あなただけの家 – 1

『そこにしかないもの』はヨーロッパでは築数百年の建造物が昔と変わらぬ概観を保ち「都市の顔」である街並みにアイデンティティーを与えているという話でした。 今日は建物の「外」の話ではなく「中」の話。
『古いほど人気のマイホーム』に書いたようにロンドンの住居の半数以上は第二次世界大戦以前に建てられており、古ければ古いほど”Period Property”(時代もの不動産)と呼ばれ人気です。 全住宅流通量(既存流通+新規着工)に対する既存住宅(中古物件)のシェアは日本が13.5%に対し、イギリスは88.8%だそう(アメリカ77.6%、フランス66.4%。 国土交通省『中古住宅流通、リフォーム市場の現状』より)。 
建物の外側は街並みという「公共」に属しているものなので個人で勝手に変えることはできません。 ところが、築100年以上の建築物でも中は現代人の生活に合うようにモダンに変えてある、ばかりではなく、イギリス人は自分に合うように内装を変え、時には増築・改築をしながら「自分だけの個性ある家」に何年もかけて仕上げます。 インテリアにおいて重要なことは「住む人の個性を反映していること」であり、特定のスタイルであることではなく、もちろん広さや最新ファシリティーではありません。

Jo Berryman's lounge私がロンドンに来て目うろこだったのが、この「家は自分の分身」、「インテリアはある特定のスタイル(”南仏プロバンス”、”ミッドセンチュリーモダン”など)で揃えるのではなく、自分のストーリーを語らせるための道具、さまざまなスタイルをミックスさせながら自分のスタイルをつくりあげる」という姿勢です。
言葉で説明するのがとても難しいのですが、たまたまロンドンのある家を取り上げた日・英のインテリア雑誌を見つけました。 北ロンドンのハムステッドにあるJo Berrymanというインテリアデザイナーの家。 数年前に出版された『New London Style』という在ロンドンのクリエイティブのインテリアを集めた写真集の表紙を飾った右の写真のリビング。 ロックにアレンジされたユニオンジャックとベロア地でシックに仕立て上げられた伝統的なチェスターフィールドソファの組み合わせがオリンピック前のロンドンの勢いを現した象徴的なインテリアで気になっていました。

このリノベーションでファッションスタイリストからインテリアデザイナーへの転身に成功し一躍有名になった彼女の次の家が日本のインテリア雑誌モダンリビング、イギリスのインテリア雑誌Living etcに取材されたようなのでPDFを貼っておきます(日本の「モダンリビング」記事はこちら、イギリスの「Living etc」記事はこちら)。
この2つを比較すると、日本とイギリスのインテリアに対する姿勢の違いがよーく見えてとても面白いです。 ・・・というところで時間切れなので明日。


5 responses to “あなただけの家 – 1

  • Miffy

    数年前に欧州MBAに留学していた者です。出産を機に都心に住宅を購入し、(復職前の)育休中という時間のある間にインテリア雑誌を濫読し都内のインテリアショップをしらみつぶしに回って、どうやら北欧スタイルが自分の感性に合うと判断し北欧家具や雑貨を狂ったように買い回っていました。「インテリアはスタイルではなく自分を語る場所」という言葉ではっと目が覚めました。自分の感性を磨きスタイルを確立すべくもう一度原点に帰ってインテリアを見つめ直したいと思います。。。(←これってセンスが厳しく問われますね。北欧スタイルとかいって雑誌に出てくる北欧家具を丸ごと揃えればそんな失敗はないんだろうけど)

    • la dolce vita

      北欧スタイルは本当に日本では人気ですね、あのすっきりしたラインや木の温かみを基調とするところなど日本人の美意識に近いからだと思います。

      >これってセンスが厳しく問われますね。
      時間をかければ目は養えますねー お金があって時間がない人はインテリアデザイナーの時間を買うのでしょうが、そうでない人も「スタイルとか考えなくても自分の好きなものを集めるのだからまとまらないわけがない」と自信を持ってる気がします。 欧米人は一般的に日本人より自己主張が強いですが、「好きなものは好き」と自分の感覚を信じることにも通じる気が。

  • NWtyger

    ハア、これだけアプローチが違うとは。英版の構造的、戦略的視点が日本版からはすっぽり抜けている・・・。

  • 佐藤トオル

    海外で生活すると、日本料理ならではの風味を忘れがたいです。そして、日本のテレビ番組も。時差が多いので、日本のテレビ番組を即時に見るのは不便だと思って、すごく悩んでいます。近頃友達の勧めたwww.tv-rec.comを使って見ましたが、とても懐かしい気がします。このネットによって日本のテレビ番組をいつでもどこでも見られ、とても便利です。暇があったら試して見ましょう。
    突然コメントをして申し訳ありません。

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