ゴスロリとちゃぶ台ひっくり返し

『「北欧インテリア」って何?』の続き。 日本における西洋インテリアの成熟度はまだ「イタリア料理といえばナポリタン」だった時代のイタリア料理と同じレベル、というお話で、1. 日本ではインテリアを表現する言葉が曖昧、の続きです。

2. 日本では一斉に同じスタイルが流行る
これはインテリアに限らずファッションでも同じですが、日本では皆が同じものを欲しがります、ひと昔(ってほど昔でもないか)「エビちゃん風ファッション」が一世風靡したときのように。 告白すると私もあの時代、何を血迷ったか白のふわふわモヘアカーディガンを買ってしまったことがありますが、エビちゃんファッションの特徴である純白とかベビーピンクっていわゆるイエロー肌の人には全く似合わないんですよねー 猫も杓子も同じものに飛びつく現象のイタいところです。

日本の新築住宅に輸入住宅というのがありますが、あれも本格派○○住宅という触れ込みのものすごい「なりきり住宅」が登場します、ほとんどゴスロリなどコスプレを思い出してしまう。 コスプレはひとつの文化なので別にいいのですが(話がまた飛びますが、日本のゴスロリはイギリス屈指の名美術館V&Aの特別展示になったほどユニークなもの)、自分という軸はないのか?と気になるのも事実。

イギリスでも大きなインテリアのトレンド、小さいトレンド、無数に現れますが、基本的に建物は壊せないので箱である建物である時代の建築的な特徴を現し、その特徴を尊重しながらインテリアで自分の個性やライフスタイルというオリジナルなスパイスをふりかけるのが常套手段です(→『あなただけの家 – 1』『- 2』)。 幼少から「自分の個性を見つけなさい」という教育を受けているところからくるのかもしれません。

3. 日本では戦後でいったんぶつんと切れる
『人が自然に生きられる社会』というエントリーで紹介した安西洋之さんの『ヨーロッパの目 日本の目』という本で日本の「ちゃぶ台を引っくり返す」文化について触れた箇所があります。

ヨーロッパにいると確かにこの日本の文化に気づきます。 第二次世界大戦で焦土となり敗戦国として「ゼロからスタートした」という精神が住宅にも見られます。 日本の一般住宅において戦前からの建築やインテリア・家具が残っている家の方が少ないのではないでしょうか? こういう精神が育った歴史的経緯はわかるのですが、せっかく戦前からの素晴らしい伝統文化があるのでなぜもっと自然な形で日常生活に組み込まれないのか?と不思議になります。

cole&son historic royal palaces一方、イギリスでは「古いものと新しいものをミックスする」ことがまるでDNAであるかのように組み込まれています。 だいたい街並みがそうですし(→『現代建築の都ロンドン』)、家の中でも新品で揃えずあえて祖父母や両親に譲ってもらったものやアンティークなものをふんだんに入れます。 高層新築マンションに住みインテリアも全部新品にするのはダサさの極み、新しい家具にわざわざ傷をつけて古く見せる人もいます。

インテリアでも建築エレメント(窓・階段・天井飾りなど)に時代の特徴が現れ、インテリア商品にも頻繁に歴史的なパターンやモチーフが使われます。 毎年、壁紙やファブリックメーカーから新作が出ますが、その半分以上は歴史的文様やモチーフを改めて現代風にデザインし直したものです。 例えば上はCole&Sonという英高級壁紙メーカーが去年出したHistoric Royal Palaces(王族の宮殿)コレクションという壁紙ですが、英王室の宮殿の内装をモチーフに壁紙のデザインにしたものです。 日本で例えると西本願寺の著名な「○○の間」の障子とふすま絵を壁紙のモチーフにして現代の住宅内の壁に貼るイメージ。

老舗メーカーであれば何千もの歴史的モチーフのアーカイブ(資料群)が社内に存在するので、それをデザイナーがインスピレーションの基とします。 ローマ・ギリシャ時代以降から何度も何度も歴史にインスピレーションを求め、新たなものをつくり出す原動力としてきたのがヨーロッパ。 以前こちらのエントリーで『欧州人のハンパない、歴史と伝統の”売り方”』という記事が面白いと紹介しましたが、本当に歴史と伝統の使い方・売り方がハンパなく上手いです。

日本のインテリアも戦後でぷつんと切るのではなく、なりきり北欧風にするのでもなく、もっと古いものとミックスさせるとオリジナルな面白いものができるのにな、と思います。


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