イギリスの児童虐待対策

今回の大阪の事件は泣いた。
幼児2人が部屋の中で寄り添いながらママを待つ姿を何度も想像してしまい本当に泣いた。
自分に子どもが生まれてからというものの、以前のように冷静に三面記事を読めなくなってしまいました、というより以前は三面記事は読まなかったのに・・・(夫も同じ)。
それにしても今回の事件は救出できたよなー、と思わざるをえません。
児童虐待(ネグレクト含む)と言えばイギリスは先進国(そんな先進国いらないよね・・・)、深刻な社会問題となったのも対策が取られ始めたのも日本より遥かに前で、発生件数は(人口比を考慮すると)日本の15倍以上とか。 市民の関心も非常に高く、ロンドンの新聞London Evening Standardに記事がない日はないくらい。
背景には貧困・離婚率の増加・シングルマザーの増加・10代の妊娠などあるようですが、児童虐待はイギリスの大きな社会問題のひとつです。 今日は興味ある人のためにWebで見つけた下記の視察報告書と私がロンドンに来て以来のランダムな経験をメモしておきます。 まとまってませんが・・・
子供の虹情報研修センター:イギリスにおける児童虐待の対応 視察報告書


イギリスでは赤ちゃんが生まれると2週間以内にHealth Visitor(保健士)が家庭訪問に来ます。 赤ちゃんや母親の様子をチェックしアドバイス・サポートするためですが、住まいが赤ちゃんの生育に適した環境かどうか、母親に養育能力があるかどうか、のチェックも彼らの重要なミッション。 特に私の住んでいる区は大きな貧困地区を抱えているため(『家探しでわかる都市政策』『都市内部での(自発的)コミュニティ化』で書いたように、ロンドンは通りを隔てて治安の良し悪しがガラッと変わる)、むしろチェックの方がメインだったような。 実家の母親が産後のヘルプに来ていた友達は、Health Visitorが彼女の母親に席を外すように頼み、育った家庭環境など聞かれた、と言っていました。 上述の報告書によると指定貧困地域では出産前からこのような訪問があるよう。

その後、(『平均とは統計上の便宜的な数値』にも書いた)Baby Clinicという地域のクリニックに赤ちゃんの体重を測り行く際、Health Visitorに育児の相談ができます。 本来はHealth Visitorは出産直後だけではなく、定期的に家庭訪問することになっているのですが、私の住んでいる地域のHealth Visitorは貧困地域をカバーしていて大忙し、人が足りていないので家庭訪問は1回だけ。 支援を必要とするような親はBaby Clinicに自発的に来るような親ではないんでしょうけど。

児童虐待事件が起こるたびに適切に介入し隔離・保護できなかったSocial Services(虐待の疑いがあったときに通報するという機関、専門家が常駐し事態を把握し児童を保護する法的な権限がある)や警察、児童と接触のあった機関(学校など)に非難の集中砲火が浴びせられるので、しばしば過剰反応が起こります。 最近も8歳と5歳の姉弟に家から学校までの距離1.4kmを自転車通学させた親が、学校の校長に「非常識で危険」とSocial Servicesに通報されていました(Daily Mail : Boris backs couple threatened by social services for letting their children cycle to school)。

  • 子どもの裸は御法度(児童ポルノには特に厳しい)。 日本ではたまに「12歳の娘が最近一緒にお風呂に入ってくれなくなった」「うちは10歳だけどまだ入ってくれる」と飲み会でお風呂自慢するおじさんがいますが、イギリスでこれをやると即刻Social Servicesに通報されますので・・・ 夫に「いつまで一緒にお風呂入っていいの?」と聞いたところ「子どもがひとりで入れるようになったらもうダメなんじゃない?」とのお答え。

    託児施設は法律で1日10時間以上預かってはいけないと定められているため、ほとんどのナーサリー(保育園)は朝8時から夕方6時まで。 日本のような延長保育がありません(私が息子を預ける予定のナーサリーは夕方6時を過ぎると5分超過ごとに罰金5ポンド!)。 夕方6時までに迎えに来れない親は別途ピックアップするためのベビーシッターをアレンジしなければならず出費は多大。

  • これらすべて多大な社会コストですよね・・・ もちろん予防が一番なんだろうけど(イギリスの場合、虐待は圧倒的に貧困家庭に多いので貧困対策)、最悪の事態を回避するためのプライバシーの侵害と社会コストは必要なのかな、と思います。
    ———
    小さな命を奪われた2人のご冥福を心からお祈りします。


    7 responses to “イギリスの児童虐待対策

    • yukiko

      お久しぶりです。
      私も4/19に無事男の子を出産しました。(初産なのに、病院に「到着」後、わずか1時間49分のスピード出産でした。)
      私もこの事件、泣けました。
      冷蔵庫(&冷凍庫)に食糧と涼を求めてか、幼い子の手跡が残っていたなんてところでは、 今そう書いてるだけでも泣けちゃうくらいです。
      最初の頃は、なかなか時間もありませんでしたが、最近、またこまめに拝読させていただいてます☆
      これからも楽しみにしてます♪

    • Rico

      大阪の事件、本当にやるせないですね・・・
      是枝裕和監督の「誰も知らない」ご覧になったことあるでしょうか?
      あの映画も実際にあった育児放棄の事件をモチーフに作られているそうですが、
      映画館でこらえきれずに号泣したのは、後にも先にもあの映画だけです。

    • la dolce vita

      >yukikoさん
      >私も4/19に無事男の子を出産しました。(初産なのに、病院に「到着」後、わずか1時間49分のスピード出産でした。)
      おめでとう! 産まれたのかな?と気になってました。 スピード出産、うらやましい。
      ちょっとは余裕ができてきた頃かな? 今この瞬間の子育てを楽しみましょう〜♪
      >Ricoさん
      >是枝裕和監督の「誰も知らない」ご覧になったことあるでしょうか?
      いえ、そんな映画紹介しないでください〜、まともに見られない自信があるので。
      本当にショックな事件でした。

    • バンビ

      ご無沙汰しております。
      お子さんが産まれてからますます素敵な記事が増えたな~、と
      いつも本当にいい刺激を受けながらブログを楽しく拝見しています。
      わたしは、日本で小児科医をしているのですが、
      外来・入院で、虐待のご家族を長期でフォローすることも少なくありません。
      特に私が関わっているお子さんは、みなネグレクトの被害者です。
      その中には、親子隔離に至ったものもあれば、綿密にフォローしているご家族もあります。
      仕事が仕事なだけに、ネグレクトを含む虐待は、
      現場では一般的な社会問題として日々(と言うには大げさですが)接しているのですが、
      (常に頭の中にあるというか…。「あそこの親子は最近だいじょうぶかな?」なども含めて。)
      世間一般では、まだまだ非日常的な問題なんだな~、と
      今回の報道で改めて痛感しています。
      おそらく一般的なイメージ以上に、日本での虐待もまた多いです。(HIV感染者数と同じ感じ。)
      すぐ近くに(隣の家とまではいきませんが、同じブロック内or町内に1件くらいの割合で)
      虐待もしくはプレ状態が潜んでいると思ってもいいのでは?と思います。
      地域性も大きく関与してきますが、私のいる田舎町の総合病院でも、
      十分に虐待児は発見されるので。
      ちなみに、発見のきっかけはとにかく、「おかしいな?」と疑うことからしか始まりません。
      今回の報道を機に、多くの人がどのように問題を認識して対策に臨むかどうか…、
      そこが、今後虐待が増えていく世の中でいかに抑制・予防・早期発見につながるかの
      律側段階になるかな、と思いながら報道を見ています。
      でも、朝9時からほぼすべてのチャンネルで繰り広げられるワイドショーでは、
      相変わらず「○○は見た!!」的な内容なので、
      まだまだこの先は変わらないかな~、とも危惧しています。
      日本のマスコミは、本当に公共電波の無駄遣いが多いですね…。
      今回の葉子さんの記事も、とても興味深く拝見しました。
      イギリスには学生時代に短期ですが留学していた経験があるので、
      国としてもすごく好きで、いまでも数年に1回は訪れています。
      > イギリスの場合、虐待は圧倒的に貧困家庭に多いので貧困対策
      そうですね~。
      統計をとって、そこから共通項を見つけて、基を絶たなければ、問題解決はできないですね。
      日本では、(今回のように)シングル・マザーor内縁・再婚後の実母・実父による虐待が多いようです。
      勉強していてすごくshock!だったのが、実母による虐待が過半数を超えるという統計でした。
      (てっきり、継母・継父が行うcaseが多いと、勝手に思い込んでいたので。)
      産後うつや育児うつもまた引き金の一つになるようですが、
      素因も含めて社会的サポート、ときに子供を隔離するための強行手段も取れるような、
      そういう機関や制度がもっと確率させるべきなのかな~、と思います。
      言うは易く…。
      第3者の介入を要するという時点で、非常に難しい問題ですね…。
      P.S.非常識なほど長くなってしまいました。適当にomitしてください。ごめんなさい。

    • la dolce vita

      >バンビさん
      コメントありがとうございます。
      小児科医ってそんなことも仕事なんですねー よく考えればそうですが。
      >すぐ近くに(隣の家とまではいきませんが、同じブロック内or町内に1件くらいの割合で)
      >虐待もしくはプレ状態が潜んでいると思ってもいいのでは?と思います。
      それはかなり身近ですね。
      >日本では、(今回のように)シングル・マザーor内縁・再婚後の実母・実父による虐待が多いようです。
      >勉強していてすごくshock!だったのが、実母による虐待が過半数を超えるという統計でした。
      私、これはわかります(イギリスも実母が一番多いと思う)。 どうしても育児の負担は母親に偏るので、24/7(日本的には1年365日)でブレイクがない、自分しかいない、という状況は相当辛い。 父親である男性はもちろんのこと、祖父母・隣近所・地域の子育てグループなど頼れる人がいるだけでだいぶ違いますよね。
      ・・・という予防面のケアはもちろんやっぱり強制隔離など介入は必要かなと思います。 赤ちゃん・子どもは助けを呼べないし、赤ちゃんはやっぱりどんなママでも好きだろうし。

    • 光吉俊二

      私もこの事件や、娘を熱湯につけて遊んでいた親、川へ娘を突き落とした母親などの事件に強く衝撃を受け、この2名の幼児の気持ちを共感すると死ぬほどの辛さを感じておりました。そして、英国での対応に感動した次第でございます。
      私は音声から人の精神状態を分析する技術の開発者です。
      この技術で虐待の負の連鎖を断ち切ることが出来るのか?子供たちのSOSに気がつくのか?悩んでおります。
      しかし、この調査を知り、勇気も出てきております。
      ありがとうございました。

    • la dolce vita

      >光吉俊二さん
      >私は音声から人の精神状態を分析する技術の開発者です。
      >この技術で虐待の負の連鎖を断ち切ることが出来るのか?子供たちのSOSに気がつくのか?悩んでおります。
      >しかし、この調査を知り、勇気も出てきております。
      コメントありがとうございます。
      光吉さんのような方、少数でも有益な情報として受け取ってくれる方に向けて書いたエントリーなので、書いてよかったです。 お役に立てたなら嬉しいです。

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