先週の金曜、時間は18:10(外はすでに真っ暗)、息子をナーサリーに迎えに行き家に帰ってきた直後にドアベルが鳴りました。 自分の家のもっとも不満なところのひとつですが、イギリスってインターホーンがないのですねー
(よくわからない募金依頼が本当に多いので)「嫌だなー」と思いつつ、ドアを開けると、そこには上着も着ずに寒そうな大柄の黒人が。
「隣に住んでるんだけど、ガスのメーターを見にフロントドアから外に出たら、誤って自分のうちから閉め出されてしまった(フロントドアはオートロック)。 大変申し訳ないんだけど、お宅の裏庭からうちの裏庭にフェンスを乗り越えて行きたいから家に入れてもらえない?」
「は???」と固まる私。
(心の中で)”アナタ、何をおっしゃってるんですか? だいたい隣に住んでるって言われたって今まで見たことないし、ここはロンドン。 外は真っ暗だし、知らない人を家の中に入れるわけないジャン・・・ 裏庭に通じる部屋では息子が寝てるし、こんな大きな人に殴られでもしたらひとたまりもないし・・・”
固まっている私にさらに「いやー、本当に悪いんだけどさー」と申し訳なさそうに閉め出された経緯を説明するこの黒人、よく見ると靴すら履いていない。
すると、隣の家の陰、ちょうどガスのメーターがあるあたりから、ひょこっと作業服を着たガス会社のおじさん(白人)が顔を出し「ガスのメーター読んでたらドアが閉まっちゃったんだよー」と説明(ロンドンでは定期的にガスの検針をしにくる)。 IDカードも見せてきたので、「どうやらこの2人の言っていることは本当らしい」と判断して家の中に入れました。
家の中に入った(自称)隣の家の人、裏庭に通じる奥の部屋まで来た途端、突然豹変・・・
・・・することもなく、「いやー、ありがとう〜」と言いながら裏庭のフェンスを乗り越え、(自称)自分の家の庭に帰っていきました。
私は(自称)隣の家の人が帰っていった後もずっと、「は???(何言ってんの?)」から「本物らしい」と判断してドアを開けて入れてあげるまでのわずか30秒くらいの間になぜ自分の気が変わったのかを考えていました。 いくらガス会社のおじさんが制服を着ていたからといってそれだけで??? 自分の判断が誤ったときのリスクが大きいのに、身なりだけで判断してしまったのか???
この私自身の疑問は夫が帰ってきてこの話をした時、夫が発した質問で解けました。 「その人、どんな英語しゃべってた?」
そうです、(自称)隣の家の人は非常にニュートラルなミドルクラスのアクセントで話していました。 それに比べて、(自称)ガスのおじさんは典型的な白人ワーキングクラスのアクセントで話していました。
私は30秒の間に自分が得た視覚・聴覚情報を超スピードで総合して「ミドルクラス英語を話す人とワーキングクラス英語を話す人が結託して、ガス会社の制服調達など細かい芸までしつつ犯罪を犯す確率は非常に低い」と判断したのだと思います。 まさに『読書は思考を言語化する』でご紹介した『第1感 「最初の2秒」の「なんとなく」が正しい』の「第1感」です(本には「自分は人種的偏見はない」と自覚している人にも実は無自覚の偏見があることをあぶり出す実験の様子も描かれています。 私が「は???」と躊躇したのも無自覚の偏見があったのかも、とも思った)。
『英語で聞いてみる階級の違い』でも書きましたが、本当にアクセントで出自を判断されてしまう国なのだなー、と改めて認識(判断したのは私だけど・・・)。
このイギリスの各種アクセントの話、まだ続きます。
November 12th, 2010 at 1:04 am
はじめまして。
カナダのバンクーバーで大学院生をしている者です。
いつも楽しく読ませて頂いています。
アクセントの話、興味深く読ませて頂きました。
北米にはないイギリス特有の階級社会の表れなんですね。新鮮でした。
最近youtubeで以下の動画を見て、国土が狭いくせにイギリスには
こんなに細かいアクセントの違いがあるのか、と驚いたのを思い出しました。
面白いので是非見てみて下さい^^
http://www.youtube.com/watch?v=dABo_DCIdpM
November 13th, 2010 at 3:04 am
面白いです!あと映画、小説なんかでよく描写されるのは食事作法ですよね。
デスパ妻というアメリカの人気テレビドラマで、2カップルが中華のテイクアウトで食事をする場面があるのですが、そのうちの男性一人だけがワーキングクラス、という設定でした。
すると、彼だけがフォークで食事をつつき、あとの3人は箸をあやつる。。となっていました。
つまり、高等教育を受けたアメリカ人は箸が使えて当たり前という表現?
今から20年前にアメリカ留学していた私としては隔世の感があります。日本人は海藻なんか食べるんだって?おえー!みたいなことしょっちゅう言われてました。
November 15th, 2010 at 2:59 pm
>yuさん
はじめまして。 ビデオの紹介、ありがとうございます! うまいですねー、この子。 ブログで紹介させてください♪
>ろちょーるさん
>つまり、高等教育を受けたアメリカ人は箸が使えて当たり前という表現?
そりゃー、すごい。 80年代、90年代とは隔世の感がありますね。
そう言われてみれば、寿司を食べたことのない人が希少なくらいになり、(シンガポールは当たり前だけどロンドンでも)日本の弁当を普通にオフィスで食べるために買って持ち帰る人をよく見ます。
November 25th, 2010 at 1:03 am
はじめまして、yokokloden さん :) 今オーストラリアの大学にいるあやかです。(TWITTERでもFOLOWさせてもらってます^^)
ときどきここに遊びに来てます。記事がどれもすごく興味深くてすてきですね^^
オーストラリアにいるので、オージーアクセントのほうが身近なのですが、イングリッシュアクセントはやっぱり、sexyでいいですね~☆
こんなビデオ をみつけたので、のせておきます。イングリッシュアクセントオンリーではないですが、彼女のアクセントコピーはすごくうまいです!
part 1 http://www.youtube.com/watch?v=3UgpfSp2t6k
Part 2 http://www.youtube.com/watch?v=OBIrfnvv0pE
パート2は答えと、彼女の経歴編です。ぜひ見てみてください。お勧めです。
November 28th, 2010 at 9:16 pm
>Ayakaさん
ビデオの紹介ありがとうございます。 彼女うまいですねー、swear words満載の男の子の方がリアルだけど(笑)。