イギリスのクリエイティブ教育の話題から少休止して、友人がFacebookでシェアしていたCMについて。
去年は日本で共働き家庭を描いたCMがやたらと話題になっていました。 味の素の「日本のお母さん」からヘーベルハウスの「家事ハラ」、サイボウズの「大丈夫」まで。 その中でこのブログの英フィアットのママ応援CMの記事もすごいアクセス数を記録しました。
今日はアメリカの粉ミルクメーカーSimilacが公開したママ応援CM、現在YouTubeで340万回再生されています。
以下、セリフと拙訳。 分かりやすいようにそれぞれの育児グループを「○○ママ」(or パパ)としています。
粉ミルクママ:Oh look. The breast police have arrived. あら見て、母乳警察が来たわよ。
母乳ママ:100% breastfed, straight from the source. 原産地から直送、完全母乳よ。
粉ミルクママ:Drug free pool birth. Dolphin assisted. 痛み止め使わずにプールでお産よね、イルカに助けてもらって。
スリングママ:Well, you push. We cuddle. Yeah, cuddling is bonding. あなたたち、(ベビーカー)押すだけでしょ。 私たちは抱っこよ。 だって、抱っこが絆を築くんだもの。
専業パパ1:Helicopter moms, 12 o’clock ヘリコプターママたち、12時だぞー
スリングママ:It must be mommy’s day off. あら、今日はママの休日?
専業パパ2:Oh, that’s sexist. What? You want to go or something? おい、それ性差別だぞ。 やる気か?
布オムツママ:Ohhh, disposable diaper. Well, apparently we don’t care about the environment. あーら、紙オムツ。 そりゃ、地球環境のことなんて気にしないものねー
ベビーカーママ:Oh look, it’s the crunchy granola moms. あら、見て。 グラノーラ・ママよ。
専業ママ:I wonder what it’s like to be a part time mom. パートタイム・ママになるってどんな気分かしら?
キャリアママ1:Stay at home moms. I wonder what they do all day? (メールチェックしながら)専業ママって1日中何してるのかしら?
キャリアママ2:Mani-pedis. マニキュア・ペディキュアよ。
母乳ママ:Looks like some moms are too lazy to breastfeed. 母乳さえあげない怠惰な母親っているみたいねー
粉ミルクママ:Someone came with their nipples blazing. なんか乳首を発砲している人がいるわよ。
キャリアママ2:Oh yeah? Well I pump during conference calls. あらそう? 私なんか電話会議しながら搾乳してるわよ。
専業パパ2:It’s not all about the breast. おい、おっぱいが全てじゃないぜ。
専業パパ1:Actually, yeah it is. あ、でも全てだろ。
専業パパ2:No, it’s not. いや、違うだろ。
ベビーカーママ:You want a piece of this? (紙オムツを掲げて挑発しながら)あんた、これいる?
布オムツママ:Oh, you want a piece of this? (汚い布オムツを掲げて叫びながら)あんたこそ、これいる?
スリングママ:Well, I’ll show you some scream free parenting. 私が怒鳴らない育児、教えてあげようか?
布オムツママ:Bring it. (布オムツを落としながら)見せてみなさいよ。
母乳ママ:Nipple up, ladies. みんな、(乳首あげて)行くわよ!
スリングママ:It’s go time. 行くわよ。
この後、意外な展開なので続きは映像でどうぞ。
私は最初見たとき、母親をステレオタイプに分けるのって(特に専業ママとキャリアママ)ハリウッド映画でもよく見るので(例えばこちらで紹介した”I Don’t Know How She Does It.”でもキャリアウーマンの主人公を専業ママ達が見下すシーンがある)、コメディ映画仕立てでよくできてるなーと思いました。 ワイドショーや女性週刊誌も大好きですしね、この手のトピック(→『ママ友ステレオタイプ』)。
でも”no matter what our beliefs, we are parents first”(どんな育児方針であろうと、全ての親を応援します)という企業メッセージのこのCM「ほろっときた、好き」という人も多い一方、「大嫌い!」という人も結構いて炎上しております。
嫌いな理由としては、
「粉ミルクメーカーが”全ての母親の味方だ”と言うメッセージを掲げるのはあざとい」
「お互いの育児方針を批判するのはやめよう、というメッセージを掲げながら結局そのシーンしか残らない」
「何で母乳あげるという普通の行為で”母乳警察”呼ばわりされなきゃいけないの?」
「専業パパがバカっぽすぎてバカにしている。 おっぱいのことばかりだし」
「”Mummy wars”(母親同士の戦争)だなんてありもしないメディアがつくりあげた幻想だ」
などなど・・・
思うに、Parenting(親業)・育児のCMって、対象が広く、考え方が多様で、個人の思い入れが強すぎるトピックゆえに企業がどう作っても炎上するんじゃないでしょうか?
サイボウズの第2弾CM「パパにしかできないこと」も私の周りでは「抱っこなんていらないから皿洗ったり保育園送り迎えしてくれ」というコメントで溢れてましたが、どう作っても何かしら批判は出ていたんじゃないかと思います。
また以前『ポスト・コンシューマーと「おもてなし」』に書いたように、企業によるマーケティング・メッセージそのものに嫌悪感を示す層が増えているのでしょう。
今回のSimilacのCMは炎上した分、消費者の心に何かを残した点でマーケティングとしては成功した気がしますが・・・
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