結婚しない女たち

2ヵ月前にThe Economistで「アジアの女性たちが結婚から逃げている」という特集が組まれていました。
The Economist : “Asia’s lonely hearts”, “The flight from marriage”
以下、要約。

アジアではどんどん晩婚になっている、それどころか全く結婚しない非婚も増えている（続きを読むをクリックするとグラフが現れます）。　結婚が減っているのは欧米でも同じだが、欧米人は結婚という法律婚にとらわれないようになっただけで同棲は増えている。　結婚も同棲もしないのはアジア特有の現象。
アジア女性が自立した理由は高学歴化と労働市場への参加である。　アジアでは高学歴女性ほど結婚率が低い、これは欧米とは逆の現象である（→『女性における学歴と結婚の相関関係』）。
高学歴が非婚を生むのは2つの理由がある。　ひとつめの理由は高学歴の女性はもともと未婚率が高かった、また都市の方が田舎より未婚率が高い。　女性がどんどん高学歴化し都市に流入するにつれ未婚率が高くなるのは自然である。　ふたつめの理由はアジアのほとんどの国は女性は伝統的に”marry-up” = 「上方婚」するものとみなされてきた。　女性が高学歴化するに従って男女のミスマッチが起こっている。
またアジア特有の理由に女性が家事・育児・介護などの負担をひとりで背負っていることがあり、これが結婚の魅力をなくしている。

以前、シンガポールの少子化の話を書きましたが（→『シンガポールの少子化対策 – 政府の嘆きが聞こえる・・・』）、上の記事はどこかで聞いたような話ばかりですね・・・
・・・と思っていたら、アメリカの黒人女性も結婚していないそう。　こちらの方が数字は強烈（右の表）。
The Economist : Unmarried black women
そして理由が悲しい（以下、要約）。

まず結婚対象となる男性が少ないこと。　アメリカでは30代前半の黒人男性10人に1人が刑務所に入っている。　黒人男性は黒人女性に学歴や収入で劣る。　多くの黒人女性は”marry down” = 「下方婚」することでこれに対応してきたが、これは悪い結果に終わることが多い。　黒人同士の離婚率は白人同士の離婚率の2倍にのぼる。
一方、売り手市場となった黒人男性は複数の女性と付き合い、周りにあまりに多くの女性がいるため1人の女性にコミットするインセンティブがなく、結婚しても白人の5倍の確立で不倫する。
黒人女性にとって明らかな解決法は他の人種と結婚することだが、これはタブーでもある。　他人種と結婚する黒人女性は10人に1人に満たない。
白人の夫は奴隷時代を思い出させるという人もいれば、黒人以外の男性は魅力的ではない、という人もいる。　自分の子どもが”not black enough”になることを恐れる人もいる。　最も多い理由は「自分の黒人としての魂・ハート」に背くことになるというもの。
「黒人男性のそばに私たちがいてあげなかったら、他に誰がいてあげるというの？」

最後の引用はだめんず・うぉーかーを思い出させますが、「タブー」、「魂・ハート」の世界にまで入ってくると複雑。　アメリカの人種問題って根深いんですねー（イギリスには階級があるので、そこまで人種は問題ではないような）。
日本とロシアは歴史上初めて、戦争・疫病などの理由以外で人口が自然減少を始めたケースなんだそう（他アジア諸国が後に続くのもすぐ）。
人間も動物の一種のはずなんだけど、「結婚しない」「子どもを産まない」という選択肢を持ったとたん個々に社会的に最適化し始めて（→『星の数ほどの中から選べる幸せ？』）、自ら人口を減らす方向に向かっているのが興味深い。　いや、アフリカは人口爆発しているので、先進国の人口が減っても焼け石に水なのですが。