住むことをシミュレーションする旅

ロンドンに引っ越してきてから丸1年経ちました。

シンガポールでは完全に外国人のお客さん気分だったので、もう少し地域のコミュニティーに浸かってみようかとも思ってます。

と書いた(→こちら)のはいいけど、逆にどっぷりNappy Valley的生活に浸かりすぎてしまったので、もうちょっと目線を上げようと年末年始はヨーロッパに関する本を何冊か読みました。
一冊目は安西洋之さんの著書『ヨーロッパの目 日本の目』

欧州文化を理解するには、古い教会や美術館にある、あの膨大な宗教画が分からないといけないという思いにとりつかれすぎている日本人が多い。
日本人が欧州に対していだく心理的距離感の短縮をはかるのがテーマ。

とあるように、実生活でのエピソードがたくさん紹介され、「うん?」と首をかしげるところに異文化のギャップを読み解く鍵がある、という趣旨で統一されているので、「なるほど、なるほど」と頷きながら読めます。
私も初めてのヨーロッパ旅行(20歳の時に40日間キャンプしながら西ヨーロッパを駆け足で一周)は「教会と美術館を回りあまりの多さに食傷気味になる」という旅行でしたが、今は教会も美術館の宗教画も完全に素通りです。
では旅先で何をするのか?ということを少し書いてみます(以前リクエストもらった「現在は習慣になっていること」にも当たるかな→『苦痛からの抜け道』)。


私は旅先で「ここに住むとどういう生活になるんだろう?(経済状況・1日の生活・仕事・余暇etc.)」という点に非常に興味があります。 それはいつも「住む対象」として場所を見ているからかもしれません(私の理想はこんなところです→『ロンドンに引っ越します。』)。
夫と付き合い出してから、旅先ですることはいつも同じです。 それはコンサルティングファームの面接ケースインタビューのような問題をお互い出し合うこと(参考:アンテロープ – ケース・インタビューとは)。
「このレストランって年間売上どのくらいだと思う?」、「この町って1人あたりGDPどのくらいだろう?」、「若者が少ないよねー、何歳くらいからどこに出るんだろう?」・・・etc.
ガイドブックで得られるような情報(人口・主要産業など)を確認した後はただひたすら歩いて観察。
人の所得レベル(生活水準)を知るのに一番いい場所は不動産屋とスーパー(食料品屋)。
不動産屋のウィンドーは必ず覗いて不動産価格をチェック。 「この物件を購入するには、これくらいの所得は必要」など類推できます(外国人が買い占めて不動産価格が高騰してしまった場所もよくありますが)。
大前研一さんの著書に「訪問した都市では必ず不動産屋にいくつか物件を案内してもらう、最新の状況がつかめる」とありました。 私たちは物件案内をしてもらったことはありませんが、たしかに不動産屋は情報の宝庫。
スーパー(食料品屋・市場など)ではもちろん生活物資の価格がわかります。
泊まる場所は地元民が経営する宿とその土地に移住してきた人が経営する宿、両方泊まります。 『外国人だからわかる良さ』に書いたように、その土地を愛し移り住んできた外国人オーナーは外から見た第三者目線を持っているので質問攻めにします(笑)。
ブログで知り合った、その土地在住の人にアポを取って行くこともよくあります(北京ではしゃおりんさんがお鍋を囲む会を開いてくれました→『北京在住日本人の集い』、先日行ったパリでもDODOLELAさんと念願の初対面)。
ひたすら歩き、その土地の人に話を聞きながら、「子どもが低学年の時に1年住むとしたら、必要な生活費・経費は?」、「その間の仕事は?」、「そのためにす今するべきことは?」など自分たちが住むシミュレーションまでします。
旅の道連れができ、お互いの仮説にチャレンジしながら、その土地をなめるように観察するようになってから随分と旅が楽しくなりました。 子どもができてからは、しょっちゅう話しかけられるようになったので(例:『子ども大好きなスペイン人』)、通りすがりの人と会話する垣根もグンと下がりました。
「住むことをシミュレーションする旅」、どうでしょう? 対象場所への心の垣根がグンと下がるのでは?


7 responses to “住むことをシミュレーションする旅

  • NS

    ケーススタデイしながら歩くたび、面白そうですね~。 そういう観点で旅したことあまりなかったので新鮮。
    私もヨーロッパで教会や美術館めぐりをしなくなってしばらくたちます。 我が家はアパートを借りて、短期間でもその街で暮らしてみるのが楽しみです。 公園へ散歩に行ったり、スーパーマーケットへ行ったりして町の空気を楽しむのが好き。 ヨーロッパでは田舎町に面白さを感じます。

  • sunshine

    フランス17日間の旅の終わりに息子が言った言葉は、No more Jesus!でした。
    通っていた学校はカソリックの学校で、初めてのAsh Wednesdayでは、Ashをフランス語のHと聞き違えて
    「ママ、エッチな水曜って何?」
    と今では大笑いになりそうなことを言っていた息子も、日本に帰国し
    「やっぱ、ののさまがいいわ。。」ってのたまっています。
    子連れ旅だと地元の人との交流が図りやすいこともたしかですね。
    パリで地図を広げていた息子にカップルのパリっ子が「助けてあげるよ」なんて言ってきて
    それで、フランス語で返答した息子に、いたく感動してくれて
    地元の人が絶賛するビストロを紹介してもらったっていう経験もあります。
    住むことに関しては、もうどっぷり日本なので
    老後のシュミレーションとしては、息子を海外のどこかの大学に進学させ
    外国暮らしを始めた息子の様子見を口実に日本と海外を往復するという生活を考え中です。
    長文ですみません。

  • tygertyger

    とてもいい眼の付け所ですね。私もあちこち旅行するたびに不動産のフリーカタログを集めて参考にしています。ムスメがマンハッタンで不動産開発関連の仕事をしていて、マジで同じことを始めたのには少し驚きました。
    ダンナは「以前にシンガでコンドを買っておくべきだった」と嘆いていますが、これはナントカの祭りです。

  • DODOLELA

    今度は是非ロンドンへお会いしましょう!
    私とダンナは旅をするとき、時々CouchSurfingを利用して、現地の民家に泊めてもらっています。
    (早い話、ホームステイ?)
    http://www.couchsurfing.org/#
    現地の国の人のこともあれば、第三国から来てその土地に住んでいる人もいて、色々な人と交流できて楽しいです。
    我が家にも何人も泊めたことがあって、そういえばINSEADにCampus Visitへ来たという、スペイン在住の台湾人が泊まりに来たこともありました。

  • la dolce vita

    >NSさん
    >我が家はアパートを借りて、短期間でもその街で暮らしてみるのが楽しみです。 公園へ散歩に行ったり、スーパーマーケットへ行ったりして町の空気を楽しむのが好き。
    クリスマスを過ごしたアマルフィではextended familyでバカンスハウスを一軒借りました。 今回は大人の人手が多かったのでそれはそれでよかったですが、
    1. 子育てで疲れてるのにバカンス先で料理までしたくない
    2. 地元の人とあまり触れ合えない
    のがネックですねー いろいろ組み合わせて楽しむのがいいと思います。
    >ヨーロッパでは田舎町に面白さを感じます。
    Completely agree。 近年、夏はずっと南ヨーロッパの田舎をドライブです。 子どもがカーシートに座っているのが嫌いなので、このスタイルも見直し必要・・・
    >sunshineさん
    >息子を海外のどこかの大学に進学させ外国暮らしを始めた息子の様子見を口実に日本と海外を往復するという生活を考え中です。
    老後のシミュレーションもばっちりですね。 でも、いざ違う国に住まれると辛いんだろうなー
    >tygertygerさん
    >ムスメがマンハッタンで不動産開発関連の仕事をしていて
    お嬢さん、もう成人されているですね。
    さぞかし美男・美女の多い業界なのでしょうか?(↓)
    http://www.ladolcevita.jp/blog/global/2009/12/post-286.php
    (不動産開発は賃貸とは違うのか・・・)
    >DODOLELAさん
    >私とダンナは旅をするとき、時々CouchSurfingを利用して、現地の民家に泊めてもらっています。
    >(早い話、ホームステイ?)
    このサイトだったかどうか忘れましたが、以前も教えてもらったことがあります。
    パリでもB&Bという名のホームステイでした。 かなーり笑えるエピソードたくさんで(その家のティーンエージャーの女の子が友達とお泊まり会してたり)ブログに書こうと思いながら日が経ってしまいました・・・
    http://www.bed-and-breakfast-in-paris.com/
    次回はぜひロンドンで〜

  • tygertyger

    顧客と直に対応するreal estate agentとはちがって(確かにそういう人たちは外見パッチリ多いです)、建築中または完了したコンド、co-op、アパートを各種メディアに広告したり販促活動をしたりするマーケティングの仕事なんですが、本人は美術史ーそれも現代conceptual artー専攻。
    でも院から学芸員への道はイヤ。Law schoolへ行くかもしれないから、様子を見るためにMid-townの大きなlaw officeに入ったけれども、”A monkey can do this job”とか言ってそれもイヤ。
    そこで不景気が始まったにもかかわらず移ったAd agencyが主に公共建築事業系で、きびしい女性オーナーのもとで(不平タラタラながらも)学ぶべきことは学び、またまた不景気の真っ最中だというのに、よりおもしろそうな住宅開発の会社に移り、今の所は一応満足とのこと。
    こういう思考形態は、およそTiger Mother的親の想像範囲を超えてしまいますね。

  • la dolce vita

    >tygertygerさん
    >こういう思考形態は、およそTiger Mother的親の想像範囲を超えてしまいますね。
    Tiger Motherは美術史学びたいなんて言おうものなら張り倒すでしょうねー(笑)。 イギリスはリベラルアーツ志向が高いですが、アメリカはどんどん実学志向が高まってるんでしょうか?(一般的に)

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