前回の続きで、キャリアのひとつめの山を下りるときの話。
「稼いでいた頃の私症候群」は心理的な抵抗感ですが、キャリアを下りたときに生じる経済的損失の方が多くの人にとっては恐怖だと思います、これが怖くて沈みかけた船から下りられない人は多いはず(今、船から下りないとその船は沈んでしまうので、『どうせ痛い思いをするなら早めにしよう』なのですが)。
対策としては当たり前のことしか書けないですが、
- 1. 山を下りる前に次の山に登る
- 2. 生活レベルをダウンシフトする
- 3. 夫婦でシングルインカムで暮らせるよう支出を抑える
- 4. 山を下りる前に生活費を貯金しておく
1. は『ワーク・シフト – 孤独と貧困から自由になる働き方の未来図〈2025〉』でも勧められていた方法ですが「これができたら苦労しない」ってやつです。 そもそも今後の世界で通用するレベルの次の山を築こうと思ったら、本著でもマルコム・グラッドウェルの『天才! 成功する人々の法則』
でも述べられているように、何をマスターするにしても1万時間(1日3時間を10年)を費やさなければいけないので、フルタイムで働いている人がこの時間を捻出するのは難しい。
2. は当然みな考えると思いますが、大きな障壁となるのが35年住宅ローンなど大きな固定費。 家計はなるべく変動費化しないと、、、ということで車のない我が家はZipcarに加入しましたが、最大の悩みは保育費。 うちの子どもが行っているナーサリー(保育園)の月額保育費は赤ちゃんが£1,500(約19万円)、2歳児が£1,350(約17万円)で2人合わせて月々約36万円かかります(→『ロンドン保育事情』)。 プラス病気の時は別途ベビーシッターを手配しなければいけないので、働いてる場合はこれ全部固定費。 そりゃあ少子化になるわけだ。
3. は2. に入ると思いますが、やはり共働きは最大のリスクヘッジ(→『Diversify, diversify, diversify!』)。 国境を越えてキャリアを築こうとすると一気に難易度が高くなるけど、順番にダウンタイム取ったりできるし理想、王道。
4. は留学など期間とその間に必要な金額が決まっている場合は貯金で賄う人が多いと思いますが、下りてる期間がはっきりしていない場合はなかなか取りにくい方法。
関連エントリー:『目の前のお金に惑わされない法』
山の上にいるとき(=フルに稼いでいる時)も来るダウンシフトを想定して慎ましく暮らせばいいのですが、自然と支出は増えてしまうんですよね。 周りにいる人も稼いでるわけだし、自分や家族の期待値も高くなるし。
共感はするが実行は難しい「カリヨン・ツリー」型キャリアなのですが、こういう時代はすぐそこまで来ているので適応せざるをえないのでしょう。 ”Survival of the fittest”(適者生存)であって”Survival of the brightest”(賢者生存)でも”Survival of the mightiest”(強者生存)でもないのです。
『キャリアの再登頂の仕方』というエントリーも5年後くらいに書けるようになっていたいもの。
September 15th, 2012 at 5:31 pm
適者生存と同時に、Survival of the luckiestでもあると思います。運の良し悪しはいかんともしがたい。
今思えば、ヘー、「カリヨン・ツリー」型キャリアシフトをやってきたんだということになりますが、二番目以降のキャリアはどこから降ってくるか分からないところがある。
Full-time teachingから専業マミーを長くやり、そろそろ他になにか、という時にITブームと某コーヒー会社のアジア市場進出にぶち当たり、企業実務の同通をやってきました。
比較文学理論の専門家のはずが、ですよ。
時の利、地の利などというワイルドカードは、ある程度以上の予測ができないということを頭のすみのどこかで覚えておくことも必要のようです。
September 28th, 2012 at 2:24 pm
>NWtygerさん
>時の利、地の利などというワイルドカードは、ある程度以上の予測ができないということを頭のすみのどこかで覚えておくことも必要のようです。
そうですね、ただ「運も実力のうち」。 チャンスが降ってきたらつかめる人でありたいと思います。
May 16th, 2017 at 3:32 am
[…] 35歳までに産みたい30歳前後のキャリア女性に キャリアの下り方ー1 キャリアの下り方ー2 […]