就活中の学生へ – 1

こちらのエントリーにCREAさんからこんな質問をもらいました。

仮にla dolce vitaさんが今、大学生当時に戻れて就職活動をするなら、どんな業界を第一志望にお考えになりますか?

「私が今大学3年生だったらどうするか?」という視点と、就活を控えた大学生へのアドバイス、両方混じってしまうと思いますが何回かに分けて書いてみます。
1. 大学院留学をめざす
「就職活動をするなら・・・」という質問なのにいきなり何ですが(*注)、私が今大学3年生なら大学院留学を目指します、それもできるだけ自分が進みたい道のトップレベルの学生が集まる大学。 どんな分野であれ自ずからアメリカかイギリスになると思いますが・・・(→ Top 100 Universities
注:「就活中の学生へ」というタイトルなので、もちろんその話も近日中に書きますよー
以前『留学するなら大学? 大学院?』というエントリーで

「(英語圏でビザさえあれば)どこでも働いて食べていける」ようになるには、大学院より大学から留学した方がスムーズ

と書きましたが、それでも”Better late than never”(遅きに失してもやらないよりマシ)だし、分野によっては(理系とか)大学院からでも十分。
以下、私が大学院留学を目指すだろう理由。


ひとつめ。
これは意外と知られていないのかもしれませんが、世界のさまざまな現場では「学士」では不足で「修士」を求められるケースが多くなっています。
渡辺千賀さんが『アメリカで働くのに修士は意味があるか』というエントリーで

大雑把に言って、アメリカでは、学士は、日本の高卒+アルファ、くらいの価値です。修士を出てやっと日本での4大卒くらいの価値になります。アメリカの博士=日本の修士、って感じ。

とおっしゃってますが、このアメリカの流れは遅れて他の国にも広がっています。
GoogleのエンジニアはPh.Dばっかりというのは有名な話だし、国際機関で上へ行こうと思ったら最低限、開発学・経済学など関連分野での修士が必要、経験重視のビジネス界でも経営に近い部署はMBA必須だったり・・・
こういう事実も日本を出て初めてグローバルな流れ・実態がわかったりする。

  • 文系修士は就職に不利では?
  • 頑張って博士とってもポスドクに待ってるのは高学歴ワーキングプアらしい。

→ 世界に出てしまうと関係ないです。 もしまだ勉強し足りない目指す分野があるのであれば、自分を抑えてしまうのでなくぜひ行くべき。 

  • 女で高学歴になると嫁にいけなくなるのでは?

→ 私も昔MBA前に真剣にそう思ったけど(→こちら)、杞憂です(キッパリ)。 欧米では「同レベル婚」の流れが強いので(→『女性における学歴と結婚の相関関係』)、むしろ修士→博士と上に行くほど男性の比率が高くなり、出会いのオッズは女性の方がよくなる、あとはケース・バイ・ケースですねー
海部美知さんも『ねじれ人生との折り合い』というエントリーで

「女でエンジニアというのはまずかろう」という思いがあって避けた
「女だから」という意識というのは、かなり厄介だ。

とおっしゃってますが、ほんと厄介です。 最大の敵(反対者)が親だったりするとますます(私の親は幸いそういうこと言わなかったので、大学卒業後は好きにしてます)。
ふたつめ。
世界のトップレベルに行くと、見えてくるものが全然違います。 梅田望夫さんが『ウェブ時代をゆく – いかに働き、いかに学ぶか』で書いた「見晴らしのいい場所」というやつ(『ウェブ時代をゆく』の書評はこちら)。 「見晴らしのいい場所」は技術(の中でもインターネットやバイオ)ならシリコンバレーなんだろうし(よって、Stanfordなど)、行政・政策ならHarvard Kennedy School(ボストン)、アートならRoyal Academy of Arts(ロンドン)などなど、それぞれの分野で一流の教授陣・学生が集まる場所があるはず(もちろん一分野につき一箇所ではない、だから世界は面白い)。
情報は人に集まる。 そこに行って見えるものは、今までの自分の世界を打ち破り人生を変える経験になるはず。
このシリーズ、まだまだ続きます・・・


10 responses to “就活中の学生へ – 1

  • mignon1117

    私も同感です。
    特に、結婚や出産を経て、余計にそういう欲が強くなりました。
    子供にも、そういうものを教えたいと思っているので、そういう道も考えています。

  • CREA

    la dolce vitaさん、
    1つ目のご回答、誠にありがとうございます。
    就活生に向けた、海外での修士以上を目指すことの意義を感じました。
    >”Better late than never”(遅きに失してもやらないよりマシ)だし、分野によっては(理系とか)大学院からでも十分。
    >もしまだ勉強し足りない目指す分野があるのであれば、自分を抑えてしまうのでなくぜひ行くべき。
    その後のキャリアに必要だと思う学位や学びたいことがあれば、迷わず留学したほうがよさそうですね。
    >情報は人に集まる。 そこに行って見えるものは、今までの自分の世界を打ち破り人生を変える経験になるはず。
    カッコいいですね~  
    その環境に身を置くことでそれまでの価値観が覆され、卒業後には自分が型破りな人間になっている・・・みたいな。
    最近は社会人の諸先輩方から「若いうちは何事も経験だ!」「『お金や時間を考えて実行できない、行動できない』理由にするな!」といったアドバイスをいただきます。大学院留学(MBAも含めて)に関しても、このことは当てはまるのかな、と思いました。
    私の周りには、留学に興味がある学生、就職活動を進めている学生、両方おります(圧倒的に後者のほうが多いですが)。いづれの場合でも、本人の中で優先事項(留学先や就職先でやりたいこと)がクリアになっていて、行動力ある人はサクサクと駒を進めているように思います。最終的には志望先との相性が合うかどうか、なのかな・・・と。志望先との相性に関してはこちら側(応募者)にとりUncontrollableだと思うので、そこは運ですかね。。
    第2段も楽しみにしております!!CREA

  • la dolce vita

    >mignon1117さん
    >特に、結婚や出産を経て、余計にそういう欲が強くなりました。
    私も学習欲は年を経るにつれて強まりますねー
    先立つもの(お金や時間)が・・・、と思いつつ夫にも「そういうのを言い訳にするな」と言われています。
    >CREAさん
    >その環境に身を置くことでそれまでの価値観が覆され、卒業後には自分が型破りな人間になっている・・・みたいな。
    型破りというかですね、周りが「起業なんてフツーでしょ」みたいな人たちばかりになると自分もそれが普通に思えてくるんですよ。
    ライフネットの岩瀬さんのブログか本のどっかに、「日本ではHBS卒で生命保険会社を起業したというだけで、注目を集めメディアに取り上げられているけど、HBS同級生は”Daisukeは起業しただけでまだ成功してないのに、なんでメディアが注目するの?”と不思議がられている」という箇所があったけど、まさにそういうイメージ。
    このブログのこともINSEAD友達に一生懸命説明しても「なんでそのテーマが特別で面白いわけ?」って反応ですよ(笑)。 だから環境は大事。

  • ゆう

    今年の就活生も大変そうですね。
    後輩も卒業を一年遅らせたり、新卒主義や人物重視の選考に悩んでいるようです。(自他人事ではないのですが。)
    日本の会社って研修後にようやく配属先が決まりますよね。
    会社任せな感じがして、日本で就職して「世界級ライフスタイル」って結構難しそうに思います。
    ・・・そう思った自分は日本での就職を諦め、英語圏以外の海外の大学院(理系)の英語コースに出願準備を進めています。現地語も学びたいとか、まだ出願もしていないのに夢ばかり膨らみます。
    そういえばla dolce vidaさんのINSEADもフランス語圏の英語コースですよね。
    アメリカやイギリスを選ばなかったのは、やはり多様性を重視しているからでしょうか?
    ちょっと愚痴っぽいコメントになってしまいましたが、la vida dolceさんならどんな就活をされるのでしょうか。次回が楽しみです。

  • lat37n

    わたしにも大学院留学、は一つの答えなんですが、自分がまったく理系でなく、文系で「これを私はきわめたい」って分野が大学4年の時の自分にあったとは思えず(あと、周りで海外で、大学卒業してストレートで大学院、の価値がフルに発揮されている人は、理系ばかりでもあります)文系で考えられるのがMBAだけだとすると、Working ExperienceぬきでMBAに行くのは無意味ですよね。結局、就職してから考えよう、ということで、プロフェッショナルファームを目指したんでしょうね。そしてその結果、会計事務所以外のプロフェッショナルファームに最初入ったとして、海外経由で10年後に結局今と同じような仕事をしているという姿が容易に想像つく。。。
    現状に不満なわけではないのですが、人生を大幅にデザインして「世界のトップレベル」にポジションをすえたければ、大学でるときじゃおそい!と思ってます。今が高校生だったら、英語必死で勉強+理系に転向するか(by nature難しいかな、笑)海外の大学の留学、もしくは日本の大学にいたとしても、社会人になってからじゃできないような海外とのコミュニケーションをとれるような道を模索したかな。てなると、高校3年生でも遅くって、高校入ってすぐ位から明確にそういうVisionを持つ必要だったということで、分岐点が15歳くらい。というと、親の影響、環境、いろんな意味で恵まれていることが必要なのかもしれませんね。
    とはいえ、20代後半ではあったけれど、覚悟決めて海外にでた経験が、今の私を作っているのは確かで、どんなタイミングでも「やってみたければ動く」というのが基本だと信じていますわ。
    ちなみに、高学歴な女性が損かというと、最近は日本においてもそんなことないと思ってますけどね。少なくとも私の周りで、性格含めて魅力的なのに学歴だけがissueでライトパーソンが見つからないというようなケースは見ないですし。。。まあ、こればかりはおっしゃるようにケースバイケースで、ご縁もあるし、ご縁を広げるという意味でも、海外にも幅を広げるというのがワークする可能性は高い(笑)。

  • la dolce vita

    >ゆうさん
    >英語圏以外の海外の大学院(理系)の英語コースに出願準備を進めています。
    いいんじゃないですかー? 英米の大学はアカデミックな良さはあるのでしょうが、住む場所としてはあんまりエキサイティングじゃないとこが多いですからね。
    >la dolce vidaさんのINSEADもフランス語圏の英語コースですよね。
    細かいですが、”vida”じゃなくて”vita”です(↓)。 ”vida”はスペイン語、”vita”はイタリア語。
    http://www.ladolcevita.jp/blog/global/2008/10/la-dolce-vita.php
    >アメリカやイギリスを選ばなかったのは、やはり多様性を重視しているからでしょうか?
    アメリカは出張で行きすぎてアメリカ人嫌いになってしまったので(↓)、受験しませんでした。
    http://www.ladolcevita.jp/blog/global/2009/02/post-134.php
    ヨーロッパMBAのトップ3受けましたよ、LBS(イギリス)、INSEAD(フランス)、IESE(スペイン)。 INSEADを第一志望にしたのは、卒業生が一番熱く語ってたからです。
    >lat37nさん
    蘇州からコメントありがとうございます。 中国ではブログはブロックされてないんですね(ブロックされるような内容もないけど)。
    >文系で考えられるのがMBAだけだとすると
    私も知らない世界だけど、ロースクールや(それこそお友達の例がある↓)
    http://www.ladolcevita.jp/blog/global/2009/08/post-249.php
    国際機関系(こういうの↓)だとありでは?
    http://bit.ly/coG9FK
    >結局、就職してから考えよう、ということで、プロフェッショナルファームを目指したんでしょうね。
    私、大学生のときMBAの存在知りませんでしたよ・・・
    新卒で入った会社でシリコンバレーの出資先ベンチャーに出張したとき、インド人COOが”I am MBA – Married But Available.”と言うジョークを言ってたのが、「MBA」という言葉との出会いです。 その時、Master of Business Admnistrationとかかってること知らなかったし。
    >人生を大幅にデザインして「世界のトップレベル」にポジションをすえたければ、大学でるときじゃおそい!と思ってます。
    私ももちろんそう思ってますよー。 だからこういうの(↓)書いたんですが、今回のリクエストが「大学生に向けて」だったので。
    http://www.ladolcevita.jp/blog/global/2009/12/post-296.php
    >高学歴な女性が損かというと、最近は日本においてもそんなことないと思ってますけどね。
    学歴だけだとそうですねー、私の周りもほぼ全員結婚しました。 でも「海外経験」を入れると、途端にcandidateは減ります(いるとこにはいるんだろうけど、いないところには全くいない)。
    自分が留学して、友達の半分は外国人という状況になると、英語でコミュニケーションが取れないパートナーはかなり辛い。

  • Y.S

    こんにちは。
    例えばシンガポールや香港では、MBAホルダーとそれ以外はそれ程待遇に差があるのでしょうか?
    留学も考えましたが、日本で6年働いてきて「今さら学生に戻れない」という気持ちがあったもので、転職の準備(履歴書作成)を始めています。
    まずは、海外での就職を目指そう。そしてフェアな環境でのし上がろう、と思っていたのですが・・・。

  • la dolce vita

    >Y.S.さん
    >例えばシンガポールや香港では、MBAホルダーとそれ以外はそれ程待遇に差があるのでしょうか?
    待遇に違いがあるのではなく、応募できるポジションに違いがあります。
    求人案件に「消費財マーケティング経験5年以上必須」と書いてあったら応募できないですよね? それと同じで、”MBA required, MBA preferred”と書いてある求人があるので、どういうポジションにそう書いてあるかは、ご自分でサーチしてみてください。
    それがY.S.さんの興味ない分野であれば、そもそも関係ないですし。
    >日本で6年働いてきて「今さら学生に戻れない」という気持ちがあったもので
    6年ですよね? 16年や26年でなく? 30代後半で大学院生なんてざらにいますよ。 分野によっては、40代、50代もざらにいます。

  • Playland

    初めてコメントします。面白いトピックですね。アメリカ東海岸の(普通の?)小売の会社で働いています。確かにMBAは多いですが、経営企画・ファイナンスのような部署以外では、MBA・修士が必要、ということはないように思います。シニアな経営陣でもMBA保有者は半分以下だと思います。上で書かれている、「アメリカ」っていうのも、いろいろあると思いました。シリコンバレーやプロフェッショナルファームとそれ以外のアメリカの普通の企業の差は、同業の企業のアメリカ・日本の差よりも大きいかなと思います

  • la dolce vita

    >Playlandさん
    初コメントありがとうございます。
    >経営企画・ファイナンスのような部署以外では、MBA・修士が必要、ということはないように思います。
    上に書いた「経営に近い部署」というのが、まさにそういう意味です。
    >シリコンバレーやプロフェッショナルファームとそれ以外のアメリカの普通の企業の差は、同業の企業のアメリカ・日本の差よりも大きいかなと思います
    それは本当にそう思います。
    以前、「所属する組織は何だかんだ言って価値観をつくる」ということをこちら(↓)に書いてます。
    http://www.ladolcevita.jp/blog/global/2009/05/post-193.php

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