国の価値観と個人の価値観

このブログのタイトルに込めた意味を、

日本国内だけではなく世界中から自分のライフステージに合わせてベストなライフスタイルを選ぶ生き方

とした通り(ABOUTページ参照)、私たちは半年前、今のライフステージに合った場所という仮定のもとロンドンにやってきました。
今のライフステージとは「子育てステージ」。
次の15-20年間は教育を含めた子どもの環境を一番のプライオリティとして住む場所を選ぶことになります。
清潔だし治安はいいし物事がスムーズに運ぶし家事はしなくていいし・・・この上なく生活が楽なシンガポールを去って(←未練たらたらな私たち、笑)、ロンドンに来た理由は、私たちが子どもに持って欲しい価値観とシンガポールという国(政府)が最優先している価値観が合っていなかったことが大きいです。 『ロンドンに引っ越します。』に書いた理由は、この根幹の価値観が具現化した結果という言い方もできるかも。
企業経営の根幹にミッション(使命)・ビジョンと並んでバリュー(価値)があるのと同じように(*1)、国にもその根幹をなすバリューがあることを示すものとして次のような表を見たことがあります。

アメリカ : Freedom(自由), Justice(正義), Opportunity(機会), Equality(平等)
日本 : Honour(道義心、名誉), Respect(尊敬), Consensus(合意)
シンガポール : Efficiency(効率), Safety(安全), Cleanliness(清潔さ), Security(安心、治安)

*1・・・日本人が大好きなピーター・ドラッカーが『ネクスト・ソサエティ – 歴史が見たことのない未来がはじまる』の中で「企業はミッション・ビジョン・バリュー以外はアウトソースできる」と言っています。
この表を見たのはシンガポールにいたときだったのですが、「うーん・・・」とうなってしまいました。 アメリカのように建国精神として明文化されているか、日本のように社会のコンセンサスとして暗黙知となっているか、の違いはあれどすごく当たってる・・・
すでにある程度の価値観を確立してしまった大人ならともかく、周囲の環境が子どもに与える影響は果てしなく大きい(親の影響はもちろん大きいが)。
古賀洋吉さんが『シンガポール vs 日米』というエントリーでシンガポールでは

政府の言うとおりに生きることが幸せへの最短距離

と素晴らしいまとめをしていますが、大人になってからシンガポールに移り住んだ私たちならシンガポールの良さを最大限にエンジョイしつつ政府が示す生き方から距離を取るという器用なワザも可能でしょうが、子どもは素直に受け止め価値観として形成されてしまうのではないか、という危惧がありました(どういうのが”シンガポール的”かは『シンガポールに長く居すぎる・・・のか?』に書いた“60 Signs you’ve been in Singapore too long”にいろいろあります)。
もちろん小学校から一貫してインターナショナル・スクールに入れるなど子どもの環境をある程度コントロールするのも可能なのでしょうが、ずっとインターナショナルスクールに入れるのも私たちの好みと反する。
結局、言論の自由・法治国家など自由民主主義で育った私たち夫婦(日本は民主主義じゃないという意見もあるがそれはさておき)は子どもにもそういう環境で育って欲しいな、と思ったのでした。 以前、渡辺千賀さんが『蚊がいないところに住む』というエントリーで、

シリコンバレーはゴキブリのいないことがスバラシイ
そういう「ツマラナイこと」は人生のハピネスに大事

と書いてましたが、蚊やゴキブリも大事だけど子どもには民主主義とか「本質的なこと」も大事なんじゃないかなー
ただ、『早すぎた自由民主主義の勝利宣言(?)』で書いたように、自由民主主義が優れた統治形態かどうかはまだ歴史が証明していないとは思っています。 「優れているか優れていないか」ではなく完全に個人の嗜好の問題。
数ある自由民主主義国家の中から、VISAの取りやすさ、仕事環境、友達の多さなどPros & Consさんざん検討してロンドンに来たわけですが、しっかしお金のかかる街ですなー
今日は500回目の記念エントリーでした。


7 responses to “国の価値観と個人の価値観

  • ドイツ特派員

    la dolce vitaさん、
    以前ある人(多分田原総一郎だと思います)がこんなことを言っていました。
    「堕落した体制は嫌だ。だが、堕落すら許さない体制はもっと嫌だ」
    選択肢があるということがいかに幸せな事か、それは国家の体制だけでなく時代も含めて(例えば9.11直後から暫くのアメリカは、選択肢が極端に減った社会だったと思います。その時は自由<正義という判断だったんでしょう)のことですね。シンガポールなどはそれこそドラッカーが言う「選択肢の多さが選択を難しくしている」ということを逆に持っていっている社会という気がします。
    大学受験勉強中の我がバカ息子一号が、「家、出てみたいんだよね」と漏らすことに正直安堵感を持っています(寂しさもありますが)。また、この前のW杯の時、何の偏見も疑問もなく韓国を応援したりしているのを見て、「ま、この程度に育ってりゃいいか」という気持ちも。
    ちと纏まっていませんが、恋煩いのオッサンの戯言ということで(笑)。

  • yokichi

    全く同じ感想です。実は僕もあそこで子供を育てるのは無理だと思いました。子供がいると価値観に対する優先度の考え方がかわりますよね!

  • la dolce vita

    >ドイツ特派員さん
    >シンガポールなどはそれこそドラッカーが言う「選択肢の多さが選択を難しくしている」ということを逆に持っていっている社会という気がします。
    さすがにシンガポールは選択肢与えないということはないですが、巧妙にコントロールしてますねー ほんとあっぱれです。
    >この前のW杯の時、何の偏見も疑問もなく韓国を応援したりしている
    わかりますよー、気持ち。 私もこの前のW杯は韓国応援しました。
    >yokichiさん
    コメントありがとうございます!
    >子供がいると価値観に対する優先度の考え方がかわりますよね!
    そう、独身のときや子どもが巣立った後ならいいんですけどねー

  • mignon1117

    このエントリーを拝見して、シンガポール人の元に嫁いだアメリカ人の友人の話を思い出しました。彼女も、シンガポールの教育制度は、柔軟性に乏しい(成績が下の部類に入ってしまうと、小学生といったまだいくらでも挽回する余地が残っている年代ですら、「落第」の烙印を押され、敗者復活のシステムがない)ことを嘆いていました。その話を聞いて、私は、感覚的に、「シンガポールに中ー長期間滞在することはあっても、永住はないな」と思いました。
    シンガポール人にあたる彼女の旦那は、早いうちから秀才ぶりが政府に認められ、奨学金をもらって、アメリカの有数の大学(シカゴ大とハーバード大)に進み、ハーバードでMasterを取得しています。公務員だった彼も、最近、公務員を辞めPEファンドに転職して、日本にいます(政府は彼に対して、もっと国に貢献してほしいと思っていたと思いますが)
    日本でも、キャリア官僚が留学後、戦略コンサルやIBに移るケースがありますが、彼の場合は、日本とは質が違うと思いますし、シンガポールの若者も最近は変わってきたのかと、友人夫妻の今を見ながら、いろいろ興味深いと思いました。

  • la dolce vita

    >mignon1117さん
    >シンガポール人にあたる彼女の旦那は、早いうちから秀才ぶりが政府に認められ、奨学金をもらって、アメリカの有数の大学(シカゴ大とハーバード大)に進み、ハーバードでMasterを取得しています。公務員だった彼も、最近、公務員を辞めPEファンドに転職して、日本にいます
    私の友達と似てますね(政府奨学金でスタンフォードと京大→Ministry of Defense→戦略コンサル→PEファンド)。
    若くて優秀なシンガポール人の海外流出が増えてるらしいですが(↓)、中華系なので親の面倒を見なければならないと帰る人が多いです。 そのへんも奥さんがアメリカ人だとどうなのかしら?
    http://www.ladolcevita.jp/blog/global/2009/07/post-233.php

  • DODOLELA

    こんにちは。500回記念エントリーおめでとうございます!私は、以前はシンガポールに移住したかったのですが、MBA時代のシンガポール人の同級生や、シンガポールで就職した友人の話などを聞いているうちに、私も子供の教育の観点からすると、シンガポールはやめておいたほうがいいかもなあと最近考えていました。その点現在私が住んでいるフランスは、福祉の充実度と教育水準の高さ、「個を大事にする」国としては子育てにはいい国なのかもしれません。個人を大事にするあまり、個人主義がいきすぎている国民もたまにいますが・・・。
    しかし、子育てのために住みたい国ほどお金がかかりますねよね・・・。

  • la dolce vita

    >DODOLELAさん
    >その点現在私が住んでいるフランスは、福祉の充実度と教育水準の高さ、「個を大事にする」国としては子育てにはいい国なのかもしれません。
    フランスねー・・・ パリ住みたかったのですが(↓)、夫があんまり、いや全く・全然興味なさそうなのでないでしょうねー
    http://www.ladolcevita.jp/blog/global/2008/08/post-29.php
    http://www.ladolcevita.jp/blog/global/2009/05/post-198.php
    ピーター・メイルみたいにプロヴァンスで1年とか夢だけど、田舎なのにあそこの一帯だけめちゃくちゃ不動産が高い。
    ロンドンも悪くないけど、不動産と教育費が高すぎ!!! 悩みますねー(笑)

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