実家に社会保険事務所の人がやってきたらしい。
私は去年のちょうど今日付けで、日本で働いていた会社を辞めており、その後、厚生年金も国民年金も未払いで「いったいどうなっているのか?」と調査に来たとのこと。
すごい!!! わざわざ訪問調査に来るんだ、こんなことで税金を使わせてしまって申し訳なし。
事の背景は次の通り。
1. 私は東京に住んでいたのだが、シンガポールに引っ越す時点で、いったん住民票を奈良(実家)に移してから、奈良市役所に国外居住届を提出。
2. 海外居住者は国民年金の加入義務はない。 任意加入して保険料を納め続けることはできるが、破綻すると言われている年金制度に納め続ける意味が見出せず、加入していない。
3. 日本で9年と少し、厚生年金と国民年金の加入歴があるが、最低25年の加入がないと年金受給資格がない、とのことで、「なーんだ、9年間は結局掛け捨てだったのか」と思っていた。
4. 数ヶ月前、住民票を預かる行政と社会保険庁とはつながっておらず、1.で行った住所変更が年金データには反映されていないので「ねんきん特別便」が昔の東京の住所宛になっていることに気づき、社会保険事務所での住所変更手続きを親に代行してもらった。
5. すると、上記の通り「年金保険料未納です」という調査が実家に来た。
上記、社会保険事務所の人は、親から事情を聞いた後、
日本と”社会保障協定”(*1)を結んでいる国で年金に加入した場合、加入期間が通算で合算されるので、今は”カラ期間”(*2)申請しなさい。 シンガポールとは”社会保障協定”を結んでいないけど、将来引っ越す国とは協定結んでいるかもしれないでしょ。
とのこと。
まず、*2のカラ期間について。
上記の通り、海外居住者には国民年金の加入義務はない(国内居住者は強制加入)ので、海外に住んでいた期間を最低25年の受給資格を計算するときに合算することができます。 ただし、この期間は払っていないので年金受給額には反映されません。
社会保険庁:合算対象期間
これについては知ってましたが、知らなかったのは、*1の「社会保障協定」。
厚生省のHPによると、「年金二重加入」と「保険料掛け捨て」を防止するために、2国間で社会保障協定の交渉・締結を進めているのだそうです。
協定発効済の相手国で年金保険料を納めた場合、期間合算できたり、さまざまな特例があります。
現在の各国との協定締結状況は右表(→詳しくはこちら)。
各国の年金制度が異なり、どの国も設計時はここまで個人がグローバルに移動する時代になることを見越していなかったであろうから、想像するだけで事務方の悲鳴が聞こえてきそうな協定です。
シンガポールの年金に当たるCPFは個人の口座に積み立てされ(→『社保庁は見習ってほしいCPF』参照)、シンガポールから他国へ出るときは年齢に関わらず引き出しができる、と完全にポータビリティーがあります。 個人的にはこのシステムが一番納得感がありますが、年金システムには各国の社会保障に対する思想が反映されているので、どれがベストとは言えないのかなー?
時代のスピードにシステム整備が追いつかないのは仕方ないのかな、と思いつつ、こんなに個人がモバイルになった時代、年金ポータビリティーは不可欠でしょう。 海外居住を予定している人は要チェック。
June 11th, 2009 at 6:46 pm
年金のポータビリティとは良いアイデアです。
どうせなら、年金積立、運用を担う国際機関があると良いのに。でも、自分の為に積み立ていない状況では、無理なアイデアかな。あとは基準通貨を何にするか?これは結構重要でしょ。
ps.最近こちらの読者になりました。いつも読むのを楽しみにしています。
June 11th, 2009 at 8:16 pm
これは非常にためになる情報ですね!ありがとうございます。
移住希望先のシステムをチェックしてみます♪
June 12th, 2009 at 12:30 am
これ、アメリカ締結してるのですが、きちんと手続きしてないような気がします(記憶すらない)
というのも、もう私が年金支給されるころには、日本もアメリカも、年金制度は破綻してるんだろうなと
悲観的でして。ソーシャルセキュリティー、しっかり払ってますけどね・・・
それにしてもシンガポールの仕組みはいいですね。
アメリカではしょうがないので、401Kにしっかり積み立ててます。
June 12th, 2009 at 1:05 am
私もアメリカに転勤となった当初はまだ日本とアメリカの協定が結ばれていなくて、協定締結を今か今かと待ちわびていました。結局協定が結ばれた時、過去数年にさかのぼって適用される、とか言われて、二重払いしていた過去を悔やんだりしました。ちなみに、アメリカでは受給資格を得るためには合計10年だけ加入していればいいので、日本の25年とは大違いです。
June 12th, 2009 at 8:52 am
la dolce vita様
私は、日本の年金制度はそこに穴の開いた巨大タンカーだと思っています。このままでは沈んでしまうのに、図体がでかいために機敏な行動が取れず、沈むのを待つばかり・・・ 穴を修復しようにも船員(生産労働者)は減っていくばかり。一方船長(政治・行政)は自分のライフボート(選挙や天下り先)を確保するのに必死という何ともお寒い状況。
すでに年金受給している方や、まもなく受給される方はまだしも、今後、中年以下の日本居住者は自衛(資産の確保)を強いられるでしょう。それなりの衝撃(年金受給額減や破綻の可能性)は日本人の意識を変えるために有効かもしれませんね。個人的に大きな政府は反対なので、シンガポールのような積立方式導入に期待したいですね。
それにしても、la dolce vita様が指摘されるように、国家や企業への依存率を減らすようなライフスタイル・キャリアパスが重要になってきていると実感します。
June 12th, 2009 at 9:38 am
>baeさん
>どうせなら、年金積立、運用を担う国際機関があると良いのに。でも、自分の為に積み立ていない状況では、無理なアイデアかな。
私もそう思いましたが、「世界政府ができたら」とかいうくらい先の話でしょうねー。 「まずはEU内で実現」が現実的かな、高福祉の国が猛反対すると思いますが。
>Keiさん
>移住希望先のシステムをチェックしてみます♪
おっ、どこですか? 私はふらふらしていて決まってません・・・
>hirokoさん
>もう私が年金支給されるころには、日本もアメリカも、年金制度は破綻してるんだろうなと悲観的でして。
そう、いくら2国間で協定結ばれても両方で破綻されたら意味ないですけどね。 これ、もっと柔軟な運用になって世界的に利用する人が増えたら政府間でもめると思いますよー 年金もらうために高福祉の国に移住する人が増えたりして。
>globetrotterさん
>アメリカでは受給資格を得るためには合計10年だけ加入していればいいので、日本の25年とは大違いです。
5年って国もありますよ。 私もこの25年の長さに驚いたんですが、合計20年くらい働いてアーリーリタイヤする予定の人とかどうすんだろう?とか。 そういう人は、年金に期待してないのか・・・
>hideさん
>それなりの衝撃(年金受給額減や破綻の可能性)は日本人の意識を変えるために有効かもしれませんね。
おっしゃるとおり日本の年金制度は悲惨です。 こちら(↓)で紹介した本では、先送りにしないで早く年金制度を解散せよ、と言ってますが、もうみんな制度が破綻していることはわかっているので、早く決着つけてほしいですね。
http://www.ladolcevita.jp/blog/global/2009/02/post-141.php
June 12th, 2009 at 12:07 pm
まさにいま私にとって旬な話題で記事にしていただきありがとうございました。香港の日本人の友達にも転送しちゃいました。
June 13th, 2009 at 10:40 am
>myfire77さん
どういたしまして〜
香港入ってないですけど、シンガポールも(笑)。
June 22nd, 2009 at 11:28 am
日本の年金に思うことは、なぜ日本にいる人達は、思考停止状態に陥っているのかってことです。
僕もla dolce vitaさんと同様の理由で、海外に出てから未払い状態なのですが、
日本の友達や家族には「絶対払った方がいーよ。払いなさい。」みたいなこと言われます。
でもみんな、自分個人での積立とかと比べてメリ・デメを聞くと、結構答えられない人が多いんですよね。
年金システムなんていつ破綻するかも分からないのに・・・
そんな訳で、僕も近々PRを取ってCPFをゲットしようかと真剣に検討中です。
June 23rd, 2009 at 9:40 am
>まつーらさん
>日本の年金に思うことは、なぜ日本にいる人達は、思考停止状態に陥っているのかってことです。
前にコメント欄に書いてますが(↓)、まず源泉徴収が問題。 年金に限らず、天引きされているもの(所得税、住民税、健康保険料、社会保険料など)の中身を正しく答えられる人はほとんどいないと思う。
http://www.ladolcevita.jp/blog/global/2009/02/post-141.php
あとは、教育ですね。 家でも学校でもいいので、遅くとも社会人になる前に知っておくべきかな、と。
February 2nd, 2012 at 2:39 am
世界級ライフスタイルを目指す者の一人として、いつも興味深く拝見しています。
私も現在は香港在住なので、任意の国民年金は支払っていません。
年金制度の改正なども騒がれていますが、月6万円ちょっとではありますが、それが死ぬまでもらえるとなると
それはそれでありがたい制度なのではないかとも思います。
香港にもMPFという年金制度があります。 毎月収入の数%程度を積立ていき、定年後運用資金が戻ってきます。 しかし、この年金制度は、政府運用ではなく民間運用なので、将来もらえる額は、運用によりけりというマイナス面もあります。つまりリスクを伴う金融商品のようなものです。
そこでYokoさんはイギリス在住ということですが、今後も国を変わることを想定された年金積み立てをされていらっしゃるのでしょうか?差支えのない範囲で、教えていただけますと幸いです。
よろしくお願いいたします。