企業の競争相手が個人になる時代

書かれてからだいぶ日が経ってしまったのですが、ズキューン!ときた記事。
シリコンバレー在住の江島健太郎さんという方が書いた『LingrとRejawサービス終了のお知らせ』というCNETブログ。
失礼ながら江島さんのこともLingrもRejawも何も知らなかったし、今も知らないけれど、3年間育ててきたサービスを終了し会社を解散することになった原因をまだ混乱の最中にいるであろう当事者が冷静に分析しパブリックにするという、あまり見かけない内容。
その謙虚で冷静な態度にも感銘を受けたのですが、それ以上にズキューン!ときたのが今回の敗因分析の以下の箇所。

私が得た教訓は「究極の少数精鋭はひとり」「プロパー指向という贅沢は軌道に乗ってから」といったあたりです。(中略)
この分野では「企業の競争相手が個人になる時代は目の前まで来ている」ということです。 スタートアップ企業を作って数名で作るのと、一人の個人が副業で立ち上げるのとでは、最終的に出てくるモノの差がだんだんなくなってきており、単に「かかるコストだけが100倍違う」ということになりかねない、と思うのです。

もちろん『フラット化する世界』『フリーエージェント社会の到来』などを読んで「個人のグローバル化」「個人の時代」なんて言葉は頭で理解しているけど(ブログにもいろいろ書いてます、こちらこちらなど)、やっぱり実際に挑戦した人から(ブログを通して)「4人というのはやはり大所帯だった」と聞くのとはインパクトが違います。


なぜこの話がインパクトがあったかと言うと・・・
3月末に「仕事が決まった」とこちらで書いて以来、一度ちゃんと今の仕事のことを書きたいと思っているのですが、七転八倒・・・じゃなくって、話が四転五転するので書けていません。
簡単に今の状況を説明すると、経営コンサルのスタートアップで働いています(3月時点では、話がちょっと違ったんだが)。 私たちのフォーカス分野と組織の成り立ち自体が、個人と言わずとも小組織が大組織と互角以上に戦えるようになってきた現代の大きなパラダイムシフトに深く関係しています。
1) フォーカス分野
現代のdisruptive technology(破壊的テクノロジー)によって、ほぼすべての業界に大きなパラダイムシフトが起き、世界的不況がそれを加速しているのですが、企業がそのパラダイムシフトを乗り越え成長するのをアシストするのが基本理念。
具体的な分野としては、クラウド、SaaS。
江島さんのブログにあるAmazon EC2はその代表的なものですが、今までの競争原理とは全く異なるコスト構造で勝負してくるベンチャーに対峙するクライアントへの経営戦略アドバイス、SaaSを活かして企業のあり方(事業領域や調達方法など)そのものを変えようとするクライアントの計画実行サポート、など。
もうひとつの分野は、企業のマーケティングのあり方を変えつつあるソーシャルメディア。 既存マス・メディアのビジネスモデル崩壊とともにビジネスモデル見直しが必至の広告代理店や、その先の広告主がクライアントです。
これだけでなく、普通の仕事もやってますが(アジアでの成長戦略、資金調達、組織変革など)。
2) 組織の成り立ち
私たち自身がスタートアップのコンサルということもあり、大手コンサルと同じ土俵で勝負してもしょうがないので、バックエンド(ITやアドミなど)のオーバーヘッドは限りなくゼロにしつつ(Salesforce.comZohoなど今はツールもいろいろ)、大手コンサルのピラミッド型組織ではないフラットかつスリムな組織を目指しています。
私自身、来る「企業の競争相手が個人になる時代」を感じていたので方向性が合っているキャリアチェンジですが、まあ、それはそれはいろいろあるもんです。
私は変化への耐性は比較的ある方だと思っていたのですが、去年以来の環境の変化は今までの人生で最大かも(なんせ今まで従業員ウン万人の東証一部上場企業でしか働いたことがなかったので)。


7 responses to “企業の競争相手が個人になる時代

  • 最速時事ネタニュース

    創芸 広告代理店

    広告代理店。 人生どうなるかわからない
    広告代理店みた感想は意外と良かったです。どうやら私はずっと偏見を持っていたみたいです。ごめんなさい初めて体験する…

  • hiroko

    私はこのLingrの記事、別の意味でショックでした!
    というのが、このサービスの大本の会社で働いている友人経由で、江島さんと一緒に
    お食事がてらお話をしたことがあったので・・・あれはもう2年前でしょうか。早い!!
    そういうわけで、このサービスを試したこともありました。一度使っただけでその後使わず。
    あれからどうなってたのかな、とふと思ったところで、その記事を見て、一人で愕然としてました。
    本論とずれてすいません。
    どのようなギャップがあるのでしょうか、聞きたいです!
    私は逆で、今日本の大企業で働いており、ギャップを感じてますよ(笑)。昔はアメリカの中小企業
    で働いていたので、のびのびしてましたから。
    この間も、日本の本社の人に、「思いのたけを教えてください。日本からは見えません」といわれたので、
    そのまま思ったとおりのことを返したら返事がありませんでした(爆)。
    アメリカに来て、さらにはっきり言いすぎ具合に磨きがかかっているようです。手加減したつもりだったんですけどねー

  • bae

    個人(おそらく、Internetを活用した)を相手にしたコンサル事業というのを考えたとき、AndroidやiPhoneの様に事業プラットフォームをまるごと構築して個人に提供してしまうのものそうだし、もっと古くにはオークションシステムもそうだと言えます。
    これからのあり方は、クラウドがキーワードなのでしょうけど、いまいち形は見えていません。考えうるものは、セットメニューとして用意された法的、財務、労務のような頭の痛い課題を解決するサービスを、個人事業者が選んで自前のサイト開設できる。そして、個人サイトが寄り合えるサービス(ディレクトリサービス?)がある。その後、集まったサイトを露出の高い場所(駅前の電光掲示でもいいのにと思う)にランダム広告できる。広告を見た別の事業者が他の事業との連携を連想できるようなキーワード型の検索サービスがある。etc..いろいろ考えられそう..
    上海でしたか、学生ネット事業者と在庫を抱える既存企業を繋げる仕入れ市場のようなイベントが開催しているという例も。個人の仕入れ場所を提供(紹介)するというのもコンサル的事業かな?

  • la dolce vita

    >hirokoさん
    >どのようなギャップがあるのでしょうか、聞きたいです!
    周りはイギリス人ばっかりですが、そういうギャップではないです。
    スタートアップで不透明なことだらけなので、「一寸先は闇」というか先が見えないとこですねー
    >「思いのたけを教えてください。日本からは見えません」といわれたので、そのまま思ったとおりのことを返したら返事がありませんでした(爆)。
    面白すぎ。 返事してくれないとわかんないですよね、どう思ったんだろう? 知りたい・・・
    >baeさん
    うちは個人相手ではなく企業相手ですよ。 小さいので、バックエンドは小組織向けのサービスいろいろ使ってますが。
    >法的、財務、労務のような頭の痛い課題を解決するサービス
    このへんは最後まで自動化、クラウド化できない部分は残ると思いますが、それでも定型化できる部分はたくさんあって、(クラウドではないが)このサイトなんかスタートアップ法務の宝の山です。
    http://www.startupcompanylawyer.com/
    個人が企業と競争できる社会、ワクワクしますねー

  • bae

    >個人が企業と競争できる社会、ワクワクしますねー
    ですね!クラウドなサービスがBLOGパーツくらいに扱いやすいともっと敷居が低くなりそうな気がします。

  • まつーら

    あー、そうそう、Lingrなくなっちゃったんですよねぇ。
    Lingrに関しては、昔梅田さんがイベントしてて(下記参照)、そこで初めて知りました。
    http://d.hatena.ne.jp/umedamochio/20070316/p1
    個人的には何がどう凄いのか理解できなかったことだけ覚えています。
    今後、社会がフラット化していき、どんどん組織が縮小化していく中、
    仕事のあり方やキャリアの仕方も時代に合わせて変わっていくんでしょーねー。
    そのときになって焦らないよう、日々柔軟に(適当に?)生きていきたいっすね。

  • la dolce vita

    >まつーらさん
    >そのときになって焦らないよう、日々柔軟に(適当に?)生きていきたいっすね。
    まつーらさんはアンテナビンビン立ってるから大丈夫ですよ!

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