お産のインフォームド・コンセント

私はイギリスに来て間もないので、この国のことをよく知りません。
また、日本でも(妊娠・出産はおろか)ほとんど医者にかかったことがなく、日本の医療についてもよく知りません。
その前提で、「へー、イギリスの出産に対する考え方、わりと好きだなー」と感心したことがありました。
来てすぐに夫とantenatal class(*1)に参加しました、NCT(National Child Trust)というチャリティー団体開催のクラスと病院開催のもの2つ。
*1・・・・直訳:出産前のクラス、日本で言うところの「両親学級」。 シングルマザーもいるので、こういうニュートラルな表現で呼ばれる(シングルマザーは母親や姉妹・友達など出産に立ち会う人と参加)。
感心したのは「出産はあなたたちが人生で病院と関わる中で唯一、受身ではなくproactiveに関われる機会なので自分が望む方法で望むお産を叶えなさい。 疑問やリクエストがあったら、”医師がこう言ってるんだから・・・”と納得してしまわずに聞きなさい」という姿勢が徹底していること。

  • 病院で提供されている陣痛の痛みを和らげる方法(*2)のPros & Consを事細かく勉強する。 無痛分娩(硬膜外麻酔)ももちろんあり、バランスボール使ったり歩き回ったり水中出産もあり。(*2・・・参考:イギリス子育てA to Z : お産時のPain relief&無痛分娩について
  • どういうお産がいいのか自分の希望を詰め込んだ”Birth Plan”を書き出す(痛みに耐える姿勢、室内で自分の持ち込んだ音楽をかけたい、赤ちゃんが出てくる際のパートナーの場所(頭側?それとも瞬間を見たい?)、してほしくない医療処置、へその緒は誰が切りたいか、etc.かなり細かく)。

  • それでも実際なってみないとわからないことが多いので、本番は病院で提供できるものはすべて欲しいときに使える。 例えば、日本では硬膜外麻酔(epidurial、いわゆる「無痛」)は計画出産になるらしいが、イギリスでは「ああ、こりゃもう無理」と思ったときに、”Epidurial!”と叫ぶとさささっと準備される(らしい)(*3)。
  • 医師の判断で陣痛促進剤や吸引・鉗子を使うときは本当に必要な医療行為なのか納得いくまで説明を受ける。

・・・などなど、「あなたが決めるのよ」と何度も言われます。
*3・・・NHS(National Health Service)総合病院での話。 プライベート病院・バースセンター(助産院)や自宅出産など他にも選択肢があり、それぞれ使える設備は異なる。
さらには、いざという時に医師や助産婦に聞けるように、下記のような質問リスト(財布に入れて持ち歩けるように小さなサイズ)も渡され、「これが必要となる頃には女性は痛いしパニクってるだろうから、パートナーが代弁者としてしっかり質問するように」ということでした。

INFORMED CONSENT QUESTIONS
1. これは緊急ですか? それとも今話す時間がありますか?
2. この処置を行う利点は?
3. このリスクは?
4. これを行った結果、他にどういう処置が必要になる可能性がありますか?
5. これ以外にまずできることはありますか?
6. 1時間ほど様子を見ることはできますか?
7. これを全く行わない場合どうなりますか?

あらゆる文化的バックグラウンドの人がいるので、文化的タブーに対する配慮も余念がありません(出産なんて、最も慣習やタブーがありそう)。 「輸血が必要だと判断された場合、輸血をしてもいいですか?」と聞かれたこともありました、宗教上の理由で輸血を拒否する人がいるので事前に聞いておくのだそうです。
スウェーデン人の友達が「”Birth Plan”など妊婦が選択する権利に関してはイギリスは進んでいる、スウェーデンはそこまでではない」と言っていたので、結構進んでるらしいです、イギリス。


6 responses to “お産のインフォームド・コンセント

  • ろちょーる

    意外ですね!イギリスでそんなきめ細やかなサービスが受けられるとは。産後に助産師さんの家庭訪問が無料で受けられるというのも本当ですか?
    シンガポールではどちらかというと、安全にお産を終えるという目的を第一に、こちらが何も言わなければ医師側から方針を決定されることが多い気がします。無駄なリスクは取らない医師が多いと思います。目的地までいつも最短距離を取る感じですね。私はこのスタイルが大好きですが、自分の出産のやり方に思い入れがある人はいやかもしれません。

  • やぎ

    la dolce vitaさん、こんにちは。一昨年(?)、オリーブオイルの件でお世話になりました八木です。
    いつも興味深く拝見しています。日本在住の専業主婦である私には、la dolce vitaさんや読者の皆さんにとって有益そうなものを提供できることはほとんどなく(笑)、コメントは控えていますが、今回いくつか思うことがあったのでコメントさせてください。
    まず、質問です。このエントリに書かれているような医療体制(というか姿勢)ですが、イギリスではごく一般的なのでしょうか?それとも、la dolce vitaさんが選んだ病院が、そのようなスタンスの病院だったということでしょうか。というのも、日本でも、わりと意識が高いというか、そういう病院もあるにはあるのですが、皆がアクセスできるわけでもないかな、というのが私の実感です。
    次に、前のエントリですが、身にしみるものがありました。スローダウンというのは、いわゆるキャリアをもつ女性を対象にした話ですが、私の感覚では、キャリアの有無やその程度に関わらず、わりと誰にでもありうることだと思っています。(もちろん実際問題として、高度な仕事をもつ女性が、それ特有の事情を多く抱えているというのは承知しています。) 自分の周囲をざっと見渡したとき、育児でドツボにはまっている状況というのは、だいたい、こちら側の心構えというか、身体にしみついた思考・行動パターンが、邪魔しているというケースが多いように思います。要は、自分の都合と子供の都合が対立している。出産前にそれに気づかれたla dolce vitaさんはさすがだと思いました。それぞれに落としどころが必ずあるので、きっとla dolce vitaさんならうまくなさるのだろうと思いました。
    最後に、腰痛ですが、いまもひどいですか? la dolce vitaさんの妊娠中の経過は、私のケースによく似ています。私は硬膜外麻酔を選択しましたが、緩和する程度のものだったこともあってか(?)(日本の場合、完全無痛を選択できる病院は稀かと)、陣痛の感覚はかなり和らいだものの、なぜか腰のほうは、ほとんど拷問かと思うくらいの痛みでした。分娩台にあがることを求められる病院でしたが、最後はそこに横たわることができないほど(しかし横たわるのだが)。もちろんこれは私のケースなので、話半分に聞いてくださっていいのですが、もし、気になるようでしたら、医師に尋ねてみてもよいかもしれません。ちなみに、子供が出てきたその瞬間、腰の痛みは完璧に消えました(苦笑)
    長々と失礼しました。
    それでは、よいお産になりますよう!

  • la dolce vita

    >ろちょーるさん
    >意外ですね!イギリスでそんなきめ細やかなサービスが受けられるとは。
    ははは、意外ですか? 初体験なので何が意外で何が意外じゃないかもわかりませんが、「きめ細かい」の質が違うんでしょうね。
    個人の意思は最大限尊重されますが、その代わり最低限必要な医療行為しか行いません(”ローリスク妊娠”に分類されると、全期間中でスキャン2回ですから・・・)。 終わったらそのあたりも書いてみたいと思います。
    >産後に助産師さんの家庭訪問が無料で受けられるというのも本当ですか?
    助産師さんではなくてヘルスビジターという人が近くのGPから定期的に来ます(おそらく資格は看護婦)。 赤ちゃんの健康状態・発育具合を見に来るのと、予防接種とかのアドバイスをするそうです。 看護婦なので授乳のアドバイスとかはできないはず。
    >私はこのスタイルが大好きですが、自分の出産のやり方に思い入れがある人はいやかもしれません。
    1回目だと思い入れも何もないというか、わからん・・・って感じですが、”Good experienceだったかどうか?”を気にする人が多く、単に安全を求めている人が多数ではないようです(よって、”Good experience”にするために自宅出産を希望する人も多い)。
    >やぎさん
    >このエントリに書かれているような医療体制(というか姿勢)ですが、イギリスではごく一般的なのでしょうか?
    NHS(National Health Service)というのは国営の医療サービスでイギリスの医療システムの根幹をなしており(ちなみに無料)、この姿勢がイギリスの出産に対する姿勢です。
    ただ、この国は「コンセプトは素晴らしいんだけど、ちゃんと実態として機能してないよね」ということが多く、NHSはその筆頭として槍玉にあげられています。 例えば上記のようなしっかりとした説明を受けられたのは、NCTというチャリティー団体主催のクラスに参加したからですが、チャリティーのくせに2日間のクラスで300ポンド(4万5,000円)と超高額。 こんな高額のクラスを受けられる人はおのずと限られますし、(例えば)水中出産の施設はあっても他の妊婦さんが使用中であれば使えない、など実務面での制約はあります。 このあたりはまた別エントリーにさせてください。
    >要は、自分の都合と子供の都合が対立している。
    そう、そういうことが言いたかったのでした。 言葉にしていただいてありがとうございます。
    自分の都合で引越しもさっさと済むと思っていたのに、全くそうではなかったので愕然としました。
    >腰痛ですが、いまもひどいですか?
    ご心配いただき、ありがとうございます。
    腰痛は逆子な上、私の背骨と赤ちゃんの背骨が当たっていて腰が全然曲げられなかったのが原因のようで、「とにかく赤ちゃんのポジションを動かせ」と言われました。 がんばって薦められた姿勢を取っていたら先週、くるりと回転! 今は嘘のように直っています。 ただ、まだ下がってないので動く可能性があるとのことで油断は禁物です。
    >分娩台にあがることを求められる病院
    イギリスって分娩台ないんですよ(ベッドはありますが)。 重力も使ってとにかく下げなきゃいけないので(仰向けになると産道が狭くなる)、バランスボールや椅子を使ったり壁を使ったりするんだそうです、何時間も・・・ おそろしい・・・

  • tanup

    はじめまして。リンクをたどってたどりついたこちらのサイト、面白そうと思っていたら、先日、ひさびさにtwitterにアクセスして、Yoko Kloedenさんのfollowerであることを発見しました。(^^; 縁のある方のようです。しかも、ここにきて親しみあるロンドンへお引っ越しとは・・・嬉しいかぎりです☆出産楽しみですね。ロンドンにいた頃、大学院の日本人の友人があえてNHSで出産しましたが、そのころ独身であった私の印象に残っているのは、出産直後、大量の塩をもって入浴に行かされた、ということくらいです。私は日本で出産しました。病院にもよるとは思いますが、最近は日本でもいろいろ説明してくださって選択も多いと思います。最初に陣痛促進剤や吸引・鉗子の使用などについてアンケートがあったと記憶しています。私は一度開腹手術をしていたので自然分娩を希望していましたが、なかなか下りてこず、結局もうこれ以上痛いのは勘弁~と思い、帝王切開にしてもらいました(経験者によるとその程度の痛みはまだまだ序の口だそうですが・・・)。手術の時間なども希望をきいてもらった覚えがあります。出産直後、イギリス人の友人がロンドンからお祝いの電話をくれましたが、「帝王切開だった」と言うと「イギリスじゃあ、35歳以上はみんな帝王切開」と言われました。当時は独身だった男性の言うことですからアテにはなりませんが。
    出産直後のカンガルーケアはおすすめです。この世の中にでてきたばかりのわが子が乳房をもとめる生命力と出産の喜びと、感動ものでした。
    私は岡山在住ですが、情報誌やインターネットで自分の希望する出産を実現させようと考えている人は割といるように思います。3D、4Dエコーがあるところなどという基準で選んでいる人も多いようですが・・・。
    とりとめもない書き方で失礼しました。
    仕事と育児、大変ですが、どちらも楽しい、それが私の実感です。
    これからもどんな「世界級ライフスタイル」をおくられるのか、楽しみにしています。よろしくお願いします☆

  • la dolce vita

    >tanupさん
    はじめまして、コメントありがとうございます。
    >「イギリスじゃあ、35歳以上はみんな帝王切開」
    それはないです(笑)。
    >出産直後のカンガルーケアはおすすめです。
    イギリスはdefaultなんですよ、skin to skin contactと呼ばれてます。 日本みたいに新生児を拭いたりしないので(感染が心配なのでお風呂なんてもってのほかと思われている)、思わず「拭かずに胸の上にのせるんですか?」と何度も聞いてしまいました(笑)。

  • tanup

    defaultですか。イギリスでも普及したんですねぇ。そのままですか。拭かず、お風呂にもいれず?!skin to skin careの間に母親の体でぬぐってやるという感じなんでしょうか?正真正銘のカンガルーケアですね。(^m^) 私は帝王切開なので、とりあげてもらったあとお腹を閉じる必要がありますから、(^^; 最初に対面したあと30分くらいは離ればなれでした。その間、子どもは体重、身長測定や肺から羊水を吸い出すなどの処置などをされていたみたいです。(←夫撮影) 帝王切開なので付き添いではなかったです。夫が初めて子どもに対面したときの「こんにちわ~」という間抜けた声が今もビデオに残っていて笑えます。その後のカンガルーケアでした。生まれたてほやほやだともっと感動ものでしょうね。(^^) 本を紹介されていましたが、新潮社の「赤ちゃん学を知っていますか?」も結構面白かったですよ。

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