世界はブラック・スワン

チュニジアに端を発した中東の政治不安がイエメン・アルジェリア・エジプト・バーレーン・リビアと次々と飛び火しています。 「ソーシャル革命」などと言われていますが、私は「世界がいよいよブラック・スワンになった」と思いました。
ブラック・スワンとは以下のような特徴を持つ事象のこと。

一つは予測できないこと。
二つ目は非常に強いインパクトをもたらすこと。
そして三つ目は、いったん起きてしまうと、いかにもそれらしい説明がなされ、実際よりも偶然には見えなくなったり、最初からわかっていたような気にさせられたりすること。

(ナシーム・タレブの名著『ブラック・スワン』については、以前ブログで紹介しています→『「果ての国」に生きる – 1』『- 2』
もはや覚えている人は少ないと思いますが、チュニジアデモのきっかけは、去年12月17日。 大学卒業しても職を得られなかった若者が路上で野菜を販売していたところ、無免許だとして警察に商品を没収され追い払われ、そのわずかな生計を立てる手段さえ奪われたことに抗議し焼身自殺を図る。 その小さな街で、彼を政府の無策に対する殉教者だと人々がデモを行った様子がYouTubeに投稿されるやいなや全国規模のデモに発展します。
それがチュニジア政権を倒し、エジプトでは30年間独裁していたムバラク大統領を引きずりおろした、という・・・(NY Timesのupdateがよくまとまっています)


もちろん各種メディアや識者はブラック・スワンの第3の特徴のように、それらしい説明を試みるのでしょうが、何というか予測しようがないですね、ほんと・・・
去年、ヨーロッパをドミノ的に襲った財政危機も、「世界はブラック・スワン」な典型例。 ギリシャ→アイルランド→ポルトガルの次はスペインで、さらにイタリア・イギリス(!)と言われていました。 こちらの危機も今は小康状態ですが、まだ過ぎ去っていません。
世界はつながっていて一カ所で起こった衝撃はあっという間に巨大化し次々と周辺を襲う、この世界で引きこもっていられる国はどこにもない、ことを再確認させられた2つの出来事でした。
ナシームが書いているとおり、人は過去を振り返り後付けの原因をつけるのは得意ですが、最中にいる人はこれからどうなるかなど誰もわからないものです(→『ブラック・スワンとレバノン』)。
そこで思い出したのが、サーフィンで大波に巻かれたときのこと。
ものすごく大きな波に巻かれると、海面がどちらかわかりません。 水中で息ができないので一瞬パニックになります。
大事なのは、1. ケガをしないこと、2. 落ち着くこと。

1. ケガをしないこと
とにかく頭と顔を両腕で覆うようしてカバーし、体を丸める。 ボードが跳ね返ってきたり、巻かれてリーフや岩に体をぶつけないようにするため。
2. 落ち着くこと
上下がひっくり返った状況で海面がどっちだか判断できなくなることがある。 そういう場合は、慌てないで、そのまま身を任すのが一番。 1 – 2分は呼吸しなくても平気だということを思いだし、じっとしていればやがて、体は浮き出す。 浮き出した方が海面。
(参考:波に巻かれたときの回避法をシミュレーションしておく

そして、また次の『波が来るときまで足腰を鍛える』のです。 また、財産や仕事など吹っ飛んでも最後にこれがあればいいや、というもの(家族や友人など)に時間を投資しておくのもいいかもしれません。
black_swan_movie.jpgところで、今イギリスで公開されているナタリー・ポートマン主演の映画『ブラック・スワン』。 このポスターを見て金融危機の映画だと信じていたのは私だけでしょうか?


4 responses to “世界はブラック・スワン

  • tygertyger

    ハハハ、ナタリー・ポートマン扮するバレリーナが金融危機の映画に出てきて白鳥の湖を踊る?
    相当シュールですね。
    ま、私ぐらいの年になると、人生即ちブラックスワン也と開き直っています。
    人間到處有青山
    リビヤその他の政変がなるべく流血が少なく収まるよう祈りますが、こればかりはどうも。
    ダンナの同僚のアリは、長年反カダフィ運動を続けてきて、今は「携帯を耳に貼り付けて、アラビア語でまくしたてる毎日」だそう。さぞやBiz schoolの講義なぞ放り出して、現地へ飛んで行きたいのでしょうが、たくさんの子持ちで、しかも骨髄腫の手術の後は杖をついて歩く身体。そのアリの目の黒いうちに、カダフィ政権が敗れますよう。
    EUが難民状況にどう対応するか、しっかり見ていてください。
    子連れかそうでないかで、Wipe-out後のサーファーの保身の仕方も変わってくるでしょう。

  • la dolce vita

    >tygertygerさん
    >そのアリの目の黒いうちに、カダフィ政権が敗れますよう。
    リビア、日を追うごとにすごいことになってますが、ガダフィ、あんなに映画の悪役みたいな独裁者、リアルタイムで見たことがありません。
    http://www.bbc.co.uk/news/world-africa-12566277
    >子連れかそうでないかで、Wipe-out後のサーファーの保身の仕方も変わってくるでしょう。
    そうですね、あとはマイホームローンを背負っているか否か・・・

  • tygertyger

    アリが今日友人たちに「講義の後片付けを完了して、本日リビヤに出発」とメールで知らせたとのこと。無事でありますように。

  • la dolce vita

    >tygertygerさん
    >アリが今日友人たちに「講義の後片付けを完了して、本日リビヤに出発」とメールで知らせたとのこと。無事でありますように。
    いても立ってもいられなくなったのですね。 リビア情勢はますます激化してますが、アリさん、無事でしょうか? 本当に無事でありますように!

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