アイデンティティーとは何か。

海外在住の方、先週は日本から24時間流れてくるショッキングな映像を見ながら、心の一部がもぎ取られるような思いをしたのではないでしょうか?
特に普段あまり周りに日本人がいない環境で暮らしている人は、普段と何ら変わらない日常を送る周囲と東北の惨状とのギャップにショックと無力感を抱きながら、いてもたってもいられず募金活動などできることを始めた人が多かったようです。
最近、「日本脱出論」が盛んで、その中で海外在住の(特に日本に帰る予定がない)人に対して「日本を捨てたんだから日本人じゃない」的な発言をした人たち(*1)には、必死でチャリティーイベントを企画し実行している彼らの姿を見せてあげたい。 周りに日本人がいないということは、自分しかやる人がいないのです。「自分がやらなくても誰かがやってくれるだろう」はないのです。
*1・・・この種の人たちに対して古賀洋吉さんが切れてます→『日本に貢献すること、世界に貢献すること』
私が日本にいないのはこういう理由です→『20、30、50年後を想像しながら動く』
アイデンティティーって自分の「心がある」場所のこと、物理的な場所とは関係ないんですよ。 そのことを強く思い出させてくれた記事を紹介します。
ロンドン中の通勤客が読んでいるLondon Evening Standardという無料夕刊紙で、Ocado(*2)の共同創業者の1人Jason Gissingが日本への義援金を募ることにした経緯をインタビューで語っていました。
London Evening Standard: Ocado founder: I was about to get on a plane to Japan
*2・・・Ocadoとはロンドンで市場シェア50%以上を占めるオンライン食料品ショッピングサイト。 我が家の生活はOcadoなしでは考えられません。


jason_gissing.jpgocadoはgoldman sachsのバンカー3人が創業し大成功したネット企業、シティの高給バンカーが羨望半分・妬み半分で語られることの多いイギリスでは、元バンカーというプロフィールが強調され、創業者の1人jason gissingが日本人とイギリス人のハーフ(英語ではmixed)であることを知りませんでした。

His immediate reaction was to try to get on a plane and go out to Japan. “I was absolutely about to pack and go,” he says. “I turned to my wife and said, ‘I’ve got to go. I’ve got to go now!’ and she looked at me calmly and said: ‘Why?'”
(ニュースを知った)直後はとっさに彼は飛行機に飛び乗って日本に行こうとした。 「僕はとにかくパニックで行こうとした。 妻に”行かなきゃ、とにかく行かなきゃ!”と言うと、妻は冷静に僕の方を見て”なぜ?”と訊いた。」

Jasonのイギリス人の父が1960年代にビジネスで日本にいた際に出会ったのが、通訳を務めた日本人の母でした。 ただ彼自身はイギリスで育ち、オックスフォード大学(英財務省のジョージ・オズボーンと同級生)→Goldman Sachsでトレーダー→Ocado起業という人が羨む人生を歩みます。

Gissing says that until the crisis, many of his oldest friends, including a Greek chum who was an usher at his wedding to Katinka, had forgotten he was Japanese.
“I had many emails in response to my appeal saying, ‘Sorry, I forgot you are Japanese and you have relations there.’ People see me as being totally British now.”
震災が起こるまで、結婚式でアッシャー(新郎の付添人)を務めたギリシャ人の友人も含めて昔からの友人の多くが、Gissingが日本人であることを忘れていた。
「(Ocadoからの)募金の呼びかけに”君が日本人で、日本に親戚がいることを忘れてたよ”というメールをたくさんもらった。 みんな僕のことを完全にイギリス人だと思ってたんだ。」

It wasn’t always that way. As a child, he was used to being an outsider, neither Japanese or British. “I was lonely, yes. I am also an only child but I holidayed in Japan. I went to see my relations. Sometimes I would go to school there.”
昔からそうだったわけではない。 子どもの頃は、日本人でもイギリス人でもないアウトサイダーだった。 「さびしかった、と思う。 それに一人っ子だったし、でも日本には休暇で親戚に会いに行った。 日本の学校に入ったこともあったよ。」

飛行機に乗ることを思いとどまり、日本にいる親戚に電話で何が必要か尋ねると、ピースウィンズ・ジャパンというNPOが現場で物資を配っているとの答えが返ってきました。
Ocadoの他のボード・メンバーの賛同も得て、Ocadoユーザーに対しJustGivingで募金を募ったところ、一晩で£130,000(約1,700万円)もの寄付が集まりました。
Ocado blog : A force for good

Today, Gissing still feels the pull from his opposing sides. “The two cultures are so different,” he says. “But it’s not just that. There is a difference in thinking. When it comes to my English head, I think a lot of the Japanese people are in denial in the way they stay calm and assume life will go on. But my Japanese head understands that this country has been destroyed before and then built itself up again and there is some comfort in that.”
今でも、Gissingは2つの異なるカルチャーの間で引っ張られるのを感じる。 「(日本とイギリスという)2つの文化は本当に違う。 考え方が違う。 イギリス人である僕には、日本人は落ち着いて日常がこのまま続くと思い込もうとすることにより、目の前の現実を拒否しているように思える。 でも日本人である僕には、この国が以前も廃墟となりそこから立ち上がってきたことを知っているから、またできると思える気持ちがあるんだ。」

周りのみんなが(ひょっとして本人でさえも)日本人があることを忘れていた。
でも、心の一部はいつも日本にあり、日本が痛むと自分の心も痛む。
有事には真っ先に(物理的にではなくても精神的に)駆けつける。
こういうものがアイデンティティーだと思います。


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