昨日に引き続きMBAで学んだことの話。
私がINSEADで学んだ最も重要な概念のひとつが’sunk cost’。
大事な考え方なのに、いまいちうまい日本語が見つからないなー、と思っていたら、そのままカタカナにした本が出ました、『サンクコスト時間術』。
本田さんのレバレッジシリーズが出たときも思ったのですが、やっぱりうまく日本語にならない概念はカタカナになってしまうんですね。
企業経営では以下のような場面で使います。
ある企業が新規にチップを開発・設計する期間を2年間、費用を5億円と見積もり、開発をスタートしたとします。
開発期間半年、費用を1.5億円かけた時点で、営業サイドから「市場は当初想定していたよりも早いスピードで動いており、競合他社が半年以内に同様の機能を持ち価格競争力のあるチップを出してくるので、我が社が市場に出す頃にはすでに勝負は決まってしまっている」という声があがったとします。
この時点ではA.チップ開発を中止する、B.チップ開発を継続する、という選択肢が考えられます。
本来であれば将来の価値を最大化する(もしくは将来の損失を最小化する)ことを決断の基準とすべきであるのに「今開発中止するとすでに投資した1.5億円をドブを捨てることになる。それよりも開発を継続して商品が売れるような戦略を考えるべきだ」と考えてしまうのを’sunk cost’にとらわれた考え方と言います。
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サンクコスト
It’s all about OB…
私がINSEADにMBA留学をして得たもののNo.1は一生ものの友人と卒業生ネットワークだということは以前のブログで書きましたが(→コチラやコチラ)、「学校で学んだことはどうなんだ?」と聞かれると「OB(= Organisational behaviour、組織行動学)が重要だということ」でしょうか。 学校で「OBを学んだ」のではありません、「OBが重要だという事実に気づいた」のです。
組織行動学と訳されるOBの授業が私はINSEADに入った頃、大がつくほど嫌いでした。 「組織の中の処世術」としか思えず、「あえてMBAで習うことかー?」と思っていました。
INSEADはハーバードと同じくケース・スタディが多いので、30ページもあるケース(とあるイタリアの会社で、Fabrizio、Maurizio、Antonio・・・と同じような名前の重役10人くらいが出てきて、マーケティング部長Marioはセールス部長のStefanoと仲が悪く、でもStefanoは社長のFabrizioの高校時代の後輩で、会社の業績が悪化しているのに組織が紛糾寸前でどうしましょう?みたいなの)を読んだ後、クラスでああだ、こうだ、と議論するのです。
「そんなの時と場合によるんじゃないのー?」としらけきっていた私。
また、ある日のOBの授業では、事前に渡された指示書に従ってチーム内で、企業A 3名と企業B 3名に分かれて代理店販売契約だか何かの契約交渉をするロールプレイングを実施。
企業A担当の指示書には「自信に満ち溢れた態度をとり、すべての質問に対し独断で回答し、言葉は断定口調、質問は詰問口調・・・」みたいなことが書いてあり、企業B担当の指示書には「声は小さく、質問されたら質問にはすぐ答えずまず自分たちでひそひそ集まって相談し、その上で”社に持ち帰って検討する”と回答・・・」などと書いてありました。
そのロールプレイングをチーム内で実施した後、クラス内でAだった人はどう感じたか、Bだった人はどう感じたか、を議論。 授業の最後で教授が「Aはアメリカ人がよく取る行動、Bは日本人がよく取る行動」と種明かし。
この授業は「文化によって行動パターンも組織論理も異なるので、文化背景を理解しよう」というのがポイントだったらしいのですが、授業の最中、種明かしの前にだんだん筋書きが読めた私は激怒。 授業の後で教授に対して「教えようとしている意図はわかるが、文化的ステレオタイプ(しかもかなりネガティブな)をあえて助長するような教材を選ぶのはどうかと思う」と抗議しました。 「まあ、ちょっとステレオタイプだけどねー」とさらっとかわされたけど。
そんなわけで、数十あるMBAのクラスの中でOBの成績は最低でした(抗議は関係ないと思う、クラスの議論に参加しなかったのが理由)。
ソフト・パリと魅惑のインド
昨日とがらっと異なり、ローテクなベンチャーのお話。
『果たしてヤジ馬なのか歴史の証人なのか』や『すべては一杯のコーヒーから』に書いたように、INSEAD同級生の中には起業し始めた友達も多いのですが、ハイテクではなくローテク・ベンチャーの方がむしろ多い。
(ここから先は18歳以下の読者はご遠慮ください、笑。)
最近聞いた中で一番面白かったのが、フランス人女性が立ち上げたsoft paris(←ロゴをクリックするとwebsiteに飛びますが、人のいるところでブログを読んでいる方は注意しましょう)。 いわゆる「オトナのおもちゃ」(女性向けオンリー)をマルチレベル・マーケティングで販売するビジネスです。
マルチレベル・マーケティングとは販売組織がピラミッド構造をしており、上位販売員が下位販売員を勧誘しトレーニングするシステム(日本では一般的に「マルチ商法」と呼ばれ悪徳商法の一部と勘違いされがち)。
Wikipedia : 連鎖販売取引
簡単に説明すると、Soft Parisの商品に興味のある女性グループを誰かの家に集めてホームパーティーを開き、そこで販売員が商品の紹介をする、といういわゆるホームパーティー商法です。
2年前に始めたのが、すでに販売員が200名になり、フランスで(自社を含め)3社いる中で現在業界(?)2位。 トップとの差を縮めつつあるそうです(そもそも、そんな市場調査、どこで得るのかしらん?)
すごいところにマーケット・ニーズ見つけるなー・・・彼女、INSEADの前職は弁護士だったんですけどね・・・
「抑圧された主婦層が多いマーケット」が狙い目で、日本で展開したい人がいればぜひ提携したいので連絡ください、とのことでした。 ご興味ある方はぜひContactページからご連絡ください。
Factory for unhappy people – 不幸な人の製造工場
『ハーバード留学記』の著者でライフネット生命保険副社長の岩瀬さんのブログ、及びThe Economostの書評を読んで以来、ずっと読みたかった『Ahead of the Curve: Two Years at Harvard Business School』
を読み終わりました(2つの書評 ↓)。
生命保険 立ち上げ日誌:本当の『ハーバード留学記』(ついに発売!)
The Economist:Factory for unhappy people
著者は元Daily Telegraph(英)のジャーナリストでHBS(に限らずビジネススクール)には珍しく「いわゆるビジネス」の経験を持たないため、(ある意味)正常な精神とイギリス人らしい皮肉、的確な筆力で、25歳そこらの若者が「世界中のすべての問題をキミたちが解決できる、世界を変えるのはキミたちだ」と吹き込まれ、米国資本主義の担い手として巣立っていく様子と、HBS-wayに戸惑いその意味を問う自分の姿を描いています。
私も「メーカー→INSEAD MBA→総合商社」、というMBA前も後もコンサルでも投資銀行でもなくMBAでは「マイナー」なキャリアなため、著者がHBSで直面した戸惑い、疑問、感動、心境の変化が、まるで4-5年前のINSEADにいた頃の私を見ているようで読みながら随分入り込んでしまいました。
かなりランダムですが、読後の感想です。
移民の子どもの教育


今週のThe Economistは表紙を見た途端、吹き出してしまいました。
ポールソン米財務長官が”I WANT YOUR MONEY”と読者を指しているこの合成写真、もちろん第一次世界大戦の米軍募集ポスターをパロったものです。
なんか顔まで似ている気がするんですが・・・
今週のThe Economistはまだ読んでいないので、先々週のThe Economistから面白かった記事を。
景気とMBA
先々週のThe Economistに「MBA志願者が増えている」という記事がありました(↓)。
MBAs and the economy: Ports in a storm
見事にmbaのアプリケーション数(青線)とoecd国のgdp(赤線)が逆の相関関係を描いています。
MBAの最大のコストは留学中の学費+生活費もさることながら、その期間を学業に捧げることによってロスする給与が大きいのですが(この”Opportunity Cost”の概念については『MBAはビジネスの共通言語』参照)、「不況で給与アップも期待できない、雇用がなくなるリスクさえある(もしくはすでになくなった)。それなら、この機会にMBAで自分の付加価値を上げておいて、景気回復期に市場に戻ってこよう」というロジックが働くのだとか。
私がMBAを取ろうと思ったとき、景気のことは全く考えなかったので、「ほー、なるほどなー」と。
借金してでも投資するオーストラリア人
複数の方からMBAの学費調達方法について質問を受けたので、ひとつの可能性としてご紹介します。
私と夫は2人とも(欧米から見ると)世界の果てにある孤島(孤大陸)の大企業の(一般的には)安定していると思われている職をサクッと捨てて自費でMBA留学したという共通点があり、基本的なメンタリティーは似ていると思うのですが、「私にはそれは思いつかなかったなー」と思ったことがひとつ。
私たちがINSEADに行った2003-2004年で、学費 + 生活費で1年間に1,000万円かかりました(アメリカの2年制だと2,000万円)。
* 「そんなにかける価値があるものなのか?」という議論がありますが、ここでは学費の調達法の話なので議論しないこととします。
* 今は学費の値上がりとユーロ高でもっとかかります。
その調達法は、というと全く正反対です。
MBAはビジネスの共通言語
最近、2人の著名ビジネス本著者がMBAについて同じ趣旨のことを言っているのを読みました。
1人目はもはや時の人となった勝間和代さん。 『ビジネス頭を創る7つのフレームワーク力』の中で次のような趣旨のことをおっしゃっています。
ビジネス思考力をつけるには最低限の知識をつけたうえで、新しいフレームワークを頭の中で積み上げること。
最低限のフレームワークを手っ取り早く手に入れる方法として、欧米のビジネスの現場で重宝されてきたのがMBA。
MBAは知識を得るところというよりは、思考法を訓練するところ。
コンサルティング会社にはMBAを持っていない人のための研修があり研修日程はわずか3週間。 思考法の訓練はOJTで行うので知識だけであれば3週間で十分。
逆に言うと、必ずしもMBAに通わなくても、OJTのなかで、ビジネス思考力の習得は可能’
もう1人は『ウェブ進化論 本当の大変化はこれから始まる』で感銘を受けて以来、ブログをいつもチェックしている梅田望夫さん。
ブログ My Life Between Silicon Valley and Japanのウェブブック 「生きるための水が湧くような思考」、「精緻なMBAカリキュラム」”自家製”の勧めの中で、
今は、知の言語化がおそろしいスピードで進み、書籍ばかりでなくネット上にさまざまな叡智が無償で溢れかえり(しかも検索でき)、専門家の存在も発見でき、勉強の成果をブログなどで自由に発表できる時代
なので自家製のMBAカリキュラムを作れる、
と提案されています。
"ハーバード流"夫婦円満の術
1年半ほど前、仕事で企業買収交渉を行っていました。
お相手は以前に興した会社をシンガポール、マレーシア、香港の3市場に上場させた経験を持つ百戦錬磨の華僑ビジネスマン(年齢的には私の父より上)、対する私は買収交渉は初めて、スケジュールの都合により一人で交渉の席につくことになりました。
そんな思い出しただけでも胃が痛くなるような交渉日の前日、何度も何度も読み返したのが『ハーバード流交渉術』(原作は『Getting to Yes』
というMBAの”Negotiation Analysisのクラスの教科書でもあった名著中の名著です)。
買収交渉そのものはこの本のおかげもあってかうまくいき、手帳に抜き書きした本のエッセンスを今でもたまに読み返します。 このハーバード流交渉術、ビジネス上に留まらない人間関係の極意について多くの示唆が得られます。
結婚してから夫婦ぐるみでの付き合いが増え、夫婦関係の悩みについて相談されることも多くなりました。 夫婦は「究極の人間関係」。 喧嘩のほとんどはコミュニケーション不足、コミュニケーションのまずさによるところが多く、このハーバード流交渉術を知っていたら大分改善されるんじゃないの?というケースが多いので、少しご紹介します。
世界一国際色豊かなMBA
ご質問があったので、私が2003-2004年に留学したフランスのINSEADというビジネススクールについてご紹介します。
私は受験校の検討に当たって以下の理由によりヨーロッパのビジネススクールしか検討しませんでした。
1. 学生時代からヨーロッパに憧れを抱いてよく旅行していたこと
2. 当時、仕事(某大手総合電機メーカーの海外市場開拓)でトロントに住みながら北米市場をカバーしていたのですが、仕事で会うアメリカ人の横柄さに辟易していたこと(アメリカ人の名誉のために。この偏見はINSEADで出会った素晴らしいアメリカ人の友人によって後日翻されることになります)
3. アメリカ至上主義ではない世界がやってくると思ったため、ヨーロッパのビジネススクールの方がより国際色豊かであったため
特に上記3.はINSEADが最も誇りとする特徴です。
INSEADはフランス(パリ郊外)とシンガポールにキャンパスを持ち授業はすべて英語で行われます。特定の国出身の学生の比率が15%を超えないように制限が設けられており、これが学生の多様性を生み出しています。
私がいた頃は、イギリス人、フランス人、アメリカ人の順で多かったのですが(それぞれ10-15%)、今はインド人(海外在住インド人含む)が一番多いようです(国別ではなく地域別ですが現在のINSEAD学生の出身地域構成は次のようになっています)。