田舎にヨーロッパ旅行客を呼び込もう

一時帰国した関西では連日36℃の猛暑にもかかわらず、大阪も奈良も京都も外国人観光客で溢れていました。 東大寺や大阪城など9割くらい外国人(中華系)だったのではないでしょうか? 私はインバウンドツーリズムが本格的に飛躍する前にシンガポールに移ったので「おお、これが噂の”爆買い”ツーリストかー」と興味深く眺めていました。

そして、前回書いた祖谷にも大勢の個人旅行の外国人ツーリストがいました。 ワンマン一両列車の土讃線にも乗客は私たち以外にひと組欧米人カップルがいたし、宿泊したゲストハウス モモンガビレッジでは私たち以外は外国人ゲストという日が多かったです。 以前からこのブログで「日本の田舎のコンテンツの魅力は世界的にもすごい」と熱く語っていた私ですが(*1)、「ついに四国の山奥にも来るようになったかー」と感慨を覚えました。 もちろんこのブログとは何の関係もないと思いますが。
*1・・・参照:『日本の田舎の魅力を世界に – 1』『- 2』『住むように旅する京都』

ところで、私たちは訪日観光の市場セグメント的には「海外で子どもを育てる在外日本人」という非常にニッチなセグメントですが、同時に「ヨーロッパに住む家族旅行客」でもあります。 東洋経済に『新・観光立国論』著者のデービット・アトキンソン氏が『なぜ欧州の観光客は日本よりタイを選ぶのか』という記事を寄稿しており、以下のように書いていました。

(欧州は)世界の国際観光客の50.8%、来日潜在市場の比率でみても29.7%という潜在能力があるにもかかわらず、現実に日本を訪れているのは124万5000人足らずで、全体の約6.3%に過ぎません。 これは「欧州は日本から遠く離れている」という距離の問題では片付けられないほどの少なさです。

私の体感では、ここ数年「日本に旅行に行った(or これから行く)」という人が周りに増えてきたという実感はあります。 特に日本オタクでもない普通の人の中に「北海道にスキー旅行」、「桜の季節に日本列島を北から南へ縦断」というのがチラホラ出てきました。 
それでも日本へ旅行というのは比較的裕福な層でも「考えたこともない」レベルで、距離の遠さという不利な点を差し引いても先進国同士では希有なレベルの低さ。 これは(他地域に比べると)年間休暇が長く、頻繁に海外旅行に出かけるヨーロッパ人にアプローチできていないからだと思います。

ヨーロッパ人の旅行は長期滞在型です。 イギリスのデータ(2014年)ですが、イギリス人の旅行は平均滞在日数は行き先が遠くになればなるほど長くなり、行き先がヨーロッパの場合は平均8.0日、北米では14.3日、ヨーロッパ・北米以外の他地域になると20.2日です(“Office for National Statistics: Travel Trends 2014”より)。 これは観光庁の「訪日外国人消費動向(平成27年年次報告書)」からも明らかで韓国からの旅行者の9割以上、台湾からの旅行者の8割が6日以内の滞在なのに比べ、イギリスを含む西欧諸国からの旅行者の滞在日数は4割以上(ドイツに至っては過半数)が2週間以上、日本に滞在します。

ところが、例えば日本に20日間遊びに来ようとするヨーロッパからの家族連れ旅行者が長期滞在したいと思えるような宿が日本には圧倒的に少ないのです。
今回、AirBnBも民泊も調べましたが、AirBnBは圧倒的に都会が多く、私が行きたかったような田舎にはほとんどありませんでした。 民泊はたいてい2食付きなので乳幼児連れには食事の量が多すぎること、値段設定が1人あたりなので5人家族には割高になること、以前宿泊したある民泊でただゆっくりしたかっただけなのに「何かしたいことはないか?」「車がないとどこにも行けないなー」としつこいくらいに観光・体験するよう勧められてちっとも落ち着けなかったことで、今回は見送りました。

ヨーロッパではスペインやポルトガルあたりだと田舎であれば1泊80ユーロ(約9千円/泊)も出せば1軒貸し切りできるようなバケーションハウスが沢山あるので(一週間単位など連泊が必要)、夏は1週間か2週間、一カ所に滞在して、1日ひとつのアクティビティーくらいのペースでのんびりと近隣を探索し、残りの時間は家族とゆっくり過ごします。 親戚で集まることも多いので10人ほどの大人数対応の貸し切り宿も豊富にあります。

日本には、こういう家族で1泊1万円〜1万5千円くらいで(1人あたりではありません)素泊まり連泊したいと思えるような宿がほとんどありません。 キャンプ場になるか、合宿で使われるような団体向けの情緒も何もない宿泊施設になるか、のようです。 これまで国内旅行客しか対象としてこなかったので、長期休暇の取りにくい日本で需要がなかったのだと思いますが、上記の通り希有なレベルで低いヨーロッパ人観光客を呼び込むためには必須です。

今回お世話になったゲストハウスはヨーロッパ人が非常に多かったのですが、予約サイトBooking.comに登録していたり、夏の間だけアメリカ人のスタッフがいたり、「なるほどな」と思わせる工夫がたくさんありました。

宿をクリアした次の課題はアクティビティーです。
先述の観光庁の資料にあるように、費目別の旅行支出額では東アジアからの旅行客が買い物代が圧倒的に高いのに比べ(中国人は57%!、まさに”爆買い”)、ヨーロッパからの旅行者は宿泊料金と娯楽・サービス費が高い傾向にあります。  つまり「モノより思い出」なのですが、民泊にも多い「体験プログラム」の類いにまた魅力的なものがありません。
正確には魅力はあるのですが、短期の研修プログラムを対象にしているからか、短時間にあらかじめ決められたプログラムを決められた時間通りにこなして1人あたりウン千円という設定が標準で、細かいところまで決めすぎ、マイクロマネージしすぎ。 費用も家族で長期滞在しているとすぐにウン万円いってしまうので、もっと自然な形で文化や自然を体験できるようなものがいいと思います。

今回、『ザ・日本の夏』を過ごす田舎をいろいろ調べて一番参考になったのが、実は旅行専門の情報サイトではなく、地方移住希望者向けの雑誌やサイトでした。 ゲストハウス『四国旅マガジンGaja』という雑誌で見つけたのですが、他にも日本の地方をテーマにした『TURNS』や北海道に特化した『北海道生活』などに、「行ってみたい!」と思える田舎がたくさんありました。 移住者が楽しんでいる生活そのものが何だか楽しそうで、旅行者にもやってみたいと思わせます。 農業などの田舎生活だけではなく、サーフィンやラフティング、キャニオニングなど自然を背景にしたスポーツ系も日本にはたくさんあります。

ところが「行ってみたい」と思って、長期滞在できそうな素敵な古民家(一軒家貸し切り)を見つけても「対象:◯◯町に移住を検討している人」と条件が厳しいのです・・・
どこの地方も過疎化で限界集落が多数生まれ、生き残りをかけて必死だというのはわかります。 でも日本の人口は2050年には今より2,000万人以上減ると言われていて、ただでさえ少ない若者を取り合っているので、公の助成金を使ってあちらの集落に数組、こちらの集落に数組といった単位で移住者を呼び込むことで日本の地方全体が救われるとも思いません。 ゼロサムゲームではなく、もっとゆるやかに「おらが村のファンを増やす」くらいの感覚でリピートの長期滞在者(=プチ移住者)を広く世界から募る方が現実的で持続可能な方法ではないかと思います。 応援したい自治体への寄付ができる「ふるさと納税」がありますが、そういう仕組みにもヒントがありそうです。

既に成功している田舎はあります。 ニセコの大成功は有名です。 私も第2・第3のニセコの誕生を楽しみにしています。


3 responses to “田舎にヨーロッパ旅行客を呼び込もう

  • Laura

    こんにちは。いつも楽しく読ませていただいています。
    今回の記事、大賛成です。 
    私もアメリカに10年以上在住していましたが、アメリカ人の休暇の過ごし方に最初の頃は目からウロコでしたが馴染んでみると楽しいもので、
    さて日本に帰ってきてみると、あの過ごし方が出来る場所がないなあと痛感しています。

    一点、ニセコの件ですが、ご存知かとは思うのですが、
    そもそも北海道の片田舎の小さな村だったのを再発見・開発したのはオーストラリア人で、
    現在立ち並ぶ高級コンドも、オーストラリア資本がかなりの割合を占め、アメリカは少々出遅れ気味、ほかにも中国やシンガポール、最近はマレーシア資本も入っているそうで、
    日本は相当押され気味、と認識しています。
    毎年スキーに行くのですが、やはり、長期滞在は海外からのスキーヤーばかりで、
    日本人は2泊3日ほどで帰ってしまう方が多いそうで、
    日本人向けの宿泊施設(おっしゃる通り、あれこれオプショナルツアーが充実しまくっているような)と、長期滞在の外国人向け高級コンド、もしくは若い外国人スキーヤーたちのための安いDorm、と、完全に住み分けられているようです。

    おっしゃっている「成功」とは、特に日本の企業にとって、ということでもなく、観光地として、という広い意味でのことでしょうか。 ご意見を伺えれば幸いです。

    • la dolce vita

      Lauraさん
      コメントありがとうございます。
      ニセコの件は、「観光地として」という意味です。
      以前、京都でこだわり旅をプロデュースされている方が「東京の人が好きなものは東京の人がよく知っている」と言っていて「なるほどなー」と思ったことがあります(この記事です↓)。
      https://blog.ladolcevita.jp/2008/07/25/post_24/

      やっぱりオーストラリア人の好きなものはオーストラリア人が、中華系の人が好きなものは中華系がよく知ってますよね。 でも日本はこれからの人口減少を考えると「◯◯資本」とか細かいこと言ってる場合じゃないと思います。
      だいたい資本(オーナー)なんてすぐ変わりますし・・・

      それより、「地元」に事業が起きるということは地元に雇用が生まれるということです。 その点は『ロンドン名物2階建てバスが外資経営でも誰も気にしてない』に書いてますが、名(=資本)を捨て実(=雇用)を取る実利的なイギリス人を見習ってもいいような。
      https://blog.ladolcevita.jp/2011/07/11/2_6/

      若者の移住促進してますが、職がないところには若者は来ないですし・・・

      記事中に書いたデービット・アトキンソン氏は富裕層向けの長期滞在型リゾートをお勧めしていますが、普通の人向けの長期滞在できる宿が本当にもっとできて欲しいです。

  • Laura

    なるほど、とてもよくわかりました。 ありがとうございます。

    ニセコで、スキーのインストラクターが、英語の出来る日本人がいないので、人手が足りなくてニセコの街全体が困っていると話していたのを思い出しました。 雇用は確実に作り出しているようですが、肝心の人材が足りていないようですね。

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