ポスト・コンシューマーと「おもてなし」

「若者が車を買わずに、何が悪いのか?」とずっと思ってました。 昔むかーし、私自身がモノに興味がない若者だったから。
私が学生の頃はとっくにバブルは崩壊していましたが、円高で、ヨーロッパにブランド店詣でのショッピング旅行をする女子大生もまだ健在でした(今でもいるの?)。 車を持っている男子の方が持っていない人よりステイタスは高かったような気もします。 ところが、私自身はモノには興味がなく、旅ばかりしていました(→『バックパッカー時代も悪くない』)。
就職活動でも「働きたーい!と思えるほど好きなモノがない」という理由でメーカーは受けなかったくらい(新卒では部署別採用なんてほぼ皆無の時代)。
ゆえに「普通に都市で生活してたら必要ない車を買わないなんて、最近の若者が賢くなっただけなんじゃあ?」と思ってたところ、最近再びはまっているStanford iTunes U(*1)で聴いたレクチャーが面白かったのでご紹介。
*1・・・『パラダイムシフト真っ最中のメディア』に書いたiTunes U、さらにパワーアップしています。 ヨーロッパの大学もレクチャー公開していますが、MITやStanfordなどエンジニアリング系が強いアメリカの一流大学がすごい。
Stanfordの通称d.school(Stanford Institute of Design)でマーケティング・コンサルタントのAlex Wipperfurthが行ったレクチャーで「従来のマーケティング手法が通じなくなった消費者に対し、マーケッターとしてどのようにアプローチすればよいのか?」がテーマ。 私は、このレクチャーを聴いて、
1. なんだ、(今までと同じように)モノを買わなくなったのは日本の若者だけじゃないじゃん
2. 新しいタイプの消費者に必要なのは日本人お得意の「おもてなし」?
と思いました。 レクチャーは以下の順にたどると聴けます。
Stanford iTunes U –> Business –> d.school –> Design, Marketing, and Branding in a Post-Consumerism Society (by Alex Wipperfurth)


1. モノを買わなくなったのは日本の若者だけじゃない

アメリカでは広告中心の従来のマーケティング手法でリーチできる従来の消費者(Traditional consumer)は人口の16%だけ。 後の84%は企業がうつ広告には反応しない。 消費者は以下のように分けられる。
Traditional consumer(伝統的なコンシューマー), Non-consumer(非コンシューマー), Anti-consumer(アンチ・コンシューマー), Post-consumer(ポスト・コンシューマー)
(レクチャーでは15分から23分あたり、ビジュアル中心でわかりやすいでぜひ観てみてください)

そして、若者を中心に増えつつある4番目の「ポスト・コンシューマー」の心の中を覗いてみると・・・

巷で何が流行ってるかなんて関係ない
自分で映画をつくるし音楽もレコーディングする・家具だってつくるか制作者から直接買うよ
パッケージ化されたものは興味ない、だって自分でミックスしてオリジナルのものつくるし
ファッショントレンドなんて追わないよ
マーケティング担当者に言いたいこと? 別にアンタらのこと嫌いじゃないけど、興味もないよ

こういう人、心当たりあるのでは? わざわざイタリアの生産者からオリーブオイルを買ってるあたり、私もポスト・コンシューマー当てはまるような・・・(*2)。
*2・・・こちらの最後に書いたオリーブオイル、そろそろ締め切ります。
2. ポスト・コンシューマーに必要なのは「おもてなし」?

かつてないほどモノが溢れた時代に(*3)、かつてないほど消費者が企業による広告を信じなくなった・一歩も二歩も引いてしまった今、消費者と関わりを持てるようなキャンペーンの例がこちら。

*3・・・「選択肢の多さは本当に人を幸せにするのか?」と書いた『星の数ほどの中から選べる幸せ?』内のビデオや以下のThe Economistの記事も参照。
The Economist : You choose

思春期の女の子の微妙に揺れる心やもろい自尊心を、「あなたの個性が美しいのよ」とシンディー・ローパーの名曲”True Colors”にのせて説くDoveのキャンペーン。
キーワードは”empathy”。 日本語では「共感」と訳される”empathy”、今の時代、消費者ブランドは消費者の共感を得て初めて受け入れられるのだそう。
ここまで聴いて思ったのですが、これっていわゆる日本が得意とされる「おもてなし」ってやつでは? だって、日本人は幼児の頃から相手への共感の気持ちを育まれているんだし(→『Art of Parenting – 日本人 vs イギリス人』)。
日本の場合、企業の意思決定者の属性にダイバーシティーが足りなさすぎるのが共感できない理由のひとつでしょうか?
public_ad_suiside.jpgなお、モノを売る必要はなく、人々の行動を変えることが目的の公共広告。 「共感」マーケティングが生きる典型例で、国によって全然違うのが面白いですが(*4)、今でも覚えてるのがこれ。 いい広告だったなー
*4・・・シンガポール政府のキャンペーンについては以前『キャンペーン大国シンガポール』に書きました。 イギリスのも面白いです、そのうち。


4 responses to “ポスト・コンシューマーと「おもてなし」

  • bigakira

    >empathy
    勘違いかも知れませんが、これってジャパネットタカタ商法と同じでは?
    売るのはデジカメではなく、孫との思い出や楽しい時間を手に入れるという満足感。
    何はともあれStanfordPodcast聞いてみます。
    MITは授業資料の公開を全授業にまで拡大するっていってるけどこのシステムもすごい。

  • la dolce vita

    >bigakiraさん
    >これってジャパネットタカタ商法と同じでは?
    ジャパネットタカタ商法がわからないんですが?(笑)

  • takizawa

    若者が物をかわなくなったのは、必要がなくなったからだとも思います。
    車はどうみても仕事以外ではシェアの時代だし
    企業の宣伝に反応しないのは、個人のブログや商品の比較サイトなどの
    口コミの評判の方がリアリティーがあって良い点も悪い点もわからからだと思います。
    日本では 価格.COMの口コミですかね 代表的なのは
    表面的なファションを追えるのは余裕のある人だけです。
    本当に必要なものしか買わないです
    若者のあるサイトで見たら、半年ごとに新しい携帯がでるのに嫌気がすると
    それで、あまりデザインも変わらない iPhoneにしてるそうです。
    OSのバージョンアップもあるし アプリも充実してるし
    きわめて実用的に見てました。
    自分も、あまり頻繁にモデルチェンジするファッション性のスピードの速い物は今の時代
    合わないかなーと最近 感じています。

  • la dolce vita

    >takizawaさん
    >若者のあるサイトで見たら、半年ごとに新しい携帯がでるのに嫌気がすると
    >それで、あまりデザインも変わらない iPhoneにしてるそうです。
    そうそう、携帯に限らずエレクトロニクス商品ってよく「春モデル登場!」とかシーズンごとに新機種が出てくるのですが、私も「なぜ春になったら携帯買わなきゃいけないの? どう関係あるのか?」と思ってました。
    ちなみに日本も車はシェアの時代なんでしょうか?(よく知らないのですが)

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