息子が産まれてから自分自身一番驚いたのは、溢れて溢れて止まらない愛だった。
Unconditional love(無償の愛)というものが自分の中にとめどなく溢れてくるのは初めての経験だった(『Before I was a Mum』)。 息子が、親である私たちだけではなく祖父母・友人・保育士さん・街で出会う人々・・・さまざまな人からの愛情を栄養にしながらすくすく育つのを日々見守ることができるのは言葉に現せないほどの喜びになった。
世界中のすべての子どもがこんなに愛されて育ったらさぞかし世界は違った場所になるだろうと思った。 もし愛が石油や木材みたいに形があってシェアできるのであれば、溢れ出る親の愛たちを少しずつ集めれば、事情があって親の愛情を受けることなく育つ子どもたちに分けてあげられるのに、と思った。
嫌なニュースも多い世の中で、一番辛いニュースは児童虐待のニュースになった(過去の関連エントリー:『イギリスの児童虐待対策』)。 生まれてくること・生まれてくる家庭を選べない子どもたちの中に、人生の冒頭から精神的・身体的苦痛を受ける子どもたちがいることを知ることは心臓を素手でぎゅっと握りつぶされるような感情を伴うものとなった。
私と同じように、自分の子どもを愛して止まない親たちに、そしてすべての子どもは生まれ落ちた環境がどうであれ愛情を浴びながら育つ権利があると信じている人に、読んで欲しい本があります。
慎 泰俊さん著『働きながら、社会を変える。- ビジネスパーソン「子どもの貧困」に挑む』(献本御礼)。
本著は投資ファンドを本業としながらパートタイムでNPO(Living in Peace)を立ち上げ、児童養護施設の資金調達支援を通して、子どもの貧困問題に取り組む若者の自伝です。
児童養護施設とは主に虐待などの理由で、親から引き離された子どもたちが暮らしている施設。 豊かな今の日本の中でもっとも「機会の平等」に恵まれない子どもたちが暮らしてくるところでもあります。
日本に3万人ほどいる児童養護施設にいる子どもたちが施設に来る背景は児童虐待、家庭の貧困、親の精神疾患が複雑に絡み合っています。 虐待経験のある子どもの割合は7割になるとも言われ、小さな子どもへの虐待は子どもの脳に深刻な障害を与えます。
子どもたちは生きること自体が大変な努力なのです。 常に親や他人の顔色をうかがったり、緊張や孤独、恐怖に耐えながら下の兄弟たちを励ましたりすることは、幼い子どもの心身を激しく消耗させます。 そんなことが長く続くと、それ以上のこと、たとえば自分のことについて考えるとか、がんばるとか、そんな力なんて、もうないのです。 生きているだけでエネルギーを使い切ってしまいます。 親に嫌われないように、今日こそ褒めてもらえるかもしれないと信じてつくる笑顔や、親にとっての好ましい行動をすることで、使い切ってしまうのです。
想像を絶する体験をした子どもたちには、手厚く長期に渡るケアが必要です。 が、親代りとなる児童養護施設の職員の人数は多くの施設で必要最小限にとどまり(1人で10人をみるという)、日常の激務に加え精神的な辛さから辞めていく人も多いそう。
慎さんは児童養護施設に住み込みをすることにより現場を見据え、数字で分析をすることによって全体を捉え、活動の内容を自分たちが得意なことでインパクトが大きいことに絞ります。 それが施設の資金調達支援のための「チャンスメーカー」寄付プログラムとキャリアセッションです。
特にチャンスメーカープログラムは児童養護施設関連制度の特殊さを利用し、ひとりひとりの小さな力(毎月1,000円から)で子どもたちの環境を劇的に変えられ、より手厚いケアが受けられることで子どもたちが前に進む力を得る可能性を大幅に高められます。
「溢れ出る親の愛たちを少しずつ集めれば、事情があって親の愛情を受けることなく育つ子どもたちに分けてあげられるのに」と思っていた私にはそのまま答えとなりました(途中、お金という形に代わり、訓練を受けた専門家の愛にまた代わる)。
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著者の慎さんとはTwitterを通して知り合い、まだ対面は実現していません。
彼のスーパーマンぶりはブログやTwitterを見れば明らかですが、何といっても人の痛みにすごーーーく共感できる人なんだろうな、という印象。 それを行動に結びつけられる希有な人。
会える日を楽しみにしてます。
November 30th, 2011 at 8:47 pm
ブログを読んでいて私まで胸がぎゅっと苦しくなる感覚を覚えました。
本当に子ども達にはただただナイーブで純粋で、ピュアで、そのままでいさせてあげたいと思います。
どの子も輝くようにきれいな眼をもって生まれてきて、これから見る全ての物事をワクワクして生まれてくるのに、悲しい事が起ってしまうのは本当に心苦しい思いでいっぱいになります。
私も娘が生まれてから同じように思う様になり、共感できたこと、嬉しいです、ありがとうございました。
本、是非読ませていただきます!!
December 1st, 2011 at 12:32 pm
素晴らしい活動を教えていただきありがとうございます。
教師の夫と結婚してから教育問題に関心を持つようになり、厳しい状況に置かれている子供が気にかかるようになりました。
念願の子供を授かるにはまだ時間がかかりそうですが、それでも授かれた時に自分自身の未熟さから「自分は絶対に子供を虐待しない」なんて自信はありません。
そういう自覚があるからこそ、常に学んでいたいと思います。
December 5th, 2011 at 9:31 am
本当に子供達はみな幸せになって欲しいです。親には少しでも余裕を持って子供に接してあげれればいいのになと思います。そのためには社会も手伝う必要があるのでしょうね。
話は変わりますが、ミュンヘンでのおすすめレストランです。
ツム・フランツィスカーナーhttp://www.gnavi.co.jp/world/europe/munich/w505680/
Zum Franziskaner
ドニスルhttp://www.gnavi.co.jp/world/europe/munich/w505681/
Donisl
アウグスティーナーhttp://www.gnavi.co.jp/world/europe/munich/w505683/
Augustiner Gaststätten
ウエイターのサービスが悪かったなどと書いてありますが、当たりはずれがあるということで。
白ビール(特にWeissbier Dunkel、Bavarian wheat beerのdarkタイプ、好き嫌いはあるかもしれませんが http://t.co/H06w6eo4 )と
Weisswurst(ヴァイス ヴルスト、白ソーセージ)を堪能して来てください。
また、ドイツ博物館とアルテ・ピナコテークは何度行っても飽きないところです。
December 5th, 2011 at 9:01 pm
>hana san
コメントありがとうございます。
>どの子も輝くようにきれいな眼をもって生まれてきて、これから見る全ての物事をワクワクして生まれてくる
子どもの目はきれいですねー みんな一生懸命で嘘をつかない目をしてます。 あの目の輝きが失われる日が来るのかと思うと悲しくてたまりません。
>のんさん
コメントありがとうございます。
>授かれた時に自分自身の未熟さから「自分は絶対に子供を虐待しない」なんて自信はありません。
「虐待しているかも」と思ってる母親は驚くべき多さです。
http://allabout.co.jp/gm/gc/224216/
圧倒的に多い理由は母親の孤独ですね、社会に余裕がなく、すべて母親が背負いこまなければいけない世の中になってきているのが、子どもに向かっているのかと思うといたたまれません。
>ミュンヘンさん
>ミュンヘンでのおすすめレストランです。
たくさんありがとうございます! これだけあれば十分ですね。 クリスマスマーケットが目的なのですが、また帰ってきたらブログでご報告します♪
December 6th, 2011 at 11:07 am
ミュンヘンに来られるんですね。
お勧めのドイツ料理のレストランを紹介できればよいのですが…あいにく一年以上住んでいてもドイツ料理を食べて凄くおいしいと思った経験がないので(笑)
Cafe Altschwabingというトルコ人お勧めのレストランがおもしろかったです。
ケバブも通りで売っているケバブとは味も形も違うので、意外でした。
http://www.altschwabing.com/
クリスマスマルクとだと、日帰りで行けるニュルンベルグも有名ですね。バイエルンチケットで行けば安上がりですし…でも少し遠いかな。
ミュンヘンは今のところ暖かい日が続いています。よいご旅行を。
(二回コメントしてしまっていたら片方消してください。)
December 6th, 2011 at 4:19 pm
>ゆうさん
>お勧めのドイツ料理のレストランを紹介できればよいのですが…あいにく一年以上住んでいてもドイツ料理を食べて凄くおいしいと思った経験がないので(笑)
私も大昔の取引先が南ドイツの田舎だったので何回か行きましたが、すごく美味しいと思った記憶がありません。 1回くらいにしておいて他の料理に逃げたいと思っています(笑)
>ケバブも通りで売っているケバブとは味も形も違うので、意外でした。
ドイツはケバブ屋多いですねー お勧めありがとうございます。
>クリスマスマルクとだと、日帰りで行けるニュルンベルグも有名ですね。
日帰りでニュルンベルク行きますよ! でも恐ろしく我慢というものができない幼児連れなので一番速い電車で行くと思います。
>ミュンヘンは今のところ暖かい日が続いています。
あっ、2℃は暖かいんでしょうか・・・(笑) 最防寒体制で行きますよ、ああ、大丈夫かなー・・・
December 6th, 2011 at 5:03 pm
こんばんは。
私にも2歳の息子がいるのですが、先日日本に帰国中(今はソウルに住んでいます)に両親からまさに溢れんばかりの愛情を注がれる息子を見ていて、こんなにも息子を愛してくれる人がいるのは本当に幸せだなあと改めて思ったり、こちらでの生活の中で息子に優しく接してくれる人たち(保育園やかかりつけの病院の先生方、通りすがりの見知らぬ人たち)の存在のありがたさを日々感じていたので、今日のエントリーは特に心にずしんときました。
この著者の方はtwitterで知り、発言をフォローしたりブログを読んだりしており(やりとりをしたことはありませんが)、この本も気になってはいたのですが、そのままにしてしまっていました。ですが、今日のエントリーを読み、すぐにでも取り寄せて読もうと思いました。
記事にしてくださって、ありがとうございました。
December 31st, 2011 at 11:48 am
>yumiさん
遅くなってごめんなさい。 ほんと子どもの一番の栄養は愛情だなー、とつくづく思います。