ユーロの正念場

日本はトヨタのリコール問題で大騒ぎかもしれないが、ヨーロッパはここ10日間、何はともあれギリシャである。
ギリシャの国債信用力が急落したかと思うと、ポルトガル、次いでスペインと南欧諸国に飛び火し、欧州株式市場が下落、ユーロも下落・・・
毎日、毎日、ギリシャをEUが救済するのか、EU最優等生のドイツが単独救済するのか、EUではなくIMF(国際通貨基金)に頼るのか、それともデフォルト(債務不履行で破綻)させるのか、さまざまな情報・憶測が飛び交いニュースを賑わせています。 今日のブリュッセルEU首脳会談でだいたい大筋決まるのかなー?
JB Press : The Economist – 極めて欧州らしい危機
JB Press : Financial Times – ユーロ圏の次の一手
週末会った友達が英系投資銀行に勤めていて、今週は緊急アテネ出張で「ギリシャ政府に”解決策提案しろ”と言われてるけど、根本的な解決策がないのよ~」と頭を抱えてました。
今回「ギリシャをユーロ離脱させろ」論が高まったのが、なぜかもの悲しいのは、ユーロという通貨同盟を大きな柱としたEUという壮大な構想が美しすぎた夢物語だったのか・・・、という気がしてしまうから。


「国民国家」(nation state)という名のもと、次々と小国が成立したヨーロッパ。 ところが、スペイン北部のバスクや北アイルランドなど少数民族・宗教の地域では分離独立を目指し過激派がテロ組織化して流血の事態が長く続いていた。
それを「まあまあ、何やかんや言うても、みんな同じヨーロッパだから」となだめ、共通の利害を通して本当に穏健化させてしまったのがEUなのである。
ユーロは単なる経済的な同盟ではなく政治的な組織体であり、ユーロ脱落国を出すことは欧州にとって屈辱的な出来事なのです。
大前研一さんが『衝撃! EUパワー 世界最大「超国家」の誕生』で、

ユーロは世界で唯一規律がある通貨(財政赤字がGDP比で3%以下、債務残高がGDP比で60%以下)で世界の基軸通貨になる可能性がある
ユーロ参加は片道切符、ユーロから離脱した国家の通貨なんて誰も見向きもしない。 だから加盟国は必死で規律を守ろうとする

と絶賛してましたが(大筋は下記でどうぞ)、わずか2年の間に破綻しそうなのに破綻させられない(離脱させてしまうとドミノ式に他の国も倒れる)国家が出てきてしまいました(去年のギリシャの財政赤字はGDP比で12.7%)。
「産業突然死」の時代の人生論:規律のユーロ、タガ外れの円・ドル(2007年12月26日)
私も『成熟国からの視点』に書いたように、EUという超国家共同体には大いに注目しているし期待しているのに、当面の雲行きは怪しい・・・ 優等生ドイツを離脱させて、残りの国でユーロ切り下げ実施という案まで出ていたようですが、結局みんなで痛み分けかな?
国家財政が火の車のイギリスも他国を救済している場合ではなく、日本に到っては財政状況はさらにひどいのですが・・・


5 responses to “ユーロの正念場

  • taka

    はじめまして。私もヨーロッパに住んでいるのでこの問題には非常に関心があります。何らかの救済をすることが決まったようですが、モラルハザードを防ぐ(加盟国にきちんと財政規律を守らせる)仕組みをどう整えるのかが気になります。私は残念ながら悲観的で、今回の危機でユーロのファンダメンタルズは決定的に損なわれたと見ていて、長期的には統一通貨は現在のものと大きく異なるものになるだろうと思っています。もちろん、ここに住んでいるので、そうなって欲しくないのですが。

  • la dolce vita

    >takaさん
    >私は残念ながら悲観的で、今回の危機でユーロのファンダメンタルズは決定的に損なわれたと見ていて、長期的には統一通貨は現在のものと大きく異なるものになるだろうと思っています。
    ほう、それはなぜですか?
    私は詳しくないので、今回の救済が与える長期的な影響までよく思考が及びませんが(ただ「おお、正念場だなー」という感はひしひしとしている)、強い通貨同盟になって、できればポンドも入って欲しいと思ってたんですけどねー

  • taka

    いえ、私もまったく詳しくないので大した根拠があるわけでは。ただ、いまのところモラルハザードを防ぐ具体策が見えてこないため、南欧諸国が放漫財政といい加減な統計発表を今後ゆっくりと拡大させていくきっかけとなりそうな予感を持ちました。また、債務問題の原因の一つである低経済成長の改善(まずは労働市場の硬直性をなんとかしないといけないでしょう)に本気で取り組む気も見えてこないですし。
    あと、ユーロ導入以来初めての本格的な危機に際して、(おそらく各国の思惑の違いからくる)対応の遅さも気になりました。昨年のはじめからギリシアの雲行きが怪しくなっていたのに、いまになっても具体策が不明瞭というのはいかがなものかと。本格的な危機にすばやく対応出来ないことを露呈したように思います。これらが、今後また起こるであろう金融危機の際に命取りとなるのではないかなと思ったわけです。

  • Gen

    確かにユーロは正念場ですね。ギリシャ一国救済なら簡単にできるんでしょうが、スペイン、ポルトガル、イタリア、アイルランドと、財政破綻予備軍が続いているので、独仏がどこまで腹をくくってユーロを守るのにコミットできるかでしょうね。また、周辺新興国(トルコ、バルト3国、ハンガリー、スロバキア)等も、かなり弱ってますし、ヨーロッパの大手銀行も新興国にかなり融資していますからね。かなり長期的な視野をもってやらないと、途中で腰砕けですね。

  • la dolce vita

    >takaさん
    >ユーロ導入以来初めての本格的な危機に際して、(おそらく各国の思惑の違いからくる)対応の遅さも気になりました。
    たしかに遅かったですね。 EU(特にユーロ)は独仏主導であることが明らかにも関わらず、建前は各国平等なので、事務仕事の量(例えば公式書類・公式会議の翻訳・通訳コスト。 みんな英語しゃべるのに)がハンパない、と聞きました。 建前や理想を優先しすぎて、現実的で迅速な対応ができないのでしょう。
    また、EU大統領選。 多極化する世界のスーパーパワーの一極として、オバマに匹敵するような人を望む声も多かったのに、結局「無名なのがとりえ」のような人を選んだことも、EUが国境を超えた超国家として表舞台に出ていくことにまだまだ躊躇があるのだと思います(EUを絶賛していた大前さんもガッカリ↓)。
    http://www.nikkeibp.co.jp/article/column/20091130/198109/
    だからといって、「じゃあ元に戻りましょう」という人はいないので、命取りになる前にまた1歩ずつ遅々とした歩みで進んでいくしかないのでしょう。
    >Genさん
    >かなり長期的な視野をもってやらないと、途中で腰砕けですね。
    途中で腰砕けてしまっては、なんとも残念ですねー
    人類の叡智を結集して史上初めて国同士が平和裏に統合を続ける、という極めて美しいお話なのに・・・

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