立ち直る力 – 2

昨日の続き。
私はサラリーマンの父親、教師の母親の元で何ひとつ不自由なく育ちましたが、私の子どもたちはさらに恵まれています。 親ができることは環境を整え人生のオプション(選択肢)を増やしてあげることだという思いと、失敗や挫折に直面したときに現実にどう向き合いどう学ぶかが必要だと思いが交錯します。
まさにこのトピックが昨日のグロービス堀さんの『5男の父の告白:グローバル時代の子育て術』に取り上げられていました。
堀さんの子育て論は頷くところが多く、今までもいくつかブログに書いています(→『家族のQuantity time』『12年後の教育オプションを買う』)が、今回も少し長いけど引用。

なるほど、どこの親も口を揃えてこう言うわけである。 競争の熾烈なグローバル化した現代の世界に対応できる子どもを育てるにはどうすればいいのか、と。
5人の息子を持つ妻と僕は、当然ながらこの問題を真剣に受け止めている。
大量に資料を読み、話し合った末に、僕たちは次の結論に達した。僕たちが息子たちのためにできる最善のことは、高いレベルの生命力、つまり「バイタリティ」や「立ち直る力」を身に付けさせることである、と。
十分な生命力を身に付けさせれば、子供たちは失敗に強く、変化に柔軟に対応でき、何事にも前向きな姿勢で臨む人間に育つはずだと僕たちは考えている。
しかし、「バイタリティ」や「立ち直る力」のような抽象的なものを、どうやって身に付けさせるのか。
僕たちはそれを、次の3つの重要な要素に分解した。
1.スポーツの能力
2.囲碁の試合で勝てる能力
3.英会話力と海外経験


各要素の中身については堀さんのブログでどうぞ。 我が家は長男が4歳なのでまだまだいろいろ考えている途中ですが、重要だと感じる要素は著しく似ています。
1. スポーツ
学力だけで評価するのではなくスポーツもでき課外活動も活発な全人的な人物評価をするのは、どちらかというと西洋的なアプローチです。 数年前、中国系移民家庭のスパルタ教育(課外活動はさせない、放課後に友達と遊ばせない etc.→『Art of Parenting – 中国系 vs 西洋系』)がすごい反響を呼んでいましたが、どちらかというとアジア系(特に西洋諸国への移民家庭)は学力偏重でスポーツなんかどうでもいい、という家庭が多いような気がします。

我が家の場合、まだ小さいので競技やチームスポーツはさせていませんが、身体的な基礎体力や空間把握能力を小さい頃から育てることは大事だと思っています。 『完全ローテク育児 – 1』を貫いているのも、なるべく体を使って欲しいと思っているからですが、まあ妊娠9ヵ月の体で息子2人の外遊びに付き合うのはラクではありません。 早く自分で競技スポーツができる年齢になってほしいものです。

2. 囲碁
日本の囲碁にあたるのが西洋のチェスだと思いますが、『How Children Succeed: Grit, Curiosity, and the Hidden Power of Character』(邦訳:『成功する子 失敗する子―何が「その後の人生」を決めるのか』)でもチェス競技を通して、子どもたちになぜ負けたのか、敗因をじっくり考えさせ真正面から自分に向き合わせる教師の姿に多くのページが割かれています。 チェスの能力とIQとの関連が取り沙汰されていますが、メンタル面を鍛えることによって上達するスポーツなのだそう。
私は囲碁もチェスも知りませんが、息子が行く小学校にチェスクラブがあるので入れてみようかと思っています。

3. 英語と海外経験
堀さんの家庭と一番違うのはこの点で、うちの子どもたちは第一言語が英語、第二言語が日本語です。 幸いにも多様であることが当たり前のロンドンで、他人の違いを認める、むしろ個性として誉め讃える環境で育っています(息子たちが通うナーサリーでは半分がバイリンガル家庭)。 住む場所を選ぶ時に私たちが最も重視した点が「2つの文化背景を持つ子どもたちが他人と”違う”ことを理由に阻害されない環境」かもしれません(→『’different’と’wrong’』)。 実際には小学校に入ると人種をネタにしたからかいなどはあるそうですが。

また私は小学校から大学まで日本の公教育で育っているので(小・中は公立、高・大は国立)、日本の公教育のコストパフォーマンスの良さは世界一かもしれない、と認識しています。
ただ、堀さんの言うように日本の学校が得意とする

チームワークや規律といった価値観を教え込むこと

が、これからの世界でどのくらい重要なのか?という点には疑問があります。
日本の学校教育で何年にも渡って刷り込まれる「長所を伸ばすことより短所を直すことを重視する」、「ただひとつの正解探しをし、なるべく間違わない人間になる」、「独創的な意見など求められないので、自分の意見を持たない人間になる」ことの長期に渡る弊害は大きいです。

私の息子たちが大きくなる頃にはアフリカで人口爆発し、イスラム教が世界で最も教徒の多い宗教になり、先進国に生まれ育ったボンボンは今より一層少数派になるはずなので、そちら方面の文化的刺激・強烈な経験が必要なんじゃないかと思ったり。

「立ち直る力」の育て方については取り留めがなくなりました。 夫がこの本を読んで

『How to Succeed』(成功の仕方)というタイトルになっているけど、”How to Fail”(失敗の仕方)を分析することは容易でも”How to Succeed”は難しいんだね

と言っていましたが、全くその通りです。


3 responses to “立ち直る力 – 2

  • tygertyger

    子育ての現場で健闘中の皆さまの努力、心からエールを送ります。
    少しほとぼりの冷めたブーマー世代の一員としては、親の養育、社会のサポート等必須条件の大事さもさることながら、個々の人間が直面する命運の壁の厳しさへの畏れの感が年々大きくなっています。
    若いときには原罪とか業とか、笑って済ましていたはずのことがドンドンと存在感を増していき、そのあげくか、”There but for the grace of God go I”というMuriel Spark的なせりふがふっと出てきたりするようになります。
    どう考えてもこれから一層キナ臭くなる世界の中で、うまいこと立ち直る力は絶対必要ですね。

  • tygertyger

    産後クライシスからの立ち直り方ですって。たのもしい!
    子育てと共に親も成長していかないとアカン。
    http://kokubo.seesaa.net/article/402513868.html

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