あなただけの家 – 2

昨日の続き。 全く同じ家を取材した日英のインテリア雑誌を比べることにより、インテリアに対する姿勢を探るお話です(日本の「モダンリビング」記事はこちら、イギリスの「Living etc」記事はこちら)。

雑誌はタイトルやサブタイトルで読者の注意を惹くのでタイトル・サブタイトルを比べると、雑誌の編集者(すなわち読者)が何を重視しているか一目瞭然です。
まずは、特集のタイトル(以下、拙訳)。
モダンリビング(日)は

イギリスのインテリアデザイナー、ジョアナさんの家で見つけた、インテリア・テクニック

ふむ、なるほど・・・ 日本人は「外国から学ぶ」ことが大好きなので、ありがちなタイトル。
一方、Living etc.(英)は

Lots of love – Edgy British design and feminine glamour may seem unlikely partners but, in Jo Berryman’s lovingly styled home, they’re perfectly matched
エッジーな英国デザインとフェミニンかつグラマラスは一見合わなさそうだ、でもJo Berrymanが美しくスタイリングした家では、この2つは完璧にマッチしている

おっ、いきなり出ました、インテリアのコンセプト説明(コンセプト重視の話は『芸術家は努力でなれる?』をどうぞ)。
サブタイトルに続きます。

モダンリビング(日)

Dining&Kitchen – ものが多いのに雑然としないのは「固める・空ける」のメリハリがあるから
Living – 大きな家具を「赤」にしてリビングのポイントに
Bedroom – 壁紙、アート、クッションでロマンチックな空間に
Workspace – サークル型のソファはコミュニケーションの仕掛け
Kids Room – 白い子供部屋には淡い色を散らして「小さく・可愛く」
Garden – 室内とひと続きの庭はリビングの一部

・・・と部屋ごとにテクニックの説明が続きます、「インテリア・テクニック」という特集なので当然なのでしょうが。

一方で、Living etc(英)

‘I love materials that change as they age – a home should be a breathable, organic space.’ 時を経るごとに変化する素材が好き – 家が呼吸するようなオーガニックなスペースであるべきよ
‘Yesteryear inspires me – anything that’s beautifully designed.’ 過ぎし日、美しくデザインされた全てのものにインスパイアされるわ
‘My aim has been to create a sense of contemporary chic, but marry it with my relaxed lifestyle’ コンテンポラリーでシックな感覚と私のリラックスしたライフスタイルを合わせた空間をつくろうとしているの

Jo Berryman's bedroom・・・と彼女のインテリアに対するphylosophy(哲学)が続きます。 もちろん記事の中には、プラクティカルな情報(どこの店のどの商品が似ている、など)もたくさんあるのですが、あくまでも大事なのはコンセプト。 これは彼女がデザイナーだからという理由ではなく、どんな「お宅拝見」的な記事でもこんな感じ。 そして、古いもの・完全でないものこそ価値があるという価値観は彼女のこんな言葉にも現れています。

‘I love that the doors are crooked and the floorboards creak – I think that sort of thing gives a home personality.’ 家のドアが歪んでて床材がきしんでいるところが大好き、そういうものが家を魅力的にすると思うの

読者はこうやってプロのコンセプトや哲学に触れながら、自分の家のイメージを膨らませるのです。

全然アプローチが違うと思いません? もうひとつ日本と圧倒的に違うのは、「カントリースタイル」、「北欧スタイル」、「プロヴァンススタイル」という曖昧な雰囲気を現す「スタイル」を選ぶのではなく、いくつもの要素を組み合わせて「これが自分」というオリジナルのコンセプトをつくり出すこと。
例えば、右のベッドルームのベッドは”old-style Hollywood glamour with a bit of Chateau Marmont thrown in”(古きよき時代のグラマラスなハリウッドにChateau Marmontホテルをふりかけたもの)だそう。 ゼブラ柄のラグにアールデコのランプ・・・etc.細かいスタイルやその組み合わせの是非は二の次。

ふと安西洋之さんの『ヨーロッパの目 日本の目』にあった次のエピソードを思い出しました(『ヨーロッパの目 日本の目』はロンドンに来たばかりの頃、ヨーロッパの世界観を理解する書として参考になりました→『住むことをシミュレーションする旅』『人が自然に生きられる社会』)。 安西さんのお子さんが通うミラノの公立小学校に日本の小中学校の先生が欧州学校視察の一つとして訪問したときの話。 少し長いので要約します。

施設や授業風景の見学を終えた後、日本の先生から「人間関係をどうつくるのですか」という日本で問題となっている学級崩壊に関する質問が出た。 イタリアの先生は、外国人の子供とイタリア人の子供の問題と理解し、外国人の子供や親のためのイタリア語講座、社会への統合の話をした。
しかし日本の先生は「国籍の問題とは別に、純粋に生徒同士の人間関係をどうつくるか」に関心があった。 ミラノの小学校では小さないざこざやいじめはあるが、人間関係の構築をあらためてあげるほどの問題になっていないので先生が問題自体をよく理解できなかった。
ただ外国人の例であるにせよ、いかに子供同士で共有経験を積み上げていき、仲間外れという概念を子供たちの頭の中から追い出していくか、ということでは的外れの議論ではない。
イタリアの先生が理念とそれを方向づける情念のありかをまず語るのに対し、日本の先生たちは「いや、具体的にどういう方法を取っているのですか」と聞きたがる。 方法論が一人歩きできるもののように把握しているのではないか、とイタリア人は推測し、ますます人間性の重要性を語る・・・

インテリアという分野で、テクニック重視だろうがコンセプト重視だろうがどっちでもいいじゃないか、と思った人も、子供の教育となると根本的な発想の違いに驚きませんか?
話が思いっきり飛んでしまいましたが、家の中(インテリア)というのはヨーロッパ人にとって自分を語る、自分の世界観を語る場所なのです(こういう話を在ロンドン経験の長いある日本人の方にしたところ、「ロンドンは一部のエッジーなクリエイティブと一般人の差が大きすぎ」と言われました。 たしかにそうかも・・・笑)。


2 responses to “あなただけの家 – 2

  • anzai

    拙著のご紹介、ありがとうございました。

    そうですか。インテリアの話から教育の話にとんだのですね 笑。コンセプトというとき、ドイツ語とイタリア語で意味が違うという話をぼくのブログで書いたことがありますが、ラテン的コンセプトなら日本の人も、もう少し楽にコンセプトを語れるのにな、とよく思います。

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