パパは精子ドナー

『カリフォルニアを見よ』の続き。 カリフォルニアですでに起こっていていずれ日本にもやってくるかもしれないメガトレンドについてです。
もう1年以上前に偶然見つけて観た”Song of a Sperm Donor”という題の短いドキュメンタリーフィルムが忘れられません。 12分弱の短いフィルム(英語)なのでぜひ観てみてください。


こんなあらすじ。

カリフォルニアに住むある中年男性、父はハーバードMBAで企業の幹部も務めた成功者であるものの自身は定職も持たず、精子バンクに精子を提供するドナーとなることで生計を立てている。
これまでに何百回も精子を提供しているが、最近、精子バンクで産まれた子供とドナーである父親が生物学上の親子を探せるWebsiteで自分の生物学上の子供が7人も自分のことを探していることを知り、衝撃を受ける。

ある20代の女の子。 いつからともなく、自分の父親が精子ドナーであることを知っていたが、養子縁組の子供が実の親を探す心境と同様に、自分の生物学上の父親がどんな人であるかに興味がわき母に尋ねる。 母が渡してくれたファイルには、ドナーである父親の身長・体重・人種など基本情報から目・耳のサイズに至るまで細かい身体的特徴が表記されてあり、ますます興味を掻き立てられた彼女は生物学上の父親に会おうと試みる。

フィルムは父娘が会う瞬間で終わっており、彼らがどんな会話を交わしたか、その後どうなったか、については観客の想像に任されています。

去年、”The Kids Are All Right”(邦題:『キッズ・オールライト』)というレズビアンのカップルと精子ドナーである父親、その子供たちを描いたハリウッド映画が公開されました(予告編はこちら)が、”Song of a Sperm Donor”を観て実際にカリフォルニアでは精子提供によって産まれた子供たちが20代という年齢に差し掛かっているという事実に私は衝撃を受けました。

彼女たちはどんな気持ちで「私の実のパパは精子ドナーなの」と友達に言うのか?
卵子提供と異なり身体的苦痛を伴わない精子提供では理論上は1人の男性が数百人も生物学上の子供を持ちうる。 「実の父親」の意味って何?
「すべての人間の生命は等しく尊い」のは倫理上の通念である。 でも「市場」の手にかかると、人種・学歴・身体的特徴などに従って「命」が簡単に値付けされてしまう。 それはいいのか?

・・・答えのない疑問が次々と浮かび上がります。
世界で最も市場主義・自由主義が進んだ(いい意味でも悪い意味でもありません)アメリカで起こっていることは日本でも起こるでしょう(個人で精子提供している東大修士卒の既婚男性のサイトを見つけました→精子バンク コウノトリ。 なお、日本では卵子提供は認められていないものの、精子バンクは認められているため、主に不妊治療として利用されているそう→Wikipedia: 精子バンク)。

代理母で出産した向井亜紀さん、卵子提供を受け出産した野田聖子さんに続いて精子提供で出産するタレントも現れるでしょう。 そのたびにすさまじいバッシングが起こっても、その流れが止まるとは思えません。

産まれてきてくれた我が子の命の重さを実感する中で、この止まらない流れを見ると「人間は神の領域まで本当に浸食してしまうのだなー」と思うのです。


6 responses to “パパは精子ドナー

  • NWtyger

    精子ドナーは一回100ドル。卵子ドナーはその100倍ぐらいが相場の料金らしいです。
    需要があるから、供給もあるんでしょうが、個人的には新生児には実の両親に育まれる自然権利があると思います。
    しかしドナーは、自分の生殖権を金と引き換えに売ってしまっているので、実の親とは主張できない立場にいる。
    まったく生殖とか家族とか言う領域は、形而上学的論議を避けてテクノロジーの問題としてだけでは解決できません。
    家族の定義に関連して、これから米の選挙戦で、同性結婚が論点の一つの焦点となっていきます。
    結婚の再定義に反対する側と、再定義ではないと主張する側と。
    独でもやってますね。

    • la dolce vita

      同性結婚はイギリスでも論点になってます。
      私は同性結婚には賛成ですが、生殖のmanipulationには反対というか「踏み込んではいけない倫理領域」と感じるんですよね。 ところが、これを論理的には説明できないし、世のすべてのことを論理で説明できるものではないのだとも思います。

  • くろぽん

    はじめまして。いつも楽しみに拝見しております。
    ちょうど読売新聞で先日まで精子・卵子提供等についての特集が組まれていました。
    日本でもAIDは問題となっております。
    日本では親が子に事実を伝えることに消極的で、
    たとえ「自分が第三者からの精子提供で生まれたこと」を知る機会がもてても、
    精子提供者のカルテが破棄され、子が自分の出自を知ることができなくなってしまうという事態も起きています。
    http://www.yomidr.yomiuri.co.jp/page.jsp?id=61682

    もしご興味がありましたら、yomiuri onlineから記事が読めると思います。

    • la dolce vita

      >くろぽんさん
      初めまして、コメントありがとうございます & 記事を教えて頂きありがとうございます。
      最近、日本のマスメディアでも特集が増えているような気がします、不妊率も上昇中とか。

  • まこと

    興味深い映画をありがとうございます。
    wikipediaで調べてみましたら日本にも精子バンクたくさんありますね。
    それだけ需要も多いのでしょう。
    http://music.geocities.yahoo.co.jp/gl/yumeonpu/view/20100710

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