ちょっと『セックスと嘘とビデオテープ』っぽい題にしてみました(どこが?)。
変な話だが、私、出産する前は自分は”産後鬱(うつ)”になるんじゃないかと警戒してました。
というのも、妊娠中ずっとそこはかとなくブルーだったので(マタニティー・ブルーってやつです)、「人生変わるよ」とありとあらゆる人に言われた出産後は、変化についていけなくてさらにブルーになるんじゃないかと思っていました。 今のとこ、その兆候はないようです(それどころか、睡眠さえ取れている日はかなりハッピー)。
そんな私がビックリしたのが、出産前にロンドンで参加した両親学級(→こちらとこちら)が2つとも産後うつの説明で締めくくられたこと。 普通もっと明るくハッピーな締めくくり方するもんじゃないかと思ったけど・・・
産後うつ(Postnatal Depression)はホルモンの変化が引き起こす治療可能な病気です。 親失格ではありません。 ひとりで抱え込まずに外部の助けを借りましょう。 パートナーは様子を気をつけて見てあげて、気分の落ち込みが数ヶ月続くようであれば、医療機関にアラームを出しましょう。
として、具体的に医療機関やサポートグループのコンタクト先を渡されました。
私は「よし、落ち込んだら”ホルモンの変化が成せるわざ”と思えばいいのだな」と心の準備をしていたのですが、これで思い出したのが、渡辺千賀さんブログの『中村うさぎ著書にみるビョーキに対する日米差異』というエントリー。
「買い物依存症という明らかな病気にかかっている中村うさぎさんに説教するのは、病人に鞭打つようなもんじゃないか、これがアメリカなら「この薬がきく」「このセラピー試してみて」と言う人がたくさんいるんだろう」というお話。
たしかに、産後うつも日本だったら「一時的なものでそのうち治ります、親なんだからしっかりしなさい」とか言われちゃうんじゃないだろうか? 抗鬱剤などで治療可能な病気だそうなので、そうなった人がいたら抱え込まないで医療機関にかかってくださいねー(実際、身近になった人がいるので、これが言いたいがためのエントリーです)。
そして、タイガー・ウッズのスキャンダルの時も同じことを思いました、「この人、病気かもしれないのに、そんなに病人に鞭打たなくても・・・」と(私、全く経過知らないので的外れかも、ですが。 実際、専門施設で治療受けたようですね)。
ただ、なんでも「病気」として治療の対象にするアメリカもどうなんだか・・・という側面もあり、イギリスも街中にDV(ドメスティック・バイオレンス)・少年犯罪・ティーンエージャーの妊娠・・・etc.ありとあらゆる社会問題の公共広告(ヘルプラインの番号)で溢れていますが、起こってしまったことを解決・治療するのも大事だけど、予防がやっぱり大事だと思ったりもするのでありました。
April 16th, 2010 at 6:30 am
今医療業界では治療から予防へという大きなうねりが起こっていますよ。
予防の方が社会コストが低く押えられるため、各国政府が躍起になっています。
・ アメリカのEHR(electric Heath Record)への2億ドルの投資などもその一環
どの国も医療費が財政を圧迫しているのは変わらないんですよね。
読んでいて思ったのですが、
やはりどのシステムにもいいところと悪いところがあって、
どっちがいいかという議論に意味は余り無くて、
「どういう風にしたら両方のいいところ取りができるか」
=「トレードオフな関係のどこが一番いいバランスポイントか」
を考えていく必要がありますよね。
この場合は
・ 日本の精神論(=「お金をかけずに予防」に偏っている)
・ 欧米の病気論(=「お金をかけて治療」に偏っている)
の両者の間にこそ一番言い考え方があるのでしょうね。
April 17th, 2010 at 4:20 am
日本の両親学級でも最後は「産後うつ」のことだったよー
予防にも3段階あって、まずは知識をつけて病気にならないようにする(1次予防)が大切だけど、
なっちゃった場合は早期発見・早期治療(2次予防)が本当に大切なんよね。(ちなみに3次予防は、再発予防)
ただ、やっぱりこういう領域って正常範囲と病気の境界が(診断基準があるとはいえ)曖昧だし、
どうしても「もう少し自分が頑張れば何とかなるんじゃないか・・・」と思っちゃうだろうし、
治療で良くなるとはいえ、授乳中の場合、薬の内服にも抵抗があるだろうし、
子育て中の場合、病院に行く時間もなかなか取れないだろうし・・・色々と難しいよね。
ほんと一時的な症状とはいえ、かなり辛いと思うので、そのお友達が1人で抱え込まないで相談できる相手がいると良いのだけど・・・。
April 17th, 2010 at 4:31 am
80年代にアメリカでHMO(Health Maintenance Organization)が盛んになったのも、予防を通じて医療コストを下げるのが目的でした。しかし、政府が医療サービスのコスト削減にやっきになると、サービスレベルの低下を招く恐れが多々あります。レベルを高く保ちつつ、なおかつコストを抑えるためには、政府が躍起になるだけでなく、個々のサービス使用者が医療コストに敏感になる必要があるはずです。
April 17th, 2010 at 1:07 pm
la dolce vitaさん、
先日、日垣隆の本を読んで初めて知ったのですが、今では二週間落ち込みがあると、とりあえずうつ病という診断をしてそれに対する薬を処方するんだそうです。本当かな?と思って調べてみると、確かに二週間というのは一つの基準としてあるらしく、もう少し細かな診断基準はあるものの、とても大まかには「二週間落ち込んで楽しくなく、死にたいと思う」というのが基準のようです。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%81%86%E3%81%A4%E7%97%85
何かこれだと、「みんな大なり小なりうつ状態になってるんじゃないか?」と思いますし、これで「うつ病」にされてしまった場合、別の病気を見逃す場合がかなりあるのが問題のようです。例えば認知症の初期だったり、更年期障害だったりが隠されてしまい、適切な治療ができないという事もあるらしい。うつ病の場合、「心の風邪」という言い方が悪いのかも知れません。風邪は相当酷い場合以外はほっとけば治りますから、その延長で考えられている感があります。元々はそうではなくて、「誰でも罹るんだから」を強調したかったのはよく分かるんですが。
うつ状態というべきか、私も今までで一度だけ、「食事が全て砂に思える味の無さ」という状態を経験しました。これは原因があまりにはっきりしていたことで、それでもうつ病などにもならず、自分の精神の無神経さにある意味あきれ返りましたが、この状態がずっと続いている人はそりゃつらいだろうな、と少し感じる事が出来る体験でした。
中村うさぎの場合、別に本人もその病気を治そうとしていないし、治したら彼女の存在意義がなくなるところもあるしで、個人的には鞭打つ気も擁護する気もないんですが、タイガーウッズの場合、「病気かもしれないのに」と思った人自体(私を含め特に男性は)殆どいないんじゃ無いでしょうか?というか、タイガーウッズが誰に何を謝っているかよく分からなかったし、世の東西を問わず、こういう相手が反撃できない人を攻撃するのはよくあるのだなあ、と思っていました。
April 19th, 2010 at 12:47 pm
>任 宜さん
>・ 日本の精神論(=「お金をかけずに予防」に偏っている)
>・ 欧米の病気論(=「お金をかけて治療」に偏っている)
>の両者の間にこそ一番言い考え方があるのでしょうね。
妊娠・出産で初めてこんなに医療のお世話になったのですが、上記の違いは本当に感じましたねー たしかにどちらがいいという議論にあまり意味はないのでしょう。
>junko
>日本の両親学級でも最後は「産後うつ」のことだったよー
おお、そうなんや。
>どうしても「もう少し自分が頑張れば何とかなるんじゃないか・・・」と思っちゃうだろうし
私は産後の睡眠不足で夫に当たってしまったときとか全部ホルモンの変化のせいにしてたけどね(笑)。 自分が頑張れば・・・と思わなくていいと習っただけでも、クラスの効果はあったよ、
>tygertygerさん
>レベルを高く保ちつつ、なおかつコストを抑えるためには、政府が躍起になるだけでなく、個々のサービス使用者が医療コストに敏感になる必要があるはずです。
その方向にpublicを教育するのは言うは易く行うのは難しでしょうね。 イギリスは国民医療制度が無料なので、それを悪用しようとする人もあとを絶たないようです。
>ドイツ特派員さん
>何かこれだと、「みんな大なり小なりうつ状態になってるんじゃないか?」と思いますし
2週間は知りませんでした。 たしかに・・・
中村うさぎもタイガーウッズも経過もよく知らないで何なんですが、買い物中毒なんて”「Confessions of a Shopaholic」 (邦題;お買い物中毒な私)って映画になるくらいアメリカではよくある病気(?)の一方で、日本ではそれがウリ(芸)になるんですねー 単なる感想です。