日本で『これからの「正義」の話をしよう – いまを生き延びるための哲学』やNHK『ハーバード白熱教室』が人気だったと聞いて、遅ればせながらHarvard iTunes UでMichael Sandel教授の”Justice”の講義を聴いています(全部、無料で聴けます、もちろん英語ですが)。
Harvard iTunes U –> Social Science –> Justice with Michael Sandel
Episode 3(日本語版:『「富」は誰のもの?』)は、政府の課税権(とりわけ、富める者から貧しい者へ所得を強制的に再分配する権利)を扱っていて面白かったです。
私は『国の価値観と個人の価値観』に書いたように、国の価値観と個人の価値観が合っている場所で(特に)価値観を形成する少年・青年期を過ごすことが大事だと思っています。 そして政府の課税・所得再分配ポリシーは国の価値観を明確に体現しているもので、ここが納得できるとその国で概ねハッピーなのではないかと思います。
イギリスは元々、中福祉・中負担の国ですが、キャメロン首相が「膨れ上がった財政赤字を解消し成長を取り戻すために、社会保障を犠牲にして経済成長を優先させる」と宣言し、さまざまなところで補助金が削減され大騒ぎになっています。
Number10.gove.uk : Prime Minister’s speech at the World Economic Forum
シンガポールは政府主導で低福祉・低負担の市場経済を極めています。
NYTimes.com : Serious in Singapore
税金低くてビジネスにとっても個人にとってもスバラシイですが、社会的弱者にはとても厳しい国でもあります(→『イギリス人医師の見たシンガポール』)。
スウェーデンは高福祉・高負担の北欧モデルが体現された国ですが、一方で市場経済の中で企業の競争力を削がないよう税制は念入りにデザインされています。
NB Online : “理想郷”スウェーデンモデルの内実
世界にはいろいろな課税・所得再分配の思想を持つ国があって、それぞれにはそれぞれの言い分があります(→『お金持ちが逃げてしまう国』)。
私は先進国における「政府に(社会的弱者保護のための)所得の再分配権を認めるか否か」という議論は、市場による自由経済よりよいメカニズムがないことはコンセンサスが得られていて、その上での議論だと思っていました。 ところが、どうやら違うらしい・・・
というのが、こちら。 Pew Global Attitudes Projectという国際世論調査によると、「自由経済下で人はより裕福になる」と信じる人の割合が先進国で唯一過半数を切っている国が日本です(調査対象22ヵ国のうちアルゼンチンに次いで低い)。
そ・そう来たか・・・
ソ連の計画経済は失敗したし、中国の経済成長は自由経済になって初めて可能になったのに?
自由経済を信じない派の人の意見を聞いてみたいなー
『Chikirinの日記:There is no alternative to market.』によると、『経済危機のルーツ – モノづくりはグーグルとウォール街に負けたのか』がいいらしい、読んでみたい。
February 18th, 2011 at 1:14 pm
こんにちは、久しぶりにお邪魔しました。私も最近税制=その国の思想を体現、というのはまさにそうだなーと思うところがあり、このトピックを興味深く読ませていただきました。↑の世論調査もまた面白い結果ですね、この順位に影響している要因は複数あると思いますが、その国本来の価値観と自由経済カルチャーとのマッチ具合か、はたまた国の疲弊度合いとも見てとれるような?私もぜひ自由経済を信じない派の方の意見を聞いてみたいですね。
February 18th, 2011 at 2:25 pm
>tsubakiさん
>その国本来の価値観と自由経済カルチャーとのマッチ具合か、はたまた国の疲弊度合いとも見てとれるような?
疲弊度合いにも同感。 聞いてみないとよおくわかんないですねー
February 20th, 2011 at 4:19 am
こんにちは。
最近、気になっている内容についてでしたので、久しぶりのコメントをします。
国の税制と文化(考え方?)は、すごく連動していると私も思います。
それに、↑の世論調査は納得だし、興味深いです!
上位3位が先進国で、日本以外の先進国は60%切ってない。
そもそも日本は見せかけの自由経済のような気がしてならないから。
じゃなかったら、総会屋対策でグループ会社や得意先の株を持ち合ったりしないだろうし。
日本は「出る杭は打つ」で、江戸時代の隣組ではないですが、みんなで出し抜く人を規制し合い、他人から奪われるのが、極端に嫌がっているように見えます。
それに、自由経済の悪いところしか着眼できていない、バブル崩壊=自由経済になってしまったのかも。ドメスティックな会社にいると、自由経済だ!っと感じることはありません。私の会社だけかもしれませんが。
私は、本当の?自由経済と納得できる税制を持った国に移動したいなと思って企んでおります。
(どの国にも矛盾なシステムが蔓延っているとは思いますが。)
そのためには、どんな波にも乗れる足腰を鍛えなくてはと、頑張ってますが、前途多難です。
統計などの数値情報がなく、個人的感想で、すみません…。
February 20th, 2011 at 4:12 pm
>自由経済を信じない派の人の意見を聞いてみたいなー
ここ笑わしてもらいました。
歴史学べば計画経済ダメなのわかるっちゅーの。
ぜんぜん関係ないですがもしよろしかったら、イギリスの消費税アップの、
国民の感覚とか、感情的な部分教えてもらえれば嬉しいです。
日本の場合、3から5にあげても税収増えなかったのに、また上げようとしてるから。
増税と税収アップはイコールではない。のにね。
February 23rd, 2011 at 1:11 am
このPEWの調査は僕も2月頭にツイートしたところでした。エジプトより低いけど大丈夫か?とかなり衝撃でした。
http://bit.ly/efAroc
20代男子への調査:48%が「そこそこの人生が良い」 http://bit.ly/gAp29k
「独立・出世」希望の27%を圧倒的に上まってる。
日本人として残念ですがもう経済成長することもないのでしょうね、、、、
February 25th, 2011 at 8:25 pm
>snowyさん
>私は、本当の?自由経済と納得できる税制を持った国に移動したいなと思って企んでおります。
シンガポールはすさまじいですよ、今までいろいろ書いてますが。
>インフルさん
>イギリスの消費税アップの、国民の感覚とか、感情的な部分教えてもらえれば嬉しいです。
ご存知の通り、今年の初めに17.5%から20%に消費税が上がりました・・・
やってられません・・・ ですが、消費税アップより政府の大規模な歳出削減による公共セクターの雇用削減の方が、大量に失業者が出ると見られ社会的には大きなインパクトになっています。
それと比べるとVATが上がるのは、これだけ財政赤字なんだから仕方ない、と文句言いつつ受け入れている印象。
>gshibayamaさん
>20代男子への調査:48%が「そこそこの人生が良い」
>「独立・出世」希望の27%を圧倒的に上まってる。
うーむ・・・アメリカ人から見たら衝撃的な数字でしょうね。 ヨーロッパ人は「そこそこ派」が結構いるような気もしますが。
March 1st, 2011 at 8:12 pm
最近話題のCitigroupの予測だと、10年→50年:日本を除くアジアのGDPシェアが27%→49%、北米22%→11%、西欧19%→7%、日6%→2%。 http://bit.ly/ighjxT
衰退度だと日>西欧>米です。日本は人口が30%以上激減するのが大きいですね。
ちなみに2050年の一人辺りのGDP予測はシンガポールがダントツ一位だそうですw (単位:万ドル)シンガポール14>香港12>米10>英9>日7>露6>中・伯5>印4>ナイジェリア3。金融都市国家強しですね。
March 8th, 2011 at 12:04 pm
>gshibayamaさん
いつもためになるデータありがとうございます!
>衰退度だと日>西欧>米です。
なるほど、まあ想像通りというか。
>ちなみに2050年の一人辺りのGDP予測はシンガポールがダントツ一位だそうですw
シンガポールはリー・クアンユー後が見ものですね。 カジノは好調だそうです。