FeliCaがガラパゴス化した3つの理由 – 1

先週以来、寒波に襲われているヨーロッパ、雪のパリに遊びに行ってました。
パリ話はさておき、日経ビジネスオンラインの連載『異文化市場で売るためのモノづくりガイド「ローカリゼーションマップ」』のコラム『「腑に落ちなくても従う」、パナソニックの欧州白物家電戦略』にデジャブ(既視感)すら感じました。

ヨーロッパで白物家電(冷蔵庫と洗濯機)を売ろうとしたとき、日本やアジアで評価されたコンセプトが、全く評価されなかった。 日本で最先端である「ななめドラム洗濯機」や「多ドア冷蔵庫」といった商品を持ち込めば、イノベーションとなることを想定していたが、大きな文化的・生活習慣面でのバリアがあった。
冷蔵庫は家電ではなく「冷えるキャビネット」でインテリアの一部。 一方、洗濯機は機能品質重視でおばあちゃんの時代からの信頼性がモノを言う・・・

コンシューマーエレクトロニクスの世界で現地ユーザーの使い方や文化的コンテクストにフィットしない商品を持ちこんで、日本でアピールする機能を謳っても売れないことは容易に想像ができます。 が、これはコンシューマー製品だけではなくB2B製品でも同じなのです。
以前、こちらで私が昔ソニーに勤務していたことを書きましたが、ソニーでは花形のコンシューマーエレクトロニクスではなく、(今は”Suica”などで日本の欠かせない生活インフラとなった技術)FeliCaの部署にいました。 FeliCaを海外展開させるのがミッション。
野村総研が「日本のガラパゴス化現象の例」として非接触ICカード(FeliCa)をあげ、「ガラパゴス化」という言葉を生み出した時より5年以上前の話です。


結局、欧米市場に入れなかったのは『ルール作り上手なフランス – 2』で書いたように世界標準規格ISOを取れなかったこと(ヨーロッパ勢に政治力で負けた)などいろいろ要因はありますが、ここではパナソニックの例にならってFeliCaが日本及びアジアで競争優位(competitive advantage)としていた技術優位性が、欧米の文脈では競争優位とならなかった点だけをあげてみます(2001 – 2003年頃の話)。
1. カードの反応スピード
FeliCaが強みとしていたのは、カードを改札機上にかざしてから読み書き処理を完了するまでの反応スピードでした(0.1秒以内に完了)。 このスピードは首都圏のように毎日1,000万人近くが電車で通学・通勤し、2分ごとにプラットフォームに電車が到着し、寿司詰め状態の電車・駅構内・駅構外の間を一瞬の滞りもなく乗客を移動させるために必要不可欠なスピードです。 駅改札でも人が止まることなく歩くスピードでドアが開くようになっています。
NY_subway_gate.jpgところが、欧米大都市の地下鉄はどうでしょう? たしかにラッシュ時は人が押し合うほど混みますが、NY地下鉄はゴロンと手動でバーを倒す改札(右写真)。 手動でバーを倒すだけで1秒はかかります。 出口なんて要塞のように囲まれた回転式(左写真)。 出るのに2秒はかかる? 0.1秒というカードの反応スピードはオーバースペックでした。
大都市地下鉄でこうなのですから、中心部と郊外を結ぶ電車ともなれば(特にヨーロッパでは)改札がない駅も多く(駅にvalidatorという紙の切符に穴を開けたり日時刻印したりする機械があるだけ)、さらにスピードには意味がありませんでした。
NY_exit_gate.jpg長くなりそうなので、2つめと3つめの理由は明日。

以前、こちらでお知らせした米国大学院留学会が今月下旬に全国6大学で説明会を行うそうです。
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2 responses to “FeliCaがガラパゴス化した3つの理由 – 1

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