Monthly Archives: September 2016

「ハレ」と「ケ」の建築 – 2

前回の続きです。
イギリスには都市計画法の一環で景観保護のために厳しい法規制があります。 このうち一般住宅に関連するのは①登録建造物(Listed Building)制度と②保全地区(Conservation Area)です。

①登録建造物の選択基準は、1. オリジナルな状態を保っている1700年以前の全ての建造物、2. 1700年から1840年の間に建てられた大半の建造物、3. 1840年以降に建てられた建造物は個別の歴史的な価値、社会的な利益、都市景観などを鑑み個別に判断、となっています(参照:Historic England)。
ただ、登録建造物制度はリストに登録されなければ保存対象にならないため、登録建造物と非登録建造物が混在している場合に、たとえ登録建造物が保存されても地区としての景観が損なわれるという不都合が生じるようになりました。 都市の景観保存には個別の建築物(点)だけではなく地区(面)の保存が求められるようになって生まれたのが②保全地区(Conservation Area)制度です。
②保全地区は地方自治体によって定められ、歴史的な市街地や漁村・鉱業村、18・19世紀に建設された郊外などです。

また、例え登録建造物や保存地区制度の対象でなくても建築物の外観の変更には自治体の許可が必要です。
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「ハレ」と「ケ」の建築 – 1

前回に続いて建築の話。
ヨーロッパに住んでいて日本に帰国した時にまず初めにショックを受けるのは、街並みの汚さです。 成田から東京都心に向かう途中や関空から大阪市内に向かう途中の車窓から見える住宅街の街並み ー 建物に全く統一感がなく隙間なく電線が張り巡らされ、ケバケバしい巨大看板やネオンで溢れる街並み ー を見ながら「これが本当に世界中のデザイナーが憧れる日本かー」(注1)とギャップに愕然とします。
注1・・・以前、IDEOロンドン事務所のデザイナーと話した時に「デザイナーはみんな日本に行きたがるよね」と言われたことがあります。

京都の伏見稲荷の鳥居や嵯峨野の竹林の道、桂離宮や龍安寺の石庭など日本のイメージを代表する美しいシンプリシティ(注2)と、雑然とした街並みのギャップが、日本はヨーロッパに比べて大きすぎるように思います。 人間の脳は「見たいものしか見ない」ようにできているらしいですが、日本に長年住むと眼孔を開いていても目の前の煩雑さには何も感じずに素通りできる特殊能力(一種の麻痺状態)が身に付くのでしょうか。 日本を離れてしばらくするとこの特殊能力が鈍ってくるところが不思議です。
注2・・・外国人から見るとこういうイメージ→“Our Japan from Marc Ambuehl”“In Japan from Vincent Urban”

日本の景観があまりにも配慮なく醜悪化している件はアレックス・カー氏の『ニッポン景観論』に詳しいです。 本のエッセンスは日経ビジネスオンラインのコラム『これでいいの?日本の景観』でも読めます。
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世界に広がるオープン・ハウス

今年もOpen House Londonを皮切りにロンドン・デザイン・フェスティバル(LDF)が始まりました(→LDFのオフィシャルサイト)。 デザイン・フェスティバルについては以前『ロンドンのデザイン・エコシステム』というエントリーで紹介していますが、9月に市内各所で行われるデザインの祭典です。 著名デザイナーによる実験的なアートの巨大インスタレーション、各種展示会(*1)は恒例ですが、近年ではデザインディストリクト(*2)と呼ばれるデザインオフィスや工房が数多く集まる地区がオフィスやショップを一般に開放しストリートパーティーを催したりしています。
*1・・・コンテンポラリーであればDesign Junction100% design、ラグジュアリー・インテリアのDecorex、若手デザイナーのお披露目場であるTentなど。
*2・・・今年はBanksideBromptonClerkenwellChelseaIslingtonShoreditchQueens Parkの7地区が参加。
近年、国外からの訪問者が増えているようで、観光客の利便性を重視してか密な日程で行うようになったので、毎年消化不良を起こしてしまいます。

そのデザインの祭典の幕開けは我が家はいつもOpen House Londonです。 正確にはLDFのイベントではないのですが、いつもフェスティバル初日の週末2日間に開催されるOpen House、あまりにも素晴らしいコンセプトなので、以前も紹介しています(→『現代建築の都ロンドン』『廃墟に2万人が並んだ日』)。

建築を理解する最良の方法は体験すること

というコンセプトのもと、普段は一般公開されていないロンドン中の800近くの建築物が一般に無料公開されるのです。 その中身の幅広いことと言ったら・・・
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誰もあなたを見ていなかった

長い不妊治療を経て先月男の子を産み、新生児と毎日格闘しているアメリカに住む友人に送ったら「泣いた」という返事が返ってきたのをこちらに紹介します。
イギリスのママ向け掲示板Mumsnetのブロガー・オブ・ザ・イヤー候補になっている記事“Like Real Life: Nobody saw you”。 日本語に訳するに当たって絵本やテレビ番組の名前など日本風に脚色しているので、原文で読みたい方はこちら
Let’s get pissed together, shall we?

誰もあなたを見ていなかった
誰もね

朝の3時に
子どもたちがまた起きたとき。

誰も見ていなかった
床に落ちた豆を拾って
机についた汚れを拭いて
洗濯かごを片付けて
ゴミ出ししたところを

何度も
そして何度も。

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