Category Archives: 建築・インテリア

築120年の家を現代仕様に改装すると?

私が建築インテリアデザイナーとして一から十まで自分で手がけている初のプロジェクト、すでに内装工事に入りました。 写真を中心に簡単にFacebookでアップデートしていますが、ブログではイギリスの家の住まい方も含め詳しく解説しています。

今までのブログ記事はこちら。
『築120年の家を買いました。』
『工事が始まりました。』
『古い家を改修しながら住み続けるということ – 1』
『古い家を改修しながら住み続けるということ – 2』

今回は現代の生活様式に合わなくなった古い家をどのように変えたのか、という点を中心に写真で解説。
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古い家を改修しながら住み続けるということ – 2

昨日の続き。
建築物の敷地・設備・構造・用途など基準を定めた建築基準法は時代の要請に応じ変わっていくものです。 私たちの家(→『築120年の家を買いました。』『工事が始まりました。』)のように120年も前に建てられた家(+1970年代の増築付き)を増改築する際には現代の建築基準に照らし合わせ直さなければなりません。
WSJに『サムライが住みそうな伝統的日本家屋を改装した米国人モーアさん』という面白い記事がありました。 記事中に

1450万円で買った家の修復に2000万円以上費やしている

とありますが、よくあることですね・・・ こちらでも私の家のように内装がシンプルな家でも古い家(ヴィクトリア時代)の改築は新築の3 – 5割は余計にかかると言われていますし(時間も)、登録建造物(Listed Building)や保存地区(Conservation Area)ならもっとかかります。 イギリス人は「古い建物にこそ価値がある」と考えるので、手を入れたら入れただけ家の価値が上がるという経済合理性があるからこそする人が多いのですが(→『The Restoration Man』)。

我が家でもいろいろありました。 写真でご紹介します(写真をクリックすると拡大します)。
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古い家を改修しながら住み続けるということ – 1

『工事が始まりました。』を書いてから2ヵ月経ってしまいましたが、家の改築は着々と進んでいます(写真はFacebookに逐次公開しているので興味ある方はフォローできます)。

ちょうどその頃読んだ日経ビジネスオンラインの『築百年の京町家、ネットで売ってます』の記事がとても面白かったです。 ロンドンでリノベーションの経験を積んだら愛する京都でやってみたいなー、と漠然と夢を描いているので、「町家をリノベーション」と聞くだけで垂涎ものの私は、記事中の八清さんの次期社長である西村さんにコンタクトを取ってしまいました。

お忙しい中すぐにお返事頂いた中で次の部分がとても興味深かったので、イギリスの例を紹介してみようと思います。

イギリスは増築は比較的し易いのですね。弊社の扱うような伝統工法の物件は、日本の建築基準法ではすごく難しい扱いになります。
改装は法律上の建築行為ではないので、申請して許可を取るということができません。主要構造部分を半分取り替えたら、申請が必要という難しく微妙な基準です。戦前から新築基準の建築ルールを引き継いでいることが原因です。

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工事が始まりました。

『築120年の家を買いました。』の家の改築工事がようやく始まりました。 ヴィクトリア時代築(推定1890年)の2階建てのテラスハウス(Workers’ cottageと呼ばれる種類で貴族の館ではなく小さな労働者階級の家)です。
大がかりな増築のため、区(カウンシル)の建築計画許可(planning permission)を取得し、ビルダー(施工業者)を決めるための見積もりを取るためのテンダーパッケージ(各種図面と仕様書)を作成、4業者から見積もりを取り価格交渉し、ビルダー決定。 テラスハウス(長屋)で両隣の家と隣接しているため、共有している壁(party wall)に行う工事の詳細に関する合意(party wall award)を取る、この全てのプロセスに7ヵ月かかりました。
ボロ家なので住み辛かったし、夏は『ナメクジ屋敷』と化したので早く出たくてたまりませんでした。 工事が始まっただけで、大きな仕事を成し遂げた感でいっぱいです(笑)。 子どものナーサリーもあるし工事の監督もあるのですぐ近くに引っ越したのですが、今にも崩れそうではない普通の家に移れただけでほっとしています。 やはり住む環境が与える影響は大きい・・・

第一週は解体工事。 あっという間に見る影もなくなりました(写真をクリックすると大きくなります)。
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廃墟に2万人が並んだ日

9月のデザイン・フェスティバルを例年通りバタバタと駆け抜け(→『ロンドンのデザイン・フェスティバル』)、そのままイングランド西部デヴォンにホリデーに行き、帰ってきてたまった仕事に追われています。

デザイン・フェスティバルの記憶も遠くなり始めていますが、今年印象的だったのはこれでしょう、旧バタシー発電所(Battersea Power Station)に市民2万人が並んだニュース。
Animals Battesea Power Station普段は一般公開されていないロンドン中の800もの建築が一斉に無料で一般公開される素晴らしいイベントOpen House Londonのことは『現代建築の都ロンドン』というエントリーで書きましたが、今年の目玉は再開発が決まっているテムズ河沿いにある旧バタシー発電所(グレードII指定建造物)でした。

1933年に建てられたヨーロッパ最大のレンガ築建造物(アールデコ様式)であり1977年のピンクフロイドのアルバム『アニマルズ』のカバー(左写真)を飾ったことで世界中に有名になりました。 1983年に発電所としての役目を終えたバタシー発電所、30年以上に渡り何度も再開発計画が生まれては頓挫します。 その間、手入れされず廃墟となった巨大な姿はギリシャ神殿のようにも見え、ロンドン市民が毎日のようにテムズ河越しに拝むものの中に入ることはできないミステリアスなランドマークでした。 ようやくマレーシアのディベロッパーによる再開発計画の許可が下り、今年末から工事が始まる予定。 廃墟のままの姿が見られる最後のチャンスとあって公開日の初日には2万人もの人が並んだとのこと。
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日英リノベーション業界比較

最近立て続けに友人がFacebookでリノベーションに触れていたので、日本のリノベーション現状についてリサーチしてみました。 私は日本にいた時は居住目的で不動産購入を考えたことがなく、イギリスに来てから建築インテリアデザインに目覚めたので、日本よりイギリスの状況の方をよく知っています。

イギリスはリノベーション大国ですが(注1)、だいぶ日本と前提条件、環境が違うのだということがわかりました。 また、欧米で言うところの’interior designer’(インテリアデザイナー)という職業は日本にはほとんど存在しないため、合わせてまとめておきます。
注1:英語では’renovation’や’reform’という言葉を日本と同じような用法で使いません。 ’refurbishment’、’remodeling’、’modernisation’、’updating’など内容に応じていろいろな言葉が使われますが、ここでは日本語で伝わるようにリノベーションという言葉を使っています。

1. 新築志向の日本と中古が基本の英国
ヨーロッパに旅行すると築数百年の建物からなる街並が続き、まるでタイムスリップしたような感覚になります。 逆にヨーロッパ人が東京に行くと「未来都市だ!」と感嘆します。 『あなただけの家 – 1』に書いたように、イギリスは全住宅流通量(既存流通+新規着工)に対する既存住宅(中古物件)のシェアは日本が13.5%に対し、イギリスは88.8%です(アメリカ77.6%、フランス66.4%。 国土交通省『中古住宅流通、リフォーム市場の現状』より)。 つまり、9割が中古(中古が常識なので「家を買った」と言えば中古のこと。 新築は’new-build’と言います)。
建物の外観は公共に属するものなので、建物の中を現代の生活様式に合うように変えたり(’modernise’や’update’)、改築(’conversion’)や増築(’extension’)を行って自分たちのニーズに合った空間にするのが一般的です。 リフォーム市場(改築・増築など大掛かりな工事から水回りのリフォームなど小さなもの含めてこう呼びます)の規模は大きく、住宅投資に占めるリフォーム市場の割合は日本の27.3%に比べ、イギリスでは54.5%にのぼります(2007年、上記国交省資料より)。
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ロンドンのデザイン・エコシステム

悪いな、ミラノ・東京。 残念だったね、ストックホルム・パリ。 アインドホーベン・ベルリン・バルセロナ・・・そして特にニューヨークよ、許しておくれ。
だけどロンドンこそが世界のデザインの首都だ。

去年のロンドン・デザイン・フェスティバルを評したThe New York Timesの記事の冒頭です(→“NYTimes: In Praise of British Design”)。

こう言わしめるロンドンのデザイン都市としてのパワーが、数十万人のクリエイティブ人口を惹き付けています。 そしてそのハイライトを楽しめるのが毎年9月(今年は9月14日〜22日)に市内約300ヵ所で行われるロンドン・デザイン・フェスティバルです(London Design Festival)。

ヨーロッパの3大デザイン都市といえばミラノ・パリ・そしてロンドン。 各都市は巨大なインテリア・デザイン祭りを擁しており、春のイースターの時期にミラノで開かれるサローネ(Salone Internazionale del Mobile)、冬と秋の年2回開かれるパリのメゾン・オブジェ(Maison & Objet)に比べると規模(訪問者数)は小さいロンドン・デザイン・フェスティバルですが、近年急速に存在感を増し、国外からの来場者数・出展者数ともに伸びています。
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築120年の家を買いました。

築120年(推定年1890年、ヴィクトリア時代)といってもたいしたことありません、『古いほど人気なマイホーム』に書いたとおり、ロンドンの居住用物件の4分の1が第一次世界大戦の前、半分以上が第二次世界大戦の前のものなので、ゴロゴロあるヴィクトリア時代のテラスハウス(日本風に言うと長屋)の1軒で、ずっと住人がいる家なのでそれなりにインフラ(電気・ガス・水道)はあります。 とはいえ、120年ものはいろいろあります。

「イギリスで家を買うのは大変」とはよく聞くのですが、たしかに・・・3ヵ月かかりました(おそらく標準的)。 買い主・売り主ともに弁護士を雇っていろいろ調べるのですが、「土地の権利書に1860年代にジョンさんとチャーリーさん(仮名)が当該土地について契約を交わしたが契約が紛失しているので内容がわかりません、子孫が誰かもわかりません。 ただこの内容不明の権利条件が土地に付与しています」とか「地区の教会が壊れた場合、修復する義務があります」とか訳のわからない事項がボロボロと出てくるのです。

家の中は1890年の建築当時の部分と30年前に増築された部分があるのですが(30年前の増築は”new extension”と呼ばれている、日本だと家の平均寿命は約30年)、どちらもボロい・・・
私の建築インテリアデザイナーとしての初めてのプロジェクトがこの自宅の増改築です。 やっぱりデザイナーになったからには自分でやってみなきゃね。 登録建造物(Listed Building)でも保護地区(Conservation Area)でもない普通の家なので、結構好きなように手を入れられます。 かなり大掛かりな改築になる予定(通りに面する家の外観は変えてはいけないが、家の中や庭側は全面的に改築)。
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The Restoration Man

普段「テレビは見ない」と言っている私ですが、最近密かにはまってしまった番組があります。 それが民放Channel 4の”The Restoration Man”。 イギリス各地にある歴史的建造物(多くは長年見放されていて朽ち果てている)を修復してマイホームにしようとする人々を建築家のGeorgeが訪ねて修復プロジェクト一部始終を記録するドキュメンタリー X エンターテイメント番組。
Reeds Windmill Before例えばこの建物。 19世紀初頭に建てられたケント州の風車、19世紀を通じて小麦粉の生産に使われていましたが1915年の大嵐で羽が破損、それ以来使われていませんでした。 一家に代々伝わるこの風車を継いだ若いPeteと妻のNikkiが修復に乗り出します。 癌に冒されたNikkiが病の進行と闘いながら進むエモーショナルなこのプロジェクトの一部始終は、英国内ではChannel 4のサイトから、国外ではYouTubeで見られます(修復完成後の2人の家はContinue readingをクリック)。
Chennel 4 : “The Restoration Man – Reeds Windmill, Kent”
YouTube : “The Restoration Man – Reeds Windmill, Kent”
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あなただけの家 – 2

昨日の続き。 全く同じ家を取材した日英のインテリア雑誌を比べることにより、インテリアに対する姿勢を探るお話です(日本の「モダンリビング」記事はこちら、イギリスの「Living etc」記事はこちら)。

雑誌はタイトルやサブタイトルで読者の注意を惹くのでタイトル・サブタイトルを比べると、雑誌の編集者(すなわち読者)が何を重視しているか一目瞭然です。
まずは、特集のタイトル(以下、拙訳)。
モダンリビング(日)は

イギリスのインテリアデザイナー、ジョアナさんの家で見つけた、インテリア・テクニック

ふむ、なるほど・・・ 日本人は「外国から学ぶ」ことが大好きなので、ありがちなタイトル。
一方、Living etc.(英)は

Lots of love – Edgy British design and feminine glamour may seem unlikely partners but, in Jo Berryman’s lovingly styled home, they’re perfectly matched
エッジーな英国デザインとフェミニンかつグラマラスは一見合わなさそうだ、でもJo Berrymanが美しくスタイリングした家では、この2つは完璧にマッチしている

おっ、いきなり出ました、インテリアのコンセプト説明(コンセプト重視の話は『芸術家は努力でなれる?』をどうぞ)。
サブタイトルに続きます。
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