restoration Man』、『廃墟に2万人が並んだ日』)。 壊さずに新たな息吹を吹き込むのが哲学。
(写真のソースはThe Guardian、The Selby、The Interior Stylist)
タワーブリッジ、シャードなどテムズ河沿いの建築が一望できるアパート最上階の外観は何とピンク。 すぐにメキシコのモダニズム建築家Luis Barraganを思い出しましたが、ドンピシャでBarraganの下で働いたことのあるカリフォルニアの建築家Ricardo Legorretaがプロジェクトの監督を務めたとか。

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クリエイターたちのロンドンの家 – 1
『21世紀の英国デザイン』では、一見すると英国っぽく見えない今のデザインを紹介しましたが、「ロンドンっぽい」デザインは存在します。 今回から数回にかけてロンドンを拠点に活躍するクリエイターのインテリアを見ながらビジュアル(視覚)でロンドンっぽさを感じて頂きたいと思います。 共通するキーワードは”quirky”(風変わりな)、”eccentric”(奇抜な)、”edgy”(先端をいく)、”eclectic”(折衷的な)です。 「ああ、何か(この人たち)自由でいいなー」と自分も殻を破ってみたくなりますよ。
そして今まで何度か書いていますが「伝統と革新の融合」はこの国に根付いているバリューなので、ほぼ全ての家で古いもの(価値のあるアンティーク品あり、ガラクタ市やeBayで見つけた二束三文の掘り出し物あり)と新しいものがミックスされているので、そこにも注目!(→『そこにしかないもの』、『あなただけの家 – 2』)。
ロンドンのインテリアと言えば2009年に出版された『New London Style』が秀逸でしたが、最近出版された『Creative Living London』
もとても良かったので、この2冊に出てきたインテリアが中心です。
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自分のスタイルを見つける方法
最近、「自分の好きなスタイルと聞かれてもわからない。 どうやって見つければいいの?」と聞かれたので「自分のスタイルを見つける方法」についてご紹介します。
職業上、インテリアを例に取りますが、ファッションでもアートでもビジュアル(視覚)に関するスタイルであれば同じ方法が使えると思います。
最初に、日本のインテリアデザイン誌や住宅展示場などでよく使われる「フレンチカントリー」「北欧モダン」のような言葉はいったん忘れてください。 詳しくは『「北欧インテリア」って何?』、『ゴスロリとちゃぶ台ひっくり返し』に書きましたが、日本で使われているインテリアを現す形容詞は非常に曖昧です。 また○○スタイルと型に当てはめようとするのも好きなようです(血液型占いとかまさにそうですが)。
本当に自分の好みに迫るには言葉からではなく、ピンとくるビジュアル(視覚)を集めるところから始まります。
ビジュアルはネットでも集められますが、本気でやってみようと言う人には洋インテリア雑誌の購読をお勧めします。 『21世紀の英国デザイン』に書いたように、ロンドンは世界のデザイントレンドを牽引していること、「衣食住」の「住」に多大な情熱とお金を注ぎ込むイギリス人が多大なマーケットを形成していること、から本エントリーの最後でお勧め英インテリア雑誌をご紹介します。
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Tiger Mum on a Budget
『クリエイティブ教育のための博物館』の続編。 タイトル”Tiger Mum on a Budget”(意訳:お金をかけずに教育ママ)は夫が私に付けたあだ名です(笑)。 最後に付けた「お勧め美術館・博物館リスト」を見てわかるように、ロンドンの博物館はものすごいクオリティの高さでほとんど無料なので冬は足しげく家族で通っています。
1歳台から楽しめる博物館ですが、しっかり会話ができるようになってからより楽しくなってきました。 とはいえ、まだ長男(来月5歳)も幼児なので”興奮して館内を走り回る息子2人を追いかけ回すだけで疲れた”なんてことにならないためにちょっとした工夫があります。
1. テーマを絞る
2. 数日前から博物館の話をして盛り上げる
3. 展示物とすでに子どもが持っている知識・経験をつなげて話す
例をあげます。
最近、宇宙にはまっている息子たち。 South Kensington駅近くの博物館御三家のひとつサイエンス・ミュージアムに宇宙を見に行くことにしました。 目的物はこれ。

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アメリカのママ応援CMが炎上している件
イギリスのクリエイティブ教育の話題から少休止して、友人がFacebookでシェアしていたCMについて。
去年は日本で共働き家庭を描いたCMがやたらと話題になっていました。 味の素の「日本のお母さん」からヘーベルハウスの「家事ハラ」、サイボウズの「大丈夫」まで。 その中でこのブログの英フィアットのママ応援CMの記事もすごいアクセス数を記録しました。
今日はアメリカの粉ミルクメーカーSimilacが公開したママ応援CM、現在YouTubeで340万回再生されています。
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クリエイティブ教育のための博物館
今日は「ゆりかごから墓場まで(cradle to grave)」クリエイティブ人材育成に力を入れるイギリスの教育のうち重要な役割を担う美術館・博物館の話。
私が初めてヨーロッパの地を踏んだのは20歳の時、40日間でキャンプ場に泊まりながら西欧8ヵ国を駆け足一周する、というものでした。 『地球の歩き方』を片手に新しい都市に行くたびに「訪れるべき」美術館・博物館の(中学の美術の教科書に載っているような)「見るべき」絵・展示物を見て、見たことに満足するスタンプラリーのような旅行。 その余りの意味のなさに、その後は美術館そのものをスキップして徐々に『住むことをシミュレーションする旅』に移行していきました。
美術館・博物館とは、
– 気軽に行くもの
– 何度も行くもの
– 子どもの頃から行くもの
であることを知ったのは、ロンドンに来てからです。
今では冬の間は月2回は子どもと行く雨の休日のアクティビティーとなっています。
実際、スクールホリデー(イギリスの学校はハーフタームといって学期の真ん中に1週間休みがある)中のNatural History Museum(自然史博物館)などはイギリス中で最も子どもの人口密度が高いのではないかと思うほど、博物館は子どもだらけです(美術館は博物館ほどではないが他国に比べると多く、また子ども向けの博物館ではなく一般の博物館の話)。
一方、日本では『育児世代の美術館・博物館の利用実態』(2006年)というレポート(首都圏在住の小・中学生の親対象)によると、「末子が未就学児」の層は約4割が美術館・博物館ともに「最近は行かなくなった」と回答しており、小さい子どもがいると足を運びにくいところのようです。
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21世紀の英国デザイン
前回のエントリーではクリエイティブ産業が英国経済の柱に育ったことを紹介しましたが、今回は現代のクリエイティブ産業を率いるスター達の話。
『ロンドンのデザイン・エコシステム』というエントリーで、あるThe New York Timesの記事冒頭を引用しました。
悪いな、ミラノ・東京。 残念だったね、ストックホルム・パリ。 アインドホーベン・ベルリン・バルセロナ・・・そして特にニューヨークよ、許しておくれ。
だけどロンドンこそが世界のデザインの首都だ。
ところで、「デザインの首都」とまで言われる英国デザインのイメージってこんな感じじゃないでしょうか?

このイメージは20世紀のもの、時代遅れです。 私はこういうロンドンが好きだった口ですが、21世紀に海外で稼ぎまくっている英国デザインはこういうの。
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クリエイティブ産業が支える英国経済
大変遅ればせながら、あけましておめでとうございます。
5年前の1月12日に常夏シンガポールから雪のロンドンにやってきました。 あれから5年、滞在ビザが切れたので家族全員のビザ更新申請をし、許可されたような旨のレターを受け取ったのであと5年はいられるようです。
5年の間に3人子どもを産み、1回大キャリアチェンジをし、4回引っ越して、1回家を買って改装をしました。 家族もキャリアも「創造期」で大きなエネルギーを使い、いっぱいいっぱいだったので、次の5年は家族もキャリアもじっくり育てる「育成期」にしたいと思っています。
妊娠7ヵ月でシンガポールという青年期の国からイギリスという成熟国(日本からみると衰退国の先輩)に移るにあたり、急速に変化する世界勢力図の中で成熟国で子育てしながら続けるキャリアを模索していました(→『成熟国からの視点』、『人生とはやりたいことを探し続けるプロセス』)。 そこで決めたことは、大企業の中でのテクノロジー事業開発・投資というそれまでのマッチョなキャリアから、建築インテリアデザイナーというクリエイティブ業への一大キャリアチェンジでした(→『クリエイターになりたい。』)。
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