この1週間、アイスランドの(いまだちゃんと読めない)Eyjafjallajoekull火山の噴火によるヨーロッパ空港閉鎖はイギリスに大混乱をもたらしました。
私の周りでも、まだメルボルンからロンドンに飛べない義父をはじめ(義母はひと足早く噴火の日に到着)、このロンドンで飛行機で飛ぶ予定がなかったのは(飛行機どころか電車に乗るのもままならない)私と(子供が生まれて1ヵ月は社則で出張禁止の)夫だけじゃないか?と思うほど多くの人が予定キャンセル・変更を余儀なくされていました。
いかにヨーロッパが空の足に頼っているかを痛感。 影響を受けた方、お疲れさまでした。
シャレになっていないのは、すでに経営不振に陥っているBA(British Airways)をはじめとする航空会社。 今回の空港閉鎖は航空業界に$1.7Bil.(約1,400億円)の経済的損失、700万人の足に影響を与えたとのことで、航空会社は政府の対応の遅さ、とりわけ国境を越えた空の安全に関する最終意思決定を行う機関がないことを責め賠償請求を始めました。
15(木)の閉鎖から20(火)のイギリスの空港再開までの政府のドタバタ劇のあらすじが昨日のFinancial Timesに載っていて面白かったので意訳しておきます。
15(木) イギリスのcivil aviation authority(caa、民間航空庁)長官は5amにnational air traffic services(nats、航空管制公社)が空港を閉鎖しているという電話を受ける。 caaに危機対策本部を設置、nats・交通省・met(気象庁)・気象庁内のvolcanic ash advisory centre(vaac、火山灰情報センター)から専門家を集める。 vaccは火山灰拡散の予測モデルを持っていたが、問題は政府が火山灰が航空機に与える影響も度合いを測りえなかったことだ。
International Civil Aviation Organization(ICAO、国際民間航空機関)という国連内の専門機関のガイドラインでは「火山灰発生の際に取るべき措置は急激な風速・風向の変動の際と同じ、とにかく避けるべき」となっていた。
16(金) ヨーロッパの空は完全に麻痺しており、ヨーロッパとしての統一したアクションが必要であることは明らかであったが誰も最初のステップを踏み出せない。
17(土) ブリュッセルのEurocontrol(欧州航空管制調整機関)本社にEuropean Commission(欧州委員会)のスタッフ、航空会社幹部が集まったが、結論は出ない。
ロンドンではCAAが世界中の航空機・エンジンメーカーと電話会議を開き、火山灰がもたらすリスクの情報を求める。
18(日) EUとイギリス政府は米国のFederal Aviation Administration(FAA、連邦航空局)のモデル(FAAがアドバイスするものの安全な飛行は各航空会社に委ねる)を採用することを検討するが、アメリカはヨーロッパのようにハブ空港が集まる地域上空に火山灰が拡散するケースを経験したことがなく、採用の結論は出なかった。
19(月) 空域を火山灰密度に応じて3段階に分ける案が検討され、夜までに合意される。
20(火) 各国交通省が空港再開の合意に至った後もイギリス政府はエンジンの安全についてメーカーの見解を求め、火曜の夜ようやくイギリスの空港が再開された。
ギリシャの財政破綻危機への対応に引き続き(→『ユーロの正念場』)、想定外の危機に際し、またしても統一した意思決定のできないヨーロッパを露呈してしまいました。
今週のThe Economistも今回の混乱を特集しているし、これから危機管理や意思決定のプロセスが明らかにされ、見直されていくのでしょう。
私はこの手の、時間がない中で不完全・不確実な情報をもとに重大な決断を迫られるさまを描写したドラマが大好きで(決して当事者にはなりたくないけど・・・)、その中でも意思決定論の古典としてビジネス・スクールの教材にも使われる、『13デイズ』(ケネディ政権下のキューバ危機に際した13日間を描いた名画)はかなり好き(だいぶ今回の混乱と危機の内容は異なりますが)。 まだ観ていない方はぜひどうぞ〜
April 27th, 2010 at 9:58 am
お久しぶりです。オレンジです。遅くなりましたが、お子さんの誕生おめでとうございます!
最近、ブログを見に来てなかったので、この変化に気付きませんでした。ごめんなさい。
今はお子さんが生まれて少し落ち着かれているようですね。
April 28th, 2010 at 7:35 pm
>オレンジさん
ありがとうございます〜!
>今はお子さんが生まれて少し落ち着かれているようですね。
手が離れないので、なかなかブログは更新できませんが・・・
April 29th, 2010 at 7:14 am
はじめまして。フィレンツェ在住のMasaと申します。出産お疲れさまでした。
友人からこちらのブログを紹介してもらい、あまりの素敵さ、葉子さんのすごさに興奮して
全ログ読ませていただきました。
早速影響されて葉子さんおススメのThe Economistも購読を始めました。
英語の勉強にはもってこいというか、英語も勉強できてなおかつ現在の世界情勢、経済状況を
勉強できる一石二鳥な雑誌で、本当に楽しみに読んでいます。
教えていただきありがとうございました。
自分のブログにも書いていた疑問の答えがこちらのブログに載っていたり、(フランスの自殺の多さなど)
毎回発見することが多く、楽しみにしております。
これから育児でお忙しいとは思いますが、ブログ楽しみにしております!
ちなみに私の知り合いのオーストラリア人も去年子供を産み、さっそくこの12年後のオプション
申し込んでいました。ほんとに熾烈ですよね、聞いた時はびっくりしました。
長いコメントにて失礼しました。ではまた。
April 29th, 2010 at 7:17 am
la dolce vitaさん、
うちの会社の連中がモロに引っ掛かったようで、二週間前にアメリカからベルギーへ5-6人社内会議で出張、そのまま塩漬けとのことです。ただ、会社の用事で足止めですから、実は「ラッキー」と思っている連中もいた気がします。ベルギーは食事も美味いですから。個人で行った人の出費は馬鹿になりませんけど、私も仕事だったら「ああ、仕方ない」と困った顔をして遊びまわっていた気がします。本当に仕方ないですから。
この意思決定については、純粋な技術と経営としての観点にズレがあるからでしょう。何人かの技術者に聞いたところ、やはり火山灰の付着での飛行機の影響というのは、「分からないが故に恐い」というものらしいです。とすれば意思決定は「飛ばさない」ということになってしまうのですが、それでは困る、というせめぎあいが続いたんでしょうね。人間の知恵などは自然の前では小さいということだと思います。
April 30th, 2010 at 12:04 pm
実は夫が足止めをくっていました。
出張で行っていたので、特に不自由はなくLondon の街を満喫したようです。
土曜日にはシェークスピアを見ようと予約までしていたようですが
飛行機に乗れることになりしぶしぶ帰ってきました。
la dolce vitaさんと顔見知りなら、是非我が夫をそちらへ派遣したかったです。
彼は、沐浴、げっぷ、おむつ替え、なんでもOKの夫なんですよ!!
あ、それからこの記事を航空の専門家に見せたのですが、うまいことまとめてるなあと感心してました。
April 30th, 2010 at 12:17 pm
>Masaさん
はじめまして、コメントありがとうございます。
>友人からこちらのブログを紹介してもらい、あまりの素敵さ、葉子さんのすごさに興奮して全ログ読ませていただきました。
全ログってすごいですねー(笑)、かなり時間がかかったのでは?
>早速影響されて葉子さんおススメのThe Economistも購読を始めました。
>英語の勉強にはもってこいというか、英語も勉強できてなおかつ現在の世界情勢、経済状況を勉強できる一石二鳥な雑誌で、本当に楽しみに読んでいます。
回し者のように礼讃していますが、私が欠かさず熟読しているのはThe Economistだけです。 ほんと質の高い雑誌です。
>ドイツ特派員さん
ヨーロッパはスクールホリデー、イースターホリデーで旅行者が多かったので、かなり可哀想な話がいっぱいありましたよ。 小さい子どもと離ればなれになってしまったお母さんとか、ゲストの半分が飛行機で飛んでくる予定だったのでゲストの半分が来れなかった結婚式とか・・・
April 30th, 2010 at 12:31 pm
>sunshineさん
>土曜日にはシェークスピアを見ようと予約までしていたようですが飛行機に乗れることになりしぶしぶ帰ってきました。
ははは、お子さんが大きいと余裕ですね。 友達の友達は、小さな子ども2人と離ればなれの1週間を過ごし、航空会社(Virgin Atlantic)から提示された帰国便がさらに2週間後だったので自分でチケットを取り直して帰ってきたそうです。 私は義父がちっとも来なかったので義母と2人だけの濃密な2週間を過ごしました(笑)。
>la dolce vitaさんと顔見知りなら、是非我が夫をそちらへ派遣したかったです。
>彼は、沐浴、げっぷ、おむつ替え、なんでもOKの夫なんですよ!!
それは残念! 今度はぜひロンドン出張にsunshineさんも便乗していらしてください!