「しがみつかない生き方」ねえ・・・

日本は5連休だったようですが、シンガポールは3連休で、本が3冊読めて満足な週末。
1冊目は精神科医 香山リカさんの『しがみつかない生き方』。 『勝間和代を目指さない』という帯に飛びついた人が多いらしいですが、ちょっと前に読んだ『ぷちナショナリズム症候群』が興味深かったので読んでみました(それにしても、『しがみつかない生き方』が、中で批判していた勝間和代さんの『断る力』の横に平積みされていたのは紀伊国屋シンガポール店が気をきかせたのだろうか?)。
彼女の持論は精神科医という自らの経験に根ざしたものが多く、そのちょっと厭世的な考え方のすべてに賛成できるという訳ではないのですが、昨日書いたイギリス人医師の話もそうであるように、とにかく違うところを見ている人の話は面白い。
個人的にタイムリーだったのが、

同時多発テロと小泉改革以降「人間の狭量化」が進んだ。

として、イラクで人質になった若者を「自己責任」とバッシングする風潮を

寛容さを失い狭い範囲でしか物事を考えられなくなってきている。 自分とは少しでも違う行動をする人たちの心を想像し理解することができなくなっているのではないか?

としている箇所。


私にはこれが(しつこく登場するが)『子供に優しい国って?』発言小町のトピックの中で「妊娠は自己都合」と切って捨てる人の姿と重なって見えました(注)。
注:このエントリーで私が「妊娠が自己都合なら残業も自己都合では?」と書いたことに対し、コメントで異論があったが、私は「妊婦や子持ちが働き続けられない」のも「残業せざるをえない」のも、両方とも「個人の自己責任」と切って捨てることのできない社会問題だと思っています。
なお、香山リカさんはこの点に関しては少々意見が違うようで、結婚・出産を経た方が人間的に深みがでるという風潮が急速に広がり、今は、

子どもを持つ女性がいちばん有利な時代

になった、として、子供を持つ女性医師をサポートする会への入会資格がなかったという自らの経験を基に、子供を持っているからと優遇されるのはおかしい、と書かれています。
たしかに、女性誌などではそういう風潮があると思いますが(テレビは見ないので知らない)、マスコミが書き立てる内容と現実は随分乖離があり、「子どもを持つ女性がいちばん有利な時代」だと民間企業に勤めている人の大部分が賛成するとはとても思えないんですが・・・このへんは個人の経験が大きく左右するのでしょう。
ところで、「女性優遇」や「子持ち優遇」ってアメリカのマイノリティー優遇策アファーマティブ・アクションを思い出します。
この点に関しては、西水美恵子さんが世銀で取った施策「応募資格のある女性は少ないから候補者は積極的に探し出すが、採用は実力重視で女性優先は一切しない」が参考になりそう(『歴史を繰り返さないで』より)。
いろいろ考えさせられ、今の世相をよく現した本でした。 新書なので軽く読めます。
こちらの書評もどうぞ(↓)。
日経ビジネスオンライン:勝間和代も香山リカも、助けちゃくれない〜『しがみつかない生き方』


5 responses to “「しがみつかない生き方」ねえ・・・

  • まつーら

    > 寛容さを失い狭い範囲でしか物事を考えられなくなってきている。 自分とは少しでも違う行動をする人たちの心を想像し理解することができなくなっているのではないか?
    物凄く興味深い考察ですね。これは。
    もしこれが本当なら、なぜ物事を狭い範囲でしか考えられなくなったのか。
    インターネットという何でもいくらでも情報をゲットできる世の中になった昨今、
    この情報過多が逆に人々の思考を狭くしているのでしょうか?
    それとも、ネットは関係なく、もっと違うものが原因?
    なんなんだろう・・・

  • Blondy

    以下ちょっと過激な見方なので不愉快に思われる方が出るかもしれませんが、ご参考までにあえて書き込みしたいと思います。
    人類の自出を考えてみれば、つい最近まで数百万年間は狩猟採取生活であり、僅か約一万数千年前に農耕文明を始めましたが、どちらの場合でも、子供を増やして良いかどうかは環境制約と個体数の間のバランスによって規定されていました。環境キャパに対して総個体数が少なければ子供が増やせたし、逆なら姥捨て子殺しは当たり前だったのです。
    社会が子持ちに優しくするかどうかは、究極的には現在でも同じで環境キャパに対して総個体数が多いか少ないかをどう判断しているかにかかっているといってよいでしょう。
    現代の日本で子供をふやすということは、日本という国の中で見れば少子化対策で善ですが、世界というテーブルでみれば世界人口が68億人と人口飽和に近い状態であるので必ずしも歓迎される事態ではないのではないのではないでしょうか。
    http://www.unfpa.or.jp/p_graph/pgraph.html
    与えられた状況は地域によっても異なるし、時代によっても異なるのは当たり前であり、それを少しでも改善したいという志は尊重されるべきとしても、人類の現実は不平等が当たり前でしょう。
    マクロ的な視点から言えば、自己実現は善、平等主義は善という発想自体がある種のドグマにとらわれ過ぎていて、人類の生物学的な限界という現実を無視したものではないかと思われてなりません。

  • la dolce vita

    >まつーらさん
    >もしこれが本当なら、なぜ物事を狭い範囲でしか考えられなくなったのか。
    えーっと、詳しくは本をどうぞ、なのですが、香山さんいわく、同時多発テロと小泉改革(で競争社会になった)以降ますます「自分の身に何か降り掛かるとすぐ反撃しなければ自分がやられる」という防衛反応が強くなった、と分析しています。
    昔は若者が無茶をするのはある程度当たり前でそれをたしなめるのは大人の役割で太古の昔からある世代の違いだったのに、今は若者が自分とはちょっとでも違う行動をする若者をバッシングするようになった、のだそうです。
    >Blondyさん
    環境キャパに対して総個体数を調節してきたのが人類の歴史であることは同意ですが、
    >現代の日本で子供をふやすということは、日本という国の中で見れば少子化対策で善ですが、世界というテーブルでみれば世界人口が68億人と人口飽和に近い状態であるので必ずしも歓迎される事態ではないのではないのではないでしょうか。
    これに関しては、普通、生物は地球全体としての全体最適ではなく自分が住む環境での部分最適を考えると思います。
    すると、ルワンダで虐殺が起ったことを人口爆発によって環境キャパを超えたことによる自主的な人口調整である、とするジャレド・ダイヤモンドのような主張は理解できますが、なぜ先進国の一部で出生率が下がり続け、他の先進国ではリバースしているのか?
    日本人やイタリア人が地球全体の総個体数を見て判断しているからとは思えず、置かれた社会環境の中で仕方なく自衛しているのだと思いますが?

  • Blondy

    >普通、生物は地球全体としての全体最適ではなく自分が住む環境での部分最適を考えると思います。
    >日本人やイタリア人が地球全体の総個体数を見て判断しているからとは思えず、置かれた社会環境の中で仕方なく自衛しているのだと思いますが
    おっしゃるとおりだと思います。
    子供を産みにくい、子育てがしにくい環境だから少子化しているのであって、全体を考えて産児制限しているわけではないですよね。
    特に東京圏は人口3000万人の世界最大の都市圏であり、地価や生活費も高く、人口過密で生存競争圧力が高いので、子育てが楽な環境とは言い難いでしょうね。
    で、子育てが満足にできない社会に問題があるとして、子育て支援等の改善策を採用してその実効があがると、さらに都市部に人口が増えることになるかもしれない。頭痛いですね。
    先進国で人口が増えている代表はアメリカですが、やはり国土が広いのとヒスパニック系移民の多産が影響
    しているのではないでしょうか。
    あと、人口が減少すれば、一人当たりの分け前が増えて豊かな社会になるという考えかたもある。
    http://www.glocom.org/sum_ja/past_sum/index52.html
    人口が減っても活力ある社会にするためには、①女性にとっては家事・育児と仕事を両立できる社会環境、高齢者にとってはいつまでも働ける雇用環境を作ることが必要である。②移民を大量に受け入れる必要がある。という意見が多いですが、日本の場合、世界最大の1500兆円という個人資産総額を生かして世界で資産運用をしていくこともゆとりある社会をつくるうえでかなり大事だと思いますね。
    P.S. 私は以前、尊敬している方に「一日8時間以上の自由時間がない生活をしている人間は奴隷である。」とおっしゃっていただいたことがあります。

  • la dolce vita

    >Blondyさん
    >先進国で人口が増えている代表はアメリカですが、やはり国土が広いのとヒスパニック系移民の多産が影響
    しているのではないでしょうか。
    そうですね、あとかなりreligiousなのも影響していると思います。
    >日本の場合、世界最大の1500兆円という個人資産総額を生かして世界で資産運用をしていくこともゆとりある社会をつくるうえでかなり大事だと思いますね。
    たしかに、その点はあまり誰も言わないですね。
    日本の場合、資産が偏っていて、75%以上の資産が60歳以上に、50%以上の資産が70歳(75歳?)以上に集中しているので、この方たちが積極的資産運用を進めるかが鍵になりますが、これを出させるには子供への生前贈与税を0にするくらいにしないと、そのまま、政府が相続税で持っていってしまうのがオチですよね。
    >「一日8時間以上の自由時間がない生活をしている人間は奴隷である。」
    8時間ですか・・・ 寝る時間や生活時間は含まないとすると、ほぼ全員奴隷ですね〜(笑)

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