私のいたソニー

Facebook上で元ソニーの友人たちが続々とシェアし、それぞれの回顧録を語っているので、私も書いてみようかと思います。
これのことです(↓)、日経ビジネスオンラインの特集『オレの愛したソニー』。 特に丸山さんの記事が「ぶっちゃけすぎ」と人気で面白いので貼っておきます(それにしても現存する会社に対し過去形で「愛した」ってひどくないですか? この題名・・・)。
日経ビジネスオンライン:
(上)「ソニー社長を引き受けた平井さんは軽率だな」
(中)「ソニーの使命は大賀時代で終わっていた」
(下)「ソニーの本質は高級なおもちゃ会社」

私がいたのは2001年から2003年の2年間。 丸山さん言うところの

ソニーが大企業になって名前が売れてから入ってきている優等生
会社の看板が残って、確かに会社がそのまま生き続いていくように見えているけど、同じ事業のままでいつまでもやっていけないよ。 そういうことを理解しない若いやつが多いから、新卒の時にピークを迎えている会社に入りたがるんだ。

がそのまま当たっている時代ですが、20代半ばのその頃、会社の寿命とか時代の大きなトレンドとか見えていませんでした。 ただ、このわずかの期間のソニーでの経験は次のMBAにつながっているし、MBAは今の私につながっています。

ソニーではFeliCaという亜流な部署で(コンシューマーエレクトロニクスで知られていたソニーで鉄道インフラ・・・)、FeliCaを海外展開させるというのがミッションでした。 その頃の話は『FeliCaがガラパゴス化した3つの理由 – 1』『– 2』に書きました。 CD規格で世界標準をつくりだしたソニーは、FeliCaも顧客である交通事業者を押さえればデファクト・スタンダード(事実としての世界標準)になれるだろう、というのが社内での大勢の声でした。 ところが、交通機関のインフラは全くそういう世界ではなく、デジュール・スタンダード(ISOなど国際標準化機関が定めた標準)が重要で、その標準化のゲームを知り尽くした政治力が必要でした。

私はその後、2003年にINSEADというフランスのビジネススクール(今年FTランキングで世界1位に→INSEAD)にMBA留学したのですが、その時は日本人学生が2学年合わせて20名弱のうち、ソニー出身者(在籍者)が私を含めて3人、パナソニック1人、トヨタ2人、といった具合で、成功している日本企業の代名詞として見られていた時代でした。 FeliCaでの経験が悔しかった私は、「業界の競争力分析」、「国際ビジネス」、「イノベーション」etc. 競争戦略系の授業を集中して受講していました。
そんな学生生活のある日、同じくソニー出身の友人が見せてくれた、彼の手の平で光る小さなもの、それがiPodでした。 ネジのない、薄くてなめらかな筐体、バックライトで怪しく光る曲名、iTunesを介したスムーズな操作・・・ VAIOという花形部署の商品開発エースだった彼が、放ったひと言「どうしてソニーにこれがつくれなかったんだろうな?」がその場の空気を現していました。

誰もが欲しがるようなわくわくするプロダクト、 それも十八番のミュージックプレーヤー、ハードとソフトのスムーズな連携・・・まさにソニーだったらつくれたような、なのにつくれなかったのがiPodでした。 その後、iTunes Storeを核としてiPhone、iPadなどのハードと無数のアプリの巨大エコシステムができていくことまで想像はできませんでしたが、私が狭い業界での競争優位だの、何だの、と理屈をこねている世界ではないことは予感しました。

MBA卒業後は、懲りずに、今度はi-modeの海外展開チームに加わったのですが(その頃の話→『i-modeはなぜ海外展開に失敗したのか』)、その頃は私も30歳手前なので、「ヨーロッパに住みたい」、「結婚しなきゃ」、「子どもも産まなきゃ」とプライオリティの高いプライベートの重要案件が山積み。 大急ぎでひとつずつ片付けていって(笑)、ロンドンにたどり着いてひとり目を産んだのが6年前。 その時、再び瞼の裏に甦ってきたのが、バックライトで光るあの日見たiPod。

自分ひとりじゃ何も起こせないビジネス系の道を去って、改めてデザイナーとして勉強し直すことにしたのは『クリエイターになりたい。』に書いた通りです。 その後、デザイナーとして修行しつつさらに2人産んでから予定通り独立して今に至ります。

ちっともソニー回顧録ではなくなりましたが、私みたいな中途入社の25歳ヒラ社員に自由にチャレンジングな仕事を任せてくれるいい会社でした。 私の知る限り、元ソニー社員で古巣のことを悪く言う人はほとんどいません。 ただ、会社にも寿命があっていいという丸山さんの言う通り、ソニーという箱がその使命を終えたのだとしても、そこを飛び出した沢山の人が昔のソニーが生み出したようなわくわくする物・サービスを生み出せば、ソニーという会社は幸せな人生(会社生)だったのではないか、と思うのです。


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