「ソニー VS.サムスン」に思う

週末読んだ本2冊目。 こちらの方が読む人を選ぶ気がするけど、池田信夫 blogで知り、(もう辞めて6年も経つので公開するが)ソニーは私の古巣なので読んだ『ソニー VS.サムスン』
私がいたのは、2001年から2003年という短い期間。 新卒入社した商社が経営危機に陥ったのでソニーに転職し(→こちらに書いた)、ソニーはMBA留学という私事都合による長期休職を認めていなかったので、(長期的にはMBA留学の方が重要だったため)辞めたくなかったが辞めた、という超個人的な経緯であり、その頃は電機業界やソニーという会社としての長期トレンドなど考えていませんでした。 が、マクロで見ると、2000年に時価総額ピークを迎えた後、2003年4月に巨大営業赤字を発表した途端、株価が暴落した「ソニー・ショック」までの下り坂の中にいたようです(中にいるとそんなことはあまりわからないものです、しかもヒラ社員には)。
世には数々のソニー本、サムスン本が出ていますが、学者である著者の緻密な分析が光り、組織や企業文化にまで踏み込んだオールラウンドでバランスの取れた良書(かなり細かいので電機業界に詳しくないと読むのが辛いかもしれない)。 個別の企業の分析としても優れているし、こちらで紹介した『ガラパゴス化する日本の製造業』的な読み方もできます。


初めにフォローしておくと、ソニーは今でも辞めた人同士が集まって「いい会社だったよねー」と懐かしむような会社であり、私も今まで勤めた日本企業3社の中で、在籍期間が一番短いにも関わらず一番居心地がよかった会社でした。 ただ社員にとっていい会社が必ずしも株主にとっていい会社でないことは昨今の株価が示す通り。
私がいた頃は、サムスンを真のライバルとみなす人は電機業界にはあまりいなかった気がします。 そもそもソニーとは事業領域が大きく異なったし、国産品志向の強い日本のコンシューマーエレクトロニクス市場で韓国製品はちっとも売れていませんでした。
私が本当に「サムスン、そこまで来てたか?!」と思ったのは、ソニーを辞めてINSEAD留学にしていたヨーロッパででした(2003 – 2004年)。
1. 世界的ブランドコンサルティング会社Interbrandが毎年出す世界のブランド価値評価ランキング「Best Global Brands」で、2004年にソニーが20位、サムスンが21位と肉薄していることを、ブランディングの授業で知った(2005年にはサムスン20位、ソニー28位と逆転している)。
Interbrand : Best Global Brands 2004
Interbrand : Best Global Brands 2005
2. サムスン製携帯がヨーロッパでは売れに売れていた(2003年に、サムスンはノキア、モトローラに次ぐ世界第3位の携帯端末メーカーになっている)。 しかもブランドイメージは「スタイリッシュな高機能端末」という従来ならソニーが保有していたイメージであり、そこで見事にブランド力を作り上げていた。
3. 『Samsungに見る黒船の効果と限界』で書いたようなサムスンのリクルーティングには心底驚いた。 グローバル企業になるというものすごい決意と執念を見た気がした。
その時私はヨーロッパにいながら、サムスンは日本人と日本企業を刺激しないようにあえて日本のコンシューマー市場を避けていて、その間に着々と世界で手を打っているのだなー、と思ったものです。
また、2003年頃から徐々に日本国内のソニー教信者(昔はソニー製品しか買わないという人がたくさんいた)がアップル教信者に改宗していく現象も気になっていました。
本書はこちらで紹介した『イノベーションのジレンマ』を何度も引用しながら、栄光を体験した企業がいかにその状態を維持するのが難しいかということをさまざまな角度から説いてみせ、たまたまソニーより遅れて栄光を謳歌するサムスンも例外ではないことを指摘しています。
読み物としても面白いですが、個人のキャリアに活かすのであればやっぱり「いかに特定の企業に縛られないキャリアをつくるか」という読後感になるのかなあ?


4 responses to “「ソニー VS.サムスン」に思う

  • まつーら

    へー、よーこさんって商社の後はソニーやったんすか。それは知らなんだなぁ。
    ソニーは本当に働くには良い会社みたいですね。そーゆーのを周りからチラホラ聞きます。
    僕も学生時代はめちゃめちゃ憧れて、一応履歴書は出しました。勿論書類審査で落とされましたが。。
    ちなみに僕、意外と昔からSamsung好きだったりして
    2000年に一人暮らしを始めたとき、電化製品をSamsungとLGの韓国コンビで買い揃えたりしたら、
    周り(特にうちの家族)からブーイングされました。。
    でも、当時からデザインとかかなり重視されてて結構かっこよかったんですよ。
    しかも日本製に比べてだいぶと安かったし、機能的にも大差なかったし。
    今でも買うことには抵抗ないなぁ。あ、でもヒュンダイはちょっと遠慮するかも?

  • la dolce vita

    >まつーらさん
    >2000年に一人暮らしを始めたとき、電化製品をSamsungとLGの韓国コンビで買い揃えたりしたら、周り(特にうちの家族)からブーイングされました。。
    へー、それは珍しい。 特に電機業界の人なのかもしれませんが、昔は韓国製には目もくれてませんでしたよね。
    実は、
    >日本製に比べてだいぶと安かったし、機能的にも大差なかったし。
    なのに。
    ちなみに、うちの家電製品(↓)。 自分で買ったものはほとんどないけど、特に不満はありません。
    http://www.ladolcevita.jp/blog/global/2008/11/post-90.php
    こっちのベスト電機行って思うんですが、SamsungやLGの家電の方が日本メーカーより売場のいい場所占めてません? 実際、売れ筋なのか日本メーカーの小売り量販店に対する営業不足なのかよくわかりませんが。

  • ドイツ特派員

    la dolce vitaさん、今度この本は読んでみます。
    SamsungとSonyかあ、懐かしいですねえ。この両社、一時期良く訪問しました。私は家電系ではなくて半導体工場でしたが、雰囲気は違いましたね。
    >ただ社員にとっていい会社が必ずしも株主にとっていい会社でないことは
    Samsungの場合例えば
    ・労働組合がない
    ・ある年次までに規定の昇進が出来ない場合は昇進機会はなくなるので、そこで退職する人が多い(だから韓国では「元Samsung」の肩書きで仕事する人がぞろぞろいる)
    など、かなり厳しいですね。あと、外国語でも(確か)課長で韓国語以外に一ヶ国語、部長で更に一ヶ国語できないと駄目、とか。
    >サムスンは日本人と日本企業を刺激しないようにあえて日本のコンシューマー市場を避けていて、その間に着々と世界で手を打っているのだなー
    もしかするとSamsungの判断として、刺激しないというより注力すべき市場ではないという判断があったのかもしれません。今でもそれほど注力しているとは思えないですし、中国やヨーロッパに比べても露出度は少ないですね。彼らにとっては「難しい市場」ということなんじゃないでしょうか。
    仕事する相手としてのSamsungは本当に難しかったというのが本音です。特に生産財をやっている人間にとっては、何処までSamsungに入り込むかという判断が難しかったですね。ある生産財の人は、「向こうが『欲しい』というもの以外はSamsungには売らない。こちらが『使ってください』と言わなきゃならないものは彼らには持ち込まない」と明言していました。
    Sonyについては、出張のついでにちゃんぽん食ったり馬刺し食ったりで楽しい思い出が多いです。部下とも一緒に行って、「いいんだよ、博多に一泊だ」とかいって泊まる必要も無いのに九州行脚したり、「厚木だろう、んなもん直行直帰」とかいって楽な訪問をしたり(関係ないか)。仕事についていえば、たまたまかもしれませんが、出てくる技術者にいわゆる「良い人」が多かった記憶があります。こちらの話も良く聞いてもらえましたし。ただ途中から技術のアウトソースが進んだのもあり、技術者の元気がなくなったかな?というのが印象としてありました。
    それでもまだVaio Pのようなハッとするものを出してくる力はあるんだと思います。

  • la dolce vita

    >ドイツ特派員さん
    たぶん面白いと思いますよ! 私にもよくわからない製品がたくさん出てくるオタクな本でしたが・・・
    >もしかするとSamsungの判断として、刺激しないというより注力すべき市場ではないという判断があったのかもしれません。
    そうでしょうね、日本市場は”not worth the effort”なんだと思います。 でも、すごく研究はし尽くしてるって、この前どっかで読みました。
    >それでもまだVaio Pのようなハッとするものを出してくる力はあるんだと思います。
    VAIO Pで満足してちゃいけないんだと思いますよ、盛田さんと井深さんの精神を受け継ぐ会社としては。
    ウォークマン並みのものを出さないと。
    こっちに書きましたが(↓)、そういう意味でiPodは衝撃だったと思います、私はもっと地味な商品の部署にいたので直接はわかりませんが。
    http://www.ladolcevita.jp/blog/global/2008/09/post-42.php

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