芸術家は努力でなれる?

『世界のMurakami』というエントリーを書いてから1年半、遅すぎるにも程がありますが、ようやく『芸術起業論』を読みました。 だって、日本のAmazonの海外配送料高いんだもの・・・(涙)

内容はある程度、日経ビジネス(世界で戦うための『芸術起業論』)や東洋経済(新世代リーダーの条件)などで想像がついていましたが、いやーーー、面白かったです。
「海外在住日本人としてのアウェーでの戦い方」、「現代アートの見方」、いろいろな読み方ができますが、「戦略とマーケティングで(言い換えると”努力”で)世界最高峰レベルの芸術家になれる」という強烈なメッセージが今までの一般常識を翻す本。

私はここ数年、左脳系(テクノロジー投資&事業開発・MBAホルダー)から右脳系(建築インテリアデザイナー)への転身中なのですが、決心したとき「アーティストにはなれないけど、デザイナーにはなれるかも」と思っていました。 理由は、デザイナーはクライアントの問題をデザインで解決することが仕事であり、そういう意味ではビジネス系の仕事と根本的に一緒、対してアーティストは圧倒的な才能がないとなれなさそうだったから。

そんなイメージだった私に、

芸術(アート)のお客さまは大金持ち(多くは栄耀栄華を極めた経営者)
彼らの芸術に対する姿勢は知的な「しかけ」や「ゲーム」を楽しむこと(「好き」とか「綺麗」と言った曖昧で主観的な感性は求められていない)
芸術の世界でのルールは「作品を通して世界芸術史での文脈を作ること」
世界に向かって芸術の表現をする時には、プレゼンテーション(制作の背景や動機や設定)が緻密に必要

・・・etc.、書かれていることは、ビジネスの世界でのマーケティング・ブランディングと同じです(もちろん、ある種の狂気の世界で戦うには血の滲むような苦労が必要なのでしょうが)。 元左脳系としては実に勇気が出る話。

たまたま最近読んだ記事にも似たような趣旨の一節がありました、LBS(ロンドンビジネススクール)でブランディングを学んでいるMBA生の話(→東洋経済:超一流MBA校で戦う日本人 – 欧州人のハンパない、歴史と伝統の”売り方”)。

日本のメーカーで働いていたときは、技術ありき、モノありき、のマーケティングが当たり前だと思っていました。 ところが、ヨーロッパでは、ブランドマーケティングは、まず『コンセプトありき』です。

私も去年夏まで通っていた建築インテリアデザインのコースではConcept Developmentを徹底的にやりました(こういうのです→『クリエイティブ・プロジェクト – 1』)。 聞くところによると、日本のインテリアデザインでは資格試験への準備が中心で、Concept Developmentのトレーニングはあまりしないそう(この『コンセプトありき』において歴史を学び分析する重要性についても本著をどうぞ)。

最近、日本の目指すべき方向としてよく聞く「ものづくりからの脱却」もこの延長にありそうですね。
本著はとりわけ日本のアート・シーンに対して挑発的な内容ですが、アートなんて全然関係ない、って人にもためになります。 あー、面白かった。

P.S. ニコ動で村上さんが本著の続編を『芸術実践論』で講義されたようです(この放送も2年前のものですが・・・)。 今から見ようっと。


6 responses to “芸術家は努力でなれる?

  • Mik

    デザイン関係の者です。(駆け出し。)私も今回のエントリー勇気が出ました!

    去年までアメリカ州立大学の大学院のグラフィックデザインプラグラムにいましたが、Concept Developmentは最重要課題でした。教えていた経験のある韓国人の同級生曰く、「高いソフトウェアや高い紙を使ったプリント物なんかでは公立のお金のない学生は、お金持ちの有名デザインスクールの学生に対抗できないから、Concept Developmentなどの考える力を重視するというのは理にかなっていると思う」と言っていました。私自身は、アメリカの大学院に来てデザインという美術系にいたも関わらず、左脳ばかり鍛えられて右脳が退化してしまったような気がします。

    ちょっと外れますが、最近思うのはデザイナーが2極化しているということです。一つは、アートの才能はすごいけどテクノロジーはあまり得意でないグループ、もう一つはアートの才能はそこまでないけどテクノロジーを良く知っているというグループです。

    いずれにせよ、アメリカにいるとプレゼンテーションの威力というのを非常に感じます。あまりいけてないものでも、みんな自信満々に発表するし、そうするのが礼儀のようです。内心は必ずしも自信満々な外見に一致しているとはいえませんが。しかし、デザインもテクノロジーもimpressiveではなくても、なんやかんやでコンスタントに仕事してる人結構いますよね。プレゼンテーションのせいとは思えませんが、そうなのでしょうか…。

    • Mik

      すみません、一行目「プラグラム→プログラム」です。

      • la dolce vita

        コメントありがとうございます。
        >最近思うのはデザイナーが2極化しているということです。
        2極化のお話面白いです。 ここで言うテクノロジーというのは、例えば建築家にとってのCADなどデザインとしてのツールのテクノロジーか、ソーシャルメディアなどセルフプロモーションのツールとしてのテクノロジーかどちらですか? 後者だとセルフプロモーション(プレゼン含め)が上手いってことなんでしょうか?

        >アメリカにいるとプレゼンテーションの威力というのを非常に感じます。
        わかります、以前テクノロジー業界にいたのでプレゼンの上手いアメリカ人をゴマンと見ました。 イギリス人はもちろん話が上手い人も多いですが、そこまでではないです。

  • DODOLELA

    こんにちは。日本のAmazonの海外配送料が高いというのは、まったくもって同意です(苦笑)。
    カナダ人の写真家(最近は映像も)アーティストの知人で、フランスでMBAを取得していた人がいます。
    たしかインターンシップ先は、芸術とはまったく関係のない、投資銀行でした。
    Why MBA?と聞いたところ、「アートも結局はビジネス。クライアントの要求に正確に答えるため、ブランディングを勉強しておきたいし、自分の事務所の財務状況も自分で管理したいから、ファイナンスとかアカウンティングも勉強しておきたい」と言っていました。
    ようこさんの逆のパターンで、右脳から左脳への転換というか、両方のバランスを取ろうとしたみたいですね。
    MBA卒業後、がんがん売れ始めてきているので、彼はMBAで学んだ事をうまく活用できているというか、MBAを通じてビジネスのセンスをより磨き上げたので仕事が入ってきているのかなーと思います。
    「芸術起業論」は読んだ事がないので、話がそれてしまっていたらごめんなさい。

    • la dolce vita

      お久しぶりです〜 お元気ですか?

      >MBA卒業後、がんがん売れ始めてきている
      それは興味深いです、どう役に立っているのか聞いてみてください。
      デザイナーで成功している人は自分のオフィスを経営している経営者です。 日本はよく知りませんが、ヨーロッパでは家具でもプロダクトでも社内ではなく外部デザイナーをよく起用しますからねー

  • Mik

    再び失礼します。

    あくまで個人的意見ですが…
    テクノロジーは「ツールとしてのテクノロジー」のほうです。ソフトウェアやプログラミングが好きという人は、作品のクオリティよりも何かが出来たという事実が好きなように思えます。何か作る→出来る→それでは飽き足らず他のソフトウェアやプログラムに手を出す、といった感じでしょうか。なんかいじってたら出来た、楽しい、みたいな。

    アーティスティックな人は、aesthetic quality第一で、必要ならツールを勉強するという感じでしょうか…。作りたいものありきですね。

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